キヴォトス、先生大量発生中!?   作:ユメ先生

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お気に入り500人突破のお礼を言おうと思ったら、600人超えてました。何を言って(以下略
仕事なんて俗世のしがらみが無ければ昨日も更新したのに!!

皆さんの感想や高評価、感謝感激です。
まさかネタ枠だったアリウスの先生があんなに反響があるとは思いませんでした。

今回はワンクッション置くと言いましたが、SRTの先生の続きをやります。



SRTの先生:自分達の正義

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

 D.U.シラトリ区、子ウサギ公園。

 RABBIT小隊の起こしたデモ活動、それが無事鎮圧したその直後だった。

 

「カンナ局長!!」

 

 クロノスジャーナリズムスクールの生徒が、カンナを直撃した。

 

「RABBIT小隊の主張は、SRT学園の職員に過ぎない先生が、越権行為を行い、独自に部隊を運用していたと言うのは事実ですか!!」

「……現在、事実を確認中だ」

「すぐに答えられないと言うことは、隠蔽すると言うことですか!!」

「SRTの活動は全て極秘だ、私から話せることはない」

 

 シノンのしつこい追及に、カンナはうんざりしたようにそう言った。

 

「怯むな、シノンちゃん!!」

「先生!!」

 

 報道用のカメラの後ろで彼女らを見守っていた彼女達の先生が、声を上げる。

 

「報道とは、権力を監視する第四の権力!!

 我々メディアは権力を持つ者として、正しい報道をする義務があるわ!!」

 

 ハンチング帽を被った見るからに記者と言った格好の若い女先生が自分の生徒達を援護射撃する。

 

「はい、勿論です!!

 市民は説明を求めています!! どうなんですか、カンナ局長!! 防衛室もグルなんですか!!」

「……」

 

 カンナは思った。クロノスの連中はあの先生が来てからより一層うるさくなったな、と。

 カンナが騒ぎたいだけと思っているクロノスの生徒に、大人の視点から突かれると痛いところを教える姿はまさに彼女達の先生である。

 

「私に彼女らの現状を把握できる権限はありません。行政委員会の正式な回答を待ってください」

「まあ、ここが引き際でしょうね。派手な絵は取れたし、この場はこんなもんでしょう」

「そうですね、先生!! ここは行政委員会の正式発表を待ちましょう」

 

 マイとクロノスの先生はそんなことを話していると。

 

「“ッ、あなたはッ!?”」

 

 シャーレの先生が、野次馬の中を進む人物に気づいた。

 

「皆さん!!」

 

 拘束されているRABBIT小隊の面々が唖然となった。

 

「私が件の、SRTの先生です!!」

 

 軍服を纏った狼マスクの男が、カメラの前に堂々と現れたのである。

 

「あそこのいる我が生徒達の主張は、全て真実であります!!」

 

 そして、そう大声で話したのである。

 

「こ、これは、予想外の展開になりました!!

 RABBIT小隊の主張していた、職権乱用と越権行為をした張本人が姿を現し、彼女らの主張を認めたのです!!」

 

 とんでもない展開になったと、シノンは熱を込めて実況をする。

 

「SRTの先生!! なぜですか、なぜ越権行為と知りながら、それを行ったのですか!!」

「それは勿論、SRT特殊学園の廃校が行政委員会にて論ぜられていたからです」

 

 カンナは、絶句してそのやり取りを見ていた。

 

「私は憂いていたのです!! 私の生徒達が、行政委員会によって危険視され、誰も責任を取ろうとしないその態度に怒りを覚えました!!

 だから証明するほか無かったのです、SRTは連邦生徒会の矛であり盾であると!! たとえそれを成して、非難を受けようとも!!

 そう、全ては命令をした、私の責任なのです!!」

 

 やられた、とカンナは思った。

 彼は情報戦、対メディア戦略もプロだったのだ。

 

「私は責任を取って、SRTの先生の座を降りましょう!!

 ですが皆さん、よく考えてください!!

 キヴォトスに仇成す脅威が現れた時、真っ先に戦うのは誰なのか!!

 ゲヘナの風紀委員会ですか? トリニティの正義実現委員会でしょうか!?

