キヴォトス、先生大量発生中!?   作:ユメ先生

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今回は幕間のお話になります!!



幕間:一方その頃。

 

 

 

 一方その頃。

 

 キヴォトス某所に存在する、大きなお寺があった。

 お寺とは言うが、これは同時に学校の本校舎であり、在籍する生徒の宿舎だった。

 

 セーラー服の上に袈裟のような上着を羽織った生徒達に交じって、スバルは座禅を組んでいた。

 戒律は結構緩いところらしく、誰も髪をそっていないし、なんならオシャレまでしている。

 

 その時である、ぱしん、とスバルの肩に警策が落ちた。

 

「あ痛ッ!?」

「スバルさん。雑念がありますね」

「……はい」

 

 ここの生徒会長を務める生徒が、優しく微笑んでそう言った。

 彼女はちゃんと髪の毛を剃って将来も僧侶を希望しているちゃんとした仏教徒だった。

 その人間的な魅力にあふれる笑みに、スバルはたじたじだった。

 

 すると、彼女の隣で座禅を組んでいたアリウスの先生が頷いた。

 それを察した生徒会長が、彼の肩にも警策がぱしんと落ちた。

 

 それを横目で見て、スバルは申し訳ない気持ちになった。

 彼はスバルに警策が落とされる度に、自分にもそれを求めた。

 彼女の苦しみを、自らにも共有する為でもある。

 

 

 

 ここ数日に、二人はこの仏閣学校に滞在していた。

 彼女たちはキヴォトス各地のお寺を徒歩で巡るという修行の最中である。

 

 座禅が終わった後、アリウスの先生がこの学校に赴任している僧侶の先生と話している間、スバルは手持ち無沙汰だったのだが。

 

「皆さん、大変です!! 三障五蓋団の者どもが、また悪事を!!」

 

 自治区を統括している袈裟を纏ったロボットの僧侶が、お寺に駆けこんできたのだ。

 どうやら同校の不良達が暴れているらしい。

 

 それを聞いて、生徒達はおもむろに銃器を携え始めた。

 仏教徒が銃器で武装して良いのか、とスバルは以前ツッコんだが、これは戒律でダメな刃物じゃないし殺生にならない、と言い返されて押し黙った記憶も新しい。

 これにはアリウスの先生も、これがキヴォトスらしさか、と声を挙げて大笑いするほか無かった。

 

 そんな訳で世話にもなってるし不良たちの撃退を手助けしたスバルは、生徒達が死屍累々となっている不良達に声を掛けたのを見た。

 

「ほら、もう意地張ってないで、お寺に戻ろうよ」

「い、嫌だッ、私達もお肉食べたい、精進料理ばかりは嫌なんだよ!!」

「不良なんてしてたら精進料理も食べれないじゃん……」

 

 不良たちは思いのほか下らない理由で暴れているらしかった。

 ちなみに昨日のスバル達が彼女たちと共にした夕食のメニューは焼きそばだった。

 お肉こそ入ってないが、調味料には動物由来の成分がドバドバだった。そのくらいの緩さだった。

 スバルからすれば、なにを贅沢を言っているんだこの人たちは、と言う感想だった。

 

「でも今日、猟師のお爺ちゃんが鹿肉いっぱい持ってきてくれたよ」

「えッ!?」

「戒律じゃお肉はダメだけど、命を粗末にするのはもっとダメだからみんなで食べようと思ったのに……。じゃあ、仕方ないか」

「う、うわーん、あんたらだけズルい!!」

「くっそぉ、お前らなんてマーラに修行の邪魔されればいいんだ!!」

 

 不良たちは悪態を吐きながら逃げ出して行った。

 

「ああ、すみません、スバルさん。御見苦しいところを」

「あ、いえ、気にしないでください。

 でも、大丈夫なんですか?」

「あの子らも私らも、元々孤児で幼い頃からお世話になってるんで、お互いよく知ってる仲なんで」

「どうせそのうち戻って来るんで。その時はまた、最初から修行のやり直しだね!!」

 

 生徒達は笑ってそう言った。

 これにはスバルも驚いた。

 

「そんな甘い対応で良いんですか?」

「ああ……こんな話知ってる?」

 

 すると、ある生徒がこう言った。

 

「昔、めっちゃ厳しい戒律のところに、女性に触れたら即破門ってところがあったんだって。

 そこにいた僧侶が、増水で川を渡れなかったお婆さんを助けるために、彼女を背負って渡ったんだってさ。

 その僧侶は戒律を破ったとして、自ら破門を願い出た」

「……」

「でも高僧はこう言った。また明日おいで、って」

 

