【TS】神様のミスで死にましたが、補償内容が羞恥プレイなんですけど   作:もろきゅー

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17話 焚き火とステータス画面

 シャドーバードの肉をもう一本齧り終えたころには、腹も心も、だいぶ落ち着いていた。

 昼休憩を切り上げ、俺たちは再び街道を歩き出す。

 

 荷馬車の軋む音と、馬の鼻を鳴らす音。

 カイトとティナは相変わらず前を見据えて歩き、ノノは御者台の上から時々どうでもいい話題を投げてくる。

 その後の道のりは、驚くほど順調だった。

 

 追加の魔物も盗賊も現れず、空は高くて風も穏やか。

 道が思っていたよりも整備されているおかげで、足もそれほど疲れない。

 

(……こういう時に限って、逆に不安になるんだよな)

 

 ゲームの感覚だと、「何も起きない時間」が一番怖い。

 フラグってだいたい、こんな平和なときに立つものだ。

 そんなことを考えているうちに、空の色が少しずつオレンジに染まり始める。

 

「そろそろ野営の準備かな~」

 

 御者台の上で、ノノが伸びをしながら言った。

 

「ヴァンさんが言ってたやつですね」

 

 カイトが振り返る。

 

「ああ。『陽が落ちる前にさっさと野営準備に入れ』ってやつだ」

 

 俺も頷く。

 ヴァンの声が、頭の中で蘇る。

 

(調子に乗って夜道を歩いて痛い目見たことがあるから、だったか)

 

「じゃあ、そろそろ野営準備に入ろっか」

 

 ノノが馬をゆっくりと減速させる。

 

「いつもだと大体この辺りで野営するんだけど……あ、あの辺りどう?」

 

 街道から少し外れた、小さな開けた場所。

 低い木々に囲まれ、近くには細い流れの小川も見える。

 

「水場が近いし、風も多少は防げそうね」

 

 ティナが周囲を見回して頷いた。

 

「他に魔物の痕跡も……うん、大丈夫そう」

 

 彼女は足跡や折れた枝をざっと確認してから言う。

 

「じゃ、今日はここをキャンプ地としましょう!」

 

 ノノが満面の笑みで宣言した。

 

 

 

「じゃあ、役割分担しよっか!」

 

 荷馬車を木陰に寄せて馬を繋ぎ終えると、ノノがぱん、と手を叩いた。

 

「料理は私とアウラちゃんで。ティナちゃんとカイトくんは、薪集めと周囲の地形チェックお願いね。ついでに食べられそうな木の実とかあったら拾ってきて!」

 

「了解です!」

 

「分かったわ」

 

 カイトとティナは、背負い袋を下ろすと森のほうへ向かっていく。

 残った俺とノノは、荷馬車の荷台から木箱をいくつか下ろした。

 

「さて、と。今日のメニューは~……」

 

 ノノが箱を開け、中身を確認していく。

 干し肉、乾燥野菜、数日持つ根菜に、少量の香草。

 昼に比べればささやかだが、野外で温かいものが食べられるだけで十分ありがたい。

 

「野菜たっぷりスープと、固いパンをふやかして食べる感じかな! 贅沢はできないけど、お腹は満たせるよ」

 

「十分だよ。むしろ野外でスープとか、完全にご馳走だ」

 

「でしょ? じゃ、アウラちゃんはこの芋の皮、剥いてもらってもいい?」

 

 ノノが袋からごろごろと芋を取り出し、ナイフを一本渡してくる。

 

「分かった。こういうのは……」

 

 ──たぶん、簡単だろ。

 そう思ったのが、そもそもの間違いだった。

 

(あれ、意外と難しくないか、これ)

 

 ナイフを握って芋の皮を剥き始めたものの、やたらと分厚く実まで持っていってしまう。

 逆に薄くしようとすると、今度は途中で途切れてボロボロになる。

 

「……」

 

 数個やっただけで、自分の不器用さに戦慄した。

 

「アウラちゃん」

 

 じっと見ていたノノが、声をかけてくる。

 

「はい」

 

「その芋、何かに恨みでもある?」

 

「ない」

 

 即答した。

 

「なんか、皮と一緒に人生まで削ってそうな剥き方してるけど……」

 

「そんな哲学的な皮むきあるか?」

 

 思わず突っ込む。

 けれど、言われて見てみると、俺の手元には無惨な姿の芋たちが転がっていた。

 皮というより、もはや肉片だ。

 

