【TS】神様のミスで死にましたが、補償内容が羞恥プレイなんですけど   作:もろきゅー

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16話 ハイレグで行くしかない、という悲しい結論

 翌朝。

 白鹿亭の部屋で、俺はベッドの上に服を並べて頭を抱えていた。

 

 普通の服一式と──例の、アウラ特製ハイレグアーマーのどちらを着るか。

 ……どう考えても、前者が人として正しいんだけどな。

 

 ここからソーン村まで三日。往復七日コース。

 その間に、またスライムやら何やらに襲われたとして──

 

 危険察知自動装着。

 服、爆散。

 ハイレグ、強制装備。

 

(……また服セット全滅は、マジで財布に悪いんだよな……)

 

 買ったばかりで爆散した新しい服たちを思い出し、胸が痛くなる。

 

「……くそ」

 

 小さく悪態をついて、俺は服を脱いだ後、ステータス画面を開いて、装備欄からハイレグアーマーを選ぶことにする。

 

 せめて、服が犠牲にならないタイミングを自分で選ぶ。

 悲しいけど、これが一番被害が少ない選択だ。

 

 覚悟を決めて鎧を装備すると、肌にぴたりと吸い付くように馴染む感触がして、ハイレグアーマーが現れる。

 

(妙に着心地がいいのが腹立つんだよな……)

 

 上からローブ代わりのマントを羽織りたい所だが

 恐らくハイレグアーマーが隠れるようなものを装備すると、爆散すると思われるので何も装備出来ない。

 

「アウラ、支度できた?」 

 

 ドアをノックする声。ティナだ。

 

「ああ、入っていい」

 

 扉が開き、ティナが入ってきて──ぴたりと動きを止めた。

 

「……結局、その鎧で行くんだ」

 

 若干、呆れ七割・同情三割くらいの目だ。

 

「仕方なく、だ」 

 

 俺はうつむきながら呟く。

 

「道中でまた服吹き飛ばされるくらいなら、最初からこれで行ったほうが被害が少ない」

 

「理屈は分かるけど……うん、分かるけど……」

 

 ティナは額に手を当てて、小さくため息をついた。

 

「念の為、替えの服は多めに持って行く方がいいわね」

 

「ちゃんと多めに持ってるから大丈夫……のはずだ」

 

 そこへ、タイミングよくカイトも入ってきた。

 

「アウラさん、準備──」

 

 言葉が途中で止まる。

 顔が、一瞬で真っ赤になった。

 

「わっ、あ、その、えっと……」

 

 視線が泳いでいる。

 いや、泳ぐな。落ち着け。

 

「ジロジロ見ないの」

 

 ティナの容赦ない一言が飛ぶ。

 

「み、見てないよ!」

 

「見てたでしょ!」

 

「見てない! 見てないけど、その、視界に入るんだって……!」

 

(それはまぁ……否定はできないけどさ)

 

 俺は丸見えの尻を、両手の甲で押さえながら、咳払いをひとつ。

 

「……とにかく、時間だ。商人ギルドに行こう」

 

 このまま部屋でやり取りを続けていると、俺の精神力が先に尽きる。

 

 

 商人ギルドの前には、既に荷馬車が一台待機していた。

 荷台には木箱や樽が積まれている途中らしい。

 馬はおとなしく鼻を鳴らしており、御者台の横で一人の女性が荷物の確認をしていた。

 

 年の頃は二十歳くらい。

 明るい茶色の髪をポニーテールにまとめ、動きやすそうな服にエプロンのような腰布。

 いかにも「働く商人」といった雰囲気だ。

 

「あのー」

 

 カイトが恐る恐る声をかけると、彼女はぱっと顔を上げた。

 

「はーい、なにか──って、あっ!」

 

 俺を見た瞬間、目を丸くしたかと思うと、一気に顔がぱぁっと明るくなる。

 

「君が噂の美人な新人ちゃんだね!? 変態の!」

 

「違う」

 

 反射的に声が出た。

 

「断じて変態ではない」

 

 ……デジャヴを感じるやり取りだな。

 

(ギルド、情報管理どうなってんだ)

 

 俺が心の中で頭を抱えるより早く、彼女はずいっと距離を詰めてきた。

 

