【TS】神様のミスで死にましたが、補償内容が羞恥プレイなんですけど   作:もろきゅー

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69話 歓迎会の準備

 ゲオルグは一通りの案内を終えると、穏やかな微笑みを浮かべたまま一礼した。

 

「それでは、私は一旦これで失礼いたします。何かございましたら、ミレイユへお申し付け下さい」

 

 そう言って離れていく。

 入れ替わるように、ミレイユが俺たちを離れの中へ案内してくれた。

 本館よりは少しこぢんまりしているが、それでも十分すぎるほど立派な建物だ。

 

「まずは、お荷物を置いて頂くのがよろしいかと思います」

 

 ミレイユがそう言って、カイトが半分死にかけながら抱えている荷物へ目を向けた。

 

「私がお持ちしますが──」

「い、いえ、大丈夫です!」

 

 反射的に断ってしまった。

 いや、ここでミレイユに持たせたら、本当に申し訳なさすぎる。この屋敷の方に、マルルゥが買い漁った服袋の山を運ばせるのは流石に気が引けた。

 ミレイユは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに静かに頷いた。

 

「かしこまりました。では、お部屋までご案内いたします」

 

 そう言って、俺たちはまず二階へ案内された。

 階段を上ると、廊下の左右に客室が並んでいる。

 さらに奥には小さな談話スペースまであり、椅子と丸机が置かれていた。廊下自体にも無駄な広さがあって、窮屈さがない。

 本館よりはこぢんまりとはしているが……思っていたより、かなり広い。

 

 というかこれ、ちょっとした宿屋よりよっぽどちゃんとしてるんじゃないか?

 さらに一階には、さっき通った玄関ホールの他に、居間兼談話室のような部屋、食堂、浴室と洗面、それから客室が二部屋あるとのこと。そのうち一つはユリウスが使っているらしい。

 

 今まではこの広い離れを、ユリウスがほとんど一人で使っていたようなものなのか。

 何という贅沢。

 

 案内された客室の一つへ入ると、ティナとカイトが揃って目を丸くした。

 部屋の中は、やはり派手ではない。

 だが、落ち着いた色合いのカーテン、きちんと整えられた寝台、柔らかそうな布団、衣装を掛けるための木製の棚、小さな机と椅子、水差しに洗面用の器まで揃っていて、客が寝泊まりするのに必要なものが一通り整っていた。

 

 しかも、全部が清潔だ。

 ベッドのシーツには皺ひとつなく、机の上にも埃がない。

 

「す、すごい……」

 

 カイトがぽつりと呟いた。

 

「僕、ここで寝ていいんでしょうか……」

 

 気持ちは分かる。

 俺だってちょっとそう思ってる。

 

 ティナも部屋を見回しながら、どこか信じられないような顔をしていた。

 

「一人一部屋って事……? 宿屋よりずっとちゃんとしてる……」

 

 一方で、マルルゥは腕を組んで部屋を見渡し、

 

「へー、まあまあかなぁ」

 

 と、やたら余裕のある感想を口にする。

 いや、お前は何目線なんだ。

 シエルはこれくらいの部屋に慣れているのか、特に取り乱した様子もなく、静かに部屋のしつらえを見ていた。

 教会で聖女として暮らしていた頃は、たぶんもっと良い部屋で暮らしていたのだろう。

 荷物を置き終えたあとも、ミレイユは離れの中を一つひとつ案内してくれた。

 

 食堂。談話室。洗面。浴室。

 それぞれは本館ほど大きくはないが、客人が数日から数週間滞在することを考えれば十分すぎるほど整っている。

 

 そして、浴室を見た瞬間だった。

 

「お風呂……!」

 

 思わず声が漏れたのは、たぶん俺だけじゃなかった。

 ティナも「ちゃんとお風呂あるんだ……」と目を輝かせ、シエルもほっとしたように胸に手を当てている。

 そこまで広くはない。

 だが、脱衣所があり、洗い場があり、二人くらいなら入れそうな浴槽もある。旅の途中で水を絞った布で身体を拭くのとは、天と地ほどの差だ。

 ミレイユは、そんな俺たちの反応を見て、ほんの少しだけ微笑ましそうな表情を浮かべた。

 

