氷の少年とシャーレの先生   作:打率3割

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見やすいように書き方を変えながらやっていこうと思います。




第7話 動いていた砂時計

 

「10km先で爆発を確認!場所は…柴関ラーメンです!」

 

アヤネが教室でそう叫んだ。

 

「な、なんで⁉︎」

 

セリカが叫ぶ

 

「っ!これは…」

 

アヤネは待っていた端末で市街地の映像を見て、そんな声を漏らした。

対策委員会達もその映像を見る。

 

「これは…」

 

『ヒョウガ?』

 

そこには、瓦礫の山と化した柴関ラーメンと大将と便利屋がいた。

そして、ヒョウガが何故かは知らないが風紀委員会と戦っているのだ。

 

「なんでヒョウガさんが…」

 

「ホシノ先輩にも連絡がつかない!」

 

「ここにいてもしょうがない、行こう。」

 

『うん!』 

 

シロコに言われ教室にいた対策委員会はその場所へと向かった。

 

 

 

「くっ、」

 

イオリは小さく声を漏らした。

その理由はヒョウガが1人で風紀委員会達を蹴散らしているからだ。

 

「銃が効かない⁉︎」

 

「うわぁぁぁ!」

 

ヒョウガの戦闘スタイルは接近戦だった。

とてつもないスピードで接近し氷の薙刀で近くの敵を倒し、少し離れたところにいる敵はハンドキャノンで倒していき、固まっている敵には地面から氷塊を生やして戦っていた。

 

しかも、彼は冷気を纏っておりこちらが銃を撃っても氷と化し、全く効いていなかった。

 

誰の目から見ても明らかと言えるほど、この戦いは一方的なものになっていた。

数で圧倒的に勝っている風紀委員会の数がどんどん減っていくのだ。

 

「チッ」

 

(クソッ、こんな化け物がいるなんて聞いてない!)

 

内心でイオリがそう言っていると、ヒョウガがこちらに来た。

 

「うっ」

 

イオリは咄嗟に銃身で薙刀を防いだが、その一撃のあまりの重さに声が出る。

 

(お、重い!)

 

そんなイオリに間髪入れずにハンドキャノンが撃たれる。

 

「ぐっ!」

 

イオリは打たれ強かったなのか、他の風紀委員会のように一撃では倒れなかったが、とてつもなく大きいダメージは喰らった。

 

イオリはそこから少し下がりヒョウガと距離を取るが、すぐに詰められる。

 

「イオリ!」

 

そんなチナツの声も届かぬ間に、イオリの元へと薙刀が飛んでくる。

 

「ぐっ…!」

 

攻撃を喰らったイオリは地面に動けずにいた。

 

 

 

 

 

その後、対策委員会達が到着した。

 

「なにこれ…」

 

セリカが呟いた。

 

爆破があった場所に到着した対策委員会が見た光景は凄惨なものとなっていた。

柴関ラーメンがあった場所は残骸の山となり、そこに大将と便利屋がいた。

そして、別の方へ顔を向けると、風紀委員会と見られる者は倒れ、8mはあろう氷塊がいくつも生えていた。

そして、奥にはまだ戦っているヒョウガがいた。

 

『ヒョウガ!』

 

先生がそう叫ぶとヒョウガがこちらへ振り向いた。その目は怒りに満ちていた。

 

「…何ですか?」

 

その声には少し怒気が含まれていた。

 

『どうしたの⁉︎どうしてこんな感じになるまで暴れたの⁉︎』

 

先生がヒョウガに強く言うとヒョウガが声を振るわせて言った。

 

「…こいつらが…柴関ラーメンを砲弾で撃って破壊したんです…」

 

「だから、僕も同じことをこいつらにしようと…」

 

『そんなことをして、柴関ラーメンは戻ってくる?』

 

先生の声は怒気が含まれていた。

急に先生に強く言われたヒョウガは驚愕と恐怖が含まれた表情をしていた。

 

「…いいえ…」

 

