鬼殺隊IF 本鬼殺隊ルート   作:限界社畜あんたーく 

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今度こそストック消滅


第陸話

 

あれからまた二週間が経過した。

 

内臓含め、全ての傷は完治。

一応定期検診の必要はあるものの、今日で晴れて退院となった。

胡蝶さん達に感謝を述べた後、俺が向かった先は煉獄さんの屋敷。今日からは蝶屋敷のかわりに、ここにお邪魔になる予定だ。

 

というのも、これは煉獄さんからの提案だった。

これから俺がやることは、心身の鍛錬と呼吸法を学びながら、ヒノカミ神楽の再現を試みる修業の日々。それは煉獄さん曰く、余程の才能がない限りは最低でも1年以上は掛かるらしい。それならいっそのこと煉獄さんの家で寝泊まりをしたほうが効率が良いだろう、という意図からだった。

といっても蝶屋敷の頃とは違い、こちらでは費用を無償で負担してくれるわけではない。かといって金銭を払えるわけもないので、その代わりにいくつかの条件が課せられた。

掃除や家事は勿論、買い出しや雑用、禰豆子へ面会する際の日時と時間、立ち入りしていい部屋としてはいけない部屋など。

それ以外にも細々とした条件を決めたが…まぁそこは省略するとして。

 

兎も角、煉獄さんの屋敷に辿り着いた俺は、一にも二にも、早速修業に明け暮れることとなった。

 

 

 

 

 

 

煉獄さんの家で行う修業は、蝶屋敷のそれとは比較にならないほど厳しく、険しいものだった。

元々覚悟はしていたし、蝶屋敷では手を抜いているんだろうとは薄々感じていたが…正直自分の想像の倍は過酷だった。

 

始めに行ったのは筋力向上訓練。素振りや走り込み、腹筋等の各種鍛錬を延々繰り返す。ただただ繰り返す。

数ヶ月経ち、ようやくその負荷に慣れてきた辺りで、今度は全身に重りを付けてまた繰り返す。ただただ繰り返す。

それに慣れれば更に重い重りを、それに慣れればまた更に重い重りを…。それを繰り返し続け、自分の体重以上の重りにも慣れてきた頃に、ようやく次の修業へと移った。

 

次に行ったのは肺の強化。市販の瓢箪を手渡されると、それを肺活量のみで割ってみせろと言われた。

最初は「何言っているんだこの人は?」と思ったが、煉獄さんは目の前で、切り株程の大きさの瓢箪を一呼吸で割ってみせた。元柱凄い。

鍛錬を繰り返し、一ヶ月が経過した頃。なんとか瓢箪を割ることができた。が、喜ぶ間も無く今度はより大きい瓢箪を渡される。特殊な薬品を塗り硬度をさらに上げてるとか。

肺胞が壊死しそうになりながらも、粘りに粘り続けた結果、5カ月という期間を経てようやく割ることができた。

 

現時点で一年近くが経過した。

禰豆子は未だに目覚めない。胡蝶さんが診てくれたけど、それらしい異常は見られない。

もしかしたら、このまま死んでしまうのではないか…?その一物の不安を抱えながらも、俺は俺のすべきことを行い続けた。

 

 

1914年。晩夏の頃。

ここでようやく、ヒノカミ神楽の舞に着手し始める。

 

最初は記憶を頼りに舞ってみせる。まぁ当然と言うべきか、それは失敗に終わってしまう。煉獄さんに駄目だった箇所を教えてもらいながら、また舞ってみせる。その繰り返し。

 

前までは一ヶ月も過ぎれば多少コツを掴めていたのに、コレに関しては依然として成長が見られない。指摘された箇所を改善しても、また新しい粗が見つかる。

まだ鍛え足りないのか…?より重い重りや、より大きい瓢箪を使って身体を鍛えたが、それでも変化は見られない。

 

 

巡り巡って冬至の夕焼け。

 

…一体何が足りないのだろうか…?

