氷の少年とシャーレの先生   作:打率3割

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感想でヒョウガのプロフィールがよくわからないという意見があったので、変えておきました。プロローグの下のところ見てみてください。


第8話 追うものと負われるもの

 

「こんにちは大将、お身体の調子はどうですか?」

 

「大将、大丈夫?」

 

アヤネとセリカとヒョウガと先生は大将のお見舞いに来ていた。

 

「やぁ、セリカちゃん、それにアヤネちゃんとヒョウガ君と先生も。こんな早い時間から来てくれてありがとう。」

 

「体のことは大丈夫だ。ヒョウガ君が俺を守ってくれたからな。ありがとう、ヒョウガ君。」

 

大将がそう言って頭を下げる。

 

「いえいえ、僕は当然のことをしたまでです。それより、大将が無事で本当によかったです。」

 

「そうか…」

 

「それと、セリカちゃん。バイトできなくなってごめんな…」

 

「そういう問題じゃないわよ…」

 

セリカが呟いたが、その後に続く言葉は大将の言葉によって、発する前に打ち消された。

 

「そもそも、もうすぐ店も畳む予定だったからな。予定がちょっと早くなっただけだ。」

 

「え?お店を?」

 

「な、何でですか⁉︎」

 

アヤネとヒョウガが質問する。セリカと先生も驚いていた。

 

「ああ、ちょっと前から退去通知を受けていてね…」

 

「た、退去通知って何の話ですか?アビドス自治区の建物の所有者はアビドス高校で…」

 

「そうか、君たちはまだ知らなかったんだな…」

 

大将が事の詳細を話し始めた。

数年前、アビドスの生徒会が借金を返せなくなり、建物と土地の所有権が移ったのだという。

今はカイザーコンストラクションが所有権を持っているらしい。

 

「そ、そんなことがあったなんて…」

 

「この事、早くみんなに知らせなきゃ!」

 

「そうですね!早く行きましょう!」

 

『あ、大将、お大事にしてください!』

 

「まっ、待ってくれ!」

 

大将は先生達を呼び止めた。

 

『はい?』

 

「お店のところにお金が入った変なカバンがあったんだけど知ってるかい?」

 

『…お店の再建のために使ってください。』

 

「あ、ああ…」

 

(たぶん、銀行強盗のお金だな…)

 

そうして、先生達は教室へ戻るのであった。

 

 


 

 

〈教室〉

 

「皆さん、これを見てください」

 

教室でアヤネは土地の所有権についての書類を持っていた。

そこには、アビドスの土地の大半がカイザーコンストラクションの所有になっていることが記載されていた。

 

「ど、どうしてこんなことに?学校の自治区の土地を取引なんて普通できるはずが…一体誰が…」

 

「アビドスの生徒会、でしょ」

 

ノノミが言った言葉にホシノが少し暗い声で言った。

 

「学校の資産をどうするかは、生徒会にある。それができるのは、普通に考えてそこの生徒会だけ。」

 

「…はい、その通りです。取引の主体は、アビドスの前生徒会でした。」

 

「そ、そんな…アビドスの生徒会は2年前に無くなったはずじゃ…」

 

「はい。ですので、2年前からは取引がなくなっています。」

 

「そっか…」

 

すると、セリカが声を上げた。

 

「何やってんのよ!生徒会の奴らは!」

 

「学校の土地を売るなんて……しかもカイザーなんかに⁉︎」

 

「…」

 

「こんな大事に、今まで気づかなかったなんて…」

 

「…もっと私が早く気づいていれば…」

 

「いや、それは違うよ。」

 

俯いていたアヤネにホシノが言った。

 

「これは、アヤネちゃんがここに来る前…いや、対策委員会ができる前のことなんだから。」

 

「ホシノ先輩、何か知ってるの?」

 

シロコの質問にホシノは答えた。

自分はアビドスの生徒会のメンバーであったと。

その時はもう1人の生徒会長と副生徒会長だったホシノの2人しかおらず、もう在校生も二桁しかいなくなっていた。教職員もいなかったので、授業なんてものはなかった。

その時は、ちょうど砂漠化を避けようと学校を何度も移していた時期なのもあって、生徒会室もあまりちゃんとしておらず、引き継ぎ資料などのちゃんとしたものもなかったらしい。

 

「…その生徒会長は無鉄砲で、生徒会長なのに校内随一のバカでさ〜、私の方も嫌な性格の新入生だったんだよね。」

 

「生徒会なんかも肩書きだけで、おバカさん2人が集まっただけだったんだよね〜。」

 

「あの時は、あちこちに行って回ったな〜、……何にも知らずに…」

 

そう言ったホシノの目は少し悲しげだった。

 