「本日は、皆様の歓迎会も兼ねて、夕食は本館でのお食事をご用意する予定でございます。普段のお食事は、こちらの離れの食堂でご用意いたします」

「歓迎会まで……?」

 

 ティナが少し驚いたように言うと、ミレイユは静かに頷く。

 

「昼食は急ぎご用意しておりますが、少々お時間を頂きます。もしよろしければ、その間に湯浴みをなさってはいかがでしょうか。旅のお疲れもあるかと存じますので」

 

 その提案はあまりにも魅力的だった。

 もちろん、ありがたく受けることにした。

 荷物をそれぞれの部屋へ運び終えたあと、カイトが少し遠慮がちに言う。

 

「じゃあ先に女性陣が入って、そのあと僕たちが入るっていう形でどうでしょうか」

「ん、良いのか?」

 

 そう聞くと、カイトは力強く頷いた。

 

「もちろんです! お先にどうぞ」

「じゃあ、僕はお菓子でも先に買ってこようかな~」

 

 マルルゥがそんなことを言い出す。

 カイトは部屋で待機。マルルゥは買い物。

 俺たち女性陣は風呂──という流れになった。

 ……のだが。

 風呂には入りたい。とても入りたい。

 だが、せっかくなので離れの中ももう少し見て回りたい気持ちもあった。

 

「ティナとシャロン、先に入っててくれよ。終わったら俺が入るから」

 

 そう言うと、ティナは少し不思議そうにしたが、「わかった」と頷く。

 シエルも「では、お先に失礼しますね」と柔らかく笑った。

 俺はミレイユへ向き直る。

 

「離れの中、ちょっと見て回ってもいいですか?」

「ええ、もちろんでございます」

 

 ミレイユはすぐに答えてくれた。

 ただし、ひとつだけと前置きする。

 

「一階の一番奥のお部屋は、ユリウス様のお部屋になりますので、そちらだけはお入りになりませんようお願いいたします」

「わかりました」

 

 そう伝えて、俺は一人で離れの中を見て回ることにした。

 さてさて、それではこっちの建物がどんな感じか、見せてもらおうかな。

 離れとはいえ、こんな立派な館を見て回るなんて、そうそう無かった。

 せいぜいゲームや映画で雰囲気を楽しむ事は出来たが、実際に見て回れるなんてテンションが上がる。

 まずは一階からだ。

 

 玄関ホールを起点にして、食堂、談話室、浴室、洗面、客室が二つ。さらに控室のような部屋もあった。身なりを整えたり、着替えたりする時に使うのだろう。

 二階は客室が五つ。談話スペースもあり、廊下の先にはまだ空き部屋らしい部屋まである。

 

 思っていたより、ずっと広い。

 離れというより、小さな宿と言った方が近いかもしれない。もちろん、宿屋なんかよりずっと上等で綺麗だが。

 

 一階の窓から外を見ると、庭の端の方がちょうどよく見えた。

 開けた場所があり、木剣や槍を立てかけておくための棚のようなものも見える。たぶん、あそこが訓練用の場所なのだろう。

 

 一通り見て回ったあと、俺はカイトの部屋の前まで行き、こんこんとノックした。

 

「は、はい!」

 

 少し緊張したような声が返ってくる。

 扉を開けると、カイトはベッドの端にちょこんと座っていた。俺を見ると、ほっとしたように笑う。

 

「あ、アウラさんでしたか……誰が来たのかわからなくて、ちょっと緊張しちゃってました」

「離れの中、一通り見て回ってきたんだけど、結構広くてすごいぞ」

 

 そう言うと、カイトは苦笑いを浮かべた。

 

「いやぁ……本当に広いし、すごい建物なので、ちょっと緊張しちゃって……僕、ここで寝ていいのかなぁ……って」

「いやぁ、それは俺も思ってる」

 

 思わず笑ってしまう。

 

「ギルド長のお陰とはいえ、こんな良い所にただで泊めてもらっちゃって、ちょっと悪い気もするよな」

 

 俺はカイトに向き直る。

 