「ね、普段料理してない?」

 

「う……や、やってない」

 

 観念して認める。

 そもそも思い返すと、前の世界では会社から帰ってきて調理する元気もスキルも無かったから、24時間営業しているスーパーやコンビニの弁当か、インスタント食品や冷凍食品くらいしか食べてなかった気がする。

 ……そういえば、包丁を使った記憶がない。俺がやっていたのは、カップ麺にお湯を入れる事かレトルト食品を湯煎するくらいだった気がする。得意な事はレンチンだ。

 

「……いつもコンビニ弁当とか冷凍食品とかしか食べてなかったから」

 

「こんびに……?」

 

「あー、えーっと、街の食堂の持ち帰りみたいなのがあったんだ。いつでも買える感じの」

 

「へぇー、なんか便利そうなお店だねぇ」

 

 ノノは楽しそうに笑うと、俺の手元から芋を一つひょいと取り上げた。

 

「じゃ、ちょっとだけコツ、教えるね」

 

 彼女は芋を片手でくるくる回しながら、ナイフを一定の角度で滑らせていく。

 するすると、薄い皮が一本の帯みたいに繋がって剥がれていく。

 

「うま……」

 

「ほら、持つ手をこうして、ナイフは力で押すんじゃなくて、滑らせる感じ? 刃に仕事させるの」

 

 言われた通りに持ち方を真似してみる。

 芋を落とさないようにするだけで精一杯だが、何度か試すうちに、少しはマシになってきた。

 

「お、さっきよりだいぶ良くなってるよ!」

 

「ほんとか?」

 

「うんうん。最初の子たちよりは、だいぶ幸せそうな断面になってる」

 

「芋に感情移入すんなよ」

 

 そうやって芋と格闘していると、慣れてきたようで、まだまだ不安定。

 少し油断すると芋が手から滑りそうになるし、薄く剥こうとすると途中で皮が切れてボロボロになってしまう。

 

 それでも、さっきよりは少しだけマシだ。

 ノノの言っていた「刃に仕事をさせる」という感覚が、少しずつ手に馴染んできていた。

 そんなふうに芋を剥き続けていると──

 

「ねぇ、アウラちゃんってさ」

 

 ノノが、ふと手を止めた。

 その声は、いつもの明るさよりも少しだけ柔らかい。

 

「……ん? どうした」

 

「どこの国の人なの?」

 

「……え?」

 

 思わずナイフを握る手が止まった。

 その質問は、予想していたよりもずっと素朴で……なのに、どこか核心に触れているようにも感じてしまった。

 

「いやね、冒険者の過去を根掘り葉掘り聞くのはよくないって、ギルドでも言われてるんだけどさ」

 

 ノノはナイフの柄を指でトントン叩きながら続ける。

 

「アウラちゃんって、街の子っぽくもないし、かといって田舎育ちの感じもしないのよね。所作や言葉の選び方が、なんか……別の場所っていうか」

 

「別の場所……」

 

 危ない。

 ちょっとだけ、心臓が跳ねた。

 俺は異世界人だなんて、もちろん言えない。

 でも、確かに俺の言動には、こっちの世界の「普通」と違う部分が多いのは自覚している。

 芋の皮むきだってそうだし、考え方も戦い方も、この世界の常識とは違うのだろう。

 

「でね、ずっと気になってたんだ。どこの国から来たのかなーって」

 

 ノノの目は、冗談を言うときのきらきらした目ではなかった。

 どちらかというと──職人が珍しい素材を見つけた時の目。

 商人が、面白い商機に出会った時の目。

 

(……あー、そっちか) 

 

 商人としての興味。

 別の国の出身なら、その国特有の品物や文化を仕入れられるかもしれない──そういう打算。

 悪意はない。

 むしろ、商人としては健全すぎるほどの思考回路だ。

 

「……まあ、ちょっと遠いところの生まれだよ」

 

 とりあえず無難な答えを返す。

 嘘ではない。

 俺の元の世界の国名を言ったところで、誰も知らないのだから。

 

「ふーん……?」

 

 ノノは芋を持ったまま、じーっと俺の横顔を観察する。

 

「いや、違うなー。普通じゃないっていうか……なんていうか……」

 

「ちょ、ちょっと待て。何を勝手に変な想像してるんだ」

 

「いやいや、だってさ」

 