「初めまして! ノノって言います! 二十歳、商人やってます! 今から一緒にソーン村まで行く仲間だよ!」

 

「アウラだ。よろしく」

 

 とりあえず握手に応じる。

 握手の力が妙に元気だ。

 

「私、ソーン村の出身でね。街と村を行ったり来たりして、日用品とか食料とかを運ぶ仕事してるの。今回も荷馬車いっぱい持ってくから、よろしく頼むね!」

 

「私はティナ。こっちはカイト」

 

 ティナが続けて自己紹介すると、ノノは二人にも同じテンションで握手していく。

 

「ティナちゃんにカイトくんね、オッケー! 三人とも、よろしくー!」

 

 と、そのノノの視線が、すぐさま俺の全身へと戻る。

 

「で、それよそれ!」

 

 指がぴしっと向けられた。

 

「その鎧! 何そのデザイン!! えっちすぎない!?」

 

「言い方」

 

 横でティナが即ツッコミを入れた。

 

「でも分かる……」と、小声で呟くのはやめてくれ。

 

「ねぇねぇどこで手に入れたの? 素材なに? 動きやすさは? 防御性能は? 魔力反応ある? どこ製? いくらだった?」

 

「質問が多い」

 

 ノノは完全に目が商人のそれになっていた。

 これはあれだ、新商品を見つけたときの顔だ。

 

「しかもさぁ、その露出の具合!」

 

 ノノは身振り手振りを交えて語り出す。

 

「露出は多いのに、下品すぎず、要所はちゃんと抑えてるっていうか、守ってるのかどうかは知らないけど、とにかく目を引くのよね。ああいうの、貴族のお嬢様とか好きそうじゃない? 戦うお姫様スタイルみたいな!」

 

「絶対流行らせないでくれ」

 

 心からの願いだった。

 

「ねぇねぇ、ちょっとスケッチさせてもらってもいい?」

 

 ノノが腰のポーチから紙とペンを取り出し始める。

 

「今後似たような装備を作れないか、工房の人たちと相談してみたいの! ほら、機能性とえっちさの両立って、ある層にめちゃくちゃ刺さると思うの!」

 

「ある層ってどの層だよ」

 

 言いながら一歩下がる。

 

「……悪いが、その話は遠慮したい」

 

「えー、なんでー? 絶対売れるのにー」

 

 ノノは本気で残念そうな顔をする。

 

「このデザインの鎧を着たお嬢様たちが街中に増えたら、景気も良くなりそうなのに……」

 

(経済の前に色々終わるわ)

 

 ティナが俺の前にすっと立った。

 

「ほらほら、あんまりいじらないで。アウラが困ってるでしょ」

 

「んー……そっかぁ。うん、分かった。今はやめとく」

 

 あっさり引き下がった。

 いい人なのか、危ない人なのか、判断に困る。

 

「でも、いつか気が向いたら、ぜひモデルになってね!」

 

「気が向かない未来しか見えない」

 

 そんなやり取りをしているうちに、荷物の積み込みが始まった。

 

 

「じゃ、それぞれ背負い袋は自分で持ってね。残りの荷物は全部この荷台に」

 

 ノノの指示に従い、俺たちは荷物を運び込んでいく。

 木箱には「保存食」「道具」「日用品」などの印がついている。

 

「この箱、結構重いですね」

 

 カイトが少しよろめきながら持ち上げると、ノノが笑いながら言った。

 

「それ、瓶詰めと塩の樽だからねー。ソーン村、内陸だからさ。塩は貴重品なんだよ」

 

 なるほど。

 塩の供給を担っている商人、重要人物だな。

 

 一通り荷物を積み終えると、ノノが御者台に上がる。

 

「オッケー、それじゃあ出発しよっか! ソーン村まで、のんびり三日の旅だよ!」

 

 俺たちは荷馬車の横を歩くように位置を取り、それぞれ武器や荷物の重さを確かめた。

 

(いよいよ、って感じだな)

 

 街の門を抜けると、風の匂いが変わった。

 土と草の匂いが、ぐっと濃くなる。

 

「うわぁー……」

 

 カイトが素直な感嘆の声を漏らす。

 

「こうやって街を離れるの、なんか新鮮ですね」

 

