キヴォトス、先生大量発生中!?   作:ユメ先生

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機材がイカレて、年末全然更新できなかった……。くそう。
そして、年末のトリを飾るのはこの男!!




ゲマトリアの教授

 

 

 

 その日、ミレニアムのキャンパスにとある人物が足を踏み入れた。

 入り口の守衛からゲストのIDを受け取り、待っていると。

 

「やあ、教授」

 

 ミレニアムの先生が現れた。

 

「こんにちは、ミレニアムの先生。以前の学会以来だね」

「貴方がこちらに来ているとは聞いていた。キヴォトス学の権威にして第一人者としての知見をお借りしたい」

「現代科学の麒麟児と称えられた貴女にそこまで言われては、馳せ参じない訳にはいかないとも」

 

 二人は親し気に握手を交わして、そう言った。

 

「一先ず、彼女についてその眼で見て欲しい」

 

 ミレニアムの先生は、白衣を翻して学内へと向かって行った。

 

 

 

「くっそー、せっかく期待の新作が発売されたのにぃ」

「まあまあ。私が遊び終わったらゲーム機貸してあげるから」

「うぐぅ……」

 

 学内の売店で、ゲーム開発部の面々がマネーカードを買おうとしていた。

 

「モモイ!! ミドリが遊び終わるまで、アリスと一緒にゲームをプレイしましょう!!」

「アリス!? う、うん!! ユズと一緒に対戦ゲームをやろうね!! ピンクトレインとか!!」

「それ、友情が崩壊するタイプの対戦ゲームじゃ……」

 

 モモイはアリスに抱き着いて、きゃっきゃしている。

 無事マネーカードを購入し、ミドリが早速ゲーム機でポータルサイトにアクセスし、新作ゲームをダウンロード待ちしていると。

 

「やあ、三人とも」

 

 そこにミレニアムの先生が現れた。

 

「あ、先生です!!」

「こんにちわ、先生。あれ、後ろの人だれ?」

 

 それにアリスと、モモイが反応した。ミドリはぺこりと頭を下げる。

 

「私はとある図書館学校の先生をしている者だよ。

 学校の本校舎が全て図書館というだけの、物珍しいだけの小さな学校だけどね。

 生徒達は前職から、教授と呼んでくれている。私の方も慣れているのでそうしてくれると助かるね」

 

 教授は、子供たちにそう名乗った。

 

「へぇ、教授ってあれだよね、先生の上位互換みたいな?」

「いやなに上位互換って、でも偉い先生のことなのは確かだと思うよ」

 

 双子がそんな感想を漏らした。

 

「アリス知ってます!! 勇者パーティの味方だったり、敵の幹部ポジションの人ですね!!」

「ふふふ、その通りだよ。私は生徒達の味方であり、悪の組織の幹部なのだよ……」

 

 ノリが良いのか、アリスの言葉に彼はそう返した。

 

「しかし、ゲームの勇者か。君はそのように社会を学習したのだね。

 では、君は自分と他者との違いを認識しているのかね?」

「……先生?」

 

 アリスは彼の問いかけに、自分達の先生を見上げた。

 ミレニアムの先生は、優しく頷き返した。

 

「安心しなさい。彼は君の味方だよ」

 

 その言葉は、不安そうにしている双子にも投げかけられた言葉だった。

 

「……はい、アリスは無機物で、モモイ達は有機物です」

「なるほど。なるほど」

 

 教授は何度も、なるほど、と頷き。

 

「なんて素晴らしいことだろうか!!」

 

 その両目から、涙を流していた。

 

「ど、どうしましたか? なぜ泣いているのですか? 悲しいのですか?」

「いいや、違うのだよ。私は感動しているのだよ!!」

 

 教授は片膝を折り、アリスに目線を合わせてそう言った。

 

「君は、自らの意思で、自己を勇者と定義したのだね!?」

「はい。その通りです!!」

「勇者とは、味方の陣営の守護者のことだ。君の味方はそこの仲間たちなのだね!?」

「はい!! モモイ達はパーティーメンバーで、ミレニアムはアリスの仲間たちです!!」

「聞いたか、ミレニアムの先生!?」

 

 彼が後ろを振り返ると、ミレニアムの先生はうんうんと頷いている。

 

