鬼殺隊IF 本鬼殺隊ルート   作:限界社畜あんたーく 

11 / 16
第玖話

 

珠世───そう名乗る鬼との邂逅。

彼女は暴れていた鬼と、その鬼に襲われていた女性の身柄の引き渡しを提案した。

鬼に二人の身柄を引き渡すのは如何なものか…。鱗滝達は一時頭を悩ませるも、続いて彼女が提示条件を呑むことで、承諾することにした。

 

そして鬼を預けた三人は、珠世達とは一先ず別れ、野暮用を済ませた後で彼女の家に合流することになった。

その野暮用というのは────

 

 

「大将、山かけうどんをもう一杯。大で」

「…キツネの大をくれ」

「俺も山かけうどんください!」

 

 

───三人は腹が減っていた。

ただでさえ浅草の名店をハシゴするつもりだったのが、鬼舞辻の襲来という形でおじゃんになってしまった。

今更向かった所で店が閉まっているか、仮に開いていても満席なのは目に見えている。

それに、この後珠世の下へ向かう予定もある。

手頃かつ迅速に食べられる食べ物──そこで三人は、丁度近くに来ていたうどんの屋台に立ち寄ったのであった。

 

「ご馳走様でした!美味しかったです!!」

「…天麩羅食いたかった…」

「あまりそういうこと食い終わってから言うなよ…」

 

一人三杯。きれいに食べ終えた三人は、屋台の大将にそれぞれ礼を告げる。

 

「いきなり押し入って悪かったな大将。釣りは次の客に使ってやってくれ」

 

鱗滝はそう言いながら、懐から適当に札を抜く。

その金額は少なくとも、うどん十杯分は払えるであろう金額であり、大将は瞠目した様子であった。

 

 

 

 

 

うどんを食べ終えた後。

傍で待機していた男の元に三人は向かう。

一応、逃げないように二羽の鎹鴉による厳重な監視を向けていたが…鎹鴉から話を聞く限り、逃げる素振りは見せなかったようだ。

…その代わり、冨岡の鎹鴉が頭にずっと乗っていたことが気に入らなかったのか。さっきから不機嫌そうな顔をしている。

 

「…さて、待たせて悪かったな。…ええっと…」

「愈史郎だ。…これから、お前達を珠世様の所へ案内する。くれぐれも、逸れたりすることのないように」

「?…分かった」

 

この辺りはそこまで入り組んではいない。そもそも逸れるようなヘマをするほど鬼殺隊は間抜けでもない。そこまで重々しく言うことか?

そう鱗滝は思っていたが…どうやら珠世の下に向かうおうにも、道中には目眩ましの術というのが掛けられており、普通に向かおうとしても辿り抜くことはできないのだという。

成程、それならば納得である。

 

そのまま十分程度、愈史郎に案内された後。

いつの間にか、目の前に大きな家が建っていた。

洋風の屋敷…病院と言われればそれとも納得できる造りをしている。不思議な感覚だ。

中へ入ると、薬品の匂いが充満していた。また中は整備や整頓は行き届いているようで、そこらの家よりも清潔感を感じる。彼女の職業柄というのもあるかもしれないが…。

兎も角。その清潔感漂う家の中を進んでいると、愈史郎に一つの部屋に案内された。

 

「改めまして、私は珠世と申します」

 

ポツンと、病床が置かれた部屋だった。

そこには襲われていた女性が眠っており、時折呻くような声が聞こえた。

 

「彼女は怪我こそしていませんが、どうやら精神的に不安定なようなので、休ませています」

「あの鬼は?姿が見えないが…」

「ご主人は…気の毒ですが、拘束して地下牢に閉じ込めています」

 

…嘘を吐いているようには見えない。

炭治郎の方を見ても、特に感知した様子はなかった。

嘘ではないか。ただ、だからといって確認を怠るわけにもいかない。

 

「…一応、確認しても良いか?」

「えぇ勿論。愈史郎、案内を」

 

背後に居た愈史郎は威勢の良い返事をする。

尤も、返事の割に顔が滅茶苦茶な怒気に歪んでいるが…。

 

「義勇、頼めるか」

「あぁ」

 

冨岡は立ち上がると、愈史郎の後に続く。

そして、冨岡と愈史郎が部屋から退出し、二人の足音が聞こえなくなった頃合いを見て、鱗滝は口を開いた。

 

