ミカが格ゲー好きだったら   作:照喜名 是空

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チュートリアル編
一撃目「聖園ミカの日課」


 パンッ、パンッ

 己の拳が革を叩くいい音がする。

 

「はあっ、はぁっ!」

 

 飛び散る汗、躍動する体。

 軽く上がっていく息も心地よい。

 

「これで、最後っ!」

 

 重いボディブローを叩き込む。

 サンドバッグがじゃらじゃらと鎖の音を立てて一回転してきた。

 猛スピードと巨大な重量で来るそれを難なく裏拳で打ち抜いて止める。

 

「はあっ……たのしいねっ!」

 

 タンクトップから湯気が上がる。

 心地いい!運動ができるってなんて心地いいんだろう!

 

「あの、ミカさん……ウォーミングアップもほどほどにしましょうね」

「わかってるよナギちゃん。こうやって体に血を巡らせるから頭も冴えてくるんだよ☆」

「そういう域を逸脱してると思いますが……じゃあ、シャワーを浴びたらまた仕事をお願いしますね」

「ナギちゃんもたまには体を動かしたら?」

「遠慮しておきますね」

 

 そう、私はいつのまにか「聖園ミカ」になっていた。

「生前」はストリートファイターが好きだったことくらいしか覚えてないけど。

 街並みもどこかで見た気もするし、ヘイローを生やした子のゲームもあった気もするけど。

 でも確かなことはわからない。夢かも。

 

「ふう……」

 

 ナギちゃんが作ってくれたスポーツドリンクを飲んで一息つく。

 でもここが何かは置いておいて、この体すごいよ!

 さすがに物理的に無理なサイコクラッシャー系の技や飛び道具は出ないけど。

 でもそれ以外はだいたいできるもん!すごくない?

 飛び上がって天穿輪(対空側転キック)出ちゃったり、死連閃(ライダーキック)が出たりした時は心底びっくりしたね☆

 まあ無意識に羽を動かしてなんとかしてたみたいだけど。

 

「じゃー今日も一仕事しちゃおっかな!」

 

 シャワーを浴びてタンクトップにスパッツをクリーニングに出して。

(毎回洗濯してくれる子がいるからすごいよね☆部活なんだって!お嬢様学校だよね)

 ドレスみたいな制服に着替える。うーん、このお姫様感……

 

 ☆

 

「今日のお仕事はこれで終わりだね!じゃあまた明日ねナギちゃん!」

「ええ、ミカさんも『夜更かし』はくれぐれも、くれぐれもほどほどにしてくださいね……!?」

「うん、まあほどほどにね」

「お願いしますよ……?」

 

 ナギちゃんと別れて寮室に戻る……

 と見せかけてグレーのタンクトップにスパッツ、スカジャン姿。

 お団子にした頭にはキャップとサングラスでちょっと顔を隠して……

 身体能力をフルに生かして塀を飛び越えて外へ!

 この『無断外出』を察して見逃してくれるナギちゃんには頭が上がらないよね。

 幼馴染だからつい甘えちゃうなあ……

 

「あはっ☆」

 

 まあそう言いつつも足はブラックマーケット方面にマラソンで向かうんだけど。

 パルクールをして塀を、屋根を飛び越えてあっというまに!

 そしてブラックマーケットについたらポケットから出した札束を置いてシャドーボクシングをする。

 

「しゅっ☆しゅっ☆」

 

 体が輝くばかりに動く!若さという爆発力が筋肉をフル回転で動かしてくれる!

 運動ってたのしいね!

 

「おい」

「あっ、ヘルメット団の子だね?いいよ!」

 

 ヘルメット団の赤ヘルちゃんが私の前に腕を掲げる。

 私もその腕にガシッと腕をクロスする。

 これが「合図」だ。

 

「本当にあんたに勝ったらその札束くれるんだよな?」

「もちろんだよ☆だから……殴るね!」

 

 おっ、ちゃんとガードできるんだね!えらいね!殴る!

 今日はルークスタイルでいこうかな!合うんだよね体質に!

 ガードを崩すためにまずはトリプルインパクトでパンチ三連!

 

「こっ……のお!」

「わあっ、すごいね!そんなのもできるんだ!」

 

 私のパンチをパリィで払いのけてからのソバット!

 わあ!ガードした腕がしびれるね!殴る!

 相手の着地したばかりの太ももを蹴って、よろめいたところを頭突き!

 完璧なノーズブレイカーだよ!

 

「あ、あんた本当にティーパーティーかよ……?」

「そこらの生徒会とは鍛え方が違うからね☆」

 

 まあそこは答えられないんだけどね!興奮してきたよ!

 タックルから馬乗りになって……殴る!殴る!殴る!はあはあ……殴る!

 ペイルライダーが決まったね!

 

「まだやれそうかな☆」

 

 馬乗りから立ち上がって少し離れて構える。

 

「げ、元気いっぱいだぜ……!」

 

 すごい!まだ立ち上がれるんだね!すごいね!じゃあ投げるね!

 股と肩に手を入れて……背中から叩き落すよ!

 さすがにあんまり怪我したらかわいそうだからそのまま片手で首を極るね!

 うん、気絶したね!ヘイローないもん!

 

「大丈夫かな?息してる?してるね!ありがとう楽しかったよ!」

 

 私は立ち上がって拳を揚げるとギャラリーから歓声が上がった。

 

「チップだからとっておいてね!ナイスファイトだったよ!」

 

 相手のポケットに札束から万札を二、三枚ねじ込んでおく。

 この瞬間が最高に征服感あるんだよね!

 

「次はだれかな!?」

「あ、あたしがやってやらぁ!」

 

 おっ、今度はスケバンの子だね!

 ガトリングガン持ってるタイプの子だ!期待できるね!

 スケバンといえばアケミちゃんと戦ったのはリアルマリーザみたいで興奮したなあ。

 あれはすごく楽しかったなあ……楽しかったから殴るね!

 

 ☆

 

 まあ、そんな感じで……

 一時間ほどたっぷりお暴力を楽しんで寮に戻って。

 20分ほど柔軟をして温かいミルクを飲む。

 そうしたらほとんど朝までぐっすり眠れるよ。

 赤ちゃんみたいに疲労やストレスを残さず朝目を覚ませるんだ。

 

 私はこのストリートファイトを中一のころからやってて……

 気づいたらあの辺の子たちはストリートファイトの作法を覚えてて。

 ブラックマーケットはいつのまにかストリートファイトのメッカになったんだよね。

 あの腕を上げてそこに腕をクロスさせたら決闘OKの作法は私が広めたよ。

 

 今あの辺で一番強いのはホシノちゃんなんだよね。

 お金に困ってるらしいから会って殴ったらチップ多めにあげてるし、なんなら何回か私も負けてるからね。

 ちゃんと食べれてると良いんだけど……

 アビドスには毎月プロテインとカロリーバーとお水を匿名で寄付してるから。

 たぶん筋肉が落ちるほど飢えたりはしないはずなんだけど……

 でもあのちっちゃいのは絶対ミオスタチン筋肉肥大だよね!すごいもん筋力!

 ネルちゃんもそうらしいし、キヴォトスでは強い子は基本そうなんだね!

 

 私ももっと鍛えよう……つよくなるってたのしいな……

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