鬼殺隊IF 本鬼殺隊ルート   作:限界社畜あんたーく 

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第壱拾壱話

 

柱会議が行われてから数日後。

一部の隊士達に、緊急召集がかけられた。

なんでもとある山の捜査に向かった隊士達が、山奥で十二鬼月と思しき鬼と遭遇したとのこと。

 

藤の家紋の家で休息していた、辛隊士の我妻善逸と嘴平伊之助の二名にもその召集は行われ、二人は早速件の山───那田蜘蛛山へと向かい始めた。

 

「げへへ〜、また恋柱様に会える〜、俺恋柱様の為なら何でもできるよぉ〜!!」

「そうか!相変わらず気持ち悪ィなお前!!」

 

二人の育成を行っていたのは恋柱の甘露寺蜜璃。

彼女の下で、かれこれ三件の任務を経たことで、鬼狩りの基礎と知識を蓄え、また目指すべき目標が出来たことで、双方共に活気に満ちていた。

特に善逸に関しては、全身から稲妻のように活力が迸っている。…邪な動機ではあるが。

 

「恋柱様ぁ!今会いに行きますよぉ!!!」

 

土煙をバタバタと立てながら山道を駆ける善逸。

 

「あんな気持ち悪ィやつに負けてられるか!猪突猛進!」

 

それに負けじと後を追う伊之助。

 

本来は日暮れまで掛かるはずの山道だったが、あまりにも早い速度であったためか、夕焼けの差し掛かる手前頃には、二人は那田蜘蛛山へ着いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

那田蜘蛛山に到着した二人。

暫く歩いていると、人の後ろ姿が見え、ソレに向かって二人は進み始める。近づく度に、その背はくっきりと目に映っていく。

それは恋柱の丸みを帯びた背───ではなく、男特有のがっちりとした背。善逸はそれを認知するや否や、全力で泣き叫ぶ。

 

「イヤァァァァ!!!恋柱様を返してぇぇぇぇ!!!」

 

男とは反対方向へ駆け出そうと踵を返すも、善逸は石に躓き横転。その後背後から首根っこを握り掴まれ、ヒキガエルのようなうめき声と吐きながら身体を持ち上げられた。

 

「おいおい、兄弟子を目の前に逃げ出すなんざ、いい度胸してるじゃねぇか。偉くなったもんだなぁ善逸」

「ご、ごめんなさ……ん?兄弟子?」

 

チラリと、善逸が振り返る。

そこにはどこか馴染みのある顔をした男がいた。

 

「か、獪岳!?なんでここに!?」

 

雷の呼吸の使い手であり、善逸の兄弟子に当たる存在。

その名を獪岳。階級丙の隊士である。

獪岳は乱雑に善逸を投げると、まるで汚いものを触れたかのように手をパッパと振るう。

 

「お前の子守だ。本当は毛ほどもしたくはねぇんだが、階級上げる為には必須なんだと。相手がお前じゃなきゃまだマシだったぜ」

「俺の子守…?え?恋柱様は?!」

「あ?辛の隊士に柱が付くわけねぇだろ」

 

う、嘘だ…信じたくない…!

しかもよりにもよって獪岳!?い、いや、嫌じゃないけど、流石に気不味いよ…絶対ダメ出しされるじゃん…

 

がっくし──そんな擬音が似合う程に肩を落とす善逸。

しかしそれも束の間、ふと疑問を抱き顔を上げた。

 

「……ん?()()の子守…?お前()じゃなくて?」

 

確かに獪岳は、先程()()と言った。複数形ではなく、あくまで善逸一人を指していた。

普通に考えるなら、伊之助の見守り役としてもう一人誰かが居るのか、それともただの言い間違いか。

しかしその割には辺りにはそれらしい人も見えないし、言い間違いにしては自信をもってハキハキと言っていたような気がする。

勘違いなら勘違いで良いのだが。何故か疑問を抱いた。

 

「俺は辛の隊士の面倒を見ろとしか言われてねぇが。なんだ?もう一人いるのか?」

「え?…あれ?」

 

先程まで伊之助がいた位置を振り返る。

しかしそこには伊之助の姿はなく、代わりに落ち葉がサラサラと風に靡いて飛んでいた。

…善逸の背中を嫌な汗が伝う。

 

「もしかしたら、先に山に入っていたのかも…」

 

 

 

「ハァ!?」

 

 

 

 