「ホシノ先輩が責任を感じることはない。」

 

シロコがホシノにそう言った。

 

「アビドスに対策委員会ができたのはホシノ先輩のおかげ」

 

「ホシノ先輩は怠け者で、寝てばっかりで色々はぐらかしたりはするけど、大事な時には誰よりも頼りになる。」

 

「う、うん?」

 

「ホシノ先輩は、いろいろダメなところはあるけど、尊敬はしてる。」

 

「し、シロコちゃん!?どこでそんな青春っぽいセリフ覚えたの⁉︎おじさん、この雰囲気ちょっと苦手なんだけど⁉︎」

 

「ん、アヤネとヒョウガが青春してたから言ってみたかった。」

 

「え、な、なんで私たちなんですか⁉︎」

 

「…?」

 

アヤネは顔を赤くして驚いていたが、ヒョウガはピンと来ていない表情だった。

 

そうして一悶着あった後、また土地の話に戻った。

 

「どうして前の生徒会はカイザーに土地を売ったのでしょうか?」

 

「実は裏で手を組んでたとか?」

 

「いえ、それは違うと思います。」

 

「そうだね〜。私も会ったことはないからよくわかんないけど、生徒会ってことはちゃんと学校のことを考えてくれていたと思うよ。」

 

「では、借金を返済するために土地を売ったのでしょうか?」

 

「はい、私もそう思います。このアビドスの土地に高値がつくはずもなく、借金自体を減らすことはできなかったのではないかと。」

 

「それで、繰り返し土地を売るという悪循環に…」

 

「な、何だかおかしくない?なんか最初からどうしようもないっていうか…」

 

『…そういう手口なんじゃないかな。』

 

「えっ!?」

 

『アビドスは、罠に嵌められたのかもしれない。』

 

「…なるほど」

 

「…アビドスにお金を貸したのも、カイザーがアビドスの土地を手に入れるため。」

 

「!」

 

きっと最初はカイザーにいらない土地でも売ったらどうか?などとでも言われたのだろう。

だが、そんな安値で売っても借金が減るわけでもなく、土地を取られる一方になってしまったのだろう。

そして、アビドス自治区そのものがカイザーのものになる。

そういう計算だったのかもしれない。

 

「…だいぶ前から計画してたのかもね…」

 

「何なのよ⁉︎こんなのカイザーに弄ばれてるだけじゃん!生徒会の奴らがこんな詐欺みたいなやり方に騙されていなければ…」

 

『セリカ、落ち着いて。』

 

『悪いのは騙されることより、騙すことだと思うよ。』

 

先生がセリカを宥めた。

 

「わ、私もわかってるわよ!た、たまに騙されることもあるし、ここの誰よりもわかってるかもしれない!悪いのは騙す方だってことは!」

 

「でも、悔しい…」

 

「セリカちゃん…」

 

確かに、今までカイザーの手のひらで弄ばれていた。

こんなことをされて悔しいと感じるのは普通だ。

 

「苦しんでると、人は切羽詰まっちゃうものなんだよね〜。そうなると、人は何でもやっちゃう…そういうものなんだよ。」

 

「学校の借金、今のアビドスの状況、そして、私たちが見つけてきたもの…」

 

「全てが少しずつ、つながり始めている気がします。」

 

「カイザーは、アビドスの生徒会がなくなり、土地を購入する方法がなくなったため、まだ手に入れていない土地であるこの学校を奪うために、ヘルメット団を雇っていた…」

 

「カイザーの狙いは土地であったという結論でいいと思います!」

 

「そうですね。」

 

「うん、おじさんもそう思う。」

 

カイザーの狙いは土地であるという結論になった。

だが、そう結論づいたとしても、新たな疑問が浮かんできた。

 

「ですが、なぜでしょう?アビドスの自治区はもうほとんどが砂漠と荒地なのに…」

 

「確かに、こんな土地を奪ったところで何か利益があるとは思えませんが…」

 

今のアビドスの土地は、市街地以外はほとんどが廃墟や砂漠などの持っていたとしても何か利益になるものなんてない状況になっており、なぜわざわざそんな土地を奪ってまで手に入れようとするのかという疑問が上がってきた。

その疑問に頭を悩ませていると、先生がヒナに言われた言葉を思い出した。

 

『砂漠といえば、ちょっと耳にしたことがあってね…』

 

「先生?」

 

先生はヒナから聞いたことを対策委員会達に話した。

 

 

 

「…砂漠でカイザーが…」

 

「ど、どうしてゲヘナの風紀委員長が…?それに、どうして先生に…?」

 

なぜ、他学園の自治区なのに、その学園が知らない情報をヒナが持っていたのか。そんな疑問が対策委員会達に浮かんできた。

 

