氷の少年とシャーレの先生   作:打率3割

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しばらくの間、しなければならないことができてしまったのでので投稿頻度がガクッと落ちます。もしかしたら、2月ぐらいまで書けないかもしれません。楽しみにしてくれている人、誠に申し訳ございません。





第9話 月光る そこに舞うのは 砂嵐

 

「か、カイザーコーポレーションの…」

 

「正確には、カイザーコーポレーション、カイザーローン、カイザーコントラクションの理事だがね。」

 

「それと、この場所。カイザーPMCの代表取締役でもある。」

 

理事は淡々と告げていく。

 

「そんなことは、どうでもいい。あなたがアビドス高校を騙した張本人ってことでいい?」

 

「そうよ!あんたがヘルメット団と便利屋を仕向けたんでしょ!」

 

シロコとセリカが理事に噛み付いた。

 

「…やれやれ、私たちの私有地に勝手に侵入しておいて言う言葉がそれか……まぁ、いいだろう。」

 

「だが、口の利き方には気をつけたほうがいい。なにせ、ここは私たち、カイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。まず、君たちが不法侵入者だということを理解したほうがいい。」

 

「っ」

 

「……」

 

理事の言う言葉はどこか対策委員会達を見下しているような言いようだった。そして、カイザーPMCの私有地に侵入し、カイザーPMCの兵士に囲まれている今の状況を再確認させられるものでもあった。

 

「それと、土地の話だが…全て合法的な取引で記録も残っているはずだが?まるで私たちが不法な行為をしているかのような言い方はやめてもらおうか。ただ挑発しにきたわけではないだろう?」

 

「ここに来たのは私たちが何をしているか気になったからか?どうしてアビドスの土地を買ったのか、その理由を知りたいのか?」

 

「……もしそうならば、せっかくここまで来たのだから教えてやろう。」

 

理事がそう言うと、理由を話し始めた

 

「……私たちはこのアビドスのどこかに埋められているという宝物を探しているのだ。」

 

理事が目的を言った。だが、それは宝探しなどという子供の遊びじみたものだった。

 

「つまらない嘘をつくのはやめて」

 

「そうよ!じゃあこの兵力はどうやって説明するつもり?私たちの学校を占領するためのものじゃないの?」

 

無論、そんな理由を信用することはできず、理事に対して対策委員会達は言い返した。

 

「これは、宝探しを他の奴に邪魔された時のためのものだ。」

 

「たった5人しかいない学園のためにこれほどの数を用意するとでも?」

 

「君たち程度、いつでも、どうとでもできるのだよ、こういう風にな……」

 

すると、理事は携帯電話を取り出し電話をかけ指示を出した。

 

「な、何?急に電話なんかして…」

 

 

 

 

 

 

しばらくして、理事が電話から戻ってくると、理事は対策委員会達に対して同情のような表情を浮かべていた。

 

「残念なお知らせだ。どうやら、現時点を持ってアビドス高校の金利が上がってしまったらしい…」

 

そう理事が言うと、アヤネから通信が入った。

 

「先ほど、カイザーローンから連絡が入りました!……金利が…3000%に上がってしまいました…」

 

アヤネが悔しそうに言う。

 

「っ!」

 

「これで分かったかな。君たちの首の縄が誰に握られているか。」

 

「う、嘘でしょ⁉︎」

 

「……」

 

対策委員会の反応を見て、理事はまだ足りないというような表情になった。

 

「ふむ…これでは面白みに欠けるな…」

 

すると、理事はニヒルな笑みを浮かべ告げた。

 

「そうだな、9億円の借金に対する保証金でももらっておくとしよう。1週間以内にカイザーローンに3億円を預託してもらおうか。」

 

「この利率でも借金返済ができるということを、証明でもしてもらおう。」

 

「そんな…」

 

「……っ」

 

対策委員会達に理事は追い打ちをかけるように言葉を放つ。

 

「もし、払えないのならこんな学校、さっさと去ってしまったらどうだ?」

 

「!」

 

「自主退学して、転校でもすれば良い。それで全て解決するだろう?そもそも、君たち個人の借金ではなく、学校の借金だ。君たちが進んで背負う必要なんてないのではないかな?」

 

「そ、そんなこと、できるわけないじゃないですか!」

 

「そうよ!私たちの学校なんだから見捨てられるわけないでしょ!」

 

