ミカが格ゲー好きだったら   作:照喜名 是空

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十三撃目「暁の出撃」

 パテル派の秘書的な子に命じて、関係各所に連絡を入れて開戦準備を告げる。

 すでに待機していた正実の一部と今起きてるパテル派精鋭を連れて「その場所」へ向かう。

 それは古聖堂。……の近くの工事現場。

 と言うのは偽装でアリウスを倒すと決めたその日からもう買収してある。

 

 古聖堂に入口があるのはサオリちゃんと会った日に知ってたし、アズサちゃんの証言で確定した。

 その上でモモイちゃんの伝手でミレニアムの掘削会社を紹介してもらって……

(モモイちゃんなんかいつのまにか地下帝国つくってたんだってね。すごすぎない?)

 ソナー検査でだいたいの道はわかっている。

 

 だから工事現場に偽装してアリウスへの入り口のすぐそばまで地下室にしちゃった。

 地下室は軍団が入れるようにめちゃくちゃ広い。

 今、そこに千人近い生徒が集結していた。

 

「ティーパーティーパテル派護身術研究会総勢258人、参陣いたしました」

 

 うん、良い面構えになったね!

 

「正義実現委員会第七大隊、320人参陣。以降第二連隊全員が参陣予定です」

 

 トリニティ本体を守る後衛を残して、かつ初めから先遣隊予定だった人数がこれなんだろうね。

 でも、みんな静かだけど強い闘志を感じるよ。

 

「自警団トリニティ・スクエア本部総勢196人、参陣です!!」

 

 声すっご。

 宇沢ちゃん、立派になったね……

 

「救護騎士団第一、第七、第十二連隊、総勢225人。参陣しました」

 

 ミネ団長とはこの間このアリウス戦争に協力してもらえるように説得したんだよ。拳で。

 向こうも侵略戦争するなんて、ってかなりあったまってたみたいだから盛り上がったね。

 最終的には『アリウスを救護する』ということで話がまとまったけど。

 

「以上、総勢999人!対アリウス侵攻戦先遣隊の総指揮権力を聖園ミカパテル派首長にゆだねます」

 

 なんか歴史ある指揮官の証ってことですごい綺麗なハチマキみたいなの渡された。

 シルクの白地に金模様の糸が編みこんである。

 これ本当はマフラーみたいなやつじゃないっけ?あっ、これたぶん手作りの新品だ。

 私のために編んでくれたのこれ!?うれしいな。

 

「たしかに、預かったよ。全身全霊でやりきるね☆」

 

 私はしっかりとその聖なるハチマキを締めて拳を上げた。

 皆がそれぞれに敬礼を返す。

 アリウスのすぐ近くだから騒げないんだよね。

 でも、だからこそ熱気は静かに膨れ上がった。

 あったまってきたじゃんね!

 

「奇しくも私で千人。私たちはたった千人の一軍団(レギオン)、一個大隊にすぎないけど……私たちの背中にはトリニティがいるよ」

 

 せっかくだから軽く演説しておこうかな。やっぱ戦いの前にフロアをブチ上げとかないとね。

 

「それだけじゃない。傭兵としてアビドスも、便利屋68もそのうち来る。後ろは心配しないで」

 

『関係各所への電話』ってそういうこと。

 せっかくだからできるだけおおごとにしたいじゃんね。

 

「この戦いの意味について話しておこうかな。私は昔、アリウスに迷い込んだことがあるよ。

……ひどい所だった。

生徒は大人たちに殴られて、奴隷みたいに働かされてた。食べるものだってなかった。

大人たちはトリニティが自分たちを地下に追いやったって何百年も前の恨みをずっと語り継いでた」

 

 ここまで一気に言ってちょっと区切る。あの時の私の屈辱。弱いから何もできなかった悲しみをたたえて。

 

「それでも、くじけずに生きようとしてる子たちがいた。私は、あの子たちを助けたい!今も大人たちに恨みや憎しみしか習っていないあの子たちを!」

 

 大地下室に私の声が響く。静かに、熱く。

 

「もちろん、あの子たちはそんなの望んでいない。いまでもトリニティを恨んでる。だから、私らしく、力づくで助けるよ☆」

 

 あと一応これも付け加えておこうかな。

 

「それに実際、二度も襲撃されて黙ってるほどお人よしじゃないじゃんね☆向こうが売ってきた喧嘩だから……私はその恨みを受け止めて、殴り返すことでしか分かり合えないと思う」

 

 なるほど……という空気と鮮烈な闘気が渦巻く。これほど巨大な闘気は私も見たことないじゃんね。

 

「つまり、これは救護であり、私の正義の実現。……これが、この壁が、私たちとアリウスを隔てる壁」

 

 うすーくコンクリ張っただけの私の背面の壁を撫でる。

 あとは5mくらい土らしいけど、落盤しないようにその上はもうあらかじめ工事で固めてある。

 

「これをこれから壊すよ。私と、まずはパテル派の護身術研究会が先陣を切る」

 

 ちなみにこれは事前の打ち合わせで決めてた。この後は正実が場を仕切ってくれる手はずだよ。

 私は静かに闘気を練って壁の前に立った。

 軽く触れて……一気に正拳突き!ミシミシと軋みを上げて壁に大穴が開く。

 その先の土に、真空波動拳!ごん太の青白いビームが出て土を吹き飛ばしていく。

 まだだ!あの先へ!一回で掘り切るよ!撃ち続けている真空波動拳がどんどん強くなっていく。

 この感じは……みんなの闘気が私を介して出てる?この力なら!

 

「この先が、アリウスだよ。私は行くよ。みんなは正実の指揮でついてきて」

 

 どごん、という音と共にアリウスまでの道が掘りぬけた。

 私は過熱した土と蒸気を闘気で振り払って進む。この湯気の先がアリウスだ。

 

「護身術研究会!ミカ様に続けー!」

「正義実現委員会、指揮に入ります!みなさん落ち着いて!冷静に、順番に……正義を実現しましょう」

「救護騎士団、救護体制に入ります!持ち場につきましょう。救護開始!」

 

 頼もしいね。拳で分かり合った強敵(とも)たちが今はこんなにも頼もしい。

 もう何も怖くない。あとは進むだけ。

 

「ようこそアリウスへ、死ね!」

 

 穴の向こうから罵声と共に銃弾が雨あられと飛んでくる。これが雨なら土砂降りかな。

 でも今はこんなにも心地いい!私は地面を踏みしめ、駆けだした。

 アリウスよ、私は帰ってきたよ☆

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