ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。   作:ねえ、おなまえは?

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やまねこ座は88星座のうちの1つである。
その星は、獅子座と角で接している。
獅子座の主星のわずかに離れた位置に、白色矮星がある。
白小矮星とは、名前の通り白く光る星である。その寿命は一節によると宇宙の寿命の100億倍もあると言われ、宇宙で最後まで輝いているのは、白色矮星とも言われている。
これは、獅子に寄り添う、白い、ねこのお話。


1話 彼女にじゃないよ。君に、手を。

 

 

ねこですよろしくおねがいします。

 

ねこは、ねこです。

井戸の中に居ます。

あなたの瞳の中にも居ます。

あなたの頭の中にも居ます。よろしくお願いします。

 

のが、ねこは、初めからねこではありませんでした。

ねこになる前の記憶があります。複雑です、難解です。

 

ただのねこではありませんから、ねこに至るまでの経緯もぐちゃぐちゃなのです、ちおびたでも飲みながら、あたまの整理をしましょう。かしこ。

 

 

ねこは、ねこになるずっと前は"わたし"でした。

その次は"私"でした。

そして"ねこ"になりました。

 

 

 

最初のわたしは、どこにでも居るような人間でした。

 

電車に乗って、会社に通って。

友達と行きつけのカフェに行って、蜂蜜が入ったお気に入りのホットミルクを飲んだり。

夜にコンビニに行って、新作のアイスやお菓子を買ってお家でアニメを観たりしながら食べる事が好きなただの人間でした。

 

 

 

その日だって、いつもと変わらないはずでした。

 

 

昼間の暑さが引かなくて、空気もアスファルトも蒸し暑い夜でした。無性にアイスが食べたくて、コンビニでチープなスイカの味がするアイスを買いました。

溶けないうちに急いでお家に帰る途中、近道をしようと裏路地に入って、帰ったら何のアニメを観ようかなぁと思っていた時でした。

 

 

電柱の影から現れた人に突然腕を引っ張られて抱き止められました。咄嗟の事だったので、アイスが入ったレジ袋が地面に、とさ、と落ちました。

 

黒のキャップを深く被って、黒のマスクをして上から下まで全身真っ黒の服装の人でした。

驚いて、咄嗟に声を出そうとすると、すぐに片手で口を塞がれました。わたしは、思わずガブリと噛みつきましたが、その人はそれすら愛おしいとばかりの目つきで、眼を細めてにっこり笑いました。

 

 

こわい、こわい、こわかった、殺されると思いました。掴まれていない方の腕を無茶苦茶に動かして、顔や体を殴りましたが、グイグイと壁際へ体ごと押されて、もうここで人生が終わってしまうと思いました。

わたしは、文字通り追い詰められてしまいました。

 

 

その人は、ずいっと顔を近づけてきて、そこでわたしは気付きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行きつけのカフェの、いつも居る店員のお兄さんでした。

 

友達が密かに恋心を寄せている、人当たりの良さそうな、時々憂いのある顔をする、友達がかっこいいと言うのもよく分かる、優しそうなお兄さんでした。

 

"友達に"時々手を振ってにこりと笑う、その人でした。

 

耳元でそっと囁かれます。

 