「アビドスは私たちの学校で、私たちの街。」

 

そう対策委員会が強く反論するが、理事は依然として態度を改めない。

 

「なら、どうする?他に何か手でもあるのか?」

 

そう言われて、対策委員会が黙ってしまう。理事は勝ち誇ったような顔を浮かべていた。

すると、ホシノが対策委員会に言った。

 

「…みんな、帰ろう。」

 

その声は暗く、だが、捉え方によっては冷静とでも言える声だった。

実際、ホシノの判断は正しかったと言えるだろう。このままカイザーPMCにとどまっていたとしても、ただ挑発を繰り返されるだけだ。

 

「ホシノ先輩…⁉︎」

 

「これ以上ここで言い争ってても意味がない、弄ばれるだけ。」

 

「…ほう、副生徒会長、君は他のものと違って賢そうだな。」

 

「………ああ、思い出したよ、君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな。」

 

「ッ」

 

そう理事が言うと、ホシノが目にも止まらぬ速さでショットガンを理事に向けた。

 

「おおっと、こわいこわい。その銃をしまいたまえ。…それとも、期限を1週間から3日にして欲しいのかな?」

 

「………」

 

ホシノは顔に怒りを浮かべながら銃をしまった。

 

「…それでは、保証金と来月以降の返済についてはよろしく頼むよ。」

 

「お客様。」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈教室〉

 

教室に戻ってきた対策委員会達の雰囲気は重苦しいものだった。

 

「一体何なのよ⁉︎」

 

「カイザーコーポレーションはあそこで一体何を…?」

 

「宝物を探しているって言っていましたが…」

 

「いや、あの砂漠には何もないはずです。もう昔に調査結果が出ています。」

 

「ならどうして…」

 

対策委員会達は考えていると、セリカの声が響いた。

 

「今はそれよりも借金の方でしょ!3000%とか言ってなかったっけ⁉︎」

 

「保証金も1週間以内に3億円だなんて…」

 

そうセリカとアヤネが言っていると、シロコがなにやら支度をしていた。

 

「……シロコ先輩、何やってるの?」

 

「行ってくる。あそこで何をしているのか、調べないと。」

 

「し、シロコ先輩⁉︎行くって一体どこへ…?」

 

アヤネが行こうとするシロコに尋ねた。

 

「PMCの施設。徹底的に準備すれば、何とか潜入できると思う。あそこで何をしているのか確認する。」

 

「ま、待って!シロコ先輩!それよりも先に借金の方だよ!」

 

セリカがシロコを止めた。

 

「……借金はもう、真っ当なやり方じゃ返せない。何か別の方法を…」

 

「ダメです!それでは…」

 

「私もシロコ先輩に賛成!学校がなくなったら元も子もないし、もう他のことに構ってられない!」

 

ノノミが止めるが、セリカがその言葉を遮った。

 

「せ、セリカちゃん……」

 

「せ、セリカちゃん!それじゃああの時と一緒だよ⁉︎」

 

「で、でも……」

 

対策委員会の意見は方法なんて考えずにこの状況を解決する派と真っ当な方法で解決する派に分かれていた。

すると、ホシノがその場を宥めた。

 

「ほらほら、一回落ち着いて〜。頭から湯気が出てるよ〜」

 

「……」

 

「すみません…」

 

「…ごめん、こんな風にしたいわけじゃなかった。」

 

「うん。みんなシロコちゃんがアビドスのためを思ってやってくれてるのは分かってるよ。」

 

「まっ、とりあえず今日はこの辺にしとこう。また明日、頭を冷やしてからにしようよ。それじゃ、解散解散〜」

 

『……そうだね、ホシノの言う通り今日はこの辺で解散しようか。』

 

そうホシノが告げ、対策委員会達は教室を出ていった。

 

 

 

 

アヤネ、ノノミ、セリカが帰った後、教室にはシロコとホシノとヒョウガと先生が残っていた。

 

「…どうしたの?まだやり残したことでもあるの?」

 

「…先輩、ちょっと聞いてもいい?」

 

「僕も」

 

『私も』

 

「うへ〜、みんなからこんなに話しかけられるなんて、おじさんモテモテだ〜」

 

「でもさ、今日はいろいろなことがあったしおじさん疲れちゃったから明日にしない?」

 

「……」

 

「……」

 

『……』

 

先生達が互いの目を見て頷いた。

 

