【TS】神様のミスで死にましたが、補償内容が羞恥プレイなんですけど   作:もろきゅー

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75話 ハイレグアーマー検分会

 朝食を終えると、食堂の扉が静かに開いた。

 入ってきたのはゲオルグだった。

 

 相変わらず、隙のない立ち姿だ。

 朝から服装にも姿勢にも乱れがない。

 

 俺なんて、朝早く起きたせいもあって、朝食を食べただけで少し眠くなってきたというのに。

 こういう人たちは、いつ気を抜いているのだろうか。

 

「失礼いたします」

 

 ゲオルグは一礼し、こちらへ視線を向けた。

 

「アウラ様。ご都合がよろしければ、クラウス様が昨日の鎧を改めて見せていただきたいとのことです」

 

 来たか~……。

 昨日、クラウスと約束したもんな。

 だが、実際にその時が来ると、胃のあたりがきゅっとなる。

 

 あの鎧は性能だけで言えば、とんでもなく頼りになる。

 実際、あれがなければ俺は何度も死んでいたかもしれない。

 そのことに関しては感謝しているんだけど……。

 

 ティナは何とも言えない表情でこちらを見ていた。

 少し心配そうでもあり、少し面白がっているようでもある。

 

 やめろ。

 そんな目で見るな。

 これは俺にとって、かなり重要な精神的試練なのだ。

 

「……分かりました」

 

 俺は覚悟を決めて頷いた。

 

「すぐに行きます」

「ありがとうございます」

 

 ゲオルグは静かに頭を下げる。

 

「ユリウス様も、クラウス様から同席を許可されております」

「分かりました。では、私もご一緒いたします」

 

 ユリウス先生は嬉しそうに微笑んだ。

 魔道具を見るのが好きだと言っていたし、かなり楽しみにしているらしい。

 見る側はいいだろう。

 珍しい魔道具を見られるのだから……。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくる」

 

 俺はそう言った。

 カイトとティナ、そしてシエルがこちらを見る。

 

「大丈夫なの?」

 

 ティナが少し心配そうに言う。

 

「ああ。全員で行くほどのことじゃないし」

 

 というより、これ以上見物人を増やしたくない。

 

「分かりました」

 

 シエルは元気に頷いた。

 カイトは少し心配そうに俺を見ている。

 ティナは小さくため息をついた。

 

「変に暴れたりしないでよ」

「俺を何だと思ってるんだ」

「たまに変な方向に思い切りがいい人」

「……うん、否定できないかもしれない」

 

 俺は小さく肩を落とした。

 俺はゲオルグに案内され、ユリウス先生と共に食堂を出た。

 

 

 

 昨日も通った廊下を進む。

 離れの中とは違い、本館側へ向かう廊下は、少し空気が引き締まっているように感じた。

 

 ゲオルグは前を歩いている。

 足音は静かで、歩幅も一定だ。

 その後ろを、俺とユリウス先生が続く。

 

「アウラさん」

 

 隣からユリウス先生が小さく声をかけてきた。

 

「はい?」

「何だか緊張されていませんか?」

「え……わかりますか?」

 

 隠しても仕方がないので、素直に答える。

 ユリウス先生は少しだけ微笑んだ。

 

「大丈夫ですよ。クラウス様は豪快な方ですが、無理に何かを奪うような方ではありません」

「あー、いえ。そういうことで緊張しているわけでは」

 

 クラウスが悪い人だとは思っていない。

 むしろ、かなり助けてもらっている。

 こちらを客人として扱ってくれているし、匿ってもくれている。

 別にそこを心配していたり、緊張しているわけではない。

 

 ユリウスは、じゃあ何でそんな緊張してるんだ? とでも言いたげな顔をしている。

 だが、ハイレグアーマーを見せるのは、普通に恥ずかしい。ただそれだけだ。

 俺が内心でうめいているうちに、昨日入ったクラウスの部屋の前に着いた。

 ゲオルグが軽く扉を叩く。

 

