ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。   作:ねえ、おなまえは?

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吹けば飛ぶように軽い命もあるのかもしれない。


14話 "終了処分"

 

ねこが初めて"終了処分"を見たのは、屋敷で暮らしてから1ヶ月程経った頃でしょうか。

 

 

彼女はれぐるすにずっと反抗している子でした。

 

れぐるすも、顔はいいし、僕は寛大だからね、と最初のうちは看過していました。

でも、段々と彼女の変わらない態度に苛立つ様子が見てとれました。

 

 

だから、ねこは彼女の気持ちが少しでも落ち着く様にと、紅茶とくっきーを持って行きました。

 

 

うんざりした表情の彼女は、もうこの暮らしに我慢が出来なくなったのでしょう、かっぷを手に取りかっぷごと紅茶をねこに向かってぶちまけたのでした。

 

咄嗟に顔を手で守ります。

 

紅茶というものは、美味しく淹れる為にしっかり沸騰するまでお湯を温めて抽出します。

つまり、とてもあちあちです。

ねこは猫舌なので、みるくを入れてふーふーしながら飲むのが好きです。

 

 

 

熱いなぁ。

 

あとで"私"の力を借りないといけないなぁ、服は、小さな魔女の"服の汚れを取る魔法"を使って……と考えながら、床に落ちて割れてしまったかっぷの破片を拾い集めるねこと対照的に、彼女は、ふーっ、ふーっ、と肩で息をしながら、あいつも、お前も、みんな狂っている!おかしいわよ!!と叫んでいます。

 

 

ねこは、どうか落ち着いてください、と言いますが、彼女は混乱と怒りに満たされている様でした。

 

 

 

そこへ、かっぷが割れる音と、叫び声を聞いたのでしょう、れぐるすが、大きな音がしたけど、何ごとかな、と来たのです。

 

 

れぐるす、紅茶を溢しただけです、といつもの調子でねこが言うと、れぐるすは、憎悪の目を向ける彼女と、紅茶で汚れた服と、床に散らばる破片を拾うねこと、その手が火傷で斑らに赤く水ぶくれになった様を見て、そうして、無言で、無表情で、騒ぐ彼女に向けて指を弾きました。

 

 

 

 

ぱんっ、と音を立てて、彼女の頭は破裂しました。

 

窓や壁紙に肉片と血が飛び散ります。

 

一拍遅れて体がどさりと崩れ落ちる音がして、ねこは何が起きたのか理解しました。

 

 

 

れぐるす、お嫁さんが、と呟くねこの手を取り、彼女は今までも反抗的な態度をしていたけれど、あれは度を超えた赦されない事をしたんだ、家族である君を傷付けた最低な人間だよ、だから生きる価値すらない。命で償う義務があるし、僕は僕の家族を守る為に最善の行動をとる権利がある。だからそうしたまでだよ、ねこが気にすることじゃない。

と、さも当たり前かの様に言いました。

 

 

あぁ、れぐるすにとっては"価値のある大切な人"と"殺してもいい価値の無い人"はすぐに切り替えられるのだな、と思いました。

 

沢山居る彼女たちはれぐるすの機嫌を損ねると、れぐるすが遵守する様にと決めたるーるを破ると、れぐるすの気分1つで、まるで、軽い命として使い捨てられるDくらす職員のように"終了"されてしまうのだなぁ、とぼんやり考えます。

 

ねこの火傷を心配してくれるれぐるすに、このくらいなら、"私"の力で明日には治るから大丈夫です、ありがとうございます、と答えて、部屋の片付けをするので、れぐるすは戻って、れぐるすのやっていた事を続けてください、と伝えました。

 

 

 

 

 

 

 

動かなくなった彼女の名前を静かに呼んで、そっと触れ、安寧を祈り、"SCP-280-JP"縮小する時空間異常に入れます。

 

これは所謂ぶらっくほーるで、本来なら、投入した分だけ過去のぶらっくほーるのさいずが大きくなり続ける非常に異常で大変な現象なのですが、異常性が変化した今は唯の便利なぶらっくほーるです。生きている物は入れられませんが。

 

それから壁紙と窓に"汚れを落とす魔法"を、自分に"服の汚れを取る魔法"を掛けて"壊れてしまったかっぷを治す魔法"を使って、全て元通りにしました。

 

ひりひりする手は"私"の力を借りて、水ぶくれが引いて、ほんのり赤い位になりました。

 

 

 

 

 

これまでもこういう事があったのでしょう、そしてこれからもこういう事が繰り返されるのでしょう。

 

彼女たちはいつ死んでしまうのか分からない中で生きていかなければならないのかぁ、と考えて、それでは生きた心地もしないだろうから、もう少しだけ優しく接していこうとねこは思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねこは、彼女たちの名前を、好きな物を、苦手な物を、性格を、交流を通して教えてもらったり、観察して覚えました。