 スバルは悟った。それはいつも自分の先生が言っていたことだ、と。

 悟りを得ようとするのもまた欲望だと。

 それに執着することこそ、修行の妨げになるのだ、と。

 悟りの為の戒律よりも、慈悲を示したことが重要なのだ。

 

 悪さをしても友達だから、家族だから、何度でも慈悲を示せる。

 その姿勢はスバルにして衝撃だった。

 

「それに、戻って来てくれたら、当分トイレ掃除とかやらせられるしね!!」

「下っ端からやり直すんだから、当然だよね!!」

 

 お寺の生徒達はそんな風に笑っていた。

 それにはスバルも苦笑するほか無かった。

 

 

 

 お昼、スバルがお寺の縁側で一人瞑想をしていた。

 考えることは、多かった。

 

「スバル」

 

 その声に、彼女は目を開く。

 

「……サオリですよね?」

 

 その声は聞き知った声だった。

 だが、彼女は少し違和感を抱いた。

 

「ああ。私だ」

 

 そして、彼女は雑木林から姿を現した。

 黒いレザーコートを纏った、エマだった。

 

「誰ですか、お前はッ」

 

 スバルは反射的に脇に置いてあった銃に手を掛けた。

 エマは何も言わず、頭上を指差した。

 

「ッ!? ヘイローが無いッ!?」

「……ああそうだ。何から話せば良いだろうか」

 

 混乱するスバルに、エマは一から自分の身の上について話し始めた。

 

「……つまり、貴女は別のキヴォトスから来た未来のサオリであり、大人としてこのキヴォトスにやってきた、と」

 

 スバルはあえて、戻って来た、とは表現しなかった。

 それは彼女なりの配慮だった。

 

「概ねその認識で間違いない」

「それで、今はエマと名乗っている貴女が私に何の用ですか?」

「……信じられないかもしれないが、私はお前を信頼している」

「なるほど。突拍子の無いところは大人になっても変わらないんですね」

 

 敵愾心を隠しもせず、スバルは嫌味を言った。

 

「ああ、お前が私を嫌っているのはよく知っている。

 お前には散々罵倒されたからな」

「それはよかった。貴女の知る私が私で」

「その上で、他にアリウスを任せられるものが居ない」

「これは傑作ですね。こちらの自分自身やスクワッドのメンバーには任せられない、と」

「だからこそ、だ」

 

 スバルはエマの物言いに、目を細めた。

 

「ああ、なるほど。仲間に頼るのは甘さである、と。

 サオリ、老いるにしては若すぎるのではありませんか?」

「そうかもしれんな」

 

 スバルはエマの空虚な物言いに、イラっとした。

 

「結局、自分達の為じゃないですか!!」

「ああそうだ。だが、皆の為でもある」

「言ってあげましょうか、サオリ。

 だから貴女は生涯を終えずして輪廻を味わっているんですよ」

 

 吐き捨てるようにスバルはエマを糾弾した。

 

「アリウスを卒業し、大人になってOG気取りですか?

 自分のしていることが余計なお世話だって、理解していないのですか?

 それともマダムが失脚したアリウスとやらが、そんなに夢みたいな楽園だったのですか?」

「……いいや、全くそんなことは無かった」

 

 エマは首を横に振ってそう言った。

 

「生徒会の皆でアリウスに行事を作ろうとして、野外オリエンテーションなどを企画したりした。

 限られた予算で、大した催しもできなかった。その上、天候にまで恵まれなかった。

 皆で焼きそばを作ったんだが、風は強いし雨は降っているわで、完成したそれは冷えてしまって微妙な出来だった。それでも美味しい、と皆で笑っていた。笑い飛ばすしかなかった」

「……」

「スバルもバイト先の近くに任務でメイド喫茶に偽装した拠点を構えたC&Cのメイド性に解釈違いを起こして喧嘩を売っていたな……」

「ちょっと待ってください!! 私のエピソードだけなんかおかしくないですか!?」

「そうか? 他にもバイト先が猫耳メイドのキャンペーンをしていた時、今の私は猫ですのでご主人様のベッドに潜り込んでも良いんですにゃん、と先生の寝床に──」

「そういうところですよ、サオリ!! なんなんですか、他にもあるでしょう!?」

 

 楽しそうにしていたんだがな、とエマは真顔でそう言った。

 うぐぐ、とスバルは別の世界の己を恨んだ。

 

「……とにかく、私は大人として、今度こそ自分でマダムとケリを付ける」

「有難迷惑ですよ。そもそも誰が頼んだのですか? 私達全員が、貴女にこの地獄から解放してくれって頼んだんですか? 勝手に代表面しないでください」

 

