STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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「………成功だ……」

 

 

だが、まだ俺は上書きされない。

 

それはそうだ。これからほんの少しの時間を確保するために可能な限りタイムリープを前倒しにしたのだ。

 

「ママとおねーちゃんに、会いたいよ…。会えるかな……?」

 

「会えるさ。いつか」

 

「……うん」

 

 

 

先程聞こえたヘリの音が徐々に近づいてくる。

 

結局、全人類を巻き込んだ戦争はこの場所から始まる。そのように収束するのは避けられない。だが、俺たちはそれを乗り越える光を掴んだのだ。

 

「さて、かがり。お前に話がある」

 

「私に……?」

 

「俺は48時間後からタイムリープしてきたからな」

 

「え?電話レンジちゃんを使ったの?」

 

この呼び方がどうにもまゆりの娘だ。

 

「混乱するだろうが聞いてくれ。今から数分後に、俺は別世界線の俺によって上書きされる」

 

「……リーディングシュタイナー?」

 

理解が早くて助かる。

 

「今俺たちがいる世界線がアクティブになるんだ」

 

「おじさんがおじさんじゃなくなるってこと?」

 

「端から見るとそうかもしれないな。おそらく、上書きされる俺は、この世界線の事情を何も知らない」

 

置かれていた状況は異なるだろう。鳳凰院凶真が諦めてしまっていた世界線では、何がどうなっているのかは分からない。想像以上に違っているはずだ。

 

「ラボメンナンバー010、椎名かがり。お前には重要な任務を与える」

 

「ふぁい!」

 

「リーディングシュタイナーで移動して来て、混乱している俺をラボへと導け。もうじきにこの場所は戦場となる。お前の戦闘能力は知っている。おそらく、ラボにおいて鈴羽に次いでお前が最強だ。俺なんかよりずっと役に立つ」

 

タイムリープ前にはレスキネンの部隊を相手取って善戦したようだしな。

 

「お前がいなければ俺はラボへと帰還することは出来ないだろう。いいな?」

 

「おじさんは……大丈夫なの?」

 

上書きされて消えてしまう俺を心配しているのだろう。

 

「俺に関しては問題ない。ダルと真帆には話を通してある。あいつらなら事情を分かってくれる」

 

「分かった。私、しっかりやるよ」

 

「ああ。頼んだぞ」

 

別の世界線の俺は、今頃鈴羽とまゆりを送り出している頃だろうか。

 

かつて鈴羽とアークライトについて議論していた時、俺たちは世界線をABCの三つに分けた。

 

Aの世界線ではアークライト自体が発案されず、2025年にその旨をまとめたDメールが送信される。そしてBの世界線ではそのDメールを受信し、2人を過去へと送り出すことになる。そして俺が今いるCの世界線において、鳳凰院凶真は一度も諦める事なく戦い続ける。

 

だが、世界線がBからCへと変動するには、Bにおいて2人過去に送り出すだけでは足りない。鳳凰院凶真の生死など、所詮は内面の話。物理的な影響を及ぼす事象たり得ないからだ。だから、Bでは鳳凰院凶真が復活したことを世に知らしめる何かが必要となる。

 

それは何か。

 

それは、鳳凰院凶真が復活したと宣言することだ。

 

Bでは俺たちのように、タイムリープマシンを事前に完成させられていないだろう。おそらく、2人の乗ったタイムマシンが破壊された後、急いでタイムリープマシンを作り上げたはずだ。だからタイムリープで遡るタイミングはもう少し遅くなるはず。

 

俺はレスキネンがラジ館に到達する前に2人を送り出すことが出来たが、Bでは難しいだろう。今ごろ、2人を送り出した後にレスキネンに取り囲まれているはずだ。

 

 

「レスキネンを前にして、鳳凰院凶真の復活宣言か……」

 

「おじさん?」

 

それはさぞ気持ちいいだろう。

 

絶望し、諦めてしまっていた俺が、暗躍するレスキネンの前で諦めないと宣言する。俺の事だ、どうせ考えられない程に煽り倒すのだろう。俺もその場を見ていたかった。

 

「ああ。問題ない。……そろそろだ。かがりよ、頼んだぞ」

 

見られないのは残念だが、そろそろ潮時だ。これでシュタインズゲートに近づけるのなら構わない。

 

「健闘を祈る。エル・プサイ・コングルゥ」

 

辞世の句はこれでいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

「聞かせてくれ、リンターロ。タイムマシンはどこに?」

 

俺はかがりを地面に寝かせ、ゆっくりと立ち上がった。

 

足の傷からの血は止まらない。痛みだってひどくなっている。

 

それでも、しっかりと2本の足で地面を踏みしめた。

 

 

銃を突きつけている迷彩服の男たちを前にして。

 

戦闘ヘリのロケットランチャーを前にして。

 

“教授”を前にして。これから始まる戦争を前にして。

 

 

 

俺はあの声音で思い切り嗤った。

 

 

 

「フ、フフ、フフフ、フゥーハハハハハ!よく聞け、まぬけどもめ!貴様らが手に入れようとしたタイムマシンはもうここにはない!この時代には、もう存在しないのだ!残念だったな!せいぜい悔しがるがいい!そして恐れるがいい!」

 

 

 

 

 

あの日から一年。それでもなお、果敢に運命に立ち向かう鳳凰院凶真の姿。

 

それをこの残酷な世界に知らしめてやること。

 

それこそがシュタインズゲートに到達するための第一歩。

 

世界を変革するためのエンターキー!

 

 

 

 

 

「この鳳凰院凶真は、貴様らにも、運命にも、負けることはない!俺は、必ず、シュタインズゲートを見つけてみせる!」

 

 

そうだとも。ここから先はシュタインズゲートへ到達するための、長い長いエピグラフ。狂気とは、何度も同じことを繰り返しながら、違う結果を期待する事である。

 

かつて、アインシュタインは人間の愚かさを嘆き、そう言った。

 

だが、俺は今、喜んでその狂気と愚かさに身を委ねよう。あらゆる執念をもって、神の摂理など及ばない、たったひとつの違う結果を、追い求めよう。

 

 

 

 

 

「それが!この俺の!選択だ!!」

 

 

 

 

景色が歪む。何度も何度も経験した、世界線が変わるこの瞬間。

 

 

見たか世界。

 

俺は決して諦めない。

 

いかなる困難が押し寄せようとも俺は怯まない。

 

いかに困難な道であったとしても、最後の瞬間までもがき続けてやる。

 

待っていろ。紅莉栖。

 

俺が必ずお前を助けてやる。

 

そしてまゆりと鈴羽よ。お前たちも必ず迎えに行くからな。

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

ラボ

 

 

「フゥーハッハッハ!鳳凰院凶真が帰還したぞ!」

 

高らかに宣言をして、俺はラボへと帰還した。

 

リーディングシュタイナーで移動してきた俺は、全く状況を理解出来ていなかったのだが、かがり(小)が誘導してくれたおかげ無事にラボに戻って来ることが出来た。

 

 

 

それからダルと真帆にあれこれと説明を受けた。

 

「具体的なことはこれから決めるとしてさ、オカリン。今は祝杯をあげようぜ」

 

「……ああ。そうだな」

 

「おかえり、鳳凰院凶真」

 

まさかダルにその名で呼ばれるとは思いもしなかったな。

 

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