 目の前に殺人鬼が現れたら、他所の自治区へ助けてと叫び、おっとり刀で駆けつけるのを待つのでしょうか!!」

 

 彼はメディアへ訴えた。

 

「彼女らが他の自治区へと戦力を移動する申請をしている間に、あなた達の目の前に現れた敵は、あなた達の家や家族、友人を攻撃し、悠々と逃げ去って行くのです!!

 私がテロリストならば、キヴォトスの方々のような頑丈な人達よりも、その生活基盤やインフラなどを重点的に攻撃するでしょう!!

 貴方方がいくら銃弾に耐えられても、飢えや寒さに耐えられますか!?

 住む家が壊れて、職場が破壊され、誰がそれを補償してくれるのですか!!」

 

 彼は不安を市民に与えたいのではない。

 安全保障とは、市民が危機感を共有して初めて為されるのを理解しているからだ。

 

「キヴォトスの皆さん、今一度よく考えてください!!

 他人事だと思わないでください!! テロリストは、油断したあなた達を狙うのですから!!

 ……以上です」

「あ、ありがとうございました」

 

 目一杯演説を終えると、SRTの先生はすたすたと去って行く。

 

「教官ッ、わ、私達を、利用したんですか!!」

 

 そこでようやく、ミヤコは気づいた。

 この騒ぎに、彼はこれ幸いと乗っかったのだと。

 

「また後で話そう、シャーレの先生」

「“……わかりました”」

 

 シャーレの先生は、SRTの先生に頷き返した。

 

 

 

 

 その日の午後、RABBIT小隊の取り調べを終えた先生は、ヴァルキューレの公安局にて待ち人を待った。

 

「待たせたな、シャーレの先生」

 

 SRTの先生が、公安局に出頭したのだ。

 

「あいつらを尋問したんだって? ミヤコの奴、面白いことを言っていたな。正義がどうとか、俺も若い頃を思い出す」

 

 シャーレの先生は思った。監視していたな、と。

 

「……なぜあの子たちにあんなことをさせたんです?」

 

 言いたいことを飲み込んで、カンナが問う。

 

「おや、俺はあいつらに命令する権限なんて無い筈だぞ。

 知っているくせに、下らない質問をするなよ。カンナちゃん」

「(子ども扱い、か)」

 

 仮にも警察学校で公安の長を担う生徒を、小娘扱い。

 彼は彼女を相手に等していない。

 

「それは私も聞かせて欲しいところですね」

 

 すると、公安局のオフィスから入り口からそんな声がした。

 

「カヤ室長……」

 

 カンナは自分の上司の登場に、顔を顰めた。

 

「“君は?”」

「ああ、失礼しました。シャーレの先生。私は行政委員会において、防衛室の室長を務めています。

 不知火カヤと申します」

 

 彼女はそう名乗った。

 

「SRTの先生。貴方の越権行為、その報告はこちらに一方的に送られていました。

 それに、今回のRABBIT小隊の騒動。何が目的なのか、教えてくれませんか?」

「あの子ウサギたちの行動は、あいつらの判断だ。知ってるだろう?」

 

 狼マスクで隠された彼の表情は、笑っているように思える。

 

「貴方も分かっているのでしょう?

 SRTは責任者不在で危険視されていると。それを増長させてどうするのですか」

「あんたこそ、キヴォトスの安全保障を担っている立場なら分かっているだろう。

 キヴォトスの連中は危機感が足らない。安全保障は皆が意識しなければ、人々が関心を持たねば意味がない」

「それは理解できます。ですが、市民を悪戯に煽るのは感心できませんね」

 

 二人の会話に、カンナが割って入った。

 

「それ以前に、SRTを危険視するだぁ?

 カヤ室長、あんたそれ本気で言ってるのか?」

「私は勿論、彼女らの存続を訴えている立場ですよ?」

「当然だ」

 

 彼は頷いた。

 

「結局のところ、国家の主権とは暴力に依存している。

 どれだけ非暴力を訴えたところで、戦えば勝てるって思われた時点でアウトなんだよ。

 うちの世界じゃ、数日で勝てるってイキったぷー太郎が戦争しかけて、何年もずるずると自分の面子の為に国民の生活を犠牲にしてやがる。

 戦争ってのは起こった時点で政治の失策なんだ。

 キヴォトスで数少ない職業軍人の生徒を手放すなんざ、正気とは思えない」

「だから、SRTの存続を訴えている、と。

 だとしたらなぜ、連邦生徒会長しか命令権を持たないSRTの部隊を動かしたのです。結局それはあなた達の危険性を浮き彫りにするだけでしょう?