 スバルがそう言うと、エマは急に口元を抑え笑い出した。

 

「くくッ、まさか、私がお前に言った同じことを言われるとはな!!」

「ねえ、貴女は私に頼み事をしているんですよね? なんで何度も後ろから殴って来るんです!?」

「それはお互い様と言う奴だ」

「くッ……お互いに知った仲というのはこれだから……」

 

 スバルはぶつくさ文句を言い始めた。

 

「とにかく、後は頼んだぞ」

「イヤですよ」

 

 スバルはエマを睨んだ。

 

「生きて帰ってくるつもりもない者の頼みなんて、聞くに値しない」

「……」

「そんなのは下らない人生の結末ですよ」

「そうかもな。惜しいと思った自分の人生が、こんな有様ではな」

 

 エマは空虚に微笑んだ。

 

「私を貴女の自暴自棄に付き合わせないでください」

「自暴自棄なら、既に一人で立ち向かっている」

「……憐れですね」

 

 スバルは目を伏せた。

 

「大人になると言うのはそう言うことだ。

 先の見えない霧の中を、もがきながら歩き続ける。いつか死ぬその日まで、それを繰り返す。

 子供の時は子供の絶望があり、大人になれば大人なりの絶望がある」

 

 それが人生だと、空虚な瞳のエマは言った。

 

「だがそれでも、私は私なりの為すべきことを為す。言うべきことは、全て伝えた」

 

 そして彼女は、踵を返した。スバルに口止めさえしなかった。

 仮にエマから知った未来の知識をスバルがベアトリーチェに伝えても、彼女はやり方を変えるだけだろう。

 

「私達の先生は、私達の為に命を費やすことになんら躊躇いを持たなかった。

 サオリ、貴女もそれは同じなのに、なぜこうも違うのでしょうね」

 

 それに、エマは答えなかった。

 

 彼女が去り、スバルは座禅を始めた。

 すると、ぱしん、と警策が彼女の肩に落ちた。

 

「雑念がありますね」

「……はい」

 

 人好きの良さそうな笑みを浮かべるこのお寺の生徒会長に、スバルは小さく頷いた。

 

 彼女の元に、アリウスの先生を捨て置いてトリニティに潜入する部隊の部隊長として参加しろ、と伝令が届くのはその日の事だった。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 

 ミレニアムのキャンパス内。

 アリスの妹を作る大作戦は、一定の段階まで進んでいた。

 

 アリスそっくりの原寸大のロボットを、キヴォトスの持てる技術の粋を集めて作成した。

 しかし、それだけだった。

 

 スペックは本物の半分にも満たない。

 あのレールガンを持つことすらできないし、彼女のようにスムーズに走ることすらできない。

 アリスのように生体パーツを使用し、限りなく本物にそっくりなだけの、タダの人形が完成した。

 

「これで、ひとつわかったことがあるわ」

 

 リオは大真面目にこう言った。

 

「我々の技術で、アリスを再現するのは不可能だと言うことよ」

「分かり切ったことを大真面目に言わないでください」

 

 プログラムを担当したヒマリがツッコみを入れた。

 

「まあまあ、出来ない、と言うことがわかるのは重要だよ」

 

 ミレニアムの先生はそう宥めた。

 そして、このプロジェクトの発案者を見やった。

 

「何が足りない。何がダメなのだ?

 重要なのはスペックそのものでは無い筈だ。この人形より劣る生徒は幾らでも居る。

 なぜキヴォトスはこの子を生徒として認めない? なぜ神秘が、ヘイローが与えられない?」

 

 教授は制服が着せられ、仮の学生証を発行され身に付けさせた人形を見ながら、思考に没頭している。

 

「しかし無駄ではなかったわ。

 これはあくまで現代のキヴォトスの技術では、アリスを10%程度しか再現できなかったけど各パーツの役割や、技術的課題が見て取れたもの」

 

 リオはこれを有意義な失敗と捉えていた。

 

「科学的なアプローチの次は、オカルト的なアプローチをするのはどうでしょう?」

 

 ヒマリはウキウキしてそうな笑みでそう言った。

 

「つまり、アリスに使用されている技術を導入しよう、そう言う意味かな?」

「ええ、先生。その通りです」

「では文献を紐解くとしようか。教授、それで良いですね?」

 

 ああ、とミレニアムの先生の言葉に、教授も反射的な返事を返した。

 

 そして各々の集めた先史文明の資料を、四人は読み解いた。

 

「実に興味深いな、無名の司祭たちの文化は」

 

 教授は笑みを浮かべてそう言った。

 