 

最初は形式的でぎこちなかった会話も、ねこがおとなしく、特に危害を加えたりしないと分かってくると、彼女たちは少しずつ心を開いてくれました。

 

ねこは聴く側に徹していて、彼女たちのすとれすが少しでも減る様に、りらっくすできる様に努めました。

一緒にお茶をしながら、買い出しをしながら、料理を作りながら、色々な話を聴きました。

 

 

ねこが屋敷に来てからどれくらい経った時なのかは覚えていません、ねこはそういう所がぼーっとしていますから。

 

ある時、何の話をしていたのか忘れてしまいましたが、彼女たちのうちの1人が、ねこの事を普段呼んでいる"妹様"ではなく"ねこちゃん"と呼んだのです。

 

その彼女は、やってしまった、という顔をして、失礼いたしました、申し訳ございません、申し訳ございませんと繰り返していました。がたがたと震えて、血の気の引いた顔で、目には涙を浮かべて可哀想なくらい怯えていました。

 

 

 

 

ねこは、別にどう呼ばれても気にしないので、いや、化け物とかは嫌ですが。

ので、気にしないでください、そう呼びたかったらその様にしてください、と言うとあっという間にねこちゃん呼びが広まりました。

 

もちろんれぐるすが居る前では呼びません、殺されてしまうでしょうから、みんなとねことの秘密です。

 

 

また別の時に、ねこの頭を撫でているれぐるすを見て、小さく"撫でたいなぁ"という呟きが耳に入ってきた事がありました。

ぴくり、と耳を動かして、そちらへ目をやると、離れた位置で待機していた彼女たちと目が合いました。

 

ねこはじっと見つめて、仕草から、あぁ、彼女が言ったんだろうなと目星をつけました。

 

 

それで、ひとしきり仕事が終わって時間ができた時にお茶会を開いて、その子を含むすとれすが高そうなお嫁さんたちを招いて、好きなけーきを出してあげて、紅茶を淹れて、お話しを聴いて、それから、あなたは、ねこの事を撫でたいのですか、と尋ねました。

 

目を大きく見開いた彼女に、ねこは、いいですよ、どうぞ、と目を瞑り、頭をこてん、と差し出します。

 

おそるおそる、といった感じで、ふるふる震える手が乗せられて、そっと撫でられました。

ほぅ、と胸に詰まっていた空気を吐き出して、幸せそうにゆったりと撫でる様子を見て、ねこが大人しくしていたので、他のお嫁さんたちも、私もよろしいですか、私も、私も、といっぱいなでなでされました。

 

 

ねこが少し嬉しそうな顔をしていたのを見たのでしょう、ねこちゃんは撫でられるのがお好きなのですか?と問われます。

 

ねこは、れぐるすの撫でるちょっと乱暴な手つきがれぐるすなりの優しさも感じられて、1番好きです。

でも、彼女たちの柔らかな手つきに、幼馴染のあの子の事を思い出して、そうですね、と答えました。

 

それからあっという間にねこを撫でる人が増えました。

 

 

 

 

ねこを吸う人も居ました。

 

ねこが廊下の掃除をしていた時に、めんたるが限界だったのでしょう、ねこちゃん……ねこちゃん……と呟きながらよろよろとねこに近づいてきて、後ろからぎゅうっとされて、ねこのもふもふの髪の毛を吸われました。

ねこちゃん、いい匂い、ふわふわ、と言われて、されるがままになっていました。

 

そこからねこを吸う人たちも増えました。

 

 

限界めんたるの人多くない?ちおびた飲みな?

あ、ちおびたこの世界に無かったですね、とにかく、お体大事にしてくださいね、かしこ。

 

 

 

ねこは時々、お休みをもらってきままにお出かけをする事がありました。

 

行った先で見つけた素敵な物をお土産としてれぐるすに持って帰ったり、彼女たちにもお土産を買ったり、お話をぽつぽつと聴かせてあげる事もありました。

 

ねこが使える"魔法"とは名ばかりの[現実改変]で、きらきらと光る綺麗なお花を出したり、雨上がりの空に虹をかけたり、手をぽんぽんと叩いて美味しいお菓子をだしたり、寝つきがよくなる様にお部屋を落ち着く花の香りで満たしたり、そんな事を色々しました。

 

指を切ったり、転んであざになった彼女たちをはーとのぱっちわーくのあるくまの力で治癒させたりもしました。

 

彼女たちはそんな事でも喜んでくれたのです。ねこは、ねこたちの力で少しでも役に立てているのならそれでよかったのです。

 

 

 




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