「そうね。森の入口くらいなら何度も行ったけど、ちゃんと旅するって感じの依頼は初めてだしね」

 

 ティナは前を見据えながら、胸元のネックレスをそっと押さえた。

 

 街道はよく整備されていて、確かに歩きやすい。

 空は青く、雲はゆっくりと流れている。風も穏やかだ。

 

(……こういうのだけ見てると、平和な世界なんだけどな)

 

 そんなことを考えながら、一歩一歩を踏みしめる。

 

 

 昼少し前。

 日差しが傾き始めた頃、ノノが御者台から振り返った。

 

「そろそろお昼にしよっかー。あの大きな木のところで止まるね」

 

 街道脇に、程よく影を作っている大きな木が一本立っている。

 荷馬車をそこに寄せ、馬を繋ぎ、水を飲ませる。

 

「じゃ、簡単にご飯の準備しよっか」

 

 干し肉とパン、水を用意しようとしたそのときだった。

 

 ──バサ、バサバサバサッ。

 

 頭上から、風を叩くような音が聞こえた。

 

「……?」

 

 顔を上げる。

 空の一部が、影になった。

 

「シャドーバード!」

 

 先に叫んだのはカイトだった。

 

 空から急降下してくる巨大な影。

 体長二、三メートルはありそうな黒い鳥──いや、鳥型の魔物か?

 鋭く曲がった嘴、ギラギラと光る赤い目。翼の先端は刃物のように尖っている。

 

 足元が一瞬、すくんだ。

 

(は、や──)

 

 反応が、遅れた。

 

 俺が剣に手を伸ばすより早く、

 カイトが一歩前に出ていた。

 

「うわっ──!」

 

 空から突っ込んできたシャドーバードの爪が、カイトの前に迫る。

 カイトは新しいショートソードを抜き、必死にそれを受け止めた。

 金属音が高く鳴り、衝撃で足が半歩後ろに下がる。

 

「カイト!」

 

 ティナの声が飛ぶ。

 同時に、彼女が杖を構えた。

 

「《ウィンドカッター》!」

 

 短く鋭い詠唱。

 空気がぶわっとうねり、目に見えるほど鋭い風の刃が生まれる。

 

 シャドーバードが翼を広げて再び高度を取ろうとした瞬間、

 その胴体を、風の刃が斜めに走り抜けた。

 

 ズバッ。

 

 音がした、気がした。

 次の瞬間、巨大な鳥型の魔物は、空中で真っ二つになっていた。

 

 上半身と下半身が空中でずれ、

 どさっ、と鈍い音を立てて地面に落ちる。

 

「……っ」

 

 喉が、ひゅっと鳴った。

 

 ノノは素早く馬のそばに回り込み、手綱を抑えている。

 馬が暴れないよう、落ち着いた声で宥めていた。

 

「カイト、大丈夫!?」

 

 ティナが駆け寄る。

 

「う、うん……! 腕、しびれてるけど……平気……!」

 

 カイトは息を荒げながらも、ちゃんと立っていた。

 剣先はまだ微かに震えている。

 

(……すげぇ)

 

 心の底から、そう思った。

 

 さっきまで隣で「ご飯だねー」って顔してた二人が、

 いきなりあの速度で動いて、あの魔物を仕留めた。

 

 俺はというと──

 

(……何も、できなかったな)

 

 ただ空を見上げて、足を止めて、剣に手を伸ばしたところで終わっていた。

 心臓が、ばくばくと暴れて手が震える。

 

「アウラ」

 

 ティナが振り返る。

 

「怪我は?」

 

「……ない。何もされてない」

 

 本当に、何もされていない。

 何もされてないし、何もしてない。

 情けなさと、安堵と、いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、胸の中をかき回す。

 

「いやぁー、びっくりしたねぇ」

 

 ノノが荷馬車のほうから歩いてきた。

 

「でも助かったよ。ありがと、二人とも。シャドーバードって、ああ見えて結構やっかいなんだよね」

 

「そうなんですか?」

 

 カイトが剣を収めながら尋ねる。

 

「群れで来なかったのはラッキーだねー。一羽だけなら、今みたいに対処できるけどさ。……それにしても、見事な魔法だったわ」

 

