キヴォトス、先生大量発生中!? 作:ユメ先生
そして、その日の夜。
ゲヘナの先生が合宿場に戻るなり、緊急職員会議が始まった。
事情を説明した彼は、先生達にこう釈明した。
「やっちゃったZE☆」
「ふざけてる場合かね?」
椅子に腰かけ、杖に両手を置いているトリニティの先生は鷲のように鋭い視線を向けてそう言った。
他の先生達の反応も様々だが、クロノスの先生は既にメモとボイスレコーダーを用意して記事にする構えである。
「ゲヘナの生徒会が色々と問題を抱えていたことは承知している。
だが彼女達を排除すれば解決するなどと言う単純な問題ではないぞ」
「そりゃあ、わかってたんだけどさ……」
ゲヘナの先生もこれが最良かつ最善の解決策ではないことは承知していた。バツが悪そうに頬を搔いている。
「あのー、イジメは勿論悪いことだと思いますけど、私は余り政治に詳しくないので、何か重大な問題があるんですか?」
「それについてはゲヘナ学園の政治的構造が問題なんですよ」
キヴォトス出身のはずのアビドスの先生に、外から来たはずのクロノスの先生がそう答えた。
「ゲヘナ学園の風紀委員会は名目上は生徒会の下部組織ではあります。
これはトリニティも同じですね。正義実現委員会はティーパーティーの要請で動くほぼ一枚岩の組織です。
ですがゲヘナ学園の風紀委員会は性質がちょっと異なります。
彼女達はある程度の裁量を持ち、その実行力は生徒会を凌駕しています。
それ故に生徒会は独自の部隊を持ち、風紀委員会の暴走などを監視し、風紀委員会もまた生徒会の腐敗や暴走を監視し合う、そう言う構造になっているわけです」
「その通りですな」
彼女の解説に、トリニティの先生は頷く。
「そして可能な限り、その均衡は保たれるべきであるのだ。
そのバランスが崩れた時、ゲヘナは先代の生徒会長のような専横を許すことになる。ゲヘナ学園の秩序とは、二つの組織の綱引きによって保たれているのだ」
先代のゲヘナ生徒会長がどれほど恐れられ、キヴォトスに大きな影響を与えていたかはこちらに来て日の浅い先生達も漏れ聞こえるほどだ。
そのような危うい状況を、産み出してはならないのである。
「それを、そこの小僧は叩き壊した」
じろり、とトリニティの先生はゲヘナの先生を見やった。
「だってー。あのマコトのバカは風紀委員会を始末するって言ったんだぜ。あのアホは必ず実行する。俺がやらなくても結果は変わらないだろうぜ」
「それを大人である貴様がやったと言うことが問題なのだ!!」
どこか不貞腐れた態度のゲヘナの先生に、トリニティの先生は若干声を荒げた。
「まあ、マコト議長を擁護するわけではありませんが、彼女が風紀委員会を目の敵にするのは理解できる、極めて正常な反応であると思いますね。
当代のヒナ委員長はキヴォトスきっての武闘派。いかに当人の性格が穏やかとはいえ、人の心は移ろうもの。何かの切っ掛けで、“キヴォトス布武”なんて言い出したら真っ先に排除されるのは自分達でしょうから」
クロノスの先生はこの話題の記事の反響を想像して顔をほころばせながらそう付け加えた。
「“……そこのところ、ヒナはどう思うの?”」
ずっと危機に徹していたシャーレの先生が問うた。
その視線の先には、立てかけられたスマホのテレビ通話状態で、画面にはヒナの顔が映っていた。
『まず、私達の先生が、いずれこういう行動をしてしまうとは思っていました』
「おお、信頼されてるねぇ」
『先生。一つだけ言わせて。我々風紀委員会はこんなこと、望んでいなかった』
おどけるゲヘナの先生に、ヒナは淡々とそう告げた。
「俺だってこんなことはしたくなかった。だが許せねぇだろ、あんなのはよ」
『それはゲヘナの秩序を乱すことになっても?』
「流石は風紀委員長。自分を犠牲にゲヘナの秩序を守ろうってわけだ。反吐が出るな」
『……』
「お前らを犠牲にして保たれる秩序なんざゴミ以下だ。お前成績は良いが人間としては落第点だな。大人ってのは自分を犠牲にしないもんなんだよ。じゃあなにか? お前は自分の犠牲を他人に求めるのか?」
『……いえ』
「それが全てだろろうが」
彼は先生として、ヒナにそう語った。
「いずれにしても、もっと時間をかけても良かった筈だろう」
トリニティの先生は理解はしていても、納得がいっていない様子だった。
「流石は天下のトリニティの先生だ!! 言うことが違う!!