「それで、お前達は何者なんだ?」

 

高圧的に。あくまで鬼殺隊として、矜持をもって接する。

敵対の意思がないとはいえ、嘘をついている様子が無いとはいえ、相手が鬼であることに変わりはない。警戒は緩めない。

珠世もそれを理解しているのか、表情が少し強張ったように感じた。

 

「…私は鬼舞辻によって変えられた者の一人。正真正銘、紛うことなき鬼です。ただ、身体を自分で弄ったことで、人を喰らうことなく暮らせます」

「身体を弄った?」

「えぇ。詳細は省きますが、これによって人の血を少量飲むだけで事足りるようになっています」

 

ちなみに、その人の血というのは、ちゃんと金を出して正規に入手したもののようだ。

また金に関しても、人に医療を施すことで手に入れた、あくまでも綺麗な金を使用しているとのこと。

家中に染み付いた薬品の匂いと言いこの部屋の作りと言い…これに関しては、流石に疑う必要はないだろうと判断する。

 

「鬼舞辻の()()も外しています。なので、鬼舞辻のことを話しても殺されはしません。…といっても、持っている情報は鬼殺隊とそれほど変わりはないでしょうが」

「大方予想はしていたが…やはりか」

「鬼舞辻の呪い?なんですかそれ?」

「…炭治郎は知らないのか?」

 

鬼舞辻の呪い。

これは鬼が鬼舞辻の事を話す、またその名を口にした場合に作動し、その鬼は自壊してしまう。

所謂自決とは異なり、例えるなら遠隔で自動発動する時限爆弾であり、口にしたら最後本人の意思によって阻止することは出来ないとされている。

詳しい仕組みは不明だが、恐らく鬼が取り込んだ鬼舞辻の血が反応しているのではという説がある。尚、これに関しては判明したところで役に立つことは無いだろうと研究は進んでいない。

 

「愈史郎も同様。彼に関しては、私よりももっと少量の血で済みます。私が生み出した子なのですが───」

「鬼を生み出した…?鬼は鬼舞辻しか生み出せないはず…」

「はい。概ねそれは正しい情報です。事実、二百年以上の月日を経て、生み出せたのは愈史郎ただ一人ですから」

 

二百年…過去会ってきた鬼の中にそれほど長く生きた鬼はいなかった。

それほど長く生きた鬼ともなれば相当の実力を持っていそうなものだが…正直、それほど強くそうには感じない。やはり、生きた年月よりも、喰った人の数がその鬼の強さにより濃く起因するということなのだろう。

 

「誤解しないでほしいのは、私は私の力で、無理に鬼を増やそうとは考えてはいないということです。愈史郎やそれ以前の術を施した者達は、皆怪我や病気で余命幾許も無い者達。そして本人に鬼になってでも生き永らえたいかを尋ねた後、術を施します」

 

…やはり嘘は吐いているように見えない。

炭治郎にも聞いたみたが、(清らかで潔白な匂いがする)とのこと。…いや、そんなことは聞いてないが。

しかし、先ほどからの包み隠さず話す姿勢といい、鬼舞辻のことといい…。

現時点で提示された情報だけを鵜呑みにするのであれば、信用にたる存在であると言える。

無論、警戒を怠るわけではないが…肩の力を多少緩めても良いだろう。

 

「成程。……どうやら貴方は、他の鬼とは決定的に違うようだ。先程までの非礼な態度を詫びさせてもらいたい」

「そんな謝罪など…!寧ろこちらこそ、感謝をさせて下さい…」

 

ホッと安堵したように胸をなでおろす珠世。

…それにしても、所作や動作の一つとっても普通の人となんら違いを感じない。

このような出会い方をしなければ、鬼かどうかすらも疑問を抱かなかっただろう。

…そんなことを考えていると、横にいた炭治郎が口を開いた。

 

「…あの、俺から一つ、聞きたいことがあるのですが…」

「何でしょう?」

「…鬼になってしまった人を、人に戻す方法はありますか?」

 

…まあ、彼ならそれを聞くだろうな。

妹の禰豆子のこともそうだが、地下牢にいる鬼のように、本来人を襲いたくて襲っているわけでは無い者も鬼の中にいるハズ。それらを人に戻せるのなら、ありがたいことこの上ない。

