キヴォトス、先生大量発生中!?   作:ユメ先生

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ご指摘があったので、前回の最後の方のイロハの台詞を、一部修正しました。
イロハは多分、アリウスの存在を事前に知っていた筈っぽいので。


あと、今回の前半部分ギャグとして、真に受けないでくださいね?
では本編どうぞ。



SRTの先生

 

 

 

「明日より、我が校にも先生が着任する」

 

 その言葉に、ざわめきは起こらない。

 

 ここはSRT特殊学園の宿舎。

 校舎も人員も訓練内容も任務も一般人には非公開。

 

 キヴォトスの各地から選抜された、エリート中のエリート。

 ここにいるのはただの女子高生ではない。皆、この年齢で厳しい訓練を受けた軍人なのだ。

 他の学校のように、私語をすれば厳しい叱責を受ける。

 

 この学校はこれまで教員は居なかった。

 BDと教本による自己学習と徹底した訓練によって、彼女らは精鋭に至ったのである。

 怠け者には居場所など無い、そもそもここに入ることすらできない。

 

 そのような、厳格な環境であった。

 今では三年生部隊の各員が、持ち回りで後輩達の教官役として自分たちのノウハウを教えている。

 

 そんな彼女達に、新しく先生が着任する。

 

「大国の特殊部隊に所属し、その後に職を辞するも紛争地域で数多の特殊部隊の指導と訓練をして回り、対テロ、対災害、対諜報、対特殊部隊戦などに熟知した、ベテラン中のベテランだ」

 

 今日の教官役、ユキノがそう各員に告げる。

 

「そんな御方が我々の能力を向上させる為に指導をしてくださる!!

 各員、敬意をもって指導を賜るように!!」

 

 はい、と各部隊の生徒達が声を挙げる。

 皆、期待でいっぱいだった。

 

 そんな凄い人物に指導されることに、期待に胸を高鳴らせていた。

 

 

 そしてやってきたのが、この男だった。

 

「よう、お前達が俺の生徒か。本当に十代のガキどもなんだな」

 

 かなりリアルな首元まで覆う狼男のマスクを被った、軍服の男だった。

 男性と言うこと以外、思いのほか年寄りではなさそうと言う以外、何も分からない。

 

 そんな奇天烈な男の登場に、流石に生徒達も困惑した。

 

「今日からお前らの先生として、教官の任を承った。

 これでもウルフフェイスなんて言われて業界じゃそこそこ有名だったんだぜ。

 お前らを一人前の殺戮マシーンにしてやるから、これからよろしくな!!」

 

 軽い。軽薄そうなその態度に、生徒達の不信は頂点に達した。

 

「あの、なんでそんな被り物をしてるんですか?」

 

 手を挙げて生徒の一人が言った。

 

「ナパームで顔をやられてな。お前達が俺の顔を見たら、泣いちゃうかもな」

 

 彼は肩を竦めながら、おどけるようにそう答えた。

 

「先生、我々はキヴォトスから集められた精鋭中の精鋭です。

 これまで厳しい訓練も受けてきました。そのように茶化すのはやめてください」

 

 そう言ったのが、ミヤコだった。

 彼女は過酷なSRTの選抜試験を乗り越え、今日まで訓練してきた。

 その自負が彼女にはあったのだ。

 

「少なくとも、顔を見せないような相手に、子ども扱いされる謂れはありません」

 

 彼の隣に並んでいたFOX小隊からユキノが前に出ようとしたのを、彼は制した。

 

「悪かった」

 

 彼は意外にも、頭を下げた。

 

「言われた通り、お前達を子ども扱いなどしない」

 

 顔を上げた彼は、据わった目で彼女達を見た。

 

「それどころか、女扱いもしない。いや、人間としてすら扱わない」

「ッ!?」

「だからお前達も、俺を先生などと呼ぶな。他の連中はともかく、俺はそう呼ばれる資格など無い。

 俺のことは教官とだけ呼べ。わかったか、メスガキども!!」

「は、はい!!」

 

 生徒達は一斉に返事をした。

 

「てめぇらのプロフィールは既に頭に叩き込んである」

 

 彼はクルリとFOX小隊の面々を見やった。

 

「お前達が最優秀部隊と聞いた。

 だがそんなものは今日からゴミだ。全部捨てろ」

「はい、教官!!」

「最初と最後にサーを付けろクソガキ!!