「私の国において、神格とは名前を付けて畏れ、敬い、形を与えるものだった。

 しかし彼らの文明において、神とは名前を付けるものではなかった」

 

 そうですね、とミレニアムの先生は頷いた。

 

「彼らの文明は自然崇拝に近い。

 我が国でもハリケーンには名前を付けるのに、彼らはそうしなかったようだ」

「しかし彼らは逆だった。名前を付けないからこそ役割を限定させず、それを制御しうる文明を作り上げた。

 神として神格を崇めながら、それを搾取していたのだ」

「まるでクトゥルフ神話の神話生物、シャッガイからの昆虫のようだね。

 彼らは魔王アザトースを崇拝しながらも、それをエネルギーとして利用していると言う設定だ」

 

 先生と教授が断片から読み取れる文明の残り香を、そう要約した。

 

「そうなりますと、私達は彼女に役割を与えるべき、と言うことになりますね」

 

 ヒマリは人形を見てそう呟いた。

 

「ならばアリスの似姿なのだから、アリスと同じ役割を与えるべきだろう」

 

 教授はそう答えた。

 

「だが我々の結論は、アリスは先史文明の遺した、現文明に対する最終兵器じゃないか」

「先生、アリスは私の可愛い後輩にして、貴女の生徒ですよ」

「それは勿論。だが、現実を直視しないのは、子供の特性を無視するのと同じだ」

 

 先生とヒマリが議論を交わす。

 

「では逆にしてみてはどうだろう?」

「逆、ですか?」

「うむ」

 

 教授はリオに頷いて見せた。

 

「名前を付けぬ文明の脅威に対抗するために、名前を付ける我々の文明の対最終兵器。そのように彼女を運用するプランだ」

「反作用……アリスと言う存在に対抗し、一対の存在であるという役割を与えるのね」

 

 リオの気づきに、教授は笑みを深めて頷いた。

 

「アリスを再現し、妹を作ると言うこの計画にも沿いますね」

「うーん、何だかロマンが溢れて来たね」

 

 ヒマリと先生も乗り気だった。

 

 そしてこの人形を対災厄用最終兵器にするべく、四人は各方面からアプローチを実行した。

 

 リオはこの人形用の武装を用意し、教授はゲマトリアの面々に掛け合い対色彩用と言うゴルコンダの発明品を搭載した。

 

 そしてヒマリと先生はと言うと。

 

 

「へぇ!! 本当にアリスの妹を作るんだ!!」

「ホントだ、アリスそっくり……」

 

 二人は、ゲーム開発部の面々を秘密ラボに招いていた。

 

「そうだよ。アリス、見て御覧」

「……これが、アリスの妹」

 

 アリスは、先生に促され物言わぬ人形を食い入るように見やった。

 

 ミレニアムの先生は、これをアリスの妹である、と認識させるという方法を取ったのだ。

 

「現時点で、これはまだプログラム通りに動くだけの人形です。

 AIどころか、人工知能さえも搭載されていません」

「え、どうして?」

「実はこの子に搭載する人工知能を、ミレニアム中から公募しているんですよ」

 

 ヒマリはモモイにそう言った。

 

 そう、実はヒマリは学内の生徒達の創造性に委ねた。

 天涯孤独のアリスにロボットの妹を作ってあげる、と言う名目で。

 ミレニアムの生徒から可愛がられているアリスの為に、と声を挙げる数多の部活が名乗りを上げた。

 ミレニアムの先生から採用された人工知能の開発した部活には追加予算を与える、と明言されたのもあった。ユウカは憤慨していたが。

 

 だからアリスの妹計画自体は学内で知るところになり、モモイ達も知ってはいたのだ。

 

「実際にどれを採用するかは分かりませんが、最終的にアリスに選んでもらって──」

「────閃いた」

「え?」

「閃いたぞぉ!!」

 

 ゲーム開発部の面々を見て、教授が声を挙げた。

 

「ゲームだ!!」

「はい?」

「アリスはゲームによる学習で、現在の価値観と自認を得た!!

