キヴォトス、先生大量発生中!? 作:ユメ先生
「百鬼夜行の先生?」
ワカモが自分たちの学校の先生の存在に関心を向けるのは、ある意味必然だった。
「そっすよ、ワカモさん。なんでも先生達の中で一番の美人だとか」
「それで一目見ようって、観光客とかいっぱい来てるらしいですよ」
今日、ワカモを雇っていた不良達は彼女にそう語った。
ワカモ達に敵対していた不良グループは、完膚なきまで叩きのめされ、地に伏している。
シャーレの先生に諫められ、世間様になるべく迷惑を掛けないように自制しているワカモはこうして傭兵まがいなことをして日銭を稼いでいた。
「ワカモさんって百鬼夜行を停学中なんすよね? 会ったことあるんすか? ──あれ?」
他愛もない雑談を振っただけの不良は首を傾げた。
すぐそこに居たはずのワカモの姿がどこにも無いのだ。
「ワカモさん、どこ行ったんすか!!」
「まだ報酬、渡してないのに……」
結局、不良たちがこの後ワカモの姿を見ることはなかった。
シャーレの先生には副担任として自分の補佐する各学校の先生を配属する権利があった。
権利と言っても、ゲヘナの先生を始めとした三大学校の先生が政治的なバランスの為に持ち回りで数日おきに手伝いをしているに過ぎなかった。
なので、一度に副担任として参加できる人数に制限もなかったので、他の学校の先生の要望があればいつでも副担任として手伝いを出来る、そんなゆるい制度だった。
「(つまり、我々の学校の先生や、他の女先生があの御方の側に近づけるということ……!!)」
それを想像するだけで、ワカモは言いようのない感情が内に湧いて来た。
それは嫉妬と憎悪だった。
「(私は生徒というだけであの御方の御側に常に侍ることが出来ないと言うのに!!)」
顔も知らない相手に、自分でも抑えきれないほどの情動を向けるワカモ。
彼女が即座に行動に移すのは当然のことであった。
ターゲットはまず、ミレニアムの先生か自分たちの先生の二択だった。
持ち回りなのでシャーレの先生に近づく頻度が多いミレニアムの先生と、彼に近づいて誘惑するかもしれない自分たちの先生。
どちらを先に襲撃するか、ワカモは身近な方を選択した。
ちなみに言うまでもないが、両方襲撃しないという選択肢は彼女には無い。
夜。観光客で賑わう百鬼夜行連合学院の商店街は静まり返っていた。
この自治区に幾つもある商店街でも、ここは学生の観光客向けの場所だった。学生は夜寝るのも仕事である。夜は完全に静寂に満ちていた。
酒を出す店やちょっと大人向けの繁華街はまた別の場所に固まって存在している。
「ったく、あのエロジジイども。
ちょっとおべっかつこうてやったら調子乗りはって。次触ってきたらどついたろか」
百鬼夜行の先生として、一応顔を見せてきた彼女は独り悪態をついていた。
色町というには学生の目の届く範囲にあるのでかなり健全な繁華街なのだが、勘違いする客は居るものだ。
帰り道に独り愚痴を言う彼女に、突如として銃弾の雨が降り注いだ。
だが、その直前に彼女の番傘が開いて銃弾を防いだ。
「……それ、奇襲のつもりなん? 殺気が駄々洩れやで」
返答は無数の手榴弾だった。
あらまあ、と百鬼夜行の先生は微笑んだ。
手榴弾が爆発し、商店街のメインストリートが爆炎と煙に包まれた。
仕留めたか、とワカモは目を細めた。
しかし、煙が晴れたところにあったのは煤けた番傘だけだった。
「あんたワカモやろ?」
ワカモが潜んでいた商店街の屋上に、声が掛けられる。
「なんでも、えらい世間様に迷惑かけて停学になったうちの生徒がおるんやって聞いてるで。
ホンマやんちゃやねぇ。うちも若い頃には覚えが──」
ワカモは声の方に銃弾を浴びせた。
「まだうちが話とる最中やろが!!」
「そうですか」
「ったく、これだから最近のガキは……」
「ん?」