 今日から貴様らは血と肉が通うだけのダッチワイフだ!!

 俺のイチモツをイキリ立たせるだけしか能のない、マスカキに使うティッシュのカスだ!!」

 

 余りにも下品すぎる罵倒に、あのユキノ達さえも面食らった。

 

「返事はどうした!! 若けりゃブスでもジジイ相手にアンアン鳴けんぞ!!

 さっさと俺のモノをオッ立ててみせろ!!」

「サー、イエスッサー!!」

「いい返事だ、マグロかと思ったぞ、ビチグソどもが!!」

 

 容赦ない罵倒に、クルミのようなプライドの高い生徒は屈辱に震えて涙さえ浮かべていた。

 

「てめぇらは穴だ。若いだけの穴だ。それ以外の価値なんざねぇ。

 まったく羨ましいぜ、若いってだけで使用価値があるんだから」

 

 エリートの彼女達は理解していた。

 これは、兵士たちの心をへし折り、精神的に再構築させ、軍隊として再構成する為に行う教育手法だ。そうやって集団としての自尊心を高め、結束力を強めるのである。

 

 しかし、これは主にストレスに対処するための訓練であり、ストレスに弱そうな者を標的にする。誰彼構わず罵るわけではない。

 

「そこのキツネ穴、名前は?」

「く、クルミ、です、サー!!」

 

 そして案の定、彼女が標的にされた。

 

「なんだその口調は!! 見た目どおりツンデレなのか!?

 今時そんな属性流行らねぇんだよ、その洗濯板でどうやって男のモノを扱くんだ、やって見せろ」

「サー、ノー、サー!!」

「ああ悪かった、洗濯の仕方もわかんねぇのか商売女以下だな!!

 これなら油揚げにナニ突っ込んだ方がマシだろうな!!

 今日からお前はツンデレ御揚げだ、言いあだ名だろう、ほら喜べ!!」

「サー、イエスッサー!!」

「何か言いたそうだな、優等生マ●コ」

「サー、ノー、サー!!」

 

 仲間を悪しざまに罵られ、ユキノですら顔に出てしまっていた。

 

「てめぇは男に貢いで、最終的に撃たれそうな顔してやがんな!!

 頼まれもしねぇことをせっせとやって、最期に捨てられるわけだ!!

 お似合いだなッ、お前のことはオナごんと呼ぼう。嬉しいか!?」

「サーイエッサー!!」

「聞こえねぇぞ!! お前だったのか、オナごん!? てめぇの持ってきた魚の口にナニ突っ込んで扱けってのか!?」

「サーノーサー!!」

 

 先生の、男の視線が部隊ごとに並ぶ下級生たちに向けられた。

 彼女達がびくりと震えた。

 

「お前の名前は何だ、ウサギ頭」

「サー、月雪ミヤコです、サー!!」

「そうか、そこのキツネ穴共と違って、ウサミミはついてねえんだな!!

 お前らはRABBIT小隊……いや、ウサギモドキウサギ小隊で良いな!! キヴォトス原種の野生生物だ、ほら鳴け!!」

「サー、イエッサー!!」

 

 RABBIT小隊の四人は必死にそう叫んだ。

 

「兎に声帯はねえんだよ馬鹿タレ!!

 もっと大声出せねえのか、ウサギじゃねえだろお前ら!!