「クラウス様。アウラ様をお連れしました」

「おお、入ってくれ」

 

 中からクラウスの声が聞こえた。

 扉が開かれる。

 部屋の中には、クラウスがいた。

 そして、その後ろにカルスが静かに控えている。

 

 昨日と同じように、黒に近い落ち着いた上着。

 腰には剣。

 表情はほとんど動かない。

 さらに、机の上には俺の魔剣が置かれていた。

 

 白骨を束ねたような造形に、小さな髑髏が埋め込まれた柄。

 改めて見ると、やはりとんでもなく目立つ剣だ。

 

「おお、おはよう。来たか来たか」

 

 クラウスは妙に楽しそうだった。

 完全にわくわくしている。

 少年のような目で、魔剣と俺を交互に見ている。

 

 いや、気持ちは分からなくもない。

 珍しい武器を見るのが好きな人にとって、あの魔剣はかなり興味深いのだろう。

 

 だが、これから見せるのは剣だけではない。

 俺はちらりとカルスを見る。

 カルスは相変わらず静かに立っている。

 これ、カルスにも俺の痴態を見せなきゃいけない流れなのか。

 

「では、昨日話していた鎧を、もう一度見せてもらえるだろうか」

 

 覚悟を決めるしかない。

 

「分かりました。着替えますので、お部屋をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、もちろんだ。ゲオルグ」

「かしこまりました」

 

 ゲオルグが一歩前に出る。

 そこで、ふと思い出したように言った。

 

「クラウス様。リリア様にお声がけは」

「ああ、ちゃんと先ほど声をかけた。もうすぐ来るはずだ」

 

 クラウスは苦笑する。

 

「昨日約束したからな。後で拗ねられてもかなわん」

「そうでしたか。失礼いたしました」

 

 リリアも来るのか。

 いや、昨日の流れからすれば来るだろう。

 見物人が増えるが……もうどうにでもなーれ。

 

「では、アウラ様。こちらへ」

 

 ゲオルグに案内され、俺は昨日も使った控室へ向かった。

 ゲオルグは部屋の入口で一礼する。

 

「昨日は必要ないと仰っていましたが、使用人をお呼びいたしましょうか?」

「いえ。大丈夫です」

 

 ステータス画面から装備するだけなのだから、何も必要はない。

 

「かしこまりました。お着替えが済みましたら、先ほどのお部屋にお戻りください」

「はい」

 

 ゲオルグはもう一度頭を下げると、静かに退室した。

 扉が閉まる。

 部屋の中に一人になる。

 しん、とした静けさが落ちた。

 

「……はぁ」

 

 思わず息が漏れる。

 覚悟を決めたと言っても、いざ改めてとなると緊張する。

 昨日も着たし、戦闘中には散々あの姿になっている。

 だが、戦闘中と、誰かに見せるために着るのとでは意味が違う。

 戦闘中は必死だ。

 恥ずかしさなんて考えている余裕はない。

 だが、今は違う。完全に見られる側だ。

 いや、見られるという言い方が悪い。

 検分だ。

 魔道具としての確認だから、何も恥ずかしいことはない。

 そう自分に言い聞かせる。

 

 ……あれ、余計に恥ずかしいのでは?

 

「……だめだ。変なことを考えるのはやめよう」

 

 ここまで来たら、開き直るしかない。 

 俺は服を脱ぎ、丁寧に畳んで台の上に置いた。

 全裸になると、少しだけ朝の空気が肌に触れて寒い。

 ステータス画面を開く。

 もう慣れた操作だ。

 装備欄から、ハイレグアーマーを選ぶ。

 次の瞬間、いつもの感覚が来た。

 

 体にぴたりと張りつくような装着感。

 肩に乗る黒光りする髑髏の肩当て。

 胸元に血のように濃い紅の宝珠。

 腰回りは、骨のチャーム。

 鏡を見る。

 

 そこには、いつものハイレグアーマー姿の俺が映っていた。

 改めて見てもとんでもなく似合っている。

 似合っているのが腹立たしい。

 美少女が着ると、こうも絵になるのかと思うくらい、妙に完成されている。

 だが、尻は出ている。

 

