ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。 作:ねえ、おなまえは?
初めて"ねこちゃん"が来た日、90番に呼ばれて、突然、旦那様が玄関に集まる様にと言っています、と、私たち全員が呼び出された。
みな、何があるのかと思ったが、表情を無くしたまま玄関へ向かう。
そこには、旦那様と、耳と尻尾をふるり、と揺らす身長の高いすらりとした純白のかわいい女の子が居た。
あぁ、また新しい花嫁が迎えられたのか、と誰もが思った。
だが違った。
旦那様は、彼女が自分の家族だと話し始めた。
曰く、僕の大切な妹であると。
長い事旅に出ていたが、これからはこの屋敷で一緒に暮らす事になるという話も。
彼女はじっとみんなを見つめている。
私たちは前を向いたまま、じっと過ごした。
その後、ねこちゃんが居ない時に改めて旦那様から話があった。
「妹は、ねこは、きまぐれに、なんでも知りたがるだろう。彼女はぼんやりしているが、心優しい。僕の愛の形を理解してくれている。だけど、気ままに君たちにも関わろうとするだろう。ねこにはねこなりの、思考や行動を自由に行う権利がある。僕にも勿論今まで通りの生活や規則を守って、君たちを愛する権利がある。
彼女はこの幸せな生活を壊さない様に、気を遣ってくれるだろう。
彼女が望むなら、君たちが質問に答えたり、表情変化をすることを許可しよう。
ただし、余計なことを言ったり、彼女や僕を不快にさせたり、あまつさえ傷付ける様な事があったら、分かるね。動作や発言には、これまで以上に細心の注意を払う様に。そうしていれば、君たちはこれまで通りの幸せな生活を送ることができる。
あと、ねこは、かわいい。君たちも見ただろう、彼女は心も体も純白なんだ。あぁ、君たちと比較している訳じゃ無いよ、君たちも、僕が見初めた通り顔が可愛くて、清い。でも妹は次元が違う。心も体もその存在自体が本当に美しいんだ。ぼんやりしている所もあるけれど、従順で賢くて、かわいいんだ。だからといって、勝手な行動を取らない様に。自分を律して過ごす様に」
はぁ?????
このクズは何を言っているんだとみんな思った。
お前の家族って事だけでどれだけかわいくても赦せない。
こっちの家族はみんな殺しておいて、はいそうですか、何て受け入れられるか。
お前の気色悪い愛の形だか何だか知らない"お人形遊び"を理解してくれているって事は、お前と同じ様な考えや価値観をしているっていう事だろうが。
1人でも吐き気のするクズが、もう1人増えるなんて考えたくも無い。
地獄以外のなにものでもない。
かわいいから、勝手な行動を取らない様に?
たしかにあのクズとは違って外見、所作、声、どこをとっても美しかった。だけど、中身は?
じっとこちらを観察する様なあの大きな目は、どうせ私たちの事を値踏みをしているのだろう。
そんなことする様な立場でもないのに、わざわざ使用人として過ごすと言うのも、意味が分からない。
そうやって屋敷中を監視して、私たちの粗を探してクズに報告して、吹けば飛ぶような私たちの命をさらに縮めていくつもりなのかもしれない。
その予想は斜め上に、彼女たちにとってありえないくらい良過ぎる方向に裏切られ、みんな手のひらをそれはもう盛大にぐるんぐるんに返した。
衝撃を受けた。
ギャップ萌えとも言える。
このかわいい生き物はなんだ。
普段は無表情なのに、私たちと話したり、嬉しい事があったり、美味しい物を食べたり、クズと話す時にふと見せる小さな小さな笑顔。
クズとは話さないで欲しい、穢れるから。
自分からは殆ど喋らないけれど、私たちの様子をその大きな目でじっと見つめて、限界が来ない様にそっと側に寄り添ってくれる包容力。
話を聴いてくれる時に尻尾がゆらり、ゆらりと揺れる、耳がぴょこぴょこと動く、その仕草で何人も心臓を撃ち抜かれた。
無機質だと思っていたが、思っているよりずっと分かりやすい方だった。
屋敷での仕事も、彼女が来てから格段に効率が良くなって、みんなの負担が減った。
朝早くから夜遅くまでちょこちょこと動き回って、手が足り無くなりそうな所へさっと現れて、すぐにこなして、すっと消えていく。