じゃあ爺さん、生徒会の嫌がらせを苦にヒナがコンクリートでも抱いて海に飛び込んたとしても、あんたが責任を取ってくれるわけだ!!」
「……」
「そんな事態が起こらないって保証は誰ができんだよ」
トリニティの先生は苦渋に満ちた表情で、何も言い返せなかった。
シャーレの先生も業務などを通してヒナの性格はよく知っている。彼女が突発的に人生が嫌になって身投げしないとは言えなかった。
「政治の為にその可能性を見過ごせってなら、俺は先生なんて恥ずかしくて名乗れないね。
そう言えば、どこかの誰かさんは以前、イジメは重大な人権侵害だって言ってたような気がするなぁ。誰が言ったっけ、爺さん覚えてる?」
「……私とて、貴様の判断を責めたいわけでは無いのだ」
教育者としては、彼の判断は間違っていないとトリニティの先生は分かっているのだ。生徒の命は何よりも優先される。
だが、ゲヘナの先生の行動は、結果的にトリニティにも波及する。
「この話を桐藤君が聞いたら、また卒倒するだろうな」
「時間の問題でしょうね」
ナギサを慮っているトリニティの先生に対し、まるで自分がいるから、と言わんばかりの笑顔のクロノスの先生。
「シャーレの先生はどう思うかね?」
トリニティの先生はシャーレの先生に水を向けた。
この若者ならどのような答えを出すのか興味があったのだ。
「“私は、彼女達を叱れなかった立場なので……”」
シャーレの先生はアコと仕事をした際に、生徒会から嫌がらせを受けていることを知っていた。
その時点で生徒会に叱ることは出来た。だがシャーレという組織はどこかの組織に肩入れを、いや彼は生徒達同士でなるべく解決してほしいと思っていたのだ。
勿論、生徒達が仲裁を求めたのならそうしただろう。シャーレは悩める生徒に手を貸す組織でありたいと、彼はそう思っている。
だがそれは、どうしても受動的な側面は否めなかった。
「“勿論、イジメは加害者と被害者を物理的に引き離すことでしかほとんど解決しないことは理解しています。
ですが、改めてゲヘナの先生に現実を突き付けられると、私の判断が正しかったのか、先生としてどうすべきだったか、手を差し伸べるべきだったのか、とても悩ましく後悔すら感じています……”」
『先生……』
ヒナは苦しそうに悩んでいるシャーレの先生を見ていられなかった。
「おうおう、悩めよ若人。でも個人的に言うなら、あんたは叱るのには向いてないと思うぜ。もうちょっと厳つい顔立ちじゃないとな」
「“ゲヘナの先生……”」
「あいつらはあんたの代わりに俺がしこたま叱っておいてやるよ」
にかっと笑うゲヘナの先生に、少しだけシャーレの先生は救われたように微笑んだ。
「しかし、我々大人が、しかも影響力のある学校の生徒達の学校運営に重大な影響を齎した前例を作ってしまったのは問題だろう……」
トリニティの先生の懸念はそれだった。
ことは、ヒナがゲヘナの議長代行に? じゃあエデン条約も大丈夫だね、わーい!! なんて単純な話ではないのだ。
「“そうですね。私達は生徒達の支配者ではありませんから”」
「別に俺だって支配したくてやったわけじゃねぇって」
「わかっている。そう言う話ではない」
このままでは話は堂々巡りになりそうだった。
それだけ、答えの無い話だった。
「それについては、今更だろうよ」
そんな空回りの論議に水を差したのは、SRTの先生だった。
「俺らがこれからやらかそうとしていることを考えてみろよ。
俺達に影響力が無いなんて口が裂けても言えないだろう」
狼面の男に、先生達は押し黙った。
『……ねえ、先生達。あなた達はこんな風に集まって、何をしようとしているの?