 

俺は一人、篝火の前で自問自答を繰り返す。

 

 

「君が竃門少年か!」

 

 

そんな中、背後からそう問われ、思わず振り返る。

一瞬、いつもと何ら変わらず、煉獄さんが立っているのかと思った。

だがよく見れば少し違う。煉獄さんよりも顔は若くて、千寿郎君よりも身体が大きい。

…もしかして…

 

「煉獄杏寿郎さん…ですか?」

「如何にも!俺は鬼殺隊炎柱、煉獄杏寿郎だ!」

 

ドドンと言わんばかりに、杏寿郎さんは大きく胸を張ってみせた。

杏寿郎さんは鬼殺隊の炎柱。煉獄さんの子供で千寿郎君の兄に当たる。これまで会ったことはなかったものの、他の柱の方々や煉獄さんからその噂は聞いている。なんでも、今の鬼殺隊の中でも相当強いお人なのだとか。

 

「君のことは父から聞いているよ!一度顔をあわせてみたいとは思っていたんだが…俺も中々忙しくてな!ただ、今日は久方ぶりの休息が取れたので、思い切って会いに来てみたんだ!」

「えぇ!?わざわざ俺なんかのために、大事な休憩の時間を…!?」

「何この程度!任務にも健康状態にも、支障は全くありはしない!むしろ、少し瞼が重いぐらいだ!」

 

それを支障があると言うのでは…!?

 

「それよりも、だ。日の呼吸…いや、ヒノカミ神楽だったか?習得に苦戦しているようだな!」

 

無理矢理話を捻じ曲げ、俺の話へと移した。

本人がそれで良いのであれば、止めはしないが…。

 

「…そうなんですよね…。ただ、何が駄目なのか自分ではよく分からなくて。煉獄さ…いえ、愼寿郎さんにも、いろいろと教わっているのですが…」

 

たった一つの動作、たった一つの舞。それすらも舞えない。無理に舞おうとすれば、呼吸は乱れ体幹は崩れ、直ぐに倒れてしまう。

改善しようにも、原因が分からない。

一体どうすればよいのだろうか…

 

「…一度、その舞を俺に見せてくれないか?」

「…分かりました」

 

豪快な笑みから一変。真剣な表情に変わる。

断る気には到底なれない。…それはそれとして、自分の不出来な所をあまり見られたくないなぁ、と思いつつも。

俺は自分が今出せる全力で、緊張しつつもヒノカミ神楽を舞った。

 

 

 

 

神楽舞を終えて、杏寿郎さんに感想を聞いてみる。

開口一番返ってきたのは「下手だな!」だった。しょんぼり。

 

「時に竃門少年。君は柔軟運動はしているのかな?」

「柔軟運動…ですか?」

 

そういえば…俺は鍛えるばかりで、柔軟運動のじの字もなかった。試しに前屈してみると、前までは指先が床に余裕で付いていたというのに、今ではギリギリ届かない程度にまで衰えている。

筋力だけを鍛えると柔軟性が損なわれるとはよく聞くが…まさかここまで衰えるとは予想外だ。

 

「全体的に、関節の動きが固い。脳で形を理解してはいるが、それに対し身体が追いついていないように俺は感じた。筋力と呼吸の練度が足りていないのもあるだろうが…仮に俺が助言するとすれば、まず関節を解すところからだな!」

「な、成程…」

 

柔軟運動か…確かに、盲点であった。

 

「それと、父の教えが一向に実らない点に関してだが。おそらくだが、あの人は君に()()()()を求めているんだと思う。ヒノカミ神楽を再現しようとしている君と、日の呼吸を再現させたい父。その双方の思いが食い違っているからこそ、形がうまく定まらないのだろう」

 

杏寿郎さんは続けて、「俺も他の呼吸の使い手に指導する時、その感覚の違いのせいでよく苦労している」と付け足した。

成程。確かに改めて考えてみると、煉獄さんが教える動きは何処か鋭利と言うか、殺傷性が高いように感じた。

 

「とはいえ、父に面と向かって否定するのも気が引けるだろう。そこは…まぁ、頑張ってくれ!」

(投槍だなぁこの人…)

 

しかし、今日だけで随分と実りがあった。

特に柔軟運動に関しては、今後重点的に行なってみるのが良いだろう。

 

「柔軟運動は千寿郎に手伝ってもらうといい。…さて、そろそろ時間だな。では、俺は任務に戻るとする!」

 

そう言うと、杏寿郎さんは突風のようにそのまま屋敷を出ていった。

 

「……行っちゃった。嵐のような人だったな…」

「だろう?時折帰ってきたと思ったら、またすぐ飛んでいくんだ。まったく世話の焼ける子だ」

「そうなんで……煉獄さん!?」

 

いつの間にか傍に立っていた煉獄さんに、思わず驚いて尻餅を付いていしまう。

 

「い、いつから…聞いてたんですか?」

「最初から、だ。俺の面子も丸潰れだな」

 

やれやれと言わんばかりに額を抑える煉獄。

そして溜息を一つ吐いた後、こちらへ向けて頭を下げた。

 