特に止めることなく───いやむしろ前のめり気味になって聞き耳を立てる。

 

 

「…あります」

 

 

割とあっさりと、普通に返答された。

多少含みがある様にも聞こえたが…炭治郎はそれに気づかず、興奮しながら珠世に迫る。

 

「え!?本当ですか」

「え、ええっと…興奮しているところ申し訳ないのですが…今はまだ人に戻す方法はありません」

 

申し訳なさそうに、珠世が頭を下げる。

炭治郎も目に見えてがっかりしつつも、「いえ、こちらも早とちりしすぎました…」と謝罪した。

 

「今はまだありませんが…どんな傷や病にも必ず治療法があるように、鬼を人に戻す薬も必ず存在する。現に私たちは、その治療法を確立したいと思っています」

 

…真剣で、曇りのない綺麗な瞳だった。

炭治郎に聞かなくとも分かる。嘘は一言も付いていない。どころが、強い意志が見て取れる。

 

「そのためには、鬼殺隊の御力添えが何としても必要不可欠。…お願いします、どうか私たちの願いを聞いてはもらえないでしょうか?」

 

再度、珠世が頭を下げる。

炭治郎にしたような謝罪の意を込めたものではない。

心からの、冀望を込めた動作。

…あの時と同じように、鱗滝の心を揺り動かすには、十分なものだった。

(…俺って、もしかしてかなり鬼に甘いのでは…?)

自分でもそう思ってしまうほど。しかし、他の隊士であってもこの判断を下すだろうと信じる。

 

「…分かりました。…ただ、俺一人の意向で鬼殺隊を動かすことは出来ません。一度、お館様の判断を仰いだ後にはなりますが…構いませんか?」

「お館様…?それは構わないのですが…鬼の私が他の鬼殺隊の方々に受け入れられるのでしょうか?」

「それは……あーっと……」

「大丈夫ですよ。あの人は禰豆子のことも認めてくれましたし」

「禰豆子…?」

 

よく分からないと言いたげに首を傾げる珠世。

正直、今説明しても構わないとは思うが…念には念を入れて、話さないでおくことにする。

 

…と、丁度そこへ冨岡たちが部屋へ帰ってきた。

 

「鬼の拘束は問題なかった。あれなら暴れても逃げ出すことはないだろう」

「巻いた縄を一本一本、締め具合まで確認しやがって…そのせいで珠世様と五分以上も離れ離れに…!!」

 

尚、愈史郎はかなり怒っているようで、ぷんすかと湯気を立てている。

 

「…さて。俺から聞きたいことは聞けました。細かい情報や話し合いは追々、鎹鴉に通達させます。それでよろしいですか?」

「構いませんが…この場所には目眩しの術が掛けられていますし、見つけられるかどうか…。なので…そうですね…。こちらを使ってください」

 

そう言うと、珠代は鈴を取り出し鱗滝に手渡す。

特に何の変哲もない鈴だ。だが振っても音は鳴らず、上に付いた紐を強く引っ張ると、チャリンと小さな鈴の音が響いた。

 

「鈴を鳴らせば、私の使い猫が現れます。鞄と紙、鉛筆を持たせるので、それにお伝えしたいことを書いてもらい、渡してください」

「承知しました」

 

それから少しの会話を挟み、三人は珠世の下を離れた。

 

 

 

道なりに進んでいると、いつの間にか元居た大通りへと戻っており、振り返ればそれまで歩いていた道は綺麗さっぱり消えていた。

まるで一時の夢のようであったが、手に持つ鈴はそれを現実の出来事であったと知らせてくれる。

 

「…一先ず、今日は解散だな」

「随分と疲れた気がします…」

「…天麩羅は、また今度だな…」

 

どっと疲れた三人は、そのまま帰路につくことになった。

 




今年度の最終選別記録②

合格者
嘴平伊之助
評価点 87点(45/42)

煉獄愼寿郎氏
「協調性が皆無。また計画性を持たず敵に特攻する。難点は目立つが…器用さと豪快さは目を見張るものがある。今後に期待、といったところか」
評価 合格

胡蝶カナエ氏
「言葉遣いは悪いけど、根は優しい子なのかな…?う〜ん…カナヲ達にはあまり近づいて欲しくないかな〜…」
評価 合格…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。