「ま、まあね」

 

 ティナは少し照れたように杖を下ろした。

 ネックレスの青い石が、光を受けてきらりと揺れる。

 

(うん……やっぱ、凄いな、この二人)

 

 その事実を、素直に誇らしく思う。

 同時に、胸の奥に小さな棘が刺さる感覚もあった。

 

(俺も、ちゃんと冒険者やらないとな)

 

 剣も鎧も、女神から与えられたよく分からない高性能装備。

 それがなかったら、俺はただ突っ立ってるだけで終わるのかもしれない。

 そんなのは、嫌だった。

 

「でさでさ」

 

 ノノがシャドーバードの死体を見下ろしながら、にやりと笑う。

 

「シャドーバードって、ちょっとクセはあるけどさ、肉は美味しいんだよねー」

 

「え」

 

 鳥の死骸を見る視線が、一斉に変わる。

 

「捌けるの?」

 

「まかせなさい。田舎育ち舐めないでよ」

 

 ノノは腰のナイフを抜くと、慣れた手つきで羽をむしり始めた。

 羽がばさばさと風に舞う。

 

「手伝いますっ!」

 

 カイトが慌てて近づく。

 

「じゃあ、こっち側押さえてて。ティナちゃんは火の準備お願いしてもいい?」

 

「分かったわ」

 

 ティナは小枝を集め、火打ち石で火を起こす。

 小さな炎がぱちぱちと音を立て始めた。

 

「アウラはどうする?」

 

「……火の番、してる」

 

 正直、解体作業に参加できる気がしなかった。

 血や内臓はそこまで苦手ではないが、今は別のことで頭がいっぱいだ。

 それでも、焚き火の前で薪を継ぎ足しながら、時々ノノたちの様子を見る。

 

 ノノのナイフさばきは見事だった。

 余計なところを切らず、素早く、ためらいなく肉と内臓を分けていく。

 

「はい、こんなもんでいいかな」

 

 骨から外した肉を、ノノが串代わりの枝に刺していく。

 軽く塩をふり、香草の束をすりつけた。

 

「おお……本格的ですね」

 

「料理できる商人はモテるんだよー?」

 

 ノノは笑いながら、串を火の上に並べた。

 

 シャドーバードの肉が、じゅうっと音を立てて焼けていく。

 鳥と獣の間みたいな、独特の香りが鼻をくすぐった。

 

「いい匂い……」

 

 カイトがごくりと喉を鳴らす。

 

「ちょっと癖あるけど、焼きたては最高だからね。さ、いい感じに焼けたところからどうぞー」

 

 串を一本受け取る。

 慎重に息を吹きかけてから、肉にかじりついた。

 

「……あ」

 

 外は香ばしく、中は意外とジューシーだ。

 少し獣臭さはあるが、塩と香草のおかげでそれが良い方向に転がっている。

 

「うまい」

 

 思わず、本音が漏れた。

 

「でしょー?」

 

 ノノが得意げに胸を張る。

 

「ソーン村のほうじゃ、たまに狩人の人が獲ってきてくれるんだよね~」

 

「この味なら、街で屋台を出しても売れそうね」

 

 ティナが、もぐもぐしながら言う。

 

「うん……! この間の串焼きより、ちょっと野性味あって美味しいかも……!」

 

 カイトも目を輝かせていた。

 

 焚き火の上で肉を焼きながら、四人で他愛もない話をする。

 ソーン村のこと、村の祭りのこと、畑のこと。

 ノノはよく喋り、よく笑う。聞いているだけで、村の風景が少し見えてくるようだった。

 

 心臓の鼓動は、いつの間にか落ち着いていた。

 

 ……さっき、何もできなかったことは、もちろん、忘れない。

 多分、夜にひとりで思い返して、また胸がざわつくんだろう。

 

 でも今は──

 新しく覚えた味と、焚き火の暖かさと、

 隣で笑っている三人の声を、ただ静かに受け止めていたかった。

 

(次は、一歩遅れないように)

 

 串を握る手に、少しだけ力を込める。

 

(ちゃんと、冒険者として身体が動くように──)

 

 そう心の中でそっと誓いながら、俺はもう一口、シャドーバードの肉を齧った。

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