料理も美味しい、お菓子も美味しい、紅茶を淹れるのも上手い、仕事は早い。
仕草の1つ1つが洗練されていて、外見だけじゃなく、内面も美しかった。
時折、お茶会を開いては、クズのせいで荒んだ心を癒してくれた。
見た目からは想像のつかない様な、子供っぽいかわいい見た事の無いような魔法を見せてくれた。
ねこちゃんの世話係になった者は、時折彼女の髪の毛をといて、結んであげているのだという。
自分の事が出来すぎて、それくらいしかお願い出来ないみたいだったけれど、あの白とも薄水色ともとれる癖のある柔らかそうな髪の毛に触れるなんて羨ましい。
彼女は、クズの言う様にきまぐれで、知りたがりで、仕事の邪魔にならない範囲でよく話しを聴いてきた。
番号では無く、久しぶりに名前を呼ばれて、枯れた心が潤うのを感じる。
彼女を見た時、彼女と居る時にだけは人間に戻れた気がした。
ある時から彼女は"ねこちゃん"と呼ばれる様になった。
なんでも、うっかり呼んでしまった子に、別に気にしないから好きに呼んでいいとねこちゃんが言ったのだとその場に一緒に居た子たちに聴いた。
あっという間に私たちの間で"ねこちゃん"呼びが広まった。
見た目の美しさとの差にやられる子たちが沢山居た。
また違う時には、ねこちゃんは撫でられる事が好き、という話が入ってきた。
クズがねこちゃんの頭を撫でているのを見た子が撫でたいなぁと、呟いた小さい声を拾ったらしい。
クズは撫でるな。
その子を含んだお茶会で、撫でてもいいですよ、と言ってくれて、撫でたらとても幸福な気持ちになれたのだと言う。
みんなで撫でたらしい。それから、ねこちゃんがぺこりと頭を下げた時に頭を撫でる事が流行した。
それから、ねこちゃんを吸う子たちも現れた。
吸うってなんだ。吸うって。
最初はそう思った。そして、理解した。
ねこちゃんに抱きついて、温かな体温を、包み込んでくれる腕を感じながら、ねこちゃんの事を、吸う。前からでも、後ろからでもどちらでもいい。
花の甘く優しい香りがするのだ。これも大流行した。
時折、ぎこちない手で頭を撫でてくれる事もあったらしい。優しい。
あのクズは自分が妹に1番大切にされています、と見せつける様に私たちとは別に、特別にねこちゃんと同じ料理を作ってもらったり、あーん、と食べさせてもらったり、食べさせてあげたりしていた。
というかそもそも今まで料理なんて食べなかっただろうが。
ねこちゃんの料理を食べるな。
わざわざ私たちの前でクズよりすこし高い位置にある頭を乱暴に撫でていた。
死ねばいいのに。
私たちに撫でさせろ。
ねこちゃんが居ても、私たちは機嫌1つですぐ殺された。
でも、聴いた話によると、ねこちゃんが遺体の側で祈る様に膝をついて、手を組んで目を伏せてくれていたそうだ。
自分が死んだ時にも、ねこちゃんに祈られるのなら、少しは救われる気持ちになった者たちが沢山いた。
こうやって、レグルスやねこの知らない所で、ねこのことを好きな人たちが大量に生産されていった。
お嫁さんたちはねこが見ていない所で何人も、何十人も死んでいきました。
ねこが見ている前でも死んで行きます。
ねこは、どうもしません。
どうしようもありません。
だから、そっと祈って、偲んでから処理していきます。
れぐるすは、その度に新しいお嫁さんを迎えて、迎える度にねことお嫁さんを合わせてくれて、紹介してもらって、ねこはそれを覚えて、記憶を更新して過ごす。
何年も、何十年もずっとずっと世界は同じ様に回っていました。
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SCP財団
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SCP-040-JP - 『ねこですよろしくおねがいします』
by Ikr_4185
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by dr_toraya
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