「とりあえず、ほとぼりが冷めるまでは、ここで匿ってもらう感じになると思う。その間に剣の訓練とか魔法の訓練とかして、お互い強くなろうぜ」

 

 そう言うと、カイトはぱっと顔を明るくした。

 

「はい! お願いします!」

「そういや、さっき外に訓練できそうな場所があったから、見に行ってみないか?」

「ぜひ行きたいです!」

 

 そうして俺たちは、さっき窓から見えた場所へ向かうことにした。

 離れを出て庭の端の開けた場所へ向かうと、やはりそこは訓練に使うにはちょうどいい広さだった。

 木剣や槍を立てる棚もあるし、地面もよく踏み固められている。

 たぶんここで訓練していいんだとは思う。

 だが、勝手に使って怒られても困る。

 

「多分ここでやっていいと思うんだけど、後で聞いてみようぜ」

 

 俺がそう言った瞬間だった。

 

「よろしければ、防具や訓練用の木剣をお持ちしましょうか?」

 

 すぐ後ろから声がして、俺もカイトもびくっと肩を揺らした。

 

「ひぇっ!」

「ゲ、ゲオルグさん、いつの間に……!?」

 

 いつの間に来たんだ、本当に。

 ゲオルグは相変わらず穏やかな顔で微笑んでいる。

 

「えっと、こちらで剣の練習などをしてもよろしいのでしょうか?」

 

 俺が尋ねると、ゲオルグはすぐに頷いた。

 

「ええ、もちろんです。ここはレオン様やラルフ様が訓練に使っている場所です。今は使用しておりませんので、お使い頂いて構いません」

「ありがとうございます。じゃあ、風呂に入る前にひと汗かくか?」

 

 俺がそう言うと、カイトは元気よく頷いた。

 

「はい!」

 

 ゲオルグが用意してくれたのは、軽い革の訓練用防具と木剣だった。

 防具を身につけ、木剣を握る。

 軽い。

 動きやすい。

 これなら気兼ねなく振れる。

 カイトも同じものを借りて装備する。

 

「じゃあ、少し模擬戦みたいなことしてみようか」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 カイトが剣を構える。

 俺も木剣を構える。

 

「じゃあ行くぞ」

「いきます!」

 

 カイトが踏み込んできた。

 木剣が横薙ぎに振られる。

 速さはまだそこまででもない。だが、迷いは前より減っていた。

 俺は最小限の動きで一歩だけ身体をずらし、木剣で軽く受け流す。

 

 乾いた音。

 

 続けざまに、今度は上から打ち込んでくる。

 それも木剣を立てて防ぎ、そのまま流す。

 カイトの剣は、一度も俺の身体に触れない。

 

 剣術スキルのお陰で、どう動けば避けられるか、どう受ければ安全かがはっきり分かる。

 相手の動きに対して、身体がほとんど勝手に答えを出してくれる感覚だ。

 

 ……こうして改めて考えると、やっぱりスキルってすごいな。

 ただし、変な感覚でもある。

 動ける。戦える。防げる。

 でも、それが全部「自分の経験」から来ていない。

 急に剣の達人になったとして、その過程だけが丸ごと抜け落ちてるような感じだ。

 だからこそ、こういう訓練で身体に馴染ませていくのは、俺にとっても意味がある。

 

 カイトは必死に剣を振り続ける。

 最初は大振りだった動きが、二度三度と打ち込むうちに少しずつまとまってきた。

 目も前ほど逸れない。

 タルちゃんに言われたことをちゃんと意識しているのだろう。

 それでも、俺には当たらない。

 

 全部見えているし、全部防げる。

 何度目かの打ち込みのあと、カイトは大きく息をついて下がった。

 

「す、すごい……全然、当たらないです……」

 

 肩で息をしながら、悔しそうに言う。

 

「タルさんに教えてもらった、目を逸らさないっていうのは、できてると思うんですけど……中々難しいですね……」

 

 その時、ゲオルグが口を開いた。

 

「カイト様の動き、少し見させて頂きましたが」

 

 カイトがはっと顔を上げる。

 