 彼女らの功績は既に、十分知れ渡っている」

「……本気で分からないのか、カヤちゃん?」

 

 小娘扱いされてカヤは内心イラっとしたが、平常心を保った。

 

「もしかしてお前達は、自分達が選ぶ立場だと思ってるのか?」

「どういう意味ですか?」

「逆に考えろよ。逆に考えるんだ。SRTなんて、廃校にしちゃってもいいさ、ってな」

 

 マスクの下で、彼は笑った。

 

「“それって、どういうことのなの?”」

「……まさかッ」

「そうだ。あいつらの価値は、あいつら自身だ。SRTの最新の装備やら何やらじゃない。

 SRTという学校があいつらの足かせになるってなら、俺がそれをぶっ壊してやる」

 

 カヤも、カンナも、戦慄した。

 学校と言う制度、それに縛られている生徒達のくびきを、価値観を、彼は壊そうとしているのだ。

 

「お前らがすべき論争の正解は、SRTの廃校なんてノー天気な論争じゃねぇ。

 SRTをいかに自分達に都合よく使えるようにするか、だった」

 

 それをするのが政治家だ、と彼は言った。

 

「でもお前達はそれを理解していなかった。

 SRTを行政委員会の、連邦生徒会の主権そのものとするなら、俺達も何もしなかった。ただ訓練に明け暮れ、その来る日を待つだけだった。

 それなのにお前らは、SRTと言う鎖であいつらを繋いだまま、壊死させるのを待っていた。

 俺がそんなこと、俺の可愛い生徒達にそんなこと、許す訳ねぇだろ」

 

 彼は、怒っていたのだ。

 自分達の愛娘に等しい生徒達を蔑ろにする政府に。

 

「学籍の抹消でも何でもすればいい。

 あいつらはどこの学校だろうと、もろ手を挙げて歓迎されるだろう。

 お前達に選ばせるよりはずっとマシだ。これがプランA」

 

 彼は人指し指を立てる。

 

「プランB、こいつが本命だが。俺が起業し、あいつらを社員として雇う。俺達は自由傭兵として、政府ではなく自分たちで正義を選び、自分達の為に戦う」

 

 彼はこう言っている。自分達をいくらで買うのか、と目の前の二人に、いや三人に売り込んでいる。

 

「どうだ、シャーレの先生。俺の進路指導は」

「“SRTの先生。それは彼女達が望んだことなの?”」

「先生。ミヤコの甘ったれた正義談義を聞いてなかったのか?」

 

 SRTの先生は、若き先生に問う。

 

「重要なのは、自分達の意思で戦うことだ。

 誰かの意思で生殺与奪を握られ、正義を歪められ、政治の都合で無力を味わう。そんなこと、あっていい筈がないだろうが!!

 お前らは政治の都合で、テロの被害に遭った人々に、次は頑張りますんで今回は残念でしたねって言うのかよ!!」

「“SRTの先生……”」

「あいつらは市民の人命と財産の為に戦う軍人だ。

 その誇りを穢す奴は俺が赦さねぇ!!」

 

 狼の顔が吠える。

 誇り高き、人民の騎士がそこに居た。

 

「じゃあ先生、プランCだ」

「ッ」

 

 彼は、シャーレの先生を見て、こう言った。

 

「SRTを廃校にするもしないもどちらでもいい。

 だがその指揮権は、シャーレの先生。あんたが担え」

「“……私が?”」

「お前、まだ気づいてなかったのか?」

 

 SRTの先生は、心底溜息を吐いた。

 

「お前らはなぜ、連邦生徒会長はSRTを作ったと思う?」

「……それは、各学園の自治権の制限に縛られずに、事件の解決をする特殊部隊を設立し運用する為で──」

「そんなの建前だ」

 

 定型文のようにSRTの理念を語るカヤを、SRTの先生は切って捨てた。

 

「シャーレの先生。あんたの為だよ」

「“……まさか、そんな”」

「いえ、言われてみれば、つじつまが合います」

 

 困惑するシャーレの先生に、カンナが言った。

 