 ノノは指を折りながら言う。

 

「見たことない凝った作りの鎧に、妙に高そうな剣でしょ、料理慣れてないでしょ、歩き方がなんか丁寧というか、上品というか……」

 

「歩き方なんて普通だろ。俺のどこに上品さがあるんだよ」

 

「ぜったいどこか別の国のいいとこの娘さんだと思うんだよね~」

 

「娘さんにすんな!!」

 

 思わず声が裏返る。

 けれどノノはにやにや笑っているだけで、追及はしてこない。

 あくまで商人の冗談混じりの探りという感じだ。

 

「でもさ、あんまり根掘り葉掘り聞くのは失礼だしね」

 

 ノノは突然、ふっと真面目な口調になった。

 

「話したくないなら無理に聞かないよ。どこの国の人かなんて、本人が言いたい時に言えばいいし」

 

「……ノノ」

 

「たださ」

 

 また少しだけ悪戯っぽく笑う。

 

「もしアウラちゃんがどこか別の国の生まれなんだったら……そこの美味しい特産品とか、珍しい工芸品とか、ちょっと紹介してくれたら嬉しいなーって思っただけ。商人としてね!」

 

「ああ、そっちの理由か」

 

「うん。正直に言えば商売の種にならないかな~って期待もちょっとある!」

 

 堂々と言いやがった。

 でも、それが妙に気持ちいい。

 

「安心しろ。ほんとに普通の国の普通の生まれだから。何も出てこないぞ」

 

「そっかぁ。じゃあそういう事にしておきまーす」

 

 ノノはあっさり引き下がった。

 

 深追いしない。

 俺が「話せない」「話したくない」気配を出しているのに気づいたからだろう。

 それだけで、胸の奥がほんの少しだけ軽くなった。

 

「ま、いつか気が向いたらでいいからね! はい次、こっちの野菜いってみよっかー!」

 

「……はいはい」

 

 内心ひやひやしながらも、俺は再び野菜に意識を向けた。

 危ない質問だったのに、ノノは軽く流してくれた。

 商人らしい現実的な打算はあるが、それでも踏み込みすぎない優しさがある。

 

(……こういう人、嫌いじゃないな)

 

 そんなことを思いながら、俺はぎこちない手つきで見たことが無い野菜の皮を剥き始めた。

 

 

 

 ほどなくして、カイトとティナが戻ってきた。

 

「薪、こんなもんでどうでしょう!」

 

「それと、あっちのほうに食べられる木の実が少し生ってたわ。ノノ、これ使える?」

 

 ティナが差し出した布袋には、小さな赤い実がいくつか入っている。

 

「おー、森の恵みだね! 少しだけスープに入れよっか。甘みが出るかも」

 

「近くに魔物の痕跡は?」

 

「ざっと見たけどスライムすら居なさそうです。とりあえず近くには痕跡は無かったです!」

 

「見張りもするから大丈夫よ」

 

 ティナがそう言うと、ノノもほっとしたように笑った。

 

「じゃあ、今度はテント張りましょうか」

 

 ノノが料理に集中する間、俺たち三人で簡易テントや寝床の準備に取りかかる。

 ロープを木に結び、小さな布を張り、地面をならす。

 昼間の失態を払拭するべく、俺は黙々と作業を進めた。

 

「アウラ、そっちの地面、もう少し踏んでならしておいて」

 

「了解」

 

 土の感触を靴越しに確かめる。

 こういう単純作業でも、「旅をしてる」という実感が湧いてくるから不思議だ。

 

 

 

 日が沈みきるころには、野営地はそれらしい形になっていた。

 焚き火の上では、大きな鍋にスープがぐつぐつと煮立っている。

 干し肉の出汁と野菜の甘みが混ざった香りが、夜の空気に広がっていく。

 

「できたよー! お腹空いた人、手ぇ挙げて!」

 

 ノノの声に、三本の手が同時に上がった。

 

「昼も思ったけど……ノノさん、料理ほんと手際いいですよね」

 

「ね。冒険者ギルドに就職したら、一瞬で厨房仕切りそうだわ」

 

「でしょー? 料理できる商人はモテるって、誰かが言ってた!」

 

 冗談を飛ばしながら、木の器にスープをよそい、固いパンを添えていく。

 俺たちは焚き火を囲って座り、それぞれ器を両手で包み込んだ。

 