「……おっしゃ」

 

 俺は小さく気合を入れた。

 そして、自分の尻を軽く叩く。

 ぱん、と乾いた音が控室に響いた。

 

「やるぞ」

 

 もうここまで来たら、誰にだって見せてやる。

 クラウスでも、ユリウス先生でも、カルスでも、リリアでも、どんと来いだ。

 いや、やっぱりどんと来られると困る。

 できれば控えめに来てほしい。

 俺は深く息を吸い、吐いた。

 そして、控室の扉に手をかける。

 

「……行くか」

 

 そう呟いて、俺は扉を開けた。

 

 

 

 控室を出て、先ほどの部屋へ戻る。

 一歩進むごとに、やけに自分の足音が大きく聞こえた。

 いや、実際にはそんなことはないのだろう。

 ただ、緊張しているせいで、妙に周囲の音が気になるだけだ。

 クラウスの部屋の前まで来ると、深呼吸をする。

 骨のチャームがチリチリと俺を励ますように鳴った。

 うるせえ。

 お前のせいだぞ。

 

 ドアをノックすると、入ってくれというクラウスの声。

 その声とともに、俺は部屋へ入った。

 

 最初に目に入ったのは、クラウスだった。

 クラウスは昨日すでに見ているためか、驚きは少ない。

 むしろ、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせている。

 

 次に、リリア。

 リリアはクラウスのそばに立っていた。

 俺の姿を見るなり、その大きな目をさらに大きく見開く。

 

「まあ……!」

 

 声が、きらきらしていた。

 驚き、憧れ、純粋な好奇心。

 そういったものが全部混ざったような顔だ。

 

 そして、ユリウス先生。

 ユリウス先生は一瞬、ほんのわずかに目を丸くした。

 だが、すぐに表情を整え、柔らかな笑みを浮かべる。

 ただし、その目は完全に観察する者の目になっていた。

 

 最後に、カルス。

 カルスはほとんど表情を変えなかった。

 ただ、ほんの一瞬だけ、目が細くなった気がした。

 俺の姿ではなく、鎧の形状、重心、動きやすさ、そして腰の魔剣の位置を見ているような目だった。

 何だろう。

 この人だけ、見る場所が違う気がする。

 

 しばらく、部屋の中に妙な沈黙が落ちた。

 やめてほしい。

 その沈黙が一番つらい。

 何か言ってくれ。

 俺が内心で勝手なことを考えていると、最初に声を上げたのはリリアだった。

 

「アウラ!」

「は、はい」

「とてもお綺麗ですわ!」

 

 まっすぐな賞賛だった。

 純度百パーセントの褒め言葉だった。

 だからこそ、逃げ場がなかった。

 

「え、ええと……ありがとうございます」

 

 俺はどうにか礼を返す。

 リリアは両手を胸の前で合わせ、目を輝かせている。

 

「昨日お話に聞いていた鎧ですのね! 黒い髑髏が少し怖いですけれど、それがまた、とても強そうで……でも、アウラが着ると不思議と綺麗ですわ!」

 

 やめてくれ。

 そんなにまっすぐ褒めないでくれ。

 いや、褒められて悪い気はしない。

 むしろ、少し嬉しい気持ちもある。

 あるのだが、この格好を褒められると俺の中の何かが負ける気がする。

 

「まるで、物語に出てくる戦乙女のようですわ!」

 

 戦乙女……戦乙女か。

 俺の中では悪の女幹部寄りなのだが。

 いや、見た目だけなら確かに戦乙女と言えなくもないのかもしれない。

 女神そっくりの美少女が、魔剣と髑髏付きの鎧を身にまとっているのだ。

 要素だけ聞けば、かなりそれっぽい。

 尻は出ているが。

 

「リリア様、その……あまり似合うと言われると複雑でして……」

「どうしてですの?」

 

 リリアはきょとんと首をかしげた。

 