 それとも穴に指ツッコんでオナってんのか!! やっぱりウサギじゃねえか、万年発情しやがってよ!!」

「サーイエッサー!!」

「そこのお前」

「ひぅ!?」

 

 彼に指名され、ミユが怯えたように震えた。

 

「そんなんで男誘えると思ってんのか!! もっと声出せ!!」

「さ、サーイエッサー!!」

「なんだその萌え声は!! てめぇは萌え声豚ホイホイって呼ばせてもらおうか。

 ほら、その声で豚どもにケツ突き出してひいひい鳴いてみろ!!」

「サーイエッサー!!」

「そんなんで声豚どもが満足するか!!

 その甘ったるい萌え声が枯れて、声優が変わったって炎上するまで叫ばせてやる!! オワコンになったらゴミ箱にポイだ、わかったか!!」

「サーイエッサー!!」

「隣のお前は?」

「ッ、サキです、教官、サー!!」

「お前は頼み込めば一発ヤらせてくれそうな顔してんな!!

 タダでヤれるとは見下げ果てたもんだ!! その程度の価値だってことだな、どうなんだタダ穴!!」

「サーノーサーッ!!」

「お前は鉄帽を被ってるから、タダヘルと呼ぼう。エロソシャゲのイベント配布でエロシーンが見れるキャラみてえだからな!!」

 残りのお前は……」

「(ドキドキ……)」

「お前はいいや」

「えー」

 

 モエはスルーされた。

 

 生徒達を一通り罵倒し尽くすと、彼は元の位置に戻った。

 

「てめぇら揃いも揃って薄い本のネタにしかならないようなラブドール程度の処女揃いだが、安心しろ!!

 俺がお前達を使い潰して、歴戦のコキ穴として壁に晒してケツ丸出しでダブルピースした写真を張り付けてやる!!

 そうしてようやく貴様らは人間に戻れる!!

 一回十円以下の便所を卒業し、キヴォトスを混乱に陥れるクソどもを掃除する清掃人になるのだ!!」

 

 狼男のマスクから覗く剣呑な視線が、彼女達を射抜く。

 

「人間に戻れるまで、俺を憎む以外の娯楽が無い生活をさせてやる。覚悟しろよ!!」

 

 サーイエッサー、と生徒達は彼に叫んだ。

 

 そして、地獄の一か月が始まった。

 

 彼女らの先生は、生徒達を徹底的に肉体的にも精神的にも苛め抜いた。

 

 屈強な大人の八割が脱落すると言う特殊部隊訓練を平気で適用し、彼女らの思考能力を完全に奪った。

 

 レッドウインターの極寒地を超え、ゲヘナの火山地帯を登山し、アビドス砂漠を駆け、オデュッセイア海洋学校の海域を泳いで横断する。

 少しでも遅れれば、罵声と共に先生の愛銃が火を噴いた。

 彼は先生達で初めて、生徒達に銃をぶっ放した先生となった。

 

 三年生部隊には、下級生部隊と別に特に厳しい訓練を課した。

 

「はあ、はあッ」

「どうした、オナごん。そんなんで男の気を引けると思ってんのか!!

 お望み通り俺のイチモツくれてやる!!」

 

 彼の愛用のリボルバーの銃弾がユキノに浴びせられる。

 

 彼女らは地上戦、水中戦、生身で空挺をさせられ、その上銃底だけを使用し山登りをさせられた。

 

 後に彼女らに地獄の一か月と称された訓練を終えた三年生部隊は、英雄だった。

 

 宿舎のラウンジに帰り、如何に過酷だったかを後輩たちに語る三年生たち。

 

「アビドスの砂漠でさ、ユキノの奴ッ、流砂に落ちたのよ!! ドボンってね!!」

「や、やめろクルミ、その話は……」

「あれは酷かったね。流砂は底なし沼だから、引っ張り上げた時は泥だらけで、装備や服を脱ぐしかなかったもんね」

「その後五キロ走らないと行けなかったから、ユキノは泥を乾かしてからそのまま走ったんだよ」

 

 ニコとオトギも笑って、自分の部隊のを隊長をからかう。

 