「わ、私、ゲヘナの風紀委員長が諜報能力に長けているというのを耳にしたことがあります。」

 

「独自のネットワークでもあるのかな?」

 

(確かに、ヒナは元々情報部だったと聞いたし、諜報が得意なんだろう。ましては、風紀委員会の委員長だし、独自のネットワークがあるという可能性もあるな…)

 

先生がそう考えていると、セリカが考えている対策委員会達に言った。

 

「そんなことより、まずは何が起こってるのか実際に行って確かめるしかないじゃん!」

 

「ん、そうだね。」

 

「たしかにね〜」

 

『それじゃあ、アビドス砂漠へ向かおう!』

 

「「「「はい!(うん!)」」」」

 

こうして、対策委員会はアビドス砂漠へ向かった。

 

 


 

 

〈とあるオフィス〉

 

「クックック…」

 

とあるオフィスにて、黒服が1人、窓のブラインドによって薄暗くなった部屋で椅子に座ってヒョウガと風紀委員会が戦っている映像を見ていた。

 

「これほどの数を1人で…クックック、本当に興味深い…しかも、神秘の他に少しだけですが何かがある…」

 

「神秘などではない、もっと上位の……」

 

「虹氷ヒョウガさん…あなたはいったい何者なんですか…?」

 

薄暗いその部屋に響いた特徴的な笑いは、ブラインドの影に飲み込まれるように消えていった。

 

 


 

 

〈アビドス砂漠〉

 

「ここがアビドス砂漠…」

 

セリカが呟いた。

辺りを見渡すと、今まで見てきた廃墟等がなく、ただ広大な砂漠が広がっていた。

 

「いや〜、懐かしいね〜」

 

「ホシノ先輩来たことあるんですか?」

 

「うん、生徒会の時に何度かね、もう少し行くとオアシスがあった場所に着くよ。」

 

「オアシスなんてあったんですか?」

 

「うん、今はもう干あがっちゃったけどね。干上がる前は砂祭りっていう大きなお祭りもあったんだよ。」

 

「ん、知ってる。すごい人気で、他校からも来るぐらいだったとか…」

 

「お祭り…行ったことないですね…」

 

『確かに、ヒョウガはあんまりそういうところに行ったことなかったね』

 

そう話しながらしばらく歩みを進めていると、アヤネから通信が入った。

 

「皆さん、前方に何かあります!」

 

対策委員会達の前方には砂埃が舞っていて、よく見えていなかった。

 

「巨大な施設のようなものが…」

 

「こんな場所に施設?何かの見間違いじゃなくて?」

 

「恐らく、見間違いではないはずですが…とりあえず、確認できるところまで進んでください。」

 

アヤネの指示に従い、しばらく進むと軍事基地のようなものが見え始めた。

その建物はとても大きく、壁で囲まれていた。

 

「な、なにあれ⁉︎」

 

「基地…でしょうか…?」

 

そう話していると、施設の中から声が響いた。

 

「侵入者だ!迎え撃て!」

 

声が響くと、建物の入り口と見られる所から武装したオートマタ兵が大量に出てきて、対策委員会達を囲んだ。

 

「て、敵です!囲まれています!」

 

アヤネの通信を受け、対策委員会達は武器をオートマタ兵達に構えていた。

 

すると、オートマタ兵達の奥から他のオートマタが出てきた。

 

そのオートマタは他のオートマタよりも2回りほど大きく、スーツを着用しており、貫禄があった。

 

「やあ、侵入者達よ……いや、アビドス廃校対策委員会というべきかな?」

 

「!」

 

「な、何で私たちを…」

 

出てきたそのオートマタは対策委員会達を知っていた。

 

「まあまあ、まずは武器を下ろしたまえ。」

 

「…」

 

対策委員会達は不服そうにしながら武器を下ろした。

 

「まさか君たちにここで会うとは思わなかったが…」

 

「少し話す前に、自己紹介といこうか。」

 

「……私はカイザーコーポレーションの理事を務めている者だ。」

 

「そして、君たち、アビドス高等学校が借金をしている相手でもある。」

 

「っ!」

 

「え⁉︎」

 

「嘘っ⁉︎」

 

そのオートマタは自分がカイザーの理事だと名乗った。

そのことに、対策委員会達は驚きを隠せなかった。

 

「それでは、古くから続くこの借金について、話し合いでもしようじゃないか。」

 

カイザー理事がそう告げた。

 

その後ろでは、トカゲが虫を捕まえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






少し小話

シャーレの当番に行くと、お昼ご飯はヒョウガが作ってくれるらしい…
そのエプロン姿に脳を焼かれる人もいるとか…





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