月明りに照らされ、いつの間にか屋上に登っていた自分たちの先生とワカモが対峙する。
よく自分と似ていた。
濡れ羽のような黒い髪、狐の耳、艶のある立ち姿。
二人が並んでいれば、姉妹かと見紛うほどに。
ワカモは確信した。この女を生かしてはおけない、と。
彼女にキヴォトスの生徒達に共通する死に対する忌避感を期待してはいけない。彼女は本気の抹殺を決意した。
「あんた、もしかしてうちの生き別れの妹やないか……」
「下らない芝居は要りません」
「なんや、つれないわぁ」
百鬼夜行の先生は大仰に身を捩って見せた。
ワカモはそんな彼女の脳天に銃口を向ける。
「……撃てるもんなら撃ってみいや。何でそんなに恨まれとるのかしらんけど。
うちの知らんうちに彼氏でも惚れさせてしもうたんか?」
「あなたが悪いのですよ。あの御方の、シャーレの先生に近づくかもしれない薄汚い泥棒猫、赦せません……」
「なんや、あんなナヨナヨしたのがタイプなん?」
返答は銃弾だった。
ワカモの銃弾は百鬼夜行の先生の脳天に直撃した。
ばたり、と屋上にその身体が倒れた。
ワカモは確信した。仕留めた、と。
だが、その時だった。
百鬼夜行の先生の身体が、青白い蒼炎となって燃え上がり、屋上に瞬く間に広がった。
「なッ!?」
「よくも」
蒼炎が収束する。
ワカモに背後から纏わりつくように。それは瞬きの間に、百鬼夜行の先生の肢体となった。
「よくも撃ってくれたなぁ、クソガキぃ!!」
万力のような怪力で、ワカモの全身が締め上げられる。
だがそれだけでは説明ができない。
尾だ。狐の尾だ。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ。
彼女の尾が、ワカモの四肢を這うように締め上げている。
「……ふぅふぅ、なにガキ相手にキレてんのや、うちは」
百鬼夜行の先生はワカモを締め上げる力を緩めずに、我に返ってそうぼやいた。
「あんた見てると、若い頃思い出しますわ。……気に入ったで」
「は、放しなさい!!」
「なあ、ここキヴォトスやし、非力な大人の一人ぐらいどうとでもなると思うたん?」
艶めかしい声で、彼女はワカモの耳元で囁いた。
「でもな、もっと根本的なこと忘れとらん?」
百鬼夜行の先生は、ワカモの背中をまさぐり、ゆっくりと手を下へと向ける。
そして、ワカモの尻尾の付け根を掴んだ。
「ひう!?」
「────狐の格は
つまるところ、ワカモが子供である限り。
そのルールは覆らないということだ。
「あんた、どうせ学校に通っとらんのやろ? ならちょっとばかし灸を据えても構わんやろ」
ワカモの中の何かが、急速に失われていく。
「あっあっあぁ!!」
ワカモがワカモであると証明する存在が、失われていく。
身体が縮み、毛で覆われ、銃を握れなくなる。
かたん、と路上にワカモの銃が転がり落ち、ばさりと彼女の衣服が屋上に落ちる。
「随分可愛らしゅうなったなぁ、お似合いやで」
これは、何の変哲もない怪異譚。
ヒトの姿をしたナニカの正体を暴いた者の末路という、有り触れた怪談の顛末でしかなかった。
「“ブライダルフェアですか?”」
それは、トリニティでのいざこざを何とか収束し、シャーレの先生が自分のオフィスにようやく落ち着けるようになった六月の初頭の事だった。
「うむ」
と、ソファーに腰かけるトリニティの先生は頷いた。
「例の機関紙で報じられた二人は覚えているかね?」
「“……ええまあ”」
「生徒会長の彼女の方なのだが、実は卒業してもキヴォトスに残って先生の方を支えると言っているそうなのだ」
キヴォトスにおいて高等学校または高等部を卒業した生徒は、キヴォトスを去るのが通例だった。
生徒達はみんな、それが当たり前であり、常識であり、疑問を持つことなど無かった。
「“私はてっきり先生の方と一緒にキヴォトスを去るものだと”」