「いただきます」

 

 スープを一口すする。

 

「……ああ」

 

 思わず、声が漏れた。

 昼のシャドーバードほどのインパクトはないけれど、素朴で優しい味だ。

 身体の内側から、じんわりと温まっていく。

 

「おいしい……!」

 

「ですよね!」

 

 カイトが嬉しそうに頷き、ティナも満足そうに目を細めている。

 

「んー、よかった。野外での料理って、調味料が少ないぶん、素材と火加減が大事なんだよね」

 

「ノノの料理スキル、めちゃくちゃ頼りになるな……」

 

「でしょでしょ?」

 

 スープを飲み進めるうちに、空の色が完全に夜になった。

 焚き火の明かりの外は、ほとんど何も見えない。

 

「それにしても、日が沈むとちょっと肌寒くなってきたねぇ」

 

 ノノが自分の腕をさすりながら言う。

 

「うん……。焚き火がなかったら、結構冷えそう」

 

 カイトもスープを飲む手を止め、肩をすくめている。

 

「そろそろ上着をもう一枚出したほうが良さそうね」

 

 ティナも腰にかけていたマントをしっかりと体に巻き付けた。

 

 ……のだが。

 

(あれ?)

 

 俺だけ、全然寒くなかった。

 

(そういえば……)

 

 ふと、装備欄に書いてあった説明を思い出す。

 アウラ特製ハイレグアーマーの効果の一つ。

 ──耐寒。

 

(……マジでハイレグなのに機能性おかしいんだよな、こいつ)

 

 見た目以外は、本当に優秀なのだ。

 冷えないから動きやすいし、変に身体が固まることもない。

 いま、俺だけが「焚き火なくても余裕」みたいな状態になっている。

 

(改めて考えると、悪くないどころかクソ有能装備なのか……いやでも見た目が……)

 

 ジレンマで頭を抱えそうになる。

 そのとき、ふと別のことが頭をよぎった。

 

(今なら、ステータス画面、じっくり見ても誰にもバレないんじゃないか?)

 

 今までは、周りに人がいるのが怖くて、あまり「ステータスオープン」を使ってこなかった。

 もし画面が他人にも見えていたら、いろいろと面倒だ。

 

 けれど、今は周りには三人だけ。

 しかも夜で、焚き火の光の中。

 

(試すなら……今か)

 

 スープを飲み終え、器を膝に置いたまま、心の中で念じる。

 

「ステータスオープン」

 

 視界の前に、いつもの半透明の画面が現れた。

 名前やステータスが並んだ、ゲームで見慣れたようなUI。

 

(よし、出た……)

 

 軽く息を飲んでから、そっと隣のティナを見る。

 

「なぁ、ティナ」

 

「なに?」

 

「俺の……前に、何か見えるか?」

 

「は?」

 

 ものすごく素っ頓狂な顔をされた。

 

「いや、その。文字とか、板みたいなのとか」

 

「何の話?」

 

 ティナは何度か瞬きをしてから、怪訝そうに俺の顔と、目の前の空間を見比べた。

 

「特に何も見えないけど。……まさか、疲れすぎて何か見え始めた?」

 

「違う」

 

 慌てて首を振る。

 

「ならいいけど。ちょっと心配になるから、変なこと言わないでよね」

 

 ティナはそう言って、再びスープに意識を戻した。

 

(……ってことは)

 

 胸の内で、そっとガッツポーズを決める。

 

(ステータス画面、他人には見えてないってことか!)

 

 今まで人前であまり開かなかったのは、完全に杞憂だったらしい。

 ちょっと損した気分だが、これで遠慮なく確認ができる。

 

(じゃあ、改めて見させてもらおうか……)

 

 俺は、目の前に浮かぶステータス画面に意識を向けた。

 まず視界に飛び込んできたのは──

 

【名前】アウラ

【種族】人間(?)