「流砂の泥はばい菌の温床だ。擦過傷が出来たりしたら破傷風の原因になる……ああするしかなかったんだ」

 

 狐耳をへにゃり、とさせながらユキノは恥じらいつつそう言った。

 クルミが楽しそうに話を続ける。

 

「私達がランデブーポイントに到着したら、教官が目を見開いちゃってさ。すぐに何があったのか察して、自分の分の水筒を差し出して、これで身体を洗えって」

「素っ裸で教官の前に出たんですか、ユキノ先輩!?」

「ちゃんと装備で前は隠していた!!」

 

 後輩が茶化し、ラウンジは笑いが起こる。

 

「教官もうちらの訓練を一緒についてくイカレ野郎だったけど、その時ばかりは後半の方脱水症状起こしてたよね、あれ」

「まあ、あんなマスクを着けたままだしねぇ」

「ユキノも心配してたよね」

「私の失態が原因だからな……」

 

 そんな些細なモラトリアムもそこそこ、次は座学と実習だった。

 

 彼はSRTの教本や教育用BDを確認すると、命が無い、と放り捨てた。

 

「ここに反政府軍が展開し、軍本部に強襲をかけてきた。

 絶体絶命のピンチだ。お前達ならどの位置に移動し、この局面を乗り切る?」

 

 教室で黒板にチョークで彼は戦局図を描き、椅子に座って授業を受ける生徒達に問う。

 

「はい、我々の部隊ならポイントBにて、要人の救出を優先します!!」

「いや待って、ここは友軍の救援が至急の課題でしょう!?」

「ここに避難民の集団が居るじゃない!!」

 

 彼の出す問題は、どれも本物の殺し合いの現場だった。

 徹底的に相手の命を、尊厳を、奪い合う無慈悲な世界だった。

 

 

「お前達、これを見ろ」

 

 先生はグラウンドに彼女らを呼び出し、十数個の鉄の檻を搬入させていた。

 

 そこに居たのは、犬だった。

 

「お前達に課題を与える。この犬を各部隊で一匹、どのような方法でもいい────殺せ」

 

 彼の命令に、生徒達は震えた。

 

「ここに居る犬っころは、どいつも人を噛んで殺処分される予定の奴らだ。

 即ち、市民に害を与えた敵だ。殺せ」

 

 彼女達は怯えながらも、実行した。

 

 自分達の愛銃で撃ち殺したり、素手で絞め殺したり、拷問の末に殺したり。

 最後に、自分達が奪った命を校庭の片隅に埋めて簡素な墓を建てた。

 

 そうして、彼女達の訓練は一通り終えることになった。

 

 

「諸君、良くここまで過酷な訓練に耐えた!!」

 

 グラウンドに並ぶ彼女達に、先生は言った。

 ひと月前の彼女達とは別人だった。

 誰もが表情が荒み、目から光が消え、飢えたケダモノのように剣呑な雰囲気を醸し出していた。

 

「お前達は人形を卒業し、キヴォトスを守護する使徒となった!!

 俺はお前達を誇りに思うぞ!! 俺はお前達を我が子のように思っている!! 俺はお前達の銃弾すら、喜んで受け入れよう!!」

「サーイエッサー!!」

 

 生徒達が一斉にそう応じた。

 

「だが、訓練の日々は終わらない!!

 次にお前達がするべきことを伝えよう!! 実地演習を行う!! 実戦に勝る訓練は無い!!」

 

 彼はそう言って、任務を与えた。

 SRTの生徒達は各地に散り、身分を隠しながら戦闘や諜報を行った。

 

 そんな日々が少し続いたある日、ミーティングで先生が不在の時に、ミヤコはユキノに言った。

 

「ユキノ先輩。少しよろしいですか」

「どうした、月雪小隊長」

「……」

 

 ミヤコは少しだけ躊躇った後、こう言った。

 

「教官が我々に課す実地演習は……単なる職権の乱用では?」

 