「私もそう思っていたのだがね。そう言う前例が出来るとなると、話が変わって来るだろう?」
つまりそれは、生徒達の進路が一つ増えたと言うことだった。
「彼も責任を取るつもりであるようだし、これ以上は外野がとやかく言うべきではないだろう。
そして、それを知ったかの学校の自治区にある結婚式場が、これを機に大々的に宣伝をしようと、私の方に話を持って来た」
「“トリニティの先生にですか?”」
「まあ、うちの生徒達は結婚式のイメージをブランディングするにはピッタリだろうからね」
たしかに、とシャーレの先生は頷いた。
結婚とは清純や純白などがイメージされる。ミッション系の学校であるトリニティには打って付けであろう。
「そこでだ、希望する我が校の生徒のウエディングドレスの試着や挙式セレモニーを行い、プロモーションを行おうと考えたわけなのだがね」
「“それは素晴らしいですね”」
シャーレの先生は生徒達の進路に結婚という選択肢があることを歓迎していた。
それ自体は特に問題は無いのだが。
「その新郎役はシャーレの先生、君にお願いしたいのだ」
「“ええッ!? 私ですか!?”」
「うむ、こういうのは若い男女がやるべきだろう?」
確かにシャーレの先生の結婚式場のイメージは若い男女ではある。
そこに反論は無かったのだが。
それに異論を唱えた者が居た。
いや、一匹がいた。
シャーレの先生のオフィスの隅っこに毛布が置かれるなどして整えられたスペースに丸まっていた黒キツネが、ギャーウギャーウと吠え始めた。
「“ああ、タマ。どうしたんだい?”」
シャーレの先生が椅子から立ち上がって、屈むと黒キツネは彼の元に猛ダッシュしてコーンコーンと甘え始めた。
ちなみに狐の鳴き声であるコンコンのオノマトペは、求愛や甘える時の鳴き声で、イヌ科の動物らしく吠えたりもする。
「おやおや、妬かせてしまったかね?」
そんな一人と一匹の様子を、トリニティの先生は微笑ましく見ていた。
「“あ、すみません、トリニティの先生”」
「いや構わないよ。動物のすることだからね。
シャーレの先生も激務の合間に動物に癒される余裕があるのは良いことだ」
トリニティの先生はペットを飼う余裕が出来たことに、うんうん、と頷いている。
「くくく、話は聞かせて貰ったぞ!!」
反対側のデスクから作業中だったゲヘナの先生が顔を出した。
そう、今日の副担任は彼だった。
「うちの生徒からも一人出して貰おうか」
「……貴様とそちらの学校は関係ないだろう」
トリニティの先生は半眼になってそう言った。
だが、その時、シャーレのデスクに備え付けの電話が鳴った。
「“はい、連邦捜査部シャーレです”」
『私だ。話は聞かせて貰ったよ、我が校からも一人出させてもらおう!!』
ミレニアムの先生だった。恐らくコタマ経由で彼女に連絡が行ったと思われる。
「…………」
「どうした、爺さん。あんたの大好きな政治の時間だぜ。シャーレの先生を独占するのはよくねぇよなぁ」
「……仕方あるまい」
トリニティの先生は溜息を吐いてそう言った。ゲヘナの先生はニヤニヤしながらガッツポーズをした。
『うちはユウカを出そう。構わないね?』
ミレニアムの先生に至ってはもう相手を決めているようだった。
「さーて、うちは誰を出そうかな」
「“ゲヘナの先生……。それにミレニアムの先生も”」
「まあ、聞けよ。キヴォトスに来た男先生って六割が若くて独身なんだ。そんな連中にキヴォトスで恋愛をするなっても酷だろう?」
ゲヘナの先生の言い分は、仮にも男であるシャーレの先生にも理解はできる話だった。
「機関紙の件でくっ付いた二人も、最終的に連邦生徒会は各自治区の判断に委ねますってことになった。
先生達が健全な自由恋愛の末に婚約でもして、キヴォトスで結婚式を挙げるってなら喜ばしいことじゃないか。なあ、トリニティの先生?」
