STEINS; GATE ~存在証明のレジスタンス~   作:明治アル蜜柑

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数日後

 

あれから秋葉原の街は厳戒態勢のままだった。目的であるタイムマシンが手に入らなかったこともあり、派手な戦闘が行われるということはなかったが、気軽に出歩くことが出来る状況ではなかった。

 

幸いにも、俺たちのことが露見し、ラボが狙われることもなかった。悠長に構えているわけにはいかないだろうが、まだ多少の余裕はある。

 

俺たちはタイムマシンの研究に打ち込めるよう、地下に潜る事を決めた。気楽な大学生活とはお別れだ。明日にはもう行動に移す。今日は最後の団欒とでも言うべき日だった。

 

「オカリン。どうしたん?」

 

俺は屋上に出てぼんやりと景色を眺めていた。

 

「これで見納めになると思うとな。しっかりと目に焼き付けておきたくなったんだ」

 

「黄昏るとかおまいは詩人かっつの。準備があるんだから手伝えコノヤロー」

 

そう言いつつも、ダルは欄干に手をかけ俺の横に並ぶ。

 

「……気にしてるん?」

 

「あ、いや……。まぁな」

 

俺の心を見抜くとはさすがダルだ。隠し事は出来ないな。

 

「上書きされてしまった俺のことを思うとどうしてもな……。何も知らない俺がいる意味を考えてしまう」

 

別に後悔があるわけでも落ち込んでいるわけでもない。これまでだってそうしてきたし、これからも俺は戦い続けるつもりだ。だが。

 

「俺の知る世界線とあまりにも状況が違い過ぎる」

 

先日までいた世界線よりも、今いるこの世界線の方がずっといい。シュタインズゲートに一歩でも近づいているわけだしな。

 

「やっぱ、かがりたんのこと?」

 

「ああ」

 

かがりに関しても、この世界線のかがりは幸せそうだ。……幸せ、というのは不謹慎かもしれん。母親との辛い別れを経験したばかりなのだから。

 

「そっちだと、かがりたんって大人だったんだよね?」

 

「そうだな。1998年で鈴羽と別れて以来、この時代に留まり続けたから……23歳ということになるな」

 

未来でレスキネンに洗脳され、阿万音由季に成り代わり、ダルへの気持を俺に打ち明け、死んだ。

 

『オペレーション・アークライト』によって、かがりが洗脳されることのない世界線がアクティブになったのだ。それはとても喜ばしい事だが、やはりやりきれない思いがある。

 

リーディングシュタイナーはシュタインズゲートを目指すために必要不可欠な能力だが、万能ではない。あったはずの未来をなかったことにする。その選択を俺に強いる残酷な能力だ。

 

かがりが辿った運命は、ダルには話してある。ダルはしっかりと受け止めていた。

 

「……オカリンにばっかり辛い思いさせてるな。ボクらもちょっとでも背負えればいいんだけどさ」

 

「すまん。そんなことを言わせたいわけじゃなかったんだが」

 

この世界線のダルたちは、俺以上に詳しい事情を知っている。去年の8月21日。紅莉栖の救出に失敗した後も、俺が絶望することなく立ち上がったのだ。俺がいた世界線とは全くことなる一年を過ごしたのだろう。ある程度は聞いているが、重要なのはそこではなく、俺たちの気持ちの問題だ。

 

俺はこの一年間、出来る限り世界線を変えないように行動してきた。未来を知る俺が行動を起こせば、世界線は容易く変動する。それを避けるためにおとなしくしていた。だが、この世界線では違う。

 

レスキネンを積極的に疑い、リスクを取ってでも戦ってきたのだ。

 

「オカリン。それ以上考えるのはなし。この話はもう、オカリンととっくにしてあるのだぜ」

 

「……俺と?」

 

「この一年、オカリンは自分が上書きされることをずっと気にしてた。ボクらもずっと、変動する前の世界線について考えたんだ。かがりたんが大人になってたなんて想像もしてなかったけど、ある程度は予想して、それに備えてたんだよ」

 

だからオペレーション・アークライトにもすんなりと対応することが出来ていた、というわけだ。

 

「俺は上書きされることを恐れてはいなかったのか?」

 

「当り前じゃん。狂喜のマッドサイエンティストだぜ?そんなことを気にするわけないっしょ!だからいつまでもうじうじ悩んでる場合じゃないんだっつーの。しっかりしてくれよ、オカリンがこのラボの所長なのだぜ」

 

「ふ……ああ。任せておけ」

 

俺の気持ち一つでここまで大きく世界が変わる。それなのに、俺はどうして一年もうじうじと悩んでいたのか。諦めてしまった自分を殺してやりたくなる。結局、皆に甘えてしまっていたのだ。

 

「さしあたってはまゆりと鈴羽を迎えに行くことからだな」

 

まゆりはどの世界線でも変わらないだろう。どこにいてもあいつは未来を見据えて、そのために俺を叱咤してくれる。鈴羽はどうだろうか。この世界線の鈴羽は、俺の知る鈴羽とは違っているはずだ。鈴羽が問題なのではなく、俺の方だが。

 

俺が諦めてしまっていたことで、俺と鈴羽の関係は険悪だった。だが、この世界線では俺との関係も良好だったようだ。鈴羽を悲しませるようなこともなかったらしい。それだけでも、俺にとっては救いだ。俺のせいで、あいつには何度も苦しい思いをさせてしまったから。

 

「まだタイムマシンすら完成してないわけだが……」

 

そう言えば、ダルはまだ由季さんとは出会っていないらしい。かがりの言では、出会うのは3年後らしいからな。今はヨーロッパに留学している頃だろうか。

 

「その前に、お前は嫁を見つけないとな」

 

「ちょ、それオカリンが言う?もしかしてオカリンってボクのお嫁さんのこと知ってるん?」

 

「ふ。それは秘密だ。ただ、出会うのはもう少し先だという事だけは教えておく」

 

前もって知っていれば、ダルは間違いなく緊張してしまうだろうからな。気負い過ぎてしまっては世界線の収束であっても失敗しかねない。ダルだとなおのことな。

 

「ダル。これからもたくさん面倒をかけるが、俺について来てくれるか?」

 

「はぁ?何クサいこと言ってんだっての。当たり前っしょ。頼りにしてるのだぜ、鳳凰院凶真」

 

もう一度俺は景色に目を向ける。

 

相変わらず混乱している。だが、これでさえも嵐の前の静けさというやつだ。これからより一層、いや、取り返しのつかない戦争が起る。

 

だが、必ず俺たちがそんな未来を打ち砕いてみせる。

 

待っていろ、世界。そして、待っていろ、紅莉栖。

 

必ず救ってみせる。

 

 

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