「今の体格ですと、真正面から押し込むよりも、足をよく動かして相手の横へ回る意識を持たれた方がよろしいでしょう。打ち込み自体は素直で悪くありません。ただ、一度振った後の戻りが少し遅いのです」

「戻り……」

「ええ。振ることより、そのあと次の構えへ戻ることを意識なさると、もっと良くなります。あと、踏み込みの時に肩へ力が入りすぎておりますな。そこが抜ければ、もう少し軽く動けるはずです」

 

 カイトは目を輝かせた。

 

「ありがとうございます!」

 

 そしてすぐ俺の方を向く。

 

「アウラさん、もう一回お願いします!」

「ああ、もちろん!」

 

 それからもう何度か打ち合った。

 カイトの剣筋は、最初より確かに良くなっていた。

 まだ俺に当たるほどではないが、足の運びに迷いが減り、戻りも少し早くなった。

 

 そして俺の方も、こうして木剣を握って動き続けることで、自分の身体への違和感が少しずつ薄れていくのを感じていた。

 

 たっぷり打ち合ったあとで、ようやく互いに汗だくになっていることに気づいた。

 そこへまたしても、いつの間にかゲオルグがタオルを持ってきてくれていた。

 

「ありがとうございます」

「いえ」

 

 タオルを借りて汗を拭く。

 カイトの動きは最初よりずっと良くなっているし、俺も剣を振ることへの変なずれが少し薄れてきていた。

 

「カイト様、先ほどより大分良くなっておりますよ」

「ほ、本当ですか!」

 

 めちゃくちゃ嬉しそうに喜んでいる。ふっ、可愛い奴め。

 そういや、そろそろ風呂も空いた頃じゃないかと思い出す。

 

「俺、そろそろ風呂行ってくるわ」

「わかりました! 僕、もう少し素振りしてます!」

 

 すっかりやる気だ。

 ゲオルグに礼を言って、防具と木剣を返し、俺は離れへ戻った。

 浴室の前へ行くと、ちょうどシエルが出てきたところだった。

 

「あ、アウラさん。ティナさんは先に出て、お部屋に戻っていると思いますよ」

「お、ちょうどよかった」

 

 シエルはほっとした顔で笑った。

 

「いいお湯でした……。やっぱり、お風呂があるのが一番ですよね」

「まあ、日本人としてその気持ちはよくわかる」

「にほんじん?」

「いや、何でもない」

 

 俺は一旦部屋に戻って着替えを取り、それから脱衣所へ向かった。

 服を脱ぎ、浴室へ入る。

 一人で入るには少し広い浴槽。

 壁からは、公衆浴場で見たのに似た蛇口のようなものが突き出していた。

 

 そういえば、これってどうやって湯を出しているんだろう。

 公衆浴場でも不思議だったが、少なくともここにはボイラー室みたいな設備は見当たらなかった。やっぱり魔法とか、魔道具なんだろうか?

 そんなことを考えながら蛇口をひねり、湯を出して身体を洗う。

 

「ふああああああ……めっちゃ気持ちいい……」

 

 思わず声が漏れた。

 やっぱりお湯で身体を洗えるのは最高だ。

 しかも、さっきまで訓練して汗だくだったから余計に沁みる。

 

 移動中なんて、せいぜい濡らした布で身体を拭くくらいだった。

 こうして石鹸で洗えて、湯で流せるだけで幸福度が違いすぎる。

 

 髪も丁寧に洗ってから、湯船に浸からないようにまとめる。

 ティナに教えてもらってから、こういうことも少しずつできるようになってきた。

 徐々に、女として生きていくことに慣れてきている気がする。

 

 ……とはいえ、別に他の女の人の身体に慣れたわけじゃない。

 自分の身体が女性になっていることに、少しずつ順応してきただけなんだろう。

 身体と髪を洗い終えて、湯船に身を沈める。

 

「ふわぁ……きもちいい……」

 

 最高だった。

 ちょうどいい湯加減の湯船に浸かって目を閉じると、意識が飛びそうなくらい気持ちいい。

 あー……やっぱ俺、風呂が好きだなぁ……。

 そんなことをぼんやり考えながら、しばらく湯の中でぷかぷかしていた。

 たっぷり風呂を堪能して出ると、入れ替わりでカイトが入っていった。

 