 そうだった。

 彼女らの先生は、実地演習や実地研修などと言って、SRTの部隊を運用している。

 それは明確に、規定違反だった。

 

 SRTに命令できるのは、連邦生徒会長のみ。

 彼女らの先生の身分は単なる教職員に過ぎない。

 命令権などある筈もない。

 

「……防衛室には全て、演習や研修の内容を報告している。

 そして教官は私に命じた。自分がお前達を裏切るようなら、躊躇い無く撃て、と」

「ユキノ先輩!!」

 

 堪らず、ミヤコは声を挙げた。

 

「教官は、貴女に命令する権限はありません!!」

「だが、彼は我々を裏切ってなど居ない」

「納得がいきません!!」

 

 ミヤコの主張は尤もだった。

 彼にSRTの命令権は無い。今の彼女達の行動は口実こそあれど、完全にグレーであった。

 

「SRTは、キヴォトスの法執行の最高機関!!

 それが私的に利用されるなど有ってはならない筈です!!」

「私的、私的だと?」

 

 ユキノは自分のデスクに行き、これまでの演習や研修の内容がまとめられた報告書の束を取り出し、ミヤコへ突き出した。

 

「どれも危険度が高い犯罪集団の撃滅、悪徳企業の実態調査にそれのリーク、どれもこれも社会に貢献する働きばかりだ!!」

 

 ミヤコは、彼女の迫力に気圧された。

 同時に、憧れていた先輩が変わってしまったことに気づいてしまった。

 

「……連邦生徒会では、指揮系統が浮いたこの学校を廃校するという話も出ているらしい」

「ッ!? そんなッ」

「我々は実績と、連邦生徒会への忠誠を示さなければならない。

 キヴォトスの平穏を脅かす者と戦うには、それ以外には無いんだッ」

 

 ユキノも苦渋の表情だった。

 彼女もミヤコが正しいことは分かっているのだ。

 法治社会で、武力が私的利用されているなんて有ってはならない。

 

 だがその正しさは、己の身を亡ぼす危うい正しさだった。

 特殊部隊とは、決して輝かしい功績を遺す部隊ではない。

 

 汚れ仕事や裏工作、敵を陥れることも任務として実行しなければならない。

 ユキノは彼女の正しさを憂いていた。

 

「……私も、月雪小隊長が正しいことは分かっている。

 しかし、私には教官に従う他ない。他の皆も同じだろう。

 だが分かって欲しい。誰もが、我が身可愛さの為ではない、と」

「それは欺瞞ですッ」

 

 ミヤコは叫んだ。

 

「正しい手続き、正しい方法!! そして、正しい正義!!

 それがSRTの理念ではないのですか!!」

「私に何を言ったところで、何も変わらない」

 

 ユキノは、ミヤコにこう諭した。

 

「明日教官に、君の意見を陳情するといい」

 

 それが別れになると理解しながら、彼女はそう言う他なかった。

 

 

 

 翌日のホームルームの時間に、ミヤコは自分の先生に訴えた。

 切実に、心の底から。

 

「ふう」

 

 彼は溜息を吐いて、ユキノを見やった。

 

「なんで思想チェックの段階で、弾かれてなかったんだ?」

「人員の選抜は、連邦生徒会長が行うので」

 

 そうか、と彼は寂しそうにこう言った。

 

「ユキノ。RABBIT小隊の全員を停学処分にする」

「わかりました」

「ユキノ先輩!!」

「除籍されないだけマシだと思え。今は頭を冷やせ」

 

 ユキノは淡々とそう言った。

 

「ちょっと待ってくれ!! 私達もか!?」

「そ、そうですよ、教官!!」

「連帯責任? マジでぇ」

 

 これにはRABBIT小隊の他の面々も、困惑していた。

 

「必ず我々の任務を遡行適用させるようにしてみせる。

 お前達は俺にとって目に入れても痛くない我が子同然なのだ。だからミヤコ、お前の疑念も必ず晴らすよう俺も務めよう」

「黙れッ、お前は我々の正義を穢した!!」

 