「連邦生徒会長が失踪し、その後にシャーレの先生、貴方が現れた。

 しかも、貴方の所属する連邦捜査部は超法規的な権限を有しています。

 これを、連邦生徒会長が自らを失踪する前提で組み立てた場合、パズルのピースがぴったりと噛み合う」

「連邦生徒会長のみが命令できるSRT、如何なる学園の生徒も部員として運用できる連邦捜査部……まさか本当に、SRTは最初から先生が運用することを前提に作られていたと?」

 

 カヤも顎に手を当てて、考えを巡らせながらそう呟く。

 

「権力やら住居やら、連邦生徒会長ってのがどんな貢ぎマゾかは知らねぇが、戦力もあんたの為に用意しておいてもおかしくはないだろ」

「いや、言い方……」

「“……でも、私はシャーレを武力を前提とした組織にはしたくはないよ”」

 

 シャーレの先生は、自らを生徒達の先生として位置付けている。

 

「“生徒達と接しているうちに結果として戦いに発展するのと、武力を背景に生徒と接するのはまるで違うよ”」

 

 彼は信念をもって、そう己の感情を言葉にした。

 生徒を武力と言う前提で手元に置くのは、彼にとって違うのだ。

 

「そうだな。俺がお前の立場だったら、もっと生徒どもをシャーレのオフィスビルに常駐させる。

 だがお前はそうはしなかった。お前のその姿勢を、他の先生達も理解している。勿論、俺もだ」

 

 SRTの先生からすれば、それは自分の受け持つ生徒達を放棄すると言われたにも等しかった。

 だが、彼は穏やかな表情でそれを受け入れた。

 

「だから俺はプランBで行こうと考えている。

 SRT特殊学園も、今日で終わりだ」

「……少しだけ、時間を頂けませんか」

 

 カヤは少し考えてからこう言った。

 

「リン主席行政官は、夏頃までに状況が動かねば、行政委員会内から連邦生徒会長の役職を選出するつもりのようです」

「だからどうした。お前達の勝手にすればいいだろ」

「いえ、この期に及んで引き留めはしませんよ。

 ですが学籍は残しておいても良いでしょう? 廃校の回避だけは、私の方で根回しを行い、何とかして見せます」

「なるほど、あんたは話が分かるようだ」

 

 SRTの先生としても、別に自分の生徒達の学籍を捨てさせたいわけではないのだ。

 学籍は生徒達の人権そのもの。無いとその行動に大きな制限が掛かるのは違いないのだから。

 

「私とて、SRTの生徒達に関しては憂慮していたのです。最初からそう言っていたでしょう?

 貴方の意見を交渉材料にすれば、他の行政官も考えを改めてくれるでしょう」

 

 表情の読めない糸目の政治家は、そう言ってほほ笑んだ。

 

「ひとまず全員を休学中ということにしておいて、防衛室と業務上の提携を行うということで、とりあえず」

「じゃあ、こっちはうちの企業の顧問としてシャーレの先生を指名する。いざとなったら、彼にうちの社員を運営してもらう方向で」

「それがいいでしょう」

 

 SRTの部隊を誰も命令できないなら、全く同じ人員を別の組織に移動すれば良いじゃん、そんなアクロバットで二人は無理やりSRTを運用可能にしようとしている。

 

 そんな二人の会話に、シャーレの先生とカンナは割り込めなかった。

 二人共、連邦生徒会の下部組織の人間に過ぎない。物凄い癒着が目の前で行われているのに、何も言えなかったのである。世知辛い公務員たちである。

 

「シャーレの先生、これが大人のやり方だ。こういうやり方も覚えておけ」

「“正攻法でどうしようもないなら……”」

 

 ぽん、と肩を叩く年上の男に、シャーレの先生はいかんともしがたい表情で呟いたのだった。

 

 その後、しばらくSRTの先生はカヤと意見交換をしていた。

 

「ミレニアムには注目しておけ。

 あいつらは十年後、連邦生徒会の手に負えない勢力になっているだろう。

 あいつら、この間風力発電が止まっただの言って文句を言ってきたそうだが。本当に天才の集まりなんだろうか。

 俺だったらそれをリスクだと思う。行政システムを連邦生徒会に依存するのは。

 奴らが自分達だけで全てを賄い、一緒に連邦生徒会を抜ける人この指とまれってやっただけで、内乱か容認の二択を迫られる」

「確かに、彼女達にはそれを出来る能力がある……」

「キヴォトスのガキどもは学校と言う固定概念に縛られてる。

 それがこっちのルールなんだろうが、それを保ったままでやり方次第で色々できるはずだ。

 お前達はキヴォトス唯一の政府機関だと言う驕りを捨てるべきだろう」

 