 

「あ」

 

 小さく声が漏れる。

 

(名前、埋まってる……)

 

 以前見たときは、たしか名前欄は空欄のままだったはずだ。

 それが、今はしっかり「アウラ」と表示されている。

 

(いつの間に? ギルドに登録した時か、それとも女神が勝手に入力したのか……)

 

 種族欄の「人間(?)」という謎の表記は相変わらずだった。

 そこに突っ込んでもロクなことにならない気がしたので、そっとスルーする。

 視線を下に移す。

 

【スキル】

 ・社畜の根性

 ・残業耐性

 ・報連相 Lv3

 

「……安定のブラック企業感」

 

 改めて見ると、全くファンタジー感がない。

 でもまあ、ここまでは前と同じだった。

 違うのは、その下だった。

 

【スキルポイント】残り:5

 

「お?」

 

 今までなかった表示が追加されている。

 

(スキルポイント? ってことは、何か新しいスキル取れるやつだよな、これ)

 

 ゲーム脳が即座に反応する。

「残り5」という文字に意識を向けると、画面がすっと切り替わった。

 

【取得可能スキル一覧】

 

 ずらり、と新しいウィンドウが開く。

 

 剣術、槍術、体術、盾術。

 火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、回復魔法、補助魔法。

 他にも見たことのないスキル名が、スクロールバーの向こうに大量に並んでいる。

 

(多っ……)

 

 適当に取るには、ちょっともったいない気がした。

 

(これ、ちゃんと計画立ててから振らないと後悔するやつだよな)

 

 とりあえず今は眺めるだけにしておく。

 この旅の間に、時間があるときにでもじっくり検討しよう。

 

(それより、装備のほうもちゃんと見ておくか)

 

 別のタブを開き、「装備」欄を選ぶ。

 そこには、現在身に着けている装備が一覧で表示されていた。

 まずは、今一番お世話になっているこの剣。

 視線を合わせて、説明欄を開く。

 

【アウラ特製魔剣・髑髏マークⅢ】

 分類:神器(かわいい)

 

「分類がおかしい」

 

 思わず、心の中でツッコむ。

 ハイレグアーマーもそうだが、神器の後ろに括弧で「かわいい」とか付けるな。台無しだ。

 

【効果】

 ・軽量化

 ・破壊不能

 ・魔喰い

 ・成長

 ・侵食

 

【特殊効果】

「一人にはしないよ♥」

 

【自動機能】

 危険時自動装着

 自動戦闘

 召喚(距離無制限/呼べば手元に来る)

 

※危険時は強制召喚で手元に現れます。

 強制召喚時は演出効果として光ります。

 

「…………」

 

 情報量が一瞬で脳の許容量を超えた。

 

(ちょっと待て。冷静に、一つずつ処理しよう)

 

 軽量化、破壊不能。ここまではまあ分かる。

 魔喰いも何となく予想はつく。魔力を吸う感じだろう。

 成長、侵食あたりから雲行きが怪しい。

 具体的にどう「侵食」するのか考えたくない。

 

 そして極めつけは──

 

「一人にはしないよ♥」

 

 剣に言われたくない言葉ランキング、堂々の一位だ。

 

(お前、俺の何なんだよ……)

 

 しかも最後の注意書き。

 

『強制召喚時は演出効果として光ります』

 

(余計な演出入れてんじゃねぇ!!)

 

 ただでさえ目立つハイレグアーマーと、怪しい髑髏付きの魔剣。

 そこに「ピカーッ」とか光る演出まで入ったら、完全に珍獣見世物コースである。

 ハイレグアーマーと合わせて光って現れたら……。

 

(女神、センスが最悪……)

 

 思わず、こめかみを押さえる。

 

「アウラ、大丈夫? 急に頭抱えて」

 

 ティナの声が飛んできた。

 

「あ、いや……ちょっと、急に頭が痛くなってな……」

 

 半分くらいは事実だ。

 精神的な意味で。

 

「無理しないでよ? 明日も歩くんだから」

 

「分かってる」

 

 他にもまだまだ確認したいことがあるが、ステータス画面をそっと閉じる。

 半透明の光の板は、すっと視界から消えた。

 

(……とりあえず分かったことは)

 

 この世界の俺は、想像以上にイカれた装備とシステムに囲まれている、という事実と。

 

(それにちゃんと中身が追いつかないと、マジでやばい)

 

 という、当たり前だけど目を背けたくなる現実だった。

 

 焚き火の火が、ぱちぱちと音を立てる。

 隣ではティナがスープを飲み、向かいではカイトとノノが何かどうでもいい話で笑っている。

 その光景を眺めながら、俺はそっと天を仰いだ。

 

(……せめて、もう少し普通の装備にするって選択肢はなかったんですかね?)

 

 もちろん、返事はない。

 代わりに、ハイレグアーマーが肌に吸い付く感触だけが、妙に鮮明だった。

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