ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。   作:ねえ、おなまえは?

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偉い、とえらい、では、えらい違いがあるという事です。


短編 ねこ、怒りのみーむ災害案件

 

ねこです。みなさま、お元気ですか?

 

ねこたちは元気です。

 

 

でも、聴いてください、途中で食べ物を買おうと立ち寄った村が控えめに言って、最悪の村でした。

 

 

すばるくんたちと分担して、ぱんや果物を買っていた時の事でした。

 

 

村の中心部、少しひらけた場所で大きな声が聴こえて何事だろうと振り返ります。

 

おら早く来いッ!モタモタしてんじゃねぇよ!!

このッ、ノロマがよぉッ!

嫌だ、嫌です