一体、なにを……』
「ふむ、なあ先生方。ヒナ議長代行に協力してもらうってのはどうだ?」
SRTの先生はまるでナンパのような気軽さで皆に問うた。
「具体的には? まさか戦力としてではないよな?」
「まさか。ただこういう情報を流してほしいのよ。ちょっと部隊を出して貰って睨みを利かせてくれりゃ最高だな」
ゲヘナの先生の問いに、SRTの先生が答えた。
その詳細を聞いて、ヒナは戦慄した。
先生達が、仕出かそうとしていることの大きさを。
『先生、貴方たちはキヴォトスを変えようとしているのね……』
「そいつは違うな。誰だって、部屋の中が汚れてたら片付けるだろ? そのままにしておくのは教育に悪いって話だ」
SRTの先生にとって、それが全てだった。
『わかったわ、我々風紀委員会は先生達に協力する。これまで誰も出来なかったことを……私達は成し遂げるのを見届けたいと思うわ』
「“ありがとう、ヒナ”」
『それでは、情報部に指示を出すので、今日はここで失礼します』
ヒナは画面の中で頭を下げて、テレビ通話を切った。
「俺たちの作戦も大詰めだ。皆、しまって行こうぜ!!」
まるで体育会系のノリで、SRTの先生はそう言った。
先生達は感じていた。作戦の段階は、既に一部の生徒達に情報を開示する段階に至ったのだと。
それを証明するかのように、翌日シャーレの先生はナギサに呼び出しを受けた。
数日前。
キヴォトス某所、便利屋68新事務所。
「社長。今月はこのままじゃ赤字だよ」
眼鏡を掛けて電卓を叩いて経理をしているカヨコが、自分達の社長にそう告げた。
「わ、わかってるわよ!!
仕方ないじゃない、弾薬費や諸経費がかさんでるんだもの!!」
「うちの先生にも言われてるでしょ、もう少し浪費を抑えようって」
「うぐぐ」
そんなこと言われなくても、アルは承知していた。
だがそれだけが原因とも言えなかった。
依頼が減っている。経営不振の理由はそれに尽きた。
より正確に言えば、実入りの良い仕事が減ってきているのだ。
その理由は彼女達にとって明白だった。
「“ウルフズベイン”だっけ? 厄介な同業者の名前って。仕事が取られてるって話、本当なの?」
カヨコの机の前に座って、その光景を眺めていたムツキがそう言った。
「まあね。裏社会じゃ、もう有名になってるよ。
SRTの先生の先生が、休学中のSRTの生徒を社員にして活動しているって話」
カヨコは眼鏡を置いてそう言った。対面に座っていたムツキが若干名残惜しそうにしている。
「アル様、私が始末してきましょうか?」
ハルカがおずおずと話を切り出す。
「な、なに言ってるのよ、この業界は同業者とは持ちつ持たれつなのよ!! 新参者だからって目を付けるのはアウトローの流儀に反するわ!!」
「わ、わかりました、流石はアル様です!!」
内心相手が悪すぎるからやめてぇ、と絶叫しているアルだった。
「まあ、あっちは民間犯罪者追跡会社って感じで、住み分けは出来ているよ。こっちの強みを生かしたマーケティングは急務かな」
「でも、こういうのって事務所にどっしりと構えて、依頼を受話器で受け取るものだし……」
「わかったよ、社長。それとなくうちの先生に仕事を回して貰うように聞いてみるよ」
その結果として事務所に依頼の電話が掛かってくればいいのである。カヨコはアルの扱いを心得ていた。
「どうせ、うちの生徒の内偵の仕事は幾らでもあるだろうし」
自分達の先生の裏側を知っている彼女らは、時折そんな仕事を寄越される。
銃弾を撃つ必要もないし経費も大して掛からないので、実入りの良い部類の仕事だった。
「あれ、うちって探偵だったっけ?」