『じゃあ、こんなになるまでする必要はあった?』

 

「…いいえ…」

 

ヒョウガは先生にそう言われ、涙目になり、しょんぼりした様子になっていた。

 

『じゃあ、こんな事私の許可なしに二度としないでね?』

 

「…はい…」

 

先生が怒る姿はまるで、悪さをした子犬に説教をしているような姿だった。

 

そこに、風紀委員会の中からホログラムでできた青い髪の生徒が出てきた。

 

「こんちにわ、アビドスの皆様、私はゲヘナ学園所属の行政官、天雨アコと申します。」

 

出てきた生徒はそう言った。

 

「この度は、こちらの委員が行き過ぎたことをしてしまい、申し訳ありません。」

 

「な!私は言われた通りにやったんだけど⁉︎」

 

イオリはある程度回復したのか、痛そうにしながらもアコに言った。

 

「誰が便利屋もろとも建物を破壊しろなんて言いましたか?強いては、関係のない一般生徒と交戦してここまでコテンパンにやられとも?半分以上が壊滅してるじゃないですか」

 

「うっ…」

 

イオリが声を漏らした。

 

「まぁ、先ほどの戦闘を見るにそちらの方の戦闘力が凄まじいのはわかりました。委員長ほどではありませんが…」

 

そうアコが言うと、アヤネがアコに向かって言った

 

「それで、他校の自治区で許可なしに戦闘したのは何でですか?こんなの自治権の観点からして明らかに違反行為です!」

 

「あら?あなたは確か、一年の奥空アヤネさんでしたか?」

 

「っ、」

 

(な、何で私のこと…)

 

「質問についてですが、こちらの学園の校則違反者を逮捕するために来ました。」

 

「いや、それが本当の目的じゃないでしょ?」

 

アコが言った言葉に柴関ラーメンがあったところにいたはずのカヨコが言い返した。

カヨコの周りには他の便利屋もいた。

どうやら、大将は近くのシェルターに避難させたようだ。

 

 

「最初はどうして風紀委員会がここに現れたのか、分からなかった。私たちを狙ってわざわざ他の自治区まで追ってくる?」

 

「こんな非効率なやり方、風気委員長のやり方じゃない。だからアコ、これはあんた達の独断的な行動に違いない。」

 

「…」

 

「それに、私たちを相手にするにしては多すぎる兵力。他の集団との戦闘を想定していたとすれば、説明がつく。」

 

「でも、アビドスの生徒は全校生徒を集めても5人しかいない。…なら結論は一つ」

 

「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から先生とヒョウガを狙ってここまで来たんだ。」

 

「⁉︎」

 

「え⁉︎」

 

『え、私達⁉︎』

 

「え、僕達ですか⁉︎」

 

カヨコの言葉に対策委員会と先生達は驚きを隠せなかった。

アコは図星だったのか黙り込んでいる。

 

「…」

 

「しかも、ヒョウガの戦闘力が未知数だとしても、先生の指揮ならその力を最大限に活かすことができる。なら、手強い敵になるのは確実。念を込めて大軍できたのにも説明がつく」

 

そうカヨコがアコに言うと、アコは口を開き出した。

 

「そういえば、便利屋にはカヨコさんがいましたね。呑気に雑談なんてしている場合ではありませんでしたね…」

 

「まぁ、構いません。」

 

そうアコが言うと、ヒョウガに倒されていない部隊がまだあったのか、四方八方に風紀委員会たちが対策委員会達を囲んでいる。

 

「まだいたなんて…それに、こんなに多く…」

 

「少々やり過ぎかと思いましたが、シャーレを相手にするのですから、たくさん連れてきておいて正解でした。」

 

「まだこんなにいたなんて…」

 

そうカヨコが言うと、アコは言った。

 

「それと、さすがはカヨコさんですね。先ほどのお話は半分正解で半分間違っています。確かに私は、シャーレと衝突するという最悪のケースも想定していました。…まぁ、結果としてそうなってしまったのですが…」

 

