STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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幕間(3)

さて、恒例の章タイトルの解説です。少々長くなりますがお付き合いください。

 

 

 

『夢幻泡影のエルピス』について。

 

本来、この章は『永劫回帰のパンドラ』となっていました。

 

永劫回帰とは哲学者のニーチェが提唱した思想です。この世界は全て、まったく同じように何度も何度も繰り返される、というものです。宗教的な死後の世界や天国といったものは、そこに至る事に価値や意味を見出しますが、ニーチェは永劫回帰においてはそういった意味は一切ないとしました。

 

つまり、生きることに意味はない、ということのようですね。ですがそれで終わりではないようで、そんな無限に繰り返される世界の中で生きるということは、何物も失われずに存在する、ということを意味するようです。それを受け入れることこそが究極の形、と考えたようです(哲学は私には難しすぎてあまり理解出来ていません……)。

 

パンドラ、とはいわゆるパンドラの箱、ですね。神から与えられた、絶対に開けてはならない箱をパンドラは開けてしまいました。その結果、世界にはあらゆる災いがもたらされました。また、その中に希望もあったようですが、それは箱の底の方にあり、それが解き放たれる前にパンドラは箱を閉じてしまったため、世界に希望がもたらされることはなかった、という神話のようです。

 

私たちがパンドラの箱、と言う際には、災いを招くきっかけ、という意味で使いますね。

 

本来この章ではバッドエンドである『私秘鏡裏のスティグマ』とトゥルールートである『弾性限界のリコグナイズ』に分岐します。無限に繰り返される世界で、岡部がどの選択をするのかが大事になってきます。岡部がパンドラの箱を開ける際、飛び出てくるのは希望か絶望か。

 

そういう意味が込められていると考えました。

 

では今回の『夢幻泡影のエルピス』ですが、夢幻泡影とは儚さ、エルピスとは希望を意味します。パンドラの箱の底に残っていた希望のことですね。

 

永劫回帰のように無限に繰り返されるのではなく、人生とは瞬間の積み重ねであり、儚いものであり、そこにこそ意味が宿るのではないかと思いました。また、岡部が無限ループの中に希望を見出すのも違うと思いました。

 

一瞬を全力で生きることで、その先にある希望(エルピス)を掴み取れるのではないか。そういう意味を込めてこのタイトルとしました。

 

 

以下、この章における分かりづらかった点について解説していきます。お話したいのは2点。本作におけるロシア世界線と、レスキネンの思惑についてです。

 

 

 

1、ロシア世界線について

 

まず悩んだのは1.130205から変動するロシア世界線のダイバージェンスはいくつなんだろうという点でした。

 

ここに関してはすごく悩みました。ゼロ原作におけるロシア世界線は1.382733ですが、その世界線とはかなり様相が変わっています。オリジナルを差し込む際に最も困るのが世界線変動率なんですよね……。原作での数値に込められた意味が分からないので、適当に決めるわけにもいかず。出来る限り原作に沿った数値にしたい。そんな中で1.383090に決めました。

 

ゼロ原作では変動前の世界線は1.129848でした。それと1.130205の数値差は0.000357。そのため、1.382733からその数値だけ増やして、1.383090としました。それ以上の意味は特にありません。

 

世界情勢はかなり変化していましたが、そこはご愛嬌ということで……。

 

 

さて、今作におけるロシア世界線ですが、本当はもっと詳しく書きたかったんです。ですが、あれ以上分量が増えてしまうと、ただでさえ分かりにくい私の文章が更に分かりにくくなってしまうためなくなく減らしました。その分をここでご説明できればと思います。

 

ゼロ原作でのロシア世界線については、前作、『STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~』にて解説していますが、改めて簡単にご説明を。

 

ロシア世界線では、ダーパ(米軍)がストラトフォーに優越している状況にありました。それは米軍が『Amadeus』を支配している事から分かります。そして、沖縄に向かう中で登場した阿万音由季はかがりが成りすましていました。岡部たちの進路が急に変更になったのは、かがりが米軍に情報を渡したから……という風に結論付けました。(米軍にレスキネンがスパイとして入り込んでいたのでは?とも考えました)

 

そして、岡部が『Amadeus』に触れた瞬間に世界線が元に戻る……という流れでした。

 

 

さて、今作、1.130205世界線ではかがりはレスキネンによって洗脳されていません。そのため、阿万音由季すら登場していないわけです。そうなると、そこから派生したロシア世界線においても阿万音由季は登場しません。本来なら、かがり(阿万音由季)から得られていた情報を、ストラトフォーも米軍も手に入れる事は出来なくなってしまいます。