目をかっぴらき、素っ頓狂な声を上げる。

いつもの獪岳からは想像できないような、鬼のように歪んだ表情に一瞬、善逸は背をピンと張ってしまう。

怖い。コレまで戦った鬼なんかとは比べ物にならない程怖い。

 

「クソが…初日も初日だぞ?それで一人亡くなったともありゃ、俺の評価に響くだろうが…!」

 

ボリボリと乱雑に頭を掻きながら獪岳は悪態を吐く。

 

「柱が来るまで待機する予定が…クソ、狂っちまったじゃねえか。…仕方ねえ。見殺しよりも、規則違反の方が喰らうならまだマシだ。いや、下弦も倒せりゃ帳消しになるか…?」

 

独り言をぶつくさと呟きながら、虚空を指でかき混ぜる。

そのうち目標が決まったのか、バッと善逸のほうを向くと鼻先に人差し指を突き付けた。

 

「いいか?俺はこれから、その伊之助とかいうやつを探しに行く。テメェはこっから一歩も動くんじゃねぇぞ。二人も死なれちゃ降格どころの騒ぎじゃねぇからな。分かったな?」

「は、はい!!!」

 

そう言うと、フンと鼻息を荒くしながら獪岳は山の方へと潜っていく。

その背をただ茫然と善逸は眺めた後、疲れきったような溜息を一つこぼしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道なき道を進む。

身体に蜘蛛の糸や木の葉がまとわりつき、鬱陶しさに苛まれつつも、黙々と進み続ける。

暫くすると、目前の木に矢印のようなものを発見。その矢印に従って進むと、鬼殺隊の隊服を着た青年と遭遇した。

 

「己の中田です。応援に感謝します」

「丙の獪岳だ。それで?現状はどうなってんだ?」

 

獪岳は中田と名乗る隊士に問い正す。

中田は獪岳に向け姿勢を正すと、簡潔に説明を始めた。

 

現在、この山に残っている鬼は以下の三体。

一 首から下が節足動物の構造になっている鬼。

二 首から上が節足動物の頭になっている鬼。

三 恐らく十二鬼月と思われる、小柄な鬼。

 

元々五体の鬼がいたが、その内二体は中田率いる隊士達によって撃破。しかしその後「三」と遭遇し、隊士の内一名は死亡、他二名は消息不明となっている。

 

「私は、消息不明となった二名の隊士の捜索に向かおうと思いましたが…所持している刀も折れ、戦闘の継続は困難。また、この地帯を私一人での攻略は困難であると判断し、情報収集と自身の生存を優先しました」

 

鬼殺隊の総則として、鬼との戦闘で劣性、或いは壊滅の危機に直面した場合、情報収集と生存を最優先することが義務付けられている。

情報収集に関しては言わずもがな、また生存に関しては、生き残るすることで貴重な人材の消耗を抑える、という意図もあるが更に、隊士が死亡した場合、その死体を鬼が食らう事で鬼が強化されてしまう危険性があるため、それを防ぐ狙いもある。

 

「へぇ。…で?具体的にその鬼共はどんな能力持ってんだ?情報収集してたんなら、それぐらい分かるだろ?」

「えぇ。それはこちらに」

 

中田は懐から紙を一枚取り出す。

三体の鬼に関する情報が箇条書きで記されており、主に戦闘方法や血鬼術に関する事が書かれている。

よく見てみれば、「一」と「二」の欄にはそこまで情報が書かれてはいないが、「三」に関しては十行以上に渡り詳細な情報が書かれている。

それだけ「三」の強さが際立っているということなのだろう。

 

有力な情報源だ。おちょくるつもりが、寧ろ感嘆させられてしまった。

バツが悪そうな顔をしながら、受け取った紙の内容を頭に叩き込む。その後、獪岳は懐に紙を仕舞うと立ち去ろうと踵を返そうとした。

 

「…あ。それともう一つ、聞きたいことがあんだが。…俺以外にここを通ったヤツはいなかったか?」

「い、いえ…?鬼以外ではそのような者は見ていませんが……?」

 

クソ。最悪だ。悪態を吐きそうになるも、それを間一髪留める。

 

出会っていれば、向かった先が知れたものを。そうすれば手間を多少省けたというのに…これでは手掛かり無しではないか。

 

「ハァ…分かった分かった」

 

こうなればヤケクソだ。

死んでいないことと、偶然出会えることを祈りながら、山中を回る。

あまりにも面倒だが…やらないわけにもいかないし、他に手があるわけでもない。

 