 ミヤコが彼に銃を向ける。

 が、それよりも早く、SRTの全生徒が彼女に銃を向けた。そう、自分の小隊のメンバーも。

 

「……まあ、お前達は聞き訳が良すぎて、少し物足りなかったところだ。

 これぐらいの跳ねっかえりが居た方が面白い」

 

 狼男のマスクの男は、そんなミヤコを見て笑っていた。

 彼女に銃口を向けられているのに、まるで動じていない。

 人を殺す訓練をさせた、その張本人が。

 

「事が終わるまで、謹慎していろ」

 

 彼は顎をしゃくった。

 即座に、SRTの生徒達がRABBIT小隊のメンバーに襲い掛かり、組み伏せる。

 

「私は、あなたのような!!」

「ちょッ、私達もか!!」

「ひうぅぅ!!」

「みんな、ちょっとは手加減してよ!!」

 

 そうして、彼女達は営倉にまとめて放り込まれた。

 

「あうぅ、これからどうしよう」

 

 ミユは営倉の中で泣き出していた。

 

「当然、あの男を更迭させるしかありませんッ」

「私は今の環境を悪いとは思わないが、一緒くたにされるとはな……」

 

 決意を示すミヤコに、サキもこの扱いに不満のようだった。

 

「だが、元はと言えばミヤコ、お前の所為だろ」

「そうだよ、私達まで巻き添えにしてさ」

「だからそれを、世間に訴えて撤回させるんです!!」

 

 愚痴を言うサキとモエを、ミヤコは睨む。

 

「作戦は今夜決行です。ここから抜け出して、装備を持ち出し、SRTの現状を告発するデモを行うのです!!」

「おいおい……」

「なにそれ、面白そう!!」

「いやいや……」

 

 モエまで賛同してしまい、困惑するサキ。

 

「どうせなら派手な武器を持ち出そうよ!!」

「ええ、世間の注目を浴びられれば浴びられるほど良いですからね!!」

「……はあ、付き合うしかないのか」

 

 こうして、四人はSRTの敷地から抜け出すのだった。

 

 

 

「よろしいのですか、あの子たちを行かせて」

 

 薄暗い教官室の中で、ユキノは月明りを浴びながら自分の先生に問うた。

 

 ばさり、とマスクをテーブルに放りながら、彼は言った。

 

「言っただろ、お前達もあいつらも、目に入れても痛くないほど可愛いと。

 俺たち全員はひとつの部隊と言う家族なのだ。

 あれくらいのやんちゃは、笑って許してやろうじゃないか」

 

 彼は半分以上が焼け爛れた顔に笑みを浮かべた。

 それは慈愛であり、憐みでもあった。

 苦楽を共にした部隊と言うのは、血の繋がりよりも深い絆で結ばれる。

 

 これは、彼なりの愛であり、教育であった。

 

「あいつらもまだ15だ。俺も若い頃には似たような覚えがある。あの子たちの自主性を、尊重しようではないか。

 だからユキノ、お前もそう気負う必要はない」

「……はい、教官」

 

 本当に我が子にするように、男はユキノの頭を撫でながら安心させるようにそう言ったのだった。

 

 

 

 

 





:SRT先生
SRT特殊学園の危うさを示す、狼男のマスクの軍服の男。
狐も兎も狩られる側の生き物であり、彼の狼マスクは所属する生徒は結局は使われる側であることを示している。
主が居ないのに勝手に行動するのも、この学校の擬人化に相応しい振る舞いである。
しかしこんな怪しげな風体でありながら、その行動は一貫している。全ては正義と、人々の平穏の為に。

次回以降は、ヴァルキューレ先生か、ミレニアムの先生か、アリウスの先生のいずれかを順番にやる予定です。

あなたはどの先生に勉強などを教わりたいですか?

  • トリニティの先生
  • ゲヘナの先生
  • ミレニアムの先生
  • アビドスの先生
  • 百鬼夜行の先生
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