「……そうだな。我々は生徒達が大人になった後の関係までは口を出す権利はない」
「だろう? そう言う事例はこれから幾らでも出るだろうし、生徒達にもそういう進路もあるって示した方がいいだろ」
『そう言うのは、下手に締め付けて隠れてやらせると余計に悪化するのは目に見えているからね』
女性であるミレニアムの先生も、ゲヘナの先生の意見に理解を示した。
『キヴォトスで死ぬまで禁欲生活は、筆舌にし難い苦痛だろうからね。“間違い”はなるべく抑制するべきだ』
「多少の“間違い”は別に構わねぇと思うけどよ、お互い人間だしよ」
「その“間違い”が起こるのは、まあ百歩譲っていいだろう。だがそれを容認するかは別だろう」
それは三大学校の先生達による生々しい意見の交換だった。
「それに、トリニティの先生。あんたの魂胆は分かってる。
ブライダルフェアで外堀を固めようとするのはよくねぇよなぁ」
「ふふふ、何のことかね」
「とぼけんな、腹黒ジジイ」
トリニティの先生は曖昧に笑うが、ゲヘナの先生は追及を緩めない。
「シャーレの先生はその気は無いって言ってんだ。分かってんだろ」
「おや、貴様の理屈では自由恋愛で結ばれるのは構わないのだろう? それに不特定多数の生徒と関わる立場なのだから、特定の相手を決めている方が信用を得やすいはずだ」
「で、その特定の相手やらがトリニティの生徒であると?」
「そうあれば望ましいがね」
バチバチににらみ合う男先生二人。
「“はぁ、タマ。君だけだよ私の癒しは……”」
「コーン♡」
勝手に自分の結婚相手を決められそうになっているシャーレの先生は腕の中の黒キツネを抱きしめて項垂れた。
黒キツネはそんな先生を慰めるように頬を舐める。
先生はますます顔を落とし、黒キツネの毛に顔を埋めて吸い始めた。狐吸いである。
黒キツネはそのその事実になぜかビクンビクンし始めたのだった。
そうして、件のブライダルフェアは三大学校の先生達の思惑が錯綜し、選りすぐりの相手が選ばれることになった。
そして当日。
「せ、先生、今日はよろしくお願いします……」
トリニティからはハスミだった。
彼女はその恵体を縮こまらせるように緊張し、顔を赤らめさせていた。
「“やあ、ハスミ。よろしくね”」
「どうだね、シャーレの先生。君は少々働きすぎる。羽川君が相手なら、毎日家に帰りたくなるとは思わないかね?」
「“……”」
そんなことを耳打ちされ、シャーレの先生は頭が痛くなりそうだった。
トリニティの先生が割とハナコと近い感性を持っているのは先日の合宿の件で知らしめられたのである。
「なかなか良いチョイスだな、だがこういうのは先生の好みもあるだろ」
ゲヘナの先生は勝ちを確信した表情で、自分が連れてきた生徒の背を叩いた。
「いたッ、先生、気安く触るな!!」
「“そ、その声は!!”」
「はあ、なんでこんなことしないとならないんだ……」
彼が連れて来たのはイオリだった。
彼女を目にしたシャーレの先生はあからさまに態度が変わった。
「“今日はよろしくね、イオリ!!”」
急にテンションが上がったシャーレの先生を見て、イオリは心底嫌そうな態度を示した。
「な……」
なお、その光景を目の当たりにしたハスミは女のプライドが刺激された。
「……イオリさん、負けませんよ」
「勝手にやってくれ、と言いたいところだがトリニティに負けるのは癪だな」
生徒達のやる気が十分に満ちた頃だった。
ヌッ。*1
「ほら先生、こちらですよ。あ、シャーレの先生。今日はよろしくお願いします」
「“うん、よろしくね”」
「うちの先生がやればと思いましたが、企画の趣旨は理解しています。……え、ええと、その、ウェディングドレスを着るの、楽しみですね!!」
ふと見せるユウカの乙女の表情に、ハスミとイオリは確信した。
即ち、彼女もまた強敵である、と。
その後、三人はウェディングドレスを試着し、新郎役のシャーレの先生と写真を撮った。