「しかし、この状況は意図的に作られたわけではありません。それは信じてもらいたいのですが…難しいようですね。」

 

「事の次第をお話ししましょう。きっかけはティーパーティーでした。」 

 

そうアコが言うと、アコは説明を始めた。

内容は、ティーパーティーがシャーレに関する報告書を手にしているという情報をゲヘナの情報部から上がってきたらしい。

そこで、ティーパーティーが知っているのなら私たちも知る必要がある。

ということになり、チナツが書いた報告書を確認すると、シャーレの権限が大きすぎるため、どう考えても怪しすぎるものであった。

これからのトリニティとの条約に影響を及ぼす恐れがあると判断したようで、条約が締結されるまで、風紀委員会の元に先生とヒョウガを置こうとしたのであった。

 

「そんなの…私たちが良いって言うわけないじゃない!」

 

「そうです!ヒョウガさんと先生を連れて行くなんて…私達が容認するわけないじゃないですか!」

 

セリカとアヤネが言った。

 

「…やはり、このような展開になりますか…。では、仕方がありませんね。」

 

「ゲヘナの風紀委員会は、必要なら武力も行使します。それに一切の躊躇はありません。」

 

「……!」

 

「このことが意味することをご存知ですよね?」

 

そうアコが言い、風紀委員会に戦闘の指示を出そうとするとアコに通信が入った。

 

「アコ」

 

「…え?…ひ、ヒナ委員長⁉︎」

 

アコが言われると、よほど驚いたのか、声が先ほどの口調からは想像できないほど震えていた。

 

「委員長?」

 

「じゃあ、…あの通話相手が風紀委員会のトップ…?」

 

「い、委員長がどうしてこんな時間に?」

 

「アコ、今どこ?」

 

「わ、私は、えーと、そのー、…げ、ゲヘナ近郊の市内のあたりです!風紀委員会のメンバーとパトロールを…」

 

「そ、それよりなぜ委員長がこんな時間に?出張中だったのでは?」

 

「さっき帰ってきた。」

 

「そ、そうでしたか…今、迅速に対処しなくてはいけない用事があったので、今は少し立て込んでいまして…」

 

「?立て込んでる?パトロールなのに珍しいわね。何かあったの?」

 

「え、えっと…」

 

「他の学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で運用しないといけないようなことが?」

 

「え?」

 

最後の声は通信ではなく、本物の声だった。

 

声のした方を見ると、長く、白い髪をした少女がいた。

その見た目はヒョウガが想像していたより可憐な少女だったが、その少女の顔は不機嫌のようであった。

 

「あ、あれって…」

 

「い、い、委員長⁉︎一体いつから⁉︎」

 

「!」

 

「……ええええっ⁉︎」

 

その少女の姿を見て、イオリ、チナツ、アコは驚きを隠せていなかった。

 

「…アコ。この状況、後で詳しく聞かせてもらう。」

 

「え、えっと、これは、素行の悪い生徒を捕まえようと…」

 

「便利屋68のこと?私にはそうは見えないけど」

 

「え、便利屋ならそこに…」

 

ヒナにそう言われたアコが便利屋がいたはずの方向を見ると誰もいなかった。

おそらく、逃げたらしい。

 

「い、いつのまに⁉︎さ、さっきまでそこに…」

 

「もういい、大体把握した。察するに、政治的な活動の一環ってところね。」

 

「そういうことは、万魔殿のタヌキたちにでも任せておけばいい。詳しい話は帰ってから。通信を切って大人しくそこで謹慎してなさい。」

 

「…はい」

 

アコがそう言うと、アコのホログラムが消えた。

 

「………」

 

この場にいる全員が沈黙していると、この場にいなかった者の柔らかい声が響いた。

 

「うへ〜、これはまた、すごいことになってるね〜。」

 

「!」

 

その場の全員が声の方向へ振り向くと、ホシノがいた。

 

「!」

 

「えっ!?」

 

「ほ、ホシノ先輩⁉︎」

 

「…!」

 