「似合っているのは良いことではありませんの?」

 

 正論だった。

 あまりにも正論だった。

 俺は何も言えなくなる。

 

「それは……そうですね」

「はい!」

 

 リリアは嬉しそうに頷いた。

 純粋すぎる。

 悪意がない分、威力が高い。

 

「ふーむ」

 

 クラウスが顎に手を当てる。

 

「昨日は見た目の衝撃が強かったが、改めて見るとやはり奇妙な鎧だな」

 

 分かってはいるが、言われると胸に刺さる。

 クラウスは俺の反応に気づいているのかいないのか、目を細めた。

 

「だが、ただ奇抜なだけではない。装甲が少ないように見えて、身にまとう魔力の気配が濃い。普通の鎧とは発想がまるで違う」

 

 その言葉に、ユリウス先生が頷く。

 

「ええ。通常の鎧は、素材そのものの硬度や形状によって防御するものです。しかし、この鎧は見える装甲部分だけで守っているわけではなさそうですね」

 

 ユリウス先生は、失礼にならない程度の距離を保ちながら俺の周囲を見た。

 

「露出している部分が多いにもかかわらず、魔力の流れが途切れていないように感じます。おそらく、身体全体を覆うように防護が展開されているのではないでしょうか」

 

 露出している部分が多い……真面目な顔でその事実を口にしないでほしい。

 

「つまり、見えている装甲は一部であり、実際の防御は魔力による外殻、あるいは障壁に近いものなのかもしれません」

「外殻?」

 

 俺は思わず聞き返した。

 

「はい。もちろん、推測ですが」

 

 ユリウス先生は柔らかく言う。

 

「少なくとも、見た目通りの防御範囲ではないと思います。そうでなければ、その形状で戦場に出るのは危険すぎますから」

「あ、はい」

 

 言い方が丁寧な分、逆につらい。

 真面目に分析されればされるほど、俺の羞恥心が削られていく。

 すると、それまで静かだったカルスが口を開いた。

 

「失礼ながら」

「は、はい」

「見た目に反して、かなり実戦向きの装備に見えます」

 

 見た目に反して……。

 

「可動域を妨げない。重量も軽そうです。肩や胸部の要所は押さえられている一方で、腰回りや脚部の動きはかなり自由に見える」

 

 カルスの視線は、完全に戦闘職のものだった。

 恥ずかしいとか、綺麗とか、そういうものではない。

 この装備を着た人間がどう動けるか。

 どこが守られ、どこが開いているか。

 そういう部分を見ている。

 

「通常の重装鎧とは発想が違いますが、装着者の動きを最大限に活かすという意味では理にかなっている部分もあります」

「理にかなっているんですか、これ」

 

 思わず聞いてしまった。

 

「戦い方によります」

 

 カルスは淡々と答えた。

 

「盾を構えて前線を支える装備ではありません。ですが、高速で動き、相手の攻撃を受け流し、間合いを制する戦い方ならば、動きを阻害しないことは大きな利点です」

「なるほど……」

 

 真面目だ。

 すごく真面目に評価されている。

 真面目に評価されているのに、なぜかつらい。

 

「ただし」

 

 カルスは少しだけ視線を下げる。

 

「背面の防御がどのように確保されているのかは気になります」

 

 背面。

 つまり、尻の話である。

 尻を学術的に語らないでくれ。

 クラウスがその言葉に頷く。

 

「そこが興味深い。見える装甲が少ないにもかかわらず防御が成立しているなら、魔力障壁の展開範囲が重要になる。昨日見た限りでも、単純な露出とは違うはずだ」

 

 真剣だ。

 完全に真剣に尻周りの防御を考えている。

 彼らにとっては尻ではなく背面の防御なのだろう。

 俺にとっては尻である。

 俺は遠い目をした。

 早く終わらないかな、この時間。

 

「アウラさん」

 

 ユリウス先生が穏やかに声をかけてくる。

 

「この鎧は、どのように装着されるのですか?」

「ええと……普通に装着するのではなくて、呼び出すといいますか……」

 