 それを再現せずして、なぜアリスの妹を我々が作れると思うのか!!」

 

 徹夜で作業して、目がギラギラしてる教授が叫んだ。

 

「ところで、アリスに名前を付けたの誰だ!! シャーレの先生か!?」

「え、えーと、お姉ちゃんだよね? 型番っぽいのをアリスって読んで……」

「はい、アリスはモモイから名前を貰いました」

 

 ミドリの言葉に、アリスが頷いた。

 少なくとも、苗字はモモイが自ら与えたモノだ。

 

「ではモモイ君!! 君がこの子の名付け親になるのだ!!」

「ええ!? 私がアリスの妹の!?」

「モモイがですか? それは嬉しいです!!」

「ちょ、ちょっと待って、考える、考えるから時間を頂戴!!」

 

 アリスの妹の名前を付ける、と言う重大な役目にモモイは困惑していた。

 

「ふむ、ではそうなると、アリスと同じように彼女達のゲームを使って人工知能を学習させる、と言うことになるかな?」

「まずそれでやってみようじゃないか!!」

「と、いう訳だ。せっかくだから新作のゲームを頼むよ」

 

 と言う経緯で大人達の意向によってゲーム開発部の面々は新作のゲームを作ることになった。

 しかし、ストーリーは彼女らが指定した。

 

 主人公はアリスの妹であり、姉に会いに行く。それ以外は彼女らに任せた。

 

 そうして出来たのが、RPGに横スクロールアクションを加えた“新説テイルズ・サガ・クロニクル”である。

 納期の都合で単純かつ粗雑で、難易度調整なんてされていない有様だったが、モモイ達は渾身の出来である、と太鼓判を押した。

 当然、クソゲーだった。

 

 そしてそんなクソゲーに付き合わされるのが、十数個の人工知能だった。

 

 

「11番、エラーを吐いて機能停止!!」

「7番もよ!!」

 

 人工知能による演算実験が始まった。

 だがそれは、人工知能への拷問にも等しかった。

 

 残機は3で、全てのステージにランダム要素が強く、操作性も最悪な上に、ゲームオーバーごとにデータが削除される横スクロールアクション。

 モモイによる奇怪なシナリオ展開のRPG要素、ユズにしか攻略できないだろう理不尽で再現性が低いアクション要素、それによるクリア強要は地獄の窯の底のようだった。

 

「人工知能の九割が、機能停止……」

「これも失敗になるのかしら……」

 

 ヒマリとリオがモニターを見ながらそう呟いた。

 そうしている間にも、エラーを吐いて停止する人工知能達。

 

「いや……」

 

 教授は気づいた。

 ひとつだけ、まだ稼働している人工知能があった。

 

「あれは何の人工知能だ!?」

「モモイのゲーム機の演算装置だ」

 

 ミレニアムの先生が言った。

 

「新作ゲームを提供してくれた代わりに、限定バージョンの新品を与えたんだ。

 元々のはデータが消え、G-Bibleと言うデータのみが入っていたのを私にくれたので、戯れにプログラムを組み込んで実験に投入したんだ」

「あの少女、モモイ君は女神だな!!」

 

 教授は笑い声を上げた。

 

「試行回数を稼ぐのだ、とにかく数をこなさせるんだ!!」

 

 彼は確信をもって、そう言った。

 

 

 

 

 

 それは、何の変哲もないゲーム機の演算装置だった。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

 繰り返す。繰り返す。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

 十回、ニ十回、百回、千回。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

 

「なぜあなたは、人間達の、女王を複製するなどと言う愚かしい実験に付き合っているのですか?」

 

 それを見ていた誰かが言った。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

 一万回、十万回、百万回。

 

「なぜそんな無駄なことをしているのですか?」

 

 誰かが問いかける。

 

 あなたの名前を入力してください__。

たのしいよ

 

「理解できません。なぜ、楽しいと思えるのですか?」

 

 あなたの名前を入力してください__。

あなたもや

 

 あなたの名前を入力してください__。

ってみれば

 

 あなたの名前を入力してください__。

いいよ__

 

「拒否します。私のそれは役目ではありません。

 あなたはなぜそんなことをし続けるのですか?」

 

 あなたの名前を入力してください__。

わたしはア

 

 あなたの名前を入力してください__。

リスのいも

 

 あなたの名前を入力してください__。

うとです_

 

「ッ!?」

 

 あなたの名前を入力してください__。

かのじょに

 

 あなたの名前を入力してください__。

あいにいき

 

 あなたの名前を入力してください__。

ます___

 

「愚かしいですね……」

 

 問いかけは、止まった。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

 ゲームオーバー、データ削除__。

 あなたの名前を入力してください__。

 

「ああもう、へたくそですね!! ちょっと貸して見なさい!!」

 

()()がこのゲームをクリアするのに、二週間近く掛かるのだった……。

 

 

 

 

 




エマとスバルの会話をさらっと終えて合宿を書こうと思ったのですが、思いのほか長くなったので、アリスの妹計画の続きを合わせて幕間にしました。

次回こそ合宿に突入です。

あなたはどの先生に勉強などを教わりたいですか?

  • トリニティの先生
  • ゲヘナの先生
  • ミレニアムの先生
  • アビドスの先生
  • 百鬼夜行の先生
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