長く重い溜息を吐きながら、獪岳は止めていた足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

適当に山を歩いていると、ふと人影が見えた。

獪岳はそれが、件の伊之助であることを祈りながらその方向へ駆けてみるが…しかし残念。そこには明らかに人と異なる 鬼がいた。

一瞬、このまま無視して捜索を再開しようかと思ったが、先程頭に叩き込んだ情報と照らし合わせると、それが例の「三」であることに獪岳は気付く。

 

「…テメェが「三」か」

 

伊之助が見つからない以上、せめて手柄は持ち帰らなければ。

その一心の元、鬼の方へと不用意に近付いていく。

 

「………」

 

気付いていないのか。それとも気付いたうえで無視を決め込んでいるのか。

鬼は両手に結んだ糸をあやとりの要領で弄びながら、俯いた様子で佇んでいる。

 

「小柄とは書いてあったが…それにしたって随分と貧相な風体してやがる。本当に十二鬼月か?そうは見えねぇ───」

 

そう言いかけた刹那。

鬼は糸から手を離し、右手をギュンッと獪岳に向け振るう。

まるで嵐が吹き付けたような轟音が放たれ、獪岳が居た場所にまるで削がれたかのような大きな爪の跡が刻まれる。

 

「危ッ───」

 

獪岳はそれを間一髪、背後へ飛ぶことで避けることに成功。しかし鬼は、今度は左手を振るい、更なる追撃を加える。

未だ空中に浮いていた獪岳は、それを腰から抜いた刀で受け止めるも、勢いを殺せずそのまま吹き飛ばされ、彼方へと飛んでゆく。

 

「…五月蝿い」

 

薙ぎ折られた木々と立ち籠る砂煙の中、小さく鬼は呟く。

不快感そのものを吐露したかとような、低く棘のある声であった。

 

「ただでさえ今は気分が悪いんだ。これ以上、僕を不快にさせないでくれるかな?」

 

鬼はそう言うと、再度あやとりを始めようと手を交差し始める。

───だが、それよりも前に、その手は動きを止める。

パキと枝が折られた音が、男を吹き飛ばした方向から聞こえたからだ。

 

「まだ生きてたんだ。しぶといね、君」

「躾のなってねぇカスが…人の話は最後まで聞けって親に教わらなかったのか?これだから脳足らずのガキは…!!」

 

多少の切り傷と土汚れ以外、特に外傷のない様子で、獪岳は平然と立っている。

その代わりに、先ほどまでは飄々としていたその顔には、怒りの面が強くにじみ出ており、眉間に浮かんだ皺と怒筋がそれを強く物語っていた。

 

「……『脳足らず』……?」

 

対して鬼も、強い罵倒を受けたことに対し、強い嫌悪と怒気を抱いたようで、明確な敵意を持って獪岳を睨みつける。

その外観とは見合わぬ、虎や熊すらをも凌駕する殺意の奔流。立ち上るそれは湯気と言うよりは、最早逆に落ちる滝のよう。

 

「訂正してくれないかな?そうすれば一息で殺してあげるよ?」

 

しかしながら、冷静さの欠けた獪岳には、それは最早視界にすら入っていない。

 

「訂正するわけねぇだろうがこのカスがッ!!」

 

刀の切っ先を鬼にブンと向け、威勢よく叫ぶ。

 

 

 

 

「テメェの小せぇ脳を切り刻んで、死んでも忘れられねぇようにしてやるよッ!!惨たらしく死にやがれッ!!」

 

 




今年度の最終選別記録③

合格者
不死川玄弥
評価点 75点(36/39)

煉獄愼寿郎氏
「鬼を喰らうことで身体機能を向上させる極めて珍しい能力を持つ反面、呼吸が使えないという致命的な弱点を抱えてもいる。両極端、それを生かすか殺すかは本人次第といった所か。一先ずは、その性根を正すところからだな」

評価 "岩柱の元で二カ月の心身鍛錬を行う"条件付随の元、合格

胡蝶カナエ氏
「何に怒っているのかは分からないけれど、人に当たるのはよくないわ。もっと冷静に物事を見れるようにならないとね。それに、剣術は兎も角呼吸を使えないのは流石に…申し訳ないけど私は不合格に……あら?そういえば、彼って苗字と言い名前といい…もしかして実弥くんの弟かしら?……それなら、少しだけ考えてあげてもいいかなぁ…?」

評価 保留(再考の後、愼寿郎と同条件で合格)
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