「…分かった。それじゃあまた明日。」

 

「バイバーイ」

 

シロコが教室を出ていったが、先生とヒョウガはまだ残っていた。

 

「あれ?2人は帰らないの?」

 

「…」

 

『……ホシノ、これに見覚えはある?』

 

先生がそう言って取り出したのは諸々の筆記事項が記入済みの退校届だった。

 


 

〈とある日・教室〉

 

その日は教室に先生とヒョウガしかいなかった。

 

「先生、夜ご飯は何がいいですか?」

 

『うーん……オムライスで!』

 

2人が他愛もない会話をしているとシロコが何かが書かれた紙を持って教室に入ってきた。

 

「シロコさん、おはようございます。」

 

『おはよう、シロコ』

 

「ん、おはよう」

 

そう挨拶を済ませると、シロコが持っていた紙を見せた。

 

「2人とも、これを見て。」

 

『へぇ、どれどれ……』

 

シロコが見せた紙に書かれていたのは、退校届という文字と、記入欄に「小鳥遊ホシノ」と書かれたものだった。

 

「え⁉︎」

 

『嘘⁉︎』

 

ヒョウガと先生は驚いていた。

 

「ん、嘘じゃない。ホシノ先輩のカバンの中に入ってた。」

 

「でも、何で…」

 

「それはわからない。」

 

『…今度、実際にホシノに聞いてみよう。』

 

 


 

 

〈現在〉

 

「……何で先生が持ってるのかな?…たぶん、シロコちゃんが勝手にとったのかな……?」

 

「あちゃー、おじさん全然気づかなかったよー、歳かなー?……先生達も後でちゃんとシロコちゃんを叱っといてよー?」

 

「…」

 

『…』

 

ホシノはいつもの調子で言ったが、先生とヒョウガは真剣な目をしていた。

 

「……この感じじゃ、帰してくれそうもないよね?」

 

そうホシノが言うと、ヒョウガがホシノに声を振るわせて言った。

 

「…何でですか?」

 

「対策委員会には、ホシノ先輩が必要なんですよ⁉︎」

 

「…」

 

ホシノは下を向いて黙っていた。

 

『ヒョウガ』

 

「先生…でも…」

 

『……』

 

先生がヒョウガの目を見つめヒョウガが「すみません…」と言って静かになった。そして、先生もホシノに聞いた。

 

『ホシノ、私からも何でこんなものを書いたのか、教えて欲しい。』

 

そう言われたホシノは少し黙り込んでから口を開いた。

 

「……こんなとこで話すのも何だし、少し外で話さない?」

 

その提案に乗り、3人は廊下で話し始めた。

 


 

〈廊下〉

 

3人が廊下でゆっくり歩きながら話し始めた。

廊下の床は砂が少しかかっていたが、かかっていないところからは月明かりが反射していた。

 

「いやー、2人が来てからここも大分変わったんだよー?」

 

「2人が来る前まで、私たち5人でずっと借金を返すのとヘルメット団を追い返すので精一杯だったから、このまま終わっちゃうんだろうなーって思っててさ。」

 

「そしたらさ、黒服ってやつに提案を持ちかけられたんだ。」

 

『提案?』

 

「そう、アビドスをやめてこっちにくれば借金の半分を請け負うっていうやつ。」

 

「それって…」

 

「もちろん、断ったよ。でも、少し考えちゃった時があってさ。一時の気の迷いってやつ?」

 

「それで、捨てられずにそのままって感じ。でも、もういらないよね。」

 

ホシノがそう言うと、紙をビリビリと音を立てて破いた。

 

「こんなもの持ってたおじさんも悪いし、勘違いさせちゃったかな?ちゃんと、シロコちゃんには言っておくよ。」

 

『ホシノ……』

 

「それじゃあ、今日はもう遅いし帰ろっか。カイザーのこともあるしさ。」

 

『……分かった。それじゃあ、ホシノ、また明日』 

 

「また明日、ホシノ先輩」

 

「うん、バイバーイ」

 

 

 

 

 

 

そうして、ホシノは2人を見送った後1人で校舎に残っていた。

 

 

 

「……ごめんね

 

 

 

その呟きは、暗くなり月が輝いていた教室にのまれていった。

 






実はタイトルの俳句、僕が読みました。
季語は……察してください。


誤字脱字報告等よろしくお願いします!
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