「すまなかったな。俺はどうやら、日の呼吸に囚われていたようだ」

「い、いえ、謝る必要はないですよ!」

 

正直、怒られるのではないかとビクビクしていたが…それは杞憂に終わり、内心ホッと安堵する。

そのまま、煉獄さんはトボトボと屋敷に戻っていった。

その背中は随分と小さくて、俺は声をかけることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

1915年。四月上旬。

春は真っ盛り。満開の桜が咲く美しい日だった。

 

その日。俺は遂に、ヒノカミ神楽を舞うことができた。

まだまだ動きにムラはあるし、全て通して舞えるのも三十分が限度。依然として修業は必要だとは思うが、これは大きな進歩だ。

 

後は体力と忍耐力、呼吸の練度を高めることで、舞える回数を増やしてゆく。そして最終的に、一日通して舞い続けられる程にまで極める。…まだまだ遠い道のりだとは思うが、初期に比べればかなり希望が見えてきた。

 

…ただ、前述したように、まだまだ完成の域には達していない。なので、これからも煉獄さんの下でお世話になるつもりだ。

…しかし、それを抜きにしても、ヒノカミ神楽を舞えたことは素直に嬉しい。

 

「禰豆子にも伝えないとな!」

 

煉獄さんから許可を得て、蝶屋敷まで一直線に走る。

到着まで、前までは数時間は掛かっていた。ただ、今の俺ならば小一時間すらも掛からずに向かうことができる。

修業の賜物だ。目に見えてそれが分かると、少し嬉しい気持ちになる。

 

「こんにちは!竈門炭治郎です!」

 

蝶屋敷に早速辿り着いた俺は、大声でそう叫んだ。

すると、ドタドタと慌ただしい雰囲気を中から感じた。

 

(虫でも出たのかな?)

 

そう呑気に考えていると、胡蝶さんが勢いよく玄関を開いた。いつもの冷静な姿は何処へやら。息を荒げて、こちらの顔を視認するや否や、ばしと手を掴んで引っ張ってくる。

 

「ちょっ!?胡蝶さん!?」

「いいから!!急いで!!」

 

相変わらずとんでもない腕力だ。自分もかなり鍛えた方だが、それでも叶わないと一瞬で理解できる。

…それにしても、一体何をそんなに慌てているんだろう?

俺に何か見せたいものでも───まさか?

 

「ね、禰豆子に何かあったんですか!?」

「そうよ!!だから───」

 

気づいた時には、俺は胡蝶さんの手を振り解いて、禰豆子の下へと駆けた。

 

ずっと、禰豆子は眠っていた。死んでしまったのではと思ってしまうぐらいに、深く眠っていた。

それが、現実になったのではないかと。その考えに巡るや否や、無意識に身体は動いていた。

 

───奥の突き当たり、そこを右に曲がった部屋に、禰豆子は寝ている。駆ける勢いをそのままに、右へと曲が───

 

 

ドガッ!!

 

 

「グボッ!?」

 

 

───突き当たりをそのまま曲がろうとした時。

視界に一瞬映ったのは、迫る壁。否扉。

それが全身に叩きつけられ、勢いを殺すこともできず、扉の下敷きになりながら、俺は廊下を滑っていく。

 

慣性が緩まった頃。身体に乗っかっていた扉を払い除ける。

一体何が起きたんだ?

扉が飛んできた方向へと、視線を向けた。

 

 

 

 

 

そこに居たのは、目覚めた禰豆子だった。

 

 

 

 

 

「禰豆子……?」

「!」

 

禰豆子は俺に気付くと、近づいて俺を優しく抱き締めた。

───信じられない。禰豆子が…やっと…起きてくれた…。

思わず涙が溢れてしまう。嬉しくて、嬉しくて、嗚咽をあげて泣いてしまう。

 

「禰豆子ぉ!お前、起きたのかぁ!!ずっと…ずっと寝てて、もう起きないのかと思って!!」

 

子供のように泣きじゃくる。

再会したその喜びを、俺はただ、泣くことでしか表現できなかった。

 





・煉獄杏寿郎

二十一代目炎柱ノ書を読破。また鬼殺隊入隊後も愼寿郎に指南を受け、柱となった後もメキメキと力をつけていった。その実力たるや歴代柱を含めても五本の指には入ると言われるほどである。
今の目標は悲鳴嶼を超えることであるが、将来的には件の耳飾りの剣士に比肩する柱になりたいと願っている。
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