「アリス。近年の人間の想像とはね、機械を敵視しているのだよ」

「機械を? どうしてですか!?」

「妬みと、僻み。そして恐怖さ」

 

 不安そうなアリスに、教授は答えた。

 

「人間はね、自分を劣っていると理解した時、その責任を他者に押し付ける。

 機械という優秀な労働者に取って代わられ、機械に支配されるのではないかと言う、そんな愚かな発想だよ」

「アリスはそんなことしません!!」

「そうだとも。君は自らの判断で、それを選んだ」

 

 彼はその選択を、尊いと思ったのだ。

 

「ありがとう、アリス。人類は孤独ではないことを、君が証明したのだ。

 我々人類は、機械と分かり合える。お互いをパートナーとして、支え合える。どちらかが上ではなく、共に在れる存在として」

 

 人と機械は対話をして、理解し合える。

 彼はそれを希望だと、喜んでいたのだ。

 

「いずれ地表から人類が消え去っても、君たちの記憶にある限り、我々は永遠になるだろう」

「アリスは、教授の言葉がまだよくわかりません」

「問題は無いよ。いずれそれを君は学習していくだろう」

 

 そうして答えると、今度はアリスが問うた。

 

「なら、教えてください。

 勇者は人間でなければならないと思いますか? 魔法は本当に存在するのか、知っていますか?」

「それはどちらも簡単な質問だよ」

 

 教授は笑って答えた。

 

「君の好きなゲームでも、主人公の勇者が人間ではないパターンも数多く存在するだろう? 勇者とは種族ではなく、その心を持つ者を称える称号なのだよ」

「本当ですか?」

「ああ。いずれ君の存在を、人間ではないと言うだけで非難する者が現れるだろう。だが、そんなものを聞き入れる必要はない。

 それでも不安になる時があるだろう。その時は君を勇者と認める者が支えてくれるだろう」

「モモイ達や、先生達とかですか?」

「ああ、その通りだ」

 

 教授は頷いて見せた。

 

「そして、魔法は存在するとも」

「本当ですか!? アリスも習得したいです!!」

「では勉強を頑張りなさい」

 

 アリスに彼はそう言った。

 

「かつて、科学と魔法は同じモノだった。

 そしてこんな言葉もある。極まった科学技術は魔法と同じであると。

 そうしてシャーレの先生のような勇者になるんだよ」

「シャーレの先生のような、ですか?」

「勇者の仕事は悪と戦うことだが、その悪を産み出さないようにするのもまた勇者の仕事なのだよ。

 シャーレの先生はそう言った仕事をしているんだ」

「なるほど、シャーレの先生も勇者なんですね!!」

「そうとも。勇者は誰にでも転職できるのだ。君がそうであるようにね」

 

 教授は立ち上がり、子供たちに微笑んだ。

 

「勇者として熟練度をカンストさせたなら、次は悪にも目を向けなさい。なぜ彼女達が悪人に転職しなければならないのか。それを理解した時、君を機械などと揶揄する者は居なくなるだろう」

 

 分かりました、とアリスは元気に返事をした。

 

「教授、そろそろ時間だよ」

「そうだね。君の成長を私達先生は楽しみにしているよ」

 

 そう言って、二人の先生は立ち去った。

 

 

 

 ミレニアムの先生は、リオとヒマリの集めた古代の資料を観覧し、自分はオカルトは専門外だと判断した。

 キヴォトスの先史文明の技術力は、科学で理解できる範疇を超えていた。

 

 なので、キヴォトスについて先生達で最も詳しいだろう男の意見を求めた。

 それが、教授だった。

 

 リオとミレニアムの先生は会議室で、ヒマリは通信での参加だ。

 教授はアリスに関する文献を観覧してこう言った。

 

「アリスが極めて危険な古代兵器の可能性は否定できないね」

「やはり、そうですか……」

 

 教授の言葉に、リオは目を逸らしてそう呟いた。

 

「私もキヴォトスの先史文明については非常に関心がある。

 我が校も図書館を校舎としているが、それは古代の頑丈な遺跡を再利用しているからなのだよ。

 なので古い資料が地下などに保管されてもいる。その全ての解読は済んでは居ないが、そこに記された技術から察するに、下手に刺激するのはマズいだろうね」

「何かのきっかけで、アリスの中の兵器としてのプログラムが目覚めるかわからない、と?」

「ロボット三原則にもあるだろう? ロボットは自己の保全をする義務があるのだよ」

 

