STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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「後で確かめてみるといい」

 

「そうするわ。んで、具体的にはどうやってそのデータを過去に送るん?メールに添付……ってわけにもいかんだろうし」

 

「電話だ。過去に電話をかける形でデータを送る」

 

読み取った記憶、パルス信号を電気信号へと変換し、LHCへと送信。ブラックホールで超圧縮して再びこちらに戻す。こちらに着くタイミングで再び電気信号をパルス信号に変換し直すデコードプログラムを組んでおく。それを過去の自分のケータイに電話する形で転送。過去の自分が着信に出たとき、ケータイから0.02アンペアほどの微弱な放電現象となって神経パルスが放射される。

 

ケータイの通話は耳……こめかみ付近に押し当てて行う。こめかみ付近には記憶を蓄積する場所である海馬傍回がある。そこに放射することで過去の自分に記憶を転送できる、という仕組みだ。

 

「それで未来の記憶を思い出せるん?そんなうまくいくん?」

 

「いや、もちろんそれだけでは思い出せない。神経パルスが追加されるだけだ。それを自分の記憶として思い出すことは出来ない。だからデータの転送とともに、別のパルスを添付するんだ。それによって追加された記憶を思い出すことが出来る。その名前はトップダウン記憶検索信号。それを出すように刺激してやる事で、過去の自分に未来の記憶を上書きできる、というわけだ」

 

「なるほど……」

 

あまり理解が追い付いていない、という顔だ。俺だってそうだ。偉そうに語ったものの、所詮は紅莉栖の受け売り。α世界線では紅莉栖とダルが開発しているのを見ているだけだったからな。

 

「大部分はお前に任せてしまうことになるだろうが……」

 

「オカリン、機械とか分からんもんね」

 

「……そうだな」

 

ダルが異常にハイスペックなのだ。ダルを基準にすれば誰だって素人だと言えるだろう。

 

「長くなったが、お前にはタイムリープマシンの開発に取り組んでもらいたい。並行してSERNへのハッキングをしてもらうことになるが」

 

ハッキング自体は完了しているが、LHCを使えるようにしてもらわなければならない。

 

「任せてくれておk。ま、ボクもあの子のために出来ることはやらんとな」

 

「………」

 

鈴羽はダルに受け入れてもらえるか、とても心配していた。本人の前では絶対に口にしないだろうが。

 

「ダル。出来ればだが、あいつのことは名前で呼んでやれ」

 

「え?」

 

「いきなり自分の娘だと受け入れるのは難しいかもしれんが……」

 

かがりを見ていると、鈴羽が少し不憫に思えて仕方ない。まゆりは順応するのが早い。母親としての自覚はないとしても、かがりのことをしっかりと受け入れている。鈴羽は俺と2人で話しておきたいとは言っていたが、強がっている面があるのは間違いない。

 

「オカリンはさ、α世界線のときからあの子を知ってるんだよね?」

 

「ああ」

 

α世界線ではダルが鈴羽の父親だと判明したのは後になってからだった。それに、最終的にはその再会も、Dメールを打ち消したことでなかったことになってしまったが。

 

「なんていうかさ。自分の娘にこんなことさせるのが辛いって言うかさ……」

 

「ダル……」

 

「あの子の話だと、2036年はめちゃくちゃじゃん?あの子が生まれるってことは、ボクにもお嫁さんが出来るわけで。その人だって巻き込んじゃうってことだろ?そう思うとさ……」

 

鈴羽の人生が、幸せなものだとは口が裂けても言えない。まだ見ぬダルの奥さんも、俺たちのせいで巻き込んでしまうことになる。シュタインズゲートに辿り着くためと言えば聞こえはいいが、そんなものは言い訳に過ぎない。

 

「……ごめん。こんな話をするつもりじゃなかったんだけどさ。そうならないためにも、ボクが頑張らなきゃって話なわけで」

 

ダルはダルなりにこの状況を受け入れようとしてくれているようだ。いつもふざけているダルが、こんな真面目な表情をするのは珍しい。

 

「……頼りにしているぞ。頼れる右腕(マイ・フェイバリット・ライトアーム)よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜 帰路

 

 

「かがりちゃん、大丈夫かなぁ」

 

ダルと話した後、全員でファミレスへ行って夕食を取り、そこで解散となった。俺は知らなかったのだが、昨日、まゆりはラボに泊まっていたらしい。かがりが離してくれなかったようだ。連泊するわけにもいかず、かがりが鈴羽に怒られたのもあって、まゆりは今日は自宅へ帰ることになった。

 

ダルはラボに泊まるらしく、俺はまゆりとともに帰路に付いたのだが。

 

「まゆりにべったりだな、かがりは」

 

「うん。まゆしぃがお母さんなんて変な感じだけど、まゆしぃのこと、あんなにも好きだって言ってくれるのは嬉しいよぉ」

 