「(どうしましょう、実は試食会もあると聞いて応募したとは言えません……。こうしてドレスを着ると緊張が……写真写りは大丈夫でしょうか……)」
ハスミはパニエを膨らませるタイプの、体形が目立たないウェディングドレスを選んだ。
純白のドレスは彼女の黒髪と大きな翼に対比して良いアクセントになっている。
「(はあ、先生に頼まれたとはいえ、アコちゃんには嫌味言われるし、相手はシャーレの先生だし、変態だし……なんでこんなことやってるんだろう、私)」
イオリは敢えて学校色を出して、黒いウェディングドレスを選んだ。
だがそれが彼女の小麦色肌と合わさって、エキゾチックな魅力を引き出していた。
「(れ、冷静に考えたら、新郎役がシャーレの先生って。うちの先生もなんでこんな、まったく余計なお世話っていうか、正直ありがたいですけど、でも何だか恥ずかしい……)」
ユウカは若干黄色みがある温かみのあるタイプのウェディングドレスを選んだ。
彼女らしく、この式場の主力のドレスを選んだ。
「“みんな、綺麗だね!!”」
シャーレの先生は心の底から彼女達を褒め称えたのだが。
「……なあ、爺さん。やっぱりうちの生徒を誰かの嫁にやるの嫌じゃね?」
「言うな。私も上の娘を嫁にやった時のことを思い出している」
「う、うう、ユウカ……綺麗だよ」
こんなイベントに呼びつけておいて、いざその光景を見ると複雑そうにしている男二人と、感激して泣き出しているミレニアムの先生。
シャーレの先生は思った。この人たち勝手すぎる、と。
「ああもう先生、まだ撮影が終わったばかりですよ」
ユウカは感涙を流す自分の学校の先生の背中をさすり始めた。
「そうですね、この後は挙式のセレモニーの体験もあります。それを目の当りにして大丈夫でしょうか」
「そんな大げさな……実際に結婚するわけでもないし」
「おや、ではイオリさんは最後でよろしいですね?」
「はあ? そんなこと言ってないでしょ。先生は私が最初が良いよね?」
ハスミとイオリは視線を交わしてにらみ合った。
ウエディングドレスを着ていなければ一戦交えそうな雰囲気である。
「二人共、私をのけ者にしないでください!!
こういう時はじゃんけんで決めましょう!!」
ユウカはにらみ合う二人の背中を押し始めた。
「それじゃあ先生、私達は控室に向かいますので式場で順番にお願いします」
「“うん、任せて”」
そうして、ユウカ達は式場のスタッフに案内されて控室に向かって行った。
先生達も式場に向かう。
式場にはスタッフがカメラを用意し、宣伝の為の撮影の準備などされていた。
神父であるロボットとシャーレの先生が向かい合い、新婦役の生徒達を待っていると。
ドカン、と建物のどこからから爆音が聞こえた。
「なんだ、何かトラブルか?」
「キヴォトスでは式場でも爆発が起こるものなのかね?」
「さあ、どうなんだろう」
三大学校の先生達はお行儀よく並んで座りながら、キヴォトスの日常に完全に慣れ切っていた。
そうしていると。
「は、花嫁入場です!!」
困惑気味のスタッフがそう言った。
撮影スタッフ達も撮影を開始する。
なんだ大丈夫か、と全員が思った時だった。
白無垢を纏った生徒が、式場に現れたのだ。
来場者席で見守っていた先生達は顔を見合わせる。誰だ、あの子は、と。
「“わ、ワカモ!? なんでここに……”」
「あなた様。この場でそのような疑問は無粋ですよ」
驚くシャーレの先生だったが、彼女ならやりかねない、と思って一旦自らを落ち着けさせた。
ここは彼女を追求するよりも、一通り流れに身を任せた方が彼女が暴れなくて済む、と判断したのだ。
「え、えー、それでは、新郎新婦はお互いに永遠の愛を誓いますか?」
神父ロボットは困惑しながらも、二人に問うた。