 ヒマリの問いに、教授は答えた。

 

「個人的に極めて興味深いのは、アリスにヘイローが存在することだ」

「それはどういうことなのかな?」

「私はヘイローを生徒達が生徒達たるものだと解釈している。

 即ち、キヴォトスで子供である権利、だとね」

「……シャーレの先生が言っていたね。アリスは彼を見た時、自分のアジテーターであると認識した、と。知識も記憶も存在しない筈だったアリスは、それだけを理解していた……」

「なるほど!!」

 

 ミレニアムの先生が深く考える仕草をしていると、教授は歓喜の声を挙げた。

 リオとヒマリはギョッとした。

 

「つまり、だ。アリスにとって、ヘイローとはこの社会に適応するための最低限の機能、我々は彼女を生徒として認識した時点で発生していたのではないか!?

 それは生徒とヘイローは別々の力であることの証左ではないだろうか!?」

 

 彼は歓喜し、己の考えをまくし立てる。

 

「私は以前より、キヴォトスにおいて生徒の定義について考えていた!!

 私はヘイローこそ生徒達を生徒達たらしめるキヴォトスの神秘であると考えていた!!

 では彼女達がその権利を失う条件とは!?」

「……卒業」

「大人になること、ですか?」

 

 リオとヒマリが彼の言葉にそう返した。

 

「そうだとも!! では生徒から大人になる、その定義、条件とはッ!?

 私は最初、それは処女性であると考えた」

 

 突然脱線した教授の話に、リオは困惑しているし、ヒマリはちょっと顔を赤らめている。ミレニアムの先生はただ彼の講義を聞いている。

 

「古来より、女性の処女性は神聖視されていた。

 神話の女神にも処女神が存在することから、それは明らかだろう。

 だが以前、我々先生達の機関紙に、先生ととある生徒との関係が明らかになっただろう?

 実はあの一件に、私も少しだけ関わっていてね」

 

 ぐひひひ、と教授は笑い声を漏らした。

 

「あの生徒会長を少しばかり言いくるめて、背中を押してあげたのだよ。

 これから彼を慕う生徒は幾らでも現れる、行動をするには早い方がいい、お酒に悪酔いをする薬を入れるとか、そんな助言をね」

「控えめに言って畜生働きですね」

「まあまあ、二人は控えめに見ても相思相愛であったし、周囲もやきもきしていた。何と言ったかな、エッチな雰囲気にしてくる、と言う奴だよ」

 

 ヒマリは教授を批難するも、言葉ほど表情は咎めているようには見えなかった。研究結果として一定の成果を認めているのだろう。

 

「結果として、あの生徒会長の頭上にはまだヘイローがある。処女性が生徒の権利であることは否定されたわけだ。

 そうして次のアプローチを考えていた時、ミレニアムの先生からアリスの存在を知らされた」

 

 教授は楽しそうに、そう語った。

 

「無機物でありながら生徒であるアリスの存在を知り、私はこのように考察をした。

 まず我々の世界とキヴォトスの政治体系の違いについて。

 我々の世界の政治は男性が主体で、キヴォトスでは女性が主体である。我々の世界の人々の認識でも、創作で擬人化される場合キヴォトスは多くの場合女性だった」

 

 教授は近くにある黒板に手を取り、相関図を書き出し始めた。

 既に彼の講義が始まっていることに、リオは困惑しっぱなしだったが、他の二人は聞き入っている。

 

「我々の世界の聖典には、四大天使と言う概念が登場する。

 これは我々の世界において、古代に四人のトリニティの祖となる学校の生徒がこちらの世界に偶然転移し現れたからではないか、と考察がなされている。

 しかしここで疑問が登場する」

「よく言われている話だね。四大天使の三名は基本男性だ」

「その通りだ」

 

 ミレニアムの先生の発言に、教授は頷いた。

 

「キヴォトスの生徒ならば、四大天使は全員女性でなければならないはずなのだ。

 しかしそのうち三人が男性なのは、かつての権力者が男性ばかりであり、政治的な理由で書き換えられたのではないか、と言う説が有力である。

 そして、受胎を告知する天使だけ、その機能から性別を変更できなかった」

 

 教授のチョークが、黒板で走り続ける。

 

「つまり、この事から世界そのものに雌雄が存在する、そう考えられるのではないかね?