「探偵もやるのよ、ムツキ」
ムツキのからかうような言葉に、アルはそう返した。
そんな時である、事務所の備え付けの電話が鳴った。
「はい、こちら便利屋68」
キリッとした表情と角度で、アルは電話に出た。
「ええ、仕事の依頼ね。わかったわ。ええ、いいでしょう」
程なくして、アルは受話器を置いた。
「ど、どうしよう、みんな。SRTの先生が、私達に依頼をしたいから直接会いたいって……」
彼女の言葉に、三人は顔を見合わせた。
「よう、あんたらが便利屋か」
ブラックマーケットにある廃ビルにて、四人と一人の大人は待ち合せをしていた。
「ええ、初めまして。SRTの先生」
「こちらこそ。それにしても……」
SRTの先生はぶしつけにすんすんと鼻を鳴らした。
「ゲヘナの先生は四人中三人がアル中だが仕事内容を限定させれば使える奴らだって話だったが、アルコールの臭いはしないな」
「わ、私達はお酒なんて飲まないわよ!! ね、みんな!!」
アルがそう言うと、他の三人は曖昧な表情を浮かべた。
「まあいい。仕事の話をしよう、その前にこちらの契約書をよく読んでくれ」
SRTの先生は書類を彼女達に渡した。
「依頼内容を聞いたら仕事を拒否できない、それの他にも厳格な守秘義務……」
「俺は仕事を任せる以上、お前らを子供として扱わない。プロとして仕事をして貰う。
これは極秘の作戦でな、発注先は選んでる」
契約書から目を話し、カヨコは言った。
「依頼内容を聞けないのに承諾は出来ない、と言いたいところだけど、要するにそっちの人員で出来ない内容ってことでいいのかな?」
「察しが良いな。そうだ、詳しくは話せないが、仕事内容は陽動やかく乱と言ったところか。汚れ仕事の類ではないと、あんたらの先生に誓うぜ」
「……どうする、社長」
カヨコはアルに判断を求めた。
「俺は物事を派手に、大きくするならお前達以上に適任は居ないと聞いた」
「……いいわ。仕事内容を聞きましょう」
アルは笑って承諾した。
「SRTの先生はプロ中のプロと聞いているわ。そんな彼が私達をプロフェッショナルと見込んで仕事を依頼しているのよ。
なら、私達もプロとしてそれに応えるまでよ」
「ま、私は楽しければ何でもいいけど」
「アル様がそうおっしゃるなら」
便利屋の四人は頷き、SRTの先生に向き直った。
「いいだろう、契約成立だ。
お前たちへの仕事内容は単純かつ明快だ」
SRTの先生は、廃ビルからブラックマーケットを見下ろし、仕事内容を告げた。
「依頼料は1000万。経費は別途100万まで請求して良い。前金は必要か?」
「……はッ、前金は要らないわ。依頼完了を持って、支払ってもらうわ」
「オーケー。じゃあそれで頼むわ」
衝撃的な仕事内容に硬直していたアルだったが、すぐに気を取り直してそう答えた。
「……ひとつ、良いかな。こちらで別途人員の追加は認めてくれる?」
「守秘義務を守るのなら、好きにしろ」
「わかった。とは言え、肝心なことは全く教えて貰ってないみたいだけどね」
カヨコが目を細めると、SRTの先生は肩を竦めた。
「じゃあ、任せたぞ」
そう言って、彼は去って行った。
「どうする? メッチャ楽しそうだけど、明らかに手数が足らないよ」
「うん、だから追加の人員の確保を認めさせたんだよ」
「で、では、傭兵を雇うことになるんでしょうか」
社員たちがそんな言葉を交わしていると。
「いえ、彼女達に手伝って貰いましょう」
「え? 彼女達って?」
「……まさか」
カヨコは何かに感づいたように、アルの顔を見やった。
「ええ、アビドス高校に向かいましょう」
「話は分かりました」