対策委員会達とヒナは驚いていた。

 

「ごめんごめん。ちょっと昼寝しててさ〜、少し寝坊しちゃった。」

 

「昼寝⁉︎こっちはいろいろ大変のに!」

 

「でも、もう全員倒した。」

 

「小鳥遊ホシノ…」

 

ヒナがそう声を漏らした。

 

「…1年生の時とは随分変わったのね。人違いじゃないかと思うくらいに。」

 

「お、私のこと知ってるの〜?」

 

「情報部にいた時に、各自地区の要注意人物はある程度把握していたから。」

 

「特に、小鳥遊ホシノ…あなたのことは忘れるはずがない。あの事件の後、アビドスを去ったと思ったけど、まだいたのね。」

 

「…」

 

ヒナがそう言うとホシノは少し嫌な顔をした。

 

「まあいい、私も戦うためにここにきたわけじゃない。」

 

そうヒナが言うと、ヒナは対策委員会達に向かって頭を下げた。

 

「えっ?」

 

「事前通達なしでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。」

 

「このことについては、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドス対策委員会に対して公式に謝罪する。」

 

頭を下げたヒナの姿に対策委員会達と風紀委員会は驚きを隠せていなかった。

 

「今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することはないと約束する。どうか許してほしい。」

 

そう言い終えたヒナは風紀委員会に撤収の指示を出した。

その間にヒナは先生の元へ行き、何かを囁いたようだった。

その後、ものすごい速さで撤収準備を終えた風紀委員会は姿を消した。

 

 

 

「うへ〜、結局何があったの?」

 

「説明したいところなのですが、私たちもまだわかっていないことが多く…」

 

「そうです、わからないのは私たちも同じです!そもそもホシノ先輩はこんなタイミングまで一体どこで…」

 

アヤネがホシノに言った。

確かに、ホシノは姿を表せるまで連絡がつかなかった。

 

「ごめんごめん。こっちにもいろいろあってさ〜。」

 

「はぁ、何だか慌ただしいことばかりで、わかっていないことだらけです…」

 

「そうですね、今日もいろんなことがありましたし…私たちも無理せず息を抜いたほうがいいかもしれません。」

 

「はい。では今日は解散してまた明日、学校で状況の整理をしましょう。」

 

アヤネがそう言い、対策委員会達は解散となった。

 

 

 

アヤネ以外の対策委員会がいなくなった後、アヤネはヒョウガに話しかけていた。

 

「あの、ヒョウガさん…」

 

「何ですか?」

 

「大丈夫でしたか?さっきの戦闘、とても激しかったのですが…」

 

「大丈夫ですよ。僕はそう簡単にはやられないので。」

 

「それは良かったです。…ヒョウガさんが激しく戦っていたところを見たら心配で…」

 

「安心してください。アヤネさんを心配させるようなことはしませんよ。それに、アヤネさんが心配してくれて嬉しいです。」

 

「なら、よかったです。」

 

アヤネは少し顔を赤くしていた。

 

この光景を遠くから隠れて見ていた他の対策委員会達は少し盛り上がっていた。

 

「う〜ん、青春だねー。」

 

「そうですねー⭐︎」

 

「ん、早くどっちかが告ればいい」

 

「何やってんのよ…」

 

セリカはのぞいている先輩達を見て呆れるのであった。

 

 

 

そして、アヤネも帰った後ヒョウガは先生に話しかけていた。

 

「先生、さっきあの委員長に何か囁かれてました?」

 

『…ん、ああ、ちょっとね…』

 

ヒョウガの質問に先生は少し遅れて反応する。

先生は先ほどヒナに言われたことを考えていたようだった。

 

(カイザーコーポレーションがアビドスの砂漠で何かを企んでる…)

 

先生はその言葉を頭の中で反芻させていた。

 

 

 

 







補足

ヒョウガは恋愛というものを知りません。まだ先生に教えてもらってないです。アヤネも「なんだろう、この気持ち…」みたいな感じです。



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