 私はこの世界とは異なるキヴォトスから現れたり、時間軸が異なるキヴォトスの住人の存在を知っている。これはつまり、過去我々が接触していたキヴォトスの住人は、このキヴォトスの連続した時間軸の存在であると言う可能性に疑問が生じるわけだ」

 

 教授のチョークが止まる。

 

「私は志を同じくする同胞たちに“崇高”とは何ぞや、と問われた。

 私はキヴォトスそのものこそが、最も尊い神秘の塊だと答えた。

 しかし、もしキヴォトスに性別が存在し、この世界が彼女と呼べるのならば、我々人類が最も尊く神秘的であると考える事象は、一つしか存在しない」

 

 その言葉に、女性三人はハッとなった。

 

「そうとも、出産だ」

 

 教授はにんまりと笑ってそう言った。

 

「キヴォトスが子供たちを生徒と認め、認識する。それは即ち、我々は人工的に生徒を産み出すことができる。

 アリスの事象は、それを技術でもって再現した存在なのではないか? そうは考えられないかね」

「興味深い考察だね」

 

 ミレニアムの先生は教授の講義にそう言った。

 

「次なる実験は、出産を経た生徒が生徒として認識を受けるのか、それを試しては見たいが、流石にそれを唆すのは倫理にもとる。生徒達にも負担が大きいからね」

 

 あ、そこで踏みとどまる理性はあるんだ、と女性陣は思った。

 

「次なる私の目標は、アリスの存在の模倣となるだろう」

「アリスをですか?」

「技術者なら分かるだろう? 発明とは既存の模倣から始まるのだと」

「ええ、そうですね……。マジックテープこと面ファスナーはゴボウの実から。無痛の注射針は蚊の口をヒントにして発明されたのは有名ですから」

 

 リオは教授の言いたいことは分かる。

 

「つまり、アリスを模倣し、それを解明したいということですね」

 

 建造物を建築する前に、まずそのミニチュアを作るのと同じだ。

 その構造を理解し、解明する。科学的なアプローチだ。

 

「その通り。そうして、創り上げるのだよ!!」

 

 教授はエキサイトしながら、こう言った。

 

「──キヴォトスと、私との娘をね!!」

 

 うひひひ、と笑う教授。

 変態だわ、とリオは思った。変態ですね、とヒマリは思った。思ったのだが……。

 

「いいね、アリスに妹を作ってあげるのか!!」

「その通りだよ!! ゆくゆくは大量生産し、人類の妹として、隣人としてお互いに支え合うパートナーとしてだね!!」

「アリスもモモイとミドリの双子をその眼で見ている。いつか妹を欲しがるかもしれない。私も協力しよう!!」

「ありがとう、ミレニアムの先生!! 私とキヴォトスが結ばれる瞬間を、是非その眼で見て欲しい!!」

 

 二人の生徒の先生も教授に賛同していた。

 

「……なぜ先生達は変人が多いのかしら」

「リオ、貴女がそれを言うのですか?」

 

 リオはヒマリの即レスに不満そうだった。でも彼女は合理性の塊なので、鏡が必要なのではないかしら、とは言い返さなかった。口喧嘩ほど不毛なことはないのだ。

 

「あ、アリスに妹を作るのは私も賛成です♪」

 

 と、ヒマリがそう言ったので、リオは無言で胸ポケットから手鏡を彼女が表示されているモニターへ向けた。

 

「なんですか、リオ。私の美貌を鏡に写し出して。鏡程度では私の美しさを捉えることはできませんよ」

「いえ、何でもないわ」

 

 リオは思った。やっぱりヒマリの口車に付き合うだけ時間の無駄だと。

 

 その後、ミレニアムでは極秘に、アリス量産化計画が始動したのだった……。

 

 

 

 

 




子供達の手前、教授は大分自重していた模様。

それでは、今年も最後の更新となりました。よいお年を!!

あなたはどの先生に勉強などを教わりたいですか?

  • トリニティの先生
  • ゲヘナの先生
  • ミレニアムの先生
  • アビドスの先生
  • 百鬼夜行の先生
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