プロモーション映像用なので、長々とした結婚式を再現する必要は無い。肝心のシーンを演出できれば、後は編集すればいいのだから。
「“誓います”」
「誓います」
「では、誓いのキスを」
ワカモは目を閉じて顔を真っ赤にしているが、シャーレの先生は微笑ましく笑いながらカメラにキスしているように映るよう顔を動かした。
彼女はいつまで経ってもその様子なので、彼は一指し指でワカモの唇に触れた。
「~~~~~~~!!!!」
羞恥に耐えきれなくなったワカモは、式場から逃げ出した。
「“あ、ワカモ!!”」
シャーレの先生が彼女を追おうとした時だった。
「先生、無事ですか!!」
武器を引っ提げた花嫁姿の三人が式場に突入してきた。
その花嫁衣装は若干焦げたり銃弾の穴が開いていた。
「お前ら、どうしたんだ!?」
「すみません、先生方。先ほど我々は何者かに襲撃され、気を失っていました!!」
ハスミが端的に状況を報告した。
「今すぐ追撃する、シャーレの先生、指揮を!!」
「“待って、追わなくていいよ”」
「先生?」
イオリは彼の対応に、首を傾げた。
「うう、せっかくのウエディングドレスが……」
「こんな格好でなければ不覚を取らずに済んだものを」
ユウカとハスミが口惜しそうにしている。
「まったく、とんだトラブルがあったものだ」
三人のドレスがこの有様では、撮影の続行は難しいだろう。トリニティの先生は溜息を吐いた。
全員が式場であるチャペルを出ると、そこには脱ぎ捨てられた白無垢が落ちていた。
「なんや、皆さん。お集りになって。なんか祝い事でもあったん?」
すると、敷地の外には百鬼夜行の先生が現れたではないか。
彼女は見覚えのある黒キツネの首根っこを掴んでいる。
「“百鬼夜行の先生……なぜここに?”」
「散歩や。ほれ、これ逃げ出してた偶々見っけたわ」
「“あ、タマ!! ありがとうございます!!”」
なぜか不満そうな黒キツネは、シャーレの先生に抱かれると顔を隠すように胸元に顔を埋めた。
その時、ユウカの頬に水滴が落ちた。
「あ、雨……こんな晴れてるのに」
「天気雨やねぇ」
百鬼夜行の先生は、青空から振る雨粒を認めて、番傘を開いた。
結局、ブライダルフェアのプロモーション映像は唯一撮影に成功したワカモとの映像が採用された。
ホームページには他の三人の生徒と一緒に撮った写真が並べられ、シャーレの先生は満足そうそれを眺めていた。
「“私も生徒達の結婚式に呼ばれた時は感動しちゃうのかな……”」
「コーン♡……」
「“ああタマ、どうしたんだい?”」
机の上に飛び乗って来る黒キツネに、書類を荒されてはたまらないとシャーレの先生は彼女を抱き寄せた。
「“はは、お前は甘えん坊さんだね”」
黒いキツネは、何も語らない。
その胸の内を知るのは彼女だけだった。
天気雨は別名、狐の嫁入りとも言われるそうですね。
ソシャゲと言えば花嫁衣裳の別バージョン。ブルアカにはそう言うの無いので、書いてみました。
次回こそは本当にブラックマーケット制圧をやります。
感想や高評価を下さると作者の励みになりますので、どうかよろしくお願いします!!
あなたはどの先生に勉強などを教わりたいですか?
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トリニティの先生
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ゲヘナの先生
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ミレニアムの先生
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アビドスの先生
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百鬼夜行の先生