 俺がそう答えると、部屋の空気が少し変わった。

 

「呼び出す?」

 

 クラウスが眉を上げる。

 

「はい。なんて言えばいいのか難しいですが。装着したいと思えば、どこからか現れて装着されます」

 

 ステータス画面の話をしても、信じてもらえないだろうしそれっぽく言っておくことにする。

 

「普通に身に着けるわけではないのか?」

「少なくとも、私は普通の服みたいに着たり脱いだりする方法を知りません」

 

 そう言うと、ユリウス先生が興味深そうに目を細めた。

 

「ふむ、外している間はどこに存在するのでしょうか……?」

 

 気にしたことなかったけど、こいつ脱いでる間どこに行ってるんだろう。謎だ。

 

「鎧を脱ぐときも、脱ぎたいと思えば脱げるのか?」

 

 クラウスが尋ねる。

 

「はい。脱ぎたいと思えばパッと消えて、どこかに行ってしまいます」

「消えてどこにいくのかはわからないのか?」

「はい、どこに行ってるのかはわからないですね」

「ふーむ……。他にも何か効果などはあったりするのか?」

「あとは……えーっと」

 

 俺はステータス画面を開いて、装備欄からハイレグアーマーの詳細を確認する。

 

「耐寒、耐熱、防汚に破壊不能……とかでしょうか」

 

 紫外線カットもあるけど、今はどうでもいいな。

 クラウスは顎に手を当てた。

 

「それが本当なら、一般的な魔道具の範疇を超えているな」

「あとは危険な時は勝手に装着されたりもします」

 

 俺がそう付け加えると、ユリウス先生とクラウスが同時にこちらを見た。

 

「自動で、ですか?」

「はい。正確な条件は分かりませんけど、魔物に襲われた時などに勝手に装着されたことがあります」

 

 カルスの目が少し鋭くなる。

 

「装着者の危機を感知している、ということでしょうか」

「たぶん、そうだと思います」

「それは……戦闘装備としては極めて有用ですね」

 

 カルスが静かに言った。

 その声には、先ほどよりもわずかに重みがあった。

 クラウスも頷く。

 

「防御、収納、自動装着、危険感知。さらに魔剣との連動があるかもしれん。これは、ただの鎧ではないな」

「ただの鎧じゃないとは思ってましたけど……」

「思っていた以上だ」

 

 クラウスは真剣な顔になっていた。

 

「少なくとも、現在のドゥル=ブルムで作れるものではない」

 

 その言葉に、部屋の空気が少し重くなった。

 リリアも、先ほどまでのきらきらした表情から、少しだけ不安そうな顔になる。

 

「お父様……それほどすごいものなのですか?」

「ああ、すごい。だが、すごいものというのは、時に厄介でもある」

 

 クラウスは俺を見る。

 

「これを欲しがる者も多いだろうな」

 

 その言葉に、俺は喉の奥が詰まるような感覚を覚えた。

 

 恥ずかしいとか。

 尻が出ているとか。

 似合っているのが腹立たしいとか。

 そういうことばかり考えていたが、改めて言われると分かる。

 これは、やはりとんでもないものなのだ。

 そして、とんでもないものだからこそ、狙われる。

 

「……やっぱり、厄介な代物なんですね」

 

 俺がそう言うと、クラウスは少しだけ表情を和らげた。

 

「使い方次第だ。武具はすべてそうだ。だが、強すぎる武具は、それ自体が争いを呼ぶこともある」

 

 その言葉は重かった。

 クラウスは元冒険者であり、ドゥル=ブルムを治める男爵でもある。

 武具の強さだけでなく、それが人を引き寄せる危険も知っているのだろう。

 

「では、次に魔剣の方も見せてもらえるか」

 

 クラウスは机の上の魔剣に視線を向けた。

 

「昨日も言ったが、切れ味も確認してみたい」

 

 ……まだ終わらないのか。

 どうやら今日は、俺の装備を丸ごと調べられる日らしい。

 

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