 マルルゥの姿は見えない。

 本当に焼き菓子でも買いに行ってるんだろう。

 しばらくしてカイトも風呂を終え、俺たちが少し落ち着いた頃、ミレイユが昼食の準備ができたと知らせに来てくれた。

 離れの食堂へ行くと、パン、スープ、果物などが並べられていて、思ったよりもしっかりした昼食だった。

 

「突然来てしまったのに、ご用意して頂いてありがとうございます」

 

 俺が礼を言うと、ミレイユは少し嬉しそうに表情を和らげた。

 

「いえ、お気になさらないで下さい」

 

 マルルゥは結局戻ってこなかったので、昼食は俺、ティナ、カイト、シエルの四人で食べることになった。

 どれも美味しかった。

 豪華すぎる味ではないが、あたたかくて、どこか家庭的で、ほっとする味だ。

 久しぶりに、こういうちゃんとした食事を食べた気がする。

 

 夕食は本館で歓迎会をやってくれるらしいので、昼食のあとは部屋でゆっくりする事に決めた。

 部屋のベッドで寝っ転がって疲れを癒していると、控えめにこんこんと扉が叩かれた。

 

「はい」

 

 返事をすると、扉が開く。

 そこにいたのは、金髪の少女──リリアだった。

 しかも一人ではない。使用人の女性が二人、ぴったり後ろについてきている。

 

「こんにちは。ご機嫌いかがかしら?」

 

 可愛らしくそう言うリリアに、俺は慌てて立ち上がった。

 

「美味しい食事にお風呂までお借りして、とても感激してます。さらに夜には歓迎会まで開いて頂けるということで、本当にありがたく思っています」

 

 できるだけ丁寧に返す。

 リリアはうんうんと満足そうに頷いた。

 

「そう! 歓迎会をやるの!」

 

 そして、にっこり笑う。

 

「だからね──もっと可愛い服を着てもらおうと思って、準備をしに来たの!」

 

 ……はい?

 呆気に取られている俺をよそに、リリアは後ろの使用人二人へ向かって嬉しそうに手を振った。

 

「じゃあお願いね!」

 

 次の瞬間。

 

「失礼いたします」

 

 使用人の一人がするりと俺のそばに来て、もう一人は手慣れた様子でメジャーのようなものを取り出した。

 

「え、え、ちょ、ちょっと待って、どういうこと──」

 

 俺の困惑などお構いなしに、胸囲だの肩幅だの腰回りだのをてきぱき測っていく。

 何これ。怖い。

 動きに無駄がなさすぎる。

 測り終えると、使用人の一人が「少々お待ちくださいませ」と言って部屋を出ていった。

 リリアはにんまりと笑う。

 

「だって、あなた達の着てる服、全然可愛くないんだもの!」

 

 ものすごく悪気のない顔だった。

 

「あのエルフの子は中々可愛い服を着ていたけれど、他の子はだめよ。可愛いドレスを着て、お化粧したら、もっともっと可愛くなるわ!」

 

 そして、同意を求めるように使用人を見る。

 

「ね、そうでしょ?」

「ええ、もちろんでございます」

 

 残っていた使用人がにっこり笑って答える。

 いや、もちろんじゃないが?

 そう思ったのも束の間、先ほど部屋を出ていった使用人が、ドレスを何着も抱えて戻ってきた。

 

「当家にあるドレスはそう多くございませんが、貸出用のものがいくつかございます。サイズの合うものを少し調整したり仮留め等すれば、夕食までに十分お召し頂けるかと」

 

 そう言って、順番にリリアへ見せていく。

 リリアは真剣な顔で一着ずつ眺め、やがて「これ!」と声を上げた。

 

「うん、あなたにはこれが似合うと思うわ!」

 

 そう言って選ばれたのは、可愛らしい赤いドレスだった。

 使用人の二人へ得意げに渡す。

 

「お願いね!」

「お任せ下さい」

 

 にこやかに返事をした使用人たちが、今度は俺の方へ向き直った。

 

「はい、失礼いたします」

 

 そして、俺の服をひん剥きにかかる。

 

「おわあああああああ!?」

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