「ようやく、ようやく、ようやくだね。この時が来るのを随分待ったんだけれど、待っている時間すら愛おしく感じていたよ。君を手に入れられるなんて、あぁ、本当に夢みたいだよ。君に噛まれた事も、殴られた事も、殴られた所がきっとあざになってくれるだろうって事も、嬉しいなぁ、僕と君との大切な思い出の1つになったね。あれ?どうして泣いているの?もしかして殺されると思ったの?ごめんね、そんな無駄な心配させてしまって。僕がそんな事を君にするはずがないよ、安心して。普段の顔も、真面目な顔も、笑った顔も、困った顔も好きだけれど、泣いた顔もかわいいね、もっとよく見せて。あ、でも泣きすぎると次の日、目が腫れちゃうんだっけ、それはきっと嫌だよね、家に帰ったら、タオルに包んだ保冷剤で冷やそうね。落ち着いてきたかな。あ、あ、あ、僕のことようやく見てくれたね、目が合って嬉しいよ。ねぇ、君の目って、とっても大きくて、まるで瞳の中に花が咲いているみたいに見えてとっても綺麗なんだね、こんなに近くで見られると思っていなかったから、どうか閉じないでもう1回開けて、もっとよく見せて。…はは、君って、恥ずかしがり屋さんなんだね、また新しい一面が見られて気分がいいなぁ。あ、君の好きなところはもちろん瞳だけじゃないよ、その落ち着いた焦茶色のふんわりとした髪の毛だって、陽の光が当たって透けると明るい赤茶色に輝いて素敵だし、ふわふわの猫っ毛だから雨の日なんかは前髪がぺたんとなってしまう所も、それを気にする所も好きだし、肌は白くて滑らかだ。色白なのはもちろん知っていたけれど、実際に触れてみて、こんなに吸い付くような肌だったとは思わなかったよ、僕の予想以上だ、泣いてしまったから、頬が赤くなっていてそれもまた君のかわいらしさを引き出しているよ、声も好きだなぁ、今は聴くことができないから、でもそれは仕方がないことだから我慢するけれど、穏やかで、甘く慈愛に満ちたとても柔らかい声が魅力的だよ、友達の相談に乗ってあげている時の相手に寄り添う優しい落ち着いた声も、美味しいものを食べた時に友達に分けてあげるあの弾むような声も、全部全部全部好きだよ。耳の形もいい、ピアスを開けていない所も僕の君への解釈とまったく同じで素晴らしいね、自分の体に、君のその体に傷をつけるなんて、他人なんてもってのほかだけれど、君自身にもしてほしくなかったからさ、だから君がピアスを開けていない事が分かった時にはとても安心したんだよ、柔らかそうな耳たぶも、形のいい耳も思わず触りたくなるくらい魅力的だ、注文するときに僕のすぐ目の前でさりげなく髪の毛を耳にかける動作をした時なんて、思わず手を伸ばしてしまいそうになったよ、スッと高い鼻も、長い長いまつ毛も、色も形も美しいうるおいのある唇も、すらっとした手足も、右足にできた靴擦れも、桜貝の様な薄桃色の小さな爪も、僕は君の頭の先からつま先まで全てが愛おしいんだ。愛しているよ。愛しているなんて言葉じゃ言い表せないんだ、君に何かがあったらと思うと毎日毎日毎日毎日心配だったんだよ、君を困らせる奴は、君に酷い事を言う奴は、温厚な君を怒らせる奴はこの世から消えるべきだ。君の事を守る為にずっと監視していたかった。でも、ずっとは一緒に居られない、君には君の生活があるから。それは尊重しなくちゃって、思っていたんだ、だけど、抑えきれなくなっちゃったんだ、君が、注文してくれる時も、お釣りを渡す時に触れる手を感じている時も、ありがとうございます、って受け取って笑いかけてくれる時も、我慢していたけれどもう無理だった。"君が"こっちを見てくれた時に、手を振って、笑いかけて、それじゃあ満足できなかったんだ。君は何にも悪くないよ、僕が悪いんだ、我慢ができない僕がいけないんだ。でも君をこうして手に入れる事ができる、これ以上の悦びなんてこの世には無いよ、断言できる。僕は幸せ者だなぁ。さあ、僕らの家に行こう、アイスは溶けてしまっただろうから、同じ物を買っておいてあるのを2人で食べようね。やっぱり君ならそのアイスを買うと思っていたんだ、だって去年もこの時期にそのアイスを買っていたからね、お気に入りなんでしょう?僕も好きなんだ、君が好きな物は僕も好きだよ、好きな人と好きを分け合えるってとても素敵だね。じゃあ、苦しいのは一瞬だから、ちょっとだけ我慢してね、なるべく安全な方法をきちんと調べておいたから、安心して、次に目が覚めたら、僕たちの家だからね」

 

わたしは暴れました、でも体格差で、覆い被さられる様に捕まってしまっていて、もうどうにもならないと悟りました。

 

恐怖で強張った体ではもう逃げ出せなかったのです。

 

わたしの手とは比べ物にならない大きくて骨ばった手が、いつも優しくお釣りを渡してくれるその手が、首に周ります。

 

声を出すより先に、ぎゅうぅっと締め付けられていきます。息が苦しくなりました、目がチカチカして、息を吸おうとしても、口がはく、はく、と動くだけでした。

手に爪を立てても、どうにもならなくて、どんどん視界が暗くなります、端からじわじわと黒が侵食してきて、最後に見えたのは彼の満足そうな、恍惚とした笑顔でした。

 

 

 




クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス

本小説、およびイラストはCC BY-SA 3.0ライセンスの内容に従い公開させていただいております。
これより先、SCP-040-JPがメインになりますので、SCP-040-JPのみこちらの記載をもって簡略化させていただきます。

SCP財団
http://scp-jp.wikidot.com/

SCP-040-JP - 『ねこですよろしくおねがいします』
by Ikr_4185
http://ja.scp-wiki.net/scp-040-jp
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