ところ変わって、アビドス高校。
いつもの会議室で便利屋の四人を出迎えた対策委員会の面々は、彼女らの持って来た仕事に聞くことになった。
「みんな、お金に困ってるって話だったわよね? 依頼料は山分けでどうかしら?」
「とかなんとか言って、顔を見たかっただけなんじゃないの?」
にやにや笑うムツキを、キメ顔のアルは軽く肘内した。
「ホシノ先輩、どう思います?」
「うーん、リスクは高いけど、正直即金で500万円は魅力的だよねぇ」
ホシノはそうノノミに返した。
「金額は魅力的ですが、仕事内容は……。仕事の後に報復されるリスクもあります」
「なら、これを使えばいい」
リスクを懸念しているアヤネだったが、シロコは段ボールをテーブルに引っ張り出して、中身を空けた。
そこには、いつぞやの目だし帽が入っていた。
「え、それ使うの!?」
セリカは難色を示したが。
「なにそれ、超クールじゃない!!」
「ええぇ」
アルの反応は違った。ムツキは信じられないものを見るように彼女を見た。
「うんうん、名付けて覆面水着団ですね!!」
「勘弁してよ……」
ノリノリのノノミに、セリカは肩を落とした。
「うーん、みんな乗り気みたいだし、その仕事引き受けちゃおうか!!」
「……わかりました。ではその方向でバックアップします」
アビドス側も、そう言うことになった。
シロコはおもむろに覆面を被り、こう言った。
「ん、ブラックマーケットを襲う」
そして、作戦決行前日。
「今朝、ティーパーティー向けに、匿名の告発文が届きました。
この内容は事実でしょうか……!!」
ナギサは震えた声で、目の前の先生達に問うた。
トリニティの生徒会室に呼び出されたシャーレの先生と、付き添いにトリニティの先生とSRTの先生は顔を見合わせる。
「どこから漏れたんだ?」
「恐らく、ハナコ君だろう。なるほど、彼女らしい意趣返しだね」
「ま、作戦に支障が無いなら問題無いな」
「否定はなさらないんですね」
「“うん、そういうことになるかな”」
シャーレの先生は複雑そうな表情でそう答えた。
「本気なのですね? まさか──」
ナギサは息を飲んで、こう言った。
「──ブラックマーケットを、壊滅させるなどと!!」
それが、SRTの先生が持ち掛けた、先生達の計画だった。
「あそこは悪党の巣窟だ。
ある種必要悪の側面もあるにはあるが、所詮は犯罪の循環によって成り立ってるに過ぎない。
あそこに逃げ込んで捕まえられなかった犯罪者がどれだけいると思う?」
SRTの先生の主張はそうだった。
「“私は最初気が乗らなかったんだけど、やっぱりあそこは教育に悪いからね。あの場所をよりどころにしている生徒も少なからずいるけど、あんな場所に依存するべきじゃないよ”」
シャーレの先生も、既に覚悟を決めていた。
「戦争になります、わかっているのですか?」
「桐藤君。それでもやらなければならないのだよ。それが、大人の仕事というものだ」
トリニティの先生は得体の知れないモノを見る目のナギサに、そう優しく言った。
「戦争には成らないさ。こっちはその為に準備をしてきた。
やるのは一方的な蹂躙だ。俺は複数の生徒達に、あそこの治安維持組織や傭兵会社がどういう動きをするか、騒ぎを起こさせて戦力評定を行った」
それは、強盗が防犯カメラの前に現れ、警備会社が何分で到着するのか確認するのと同じ理屈だった。
「結果は、確実な勝利だ。俺に言わせればキヴォトスの戦術ってのは古臭い。技術ばかり先行してやがる。
……いや、俺らの世界の殺意が、天上の世界を上回ったってだけかもな」
SRTの先生はどこか遠い目でそう言った。