 カヤはうんうんと何度も頷いて彼の言葉を聞き入れていた。

 シャーレの先生は政治に干渉するつもりはないので、カンナと一緒にRABBIT小隊の釈放の手続きをしていた。

 

 だから、SRTの先生がヴァルキューレのロビーに行くと、シャーレの先生とRABBIT小隊の面々に遭遇した。

 

「……教官、聞きました。本当に、SRTなんて要らないって言ったんですか」

「ミヤコ。お前は水中で自らを縛る鎖を、必要だと思うのか?」

「SRTはッ、決してぶれることの無い正義の象徴の筈です!!」

「ミヤコ」

 

 泣きそうになっている彼女に、彼女達の先生は言った。

 

「連邦生徒会長直属のSRTは、唯一無二の法によって運用される、絶対的な正義そのもの。お前はそう思うのだな」

「その通りです!!」

「ならなぜ、連邦生徒会長は居なくなった?」

「……それは」

「お前の言葉が正しいなら、連邦生徒会長が変わる度にその判断を委ねることになる。

 新しい連邦生徒会長が、政治に弱腰で適切にお前達を運用しようとしなかったらどうする?」

「……」

「絶対、正義。この世に存在しないものを、連続で使用した言葉に何の意味がある」

 

 彼は優しく、ミヤコに言った。

 

「俺もそうだった」

「え?」

「俺の祖国は世界一の大国で、世界の正義だと名乗っていた。

 だから紛争の武力介入などを度々していた。

 俺もそれが正義であると、戦いを早期に終わらせることこそが正義だと信じていた」

 

 ミヤコは、黙ってそれを聞いていた。他の小隊の面々も、シャーレの先生も。

 

「ある時、ゲリラを支援している村を攻撃しろと命令があった。

 奴らはゲリラを匿っている、と。お前より年下の女の子もそこにいた。

 ……俺達は忠実に任務を実行した」

「……」

「だがそれを、虐殺だとして国際的な非難を浴びた。

 国はッ、俺達の独断専行だと!! 汚名を着せた!!

 分かるか、ミヤコ。俺達の立場なんてそんなものなのだ。どれだけ血がにじむ訓練をしようと、どれだけ選ばれたエリートだろうと。

 ……国家にとっては替えが効く駒なのだ。それが現実なのだ。

 俺はお前に最後の、教官としての言葉を送ろう」

 

 彼は涙を流しながら、ミヤコ達にこう言った。

 

「自分の正義すら決められない者など、ブタ以下だ!!

 二度とッ、俺達の前に顔を見せるな、この薄汚い裏切り者どもが!!」

 

 返事は無かった。

 それが別れの言葉だった。自分と言う鎖から解き放つ為の言葉だった。

 

「……シャーレの先生。俺の生徒(むすめ)達を頼みます」

「“……はい、任せてください”」

 

 SRTの先生は去って行った。

 迎えに来ていたFOX小隊の面々が、ミヤコ達を一度だけ見て、何も言わずに去って行った。

 

「う、ううッ、ううううッ、ああああッ」

 

 膝をついて涙を流すミヤコを、仲間たちが何も言わずに肩を寄せ合った。

 多くの家族を失った。それでも、彼女達の未来は明るいと、シャーレの先生は思った。

 

 彼女達の絆が本物なら、これが今生の別れでは無い筈なのだから。

 そして、自分達の正義を貫く先に、必ずお互いの道は交わっている筈だと、彼は思った。

 

 ただ、思春期の四人にこっぴどく拒絶されるなんて、彼はほんの少しも思ってなかったのであった。

 むしろ手の掛かる生徒の方がやる気が出るシャーレの先生であった。

 

 

 

 





次回はアビドスの先生で、彼女の大学時代の話や、外の世界からみたキヴォトス、ゲマトリアの反応などを書く予定です。
先に状況の整理を終えた後、ミレニアムの先生の日常回をやります。

皆さんの高評価や感想で、この作品の更新速度が証明されます。かんぺき~♪

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