 

このままだと、米軍やストラトフォーと共に岡部が世界線を元に戻す、という流れには出来ません。そこで、鈴羽にキーとなってもらうことにしました。

 

鈴羽はロシアがタイムマシン実験を行った事を知っており、岡部が別の世界線から移動して来る事も理解しています。2010年12月24日にこの世界線がアクティブになり、岡部が移動して来る前に、鈴羽はダル、岡部と共に対策を打ちます。ダルに『Amadeus』を確保させ、その中にあるタイムマシン論文を使って世界線を元に戻せるように。

 

岡部が『Amadeus』に触れた瞬間に世界線が元に戻ったのは、その時点で岡部がロシアの過去改変を取り消すことが確定したためです。

 

 

と、こんな流れを想定して書いていました。正直、今作においてロシア世界線はそれほど重要ではありません。そのため、この部分はかなり省略させていただきました。

 

 

 

 

2、レスキネンの思惑について

 

この世界線では、レスキネンは未来でかがりを洗脳することが出来ていません。そのため、未来で掴んだ情報を過去に送る事は出来ません。よって、レスキネンがタイムマシン論文に気付いたのは2010年8月21日に中鉢がロシアに亡命した瞬間、ということになります。

 

ロシアン航空の火災事故を仕込んだのがSERNである以上、SERNは中鉢論文の存在に気付いたのはそれ以前のこと、ということになります。私としては、ストラトフォーよりもSERNの情報収集能力の方が高いと考えていますので、レスキネンはその時点まで何も知らなかった、と考えています。

 

自分の教え子が世界を揺るがすタイムマシン論文を書き上げた、と知ったレスキネンの心境はどんなものだったでしょうか。論文を手に入れようにもロシアが独占しており手出しは不可能。そこで、『Amadeus』の中にタイムマシン論文が眠っていることに気が付きます。

 

では、そもそもどうしてレスキネンは『Amadeus』を作ったのか、という話になりますが、それはβ世界線における歴史のつじつま合わせであると言えます。

 

岡部と真帆の出会い、シュタインズゲートに至るための条件に『Amadeus』の存在は必要不可欠。そのため、レスキネンがタイムマシン論文を手に入れるため、という建前がなくとも、『Amadeus』は作られることになる、と考えられます。しいて理由を挙げるなら、AI戦士を生み出すため、でしょうか。軍事転用が可能であることは変わりませんしね。

 

 

さて、ここで問題となるのはレスキネンが来日した理由です。本編でも触れましたが、事前に岡部のことを知らないレスキネンが、日本に来て岡部にテスターを依頼する理由がありません。これについても歴史のつじつま合わせと言えるのですが、それでは芸がないので私なりの理由をいくつか挙げさせていただきます。

 

1つは、『Amadeus』の秘密の日記をこじ開けるのはリスクがあるということです。“紅莉栖”にバレないように、というのは不可能でしょうし、“紅莉栖”を通じて真帆に伝わる可能性が高い。こじ開ける準備はしつつ、それ以外の手がかりが欲しい、というのがレスキネンの立場です。岡部にテスターを依頼したのもそれが理由です。懇親会で偶然、紅莉栖の友人である岡部を見つけた。岡部ならなにかタイムマシン論文に繋がる情報を持っているかもしれない。そう考えて声をかけました。結果として、岡部からは何も情報を得られませんでしたが。

 

2つ目は、紅莉栖のノートPCとHDDを手に入れるためです。アメリカで真帆を狙えば、内部犯を疑われるのは確実。それに、真帆自身も容易に隙を見せないでしょう。ですが、日本に来てしまえば真帆を狙いやすくなります。真帆がアメリカにノートPCとHDDを置いて来ていたのならそこを狙えばいいし、持ってきているのならホテルを狙えばいい。真帆も慣れない土地で油断すると考えての事だと言えます。

 

テスター報告会終わりの襲撃、ダルのアジトの襲撃、真帆のホテルとオフィスへの襲撃。レスキネンもなかなか情報を得られずに焦っているのが分かります。ロシアやSERNの動向を考えて、なりふり構っていられない状況のため、こういう行動に出るのも当然だと言えます。

 

 

 

さて、長くなりましたが解説は以上です。

 

この章は怒涛の展開でしたが、次の章はすこしゆったりとした展開になります。日常パートとでも言うべきでしょうか。お楽しみいただければ幸いです。

 

 

それではまたお会いしましょう。

 

 

 

 

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