「桐藤君、これは正義の行いだよ」
「先生……」
「政治家にとって重要なのは、過程ではない。結果こそがその評価を決めるのだ」
諭すような自分たちの先生の言葉に、ナギサも覚悟を決めた。
「我々は何をすればよろしいでしょうか?」
「戦後処理を。牢屋はいくらあっても足りないぜ。なにせ、あの町丸々悪人しか居ない」
わかりました、とナギサは頷いた。
「それと、こっちは本来の仕事だが、アリウスについての報告だ。
連中は秘密裏にトリニティでの武装蜂起を企ててたみたいだが、聖園ミカの機転によってその一部を寝返らせることに成功した。
あんたが考えていたトリニティの裏切り者も、だ」
「それはいったい誰……いえ、聞かないでおきましょう」
「そうだね。我が校の生徒に裏切り者など居なかったのだよ」
ナギサは雇っていたSRTの先生の報告を受け取り、高度な政治的な判断を行った。
その選択に、トリニティの先生も笑みを浮かべて頷いた。
「ブラックマーケットを焼き尽くし、その災禍をもって俺達はアリウス自治区の支配者に宣戦布告としよう。
……全ては、キヴォトスと子供たちの為に」
SRTの先生は、SRTそのものは、獰猛に笑った。
「先生。要望通り、一万機の
「ありがとうリオ。無理を言ったつもりだったけど、よく揃えてくれたね」
ミレニアム。
「いいかマッドフェアリーども!! 明日、このマッドモルガン様の気に入らねぇリストトップを一掃してやろうぜ!! 全て焼き尽くした灰の上に、大魔女王帝国を築き上げんだ!! 本当のワイルドハントの時間にしようじゃないか!!」
「きゃーー!! マッドモルガン様ーー!!」
ワイルドハント。
「ナスターヴニクよ、退屈そうだな。そちらの好きな闘争ではないのか?」
「閣下。犯罪者などただのがん細胞に過ぎませぬ。社会の膿であり、ただのゴミ掃除なのです。闘争とはもっと、神聖なモノなのですよ」
レッドウインター。
「通常貨物に偽装し、現地までドローンを運ぶのです!!
通称ガブガブ作戦の成否は我々に掛かっていますからね!!」
「パヒャヒャ!! 先生、今日は楽しそうだね!!」
ハイランダー。
「いいか、お前達!! 先生達大人に全てを任せるわけにはいかない!!
ブラックマーケット全域を制圧後、全部隊を投入し一斉検挙を行う!! ヴァルキューレの意地を見せるぞ!!」
「ふ、久々に狩りとなるか。血が滾るな、カンナ」
ヴァルキューレ。
大人達の総力戦が、始まる。
「早く、早く、先生達がペロロ様グッズを焼き払う前に、救い出さなければ!!」
「待てヒフミ、先生やみんなが出払ってからだ」
「そうですね。私達が試験に向かうと信じている先生達や皆さんを騙すようで心苦しいですが」
「ホントにやるの? もう、信じられないんだけど。……でも、これはきっと正しいことだから」
あなたはどの先生に勉強などを教わりたいですか?
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トリニティの先生
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ゲヘナの先生
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ミレニアムの先生
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アビドスの先生
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百鬼夜行の先生