あっさりと受け入れられているまゆりはすごいな。俺は事情を知っているからあまり驚かなかったが。

 

「……大丈夫か?」

 

急に環境が変わってしまった事が、だ。第三次世界大戦やタイムトラベラー、そして未来の自分の娘まで現れたとあっては、普通なら困惑する。まゆりは何にでもすぐに順応する方だが。

 

「うん。大丈夫だよ。それよりもごめんね?」

 

「ん?何のことだ?」

 

「オカリン、ずっと苦しんでたんだよね。それなのに、まゆしぃは何も気づいてあげられなくて」

 

「まゆり……」

 

まゆりは辛そうな顔をする。

 

「お前が謝るようなことじゃないだろ?」

 

「でも……」

 

こんな顔をさせるためにβ世界線に戻って来たわけじゃない。まゆりにこんな顔をさせてしまっては、俺が紅莉栖に怒られてしまう。

 

「俺はもう大丈夫だ。お前のおかげで俺は立ち直れたからな。紅莉栖のことは絶対に諦めないと誓った。この俺が諦めないという事は、必ず救えるということだ」

 

まゆりには、α世界線のことはぼかして話してある。まゆりを守るためにα世界線を脱出してきたことは伝えていない。こいつは優しいからな。全て抱え込んで自分を責めるだろう。

 

「だからお前はかがりのことを考えてやってくれればいい。あいつにはお前が必要だからな」

 

「……うん」

 

多少は伝わったらしい。何度も頷いてくれた。

 

「そういえば、あるふぁ世界?だとかがりちゃんはどうだったの?オカリンは会ったことあるの?」

 

「いや、会った事はない。というより、そもそもかがりのことは知らなかったからな」

 

「え?そうなの?」

 

α世界線の未来はSERNが支配するディストピア。およそ個人の喧嘩レベルの争いさえない世界だったらしい。第三次世界大戦など起こらない、見かけ上は平和な世界。αの鈴羽からそんな名前を聞いた事はなかった。戦争のない世界では、戦災孤児であるかがりとは出会うことはないのだろう。どちらにせよ、俺は2025年で死んでいたようだから、会うことはなかっただろうが。

 

「ああ。だからかがりが出てきたときは驚いたよ。ま、俺のことをおじさんと呼ぶのは気に入らないが」

 

「えへへ~。まっどさいえんてぃすとさんがおじさんなんて笑っちゃうよね」

 

「ふ。全くだ」

 

鈴羽もかがりも、ラボメンになったからには鳳凰院凶真の偉大さを知らしめてやらねばなるまい。間の抜けた呼び方はいずれ矯正させ、我が真名で呼ばせてやるつもりだ。

 

「でも、ダルくんとスズさんはあんまりうまくいってなさそうなのです」

 

「それは……」

 

あれが普通だというのは、まゆりに言っても仕方ないかもしれない。こいつは人との距離感が異常に近いからな。誰とでもすぐに仲良くなれる才能……こいつは間違いなく陽キャだ。まぁ、趣味は残念だが。

 

もしかすると、同級生の男どもは、こいつの距離感にドギマギしているかもしれない。……ルカ子に一度確かめておくべきかもしれんな。

 

「まゆりがサポートしてやってくれ。鈴羽はまゆりには懐いているようだしな」

 

「そうかな~?でもやっぱり、まゆしぃより年上なのに、ねえさんって呼ばれるのは変な感じだなぁ」

 

父親の友人だからオカリンおじさん。それなら、かがりの母親であるまゆりのこともおばさんでいいはず。……まぁ、俺と鈴羽の予想では、未来のまゆりは実年齢よりもずっと若かったはずだから、ねえさんと呼ぶのも当然かもしれないが。

 

「その割には嬉しそうだな」

 

「あ、分かる~?まゆしぃ一人っ子だったから、妹ができたみたいで嬉しいんだぁ。この年でママにもなっちゃったし」

 

「…………重荷、じゃないか?」

 

「え?」

 

空元気、というわけではない。無理やり笑顔を張り付けているというわけでもない。ただ、どこか無理をしているような気がした。

 

「前にお前は、重荷にはなりたくないと言っただろ?それは俺も同じだ。それなのに結局俺はお前に甘えて……」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

「まゆり……」

 

「うん。昨日からいろんなことがあって、ちょっとびっくりしちゃったけど、まゆしぃは無理してないよ。強がりじゃなくて……。重荷だなんて思ってないよ」

 

「そう、か…」

 

「大丈夫だよ。オカリンが、紅莉栖さんのこと諦めないって、諦めたくないって思えるようになって、まゆしぃは嬉しいんだぁ。だから、まゆしぃも頑張りたい。それだけじゃなくて、かがりちゃんとかスズさんとか。みんなが悲しまなくていいようにしてあげたいの。だから……」

 

 

 

 

「まゆり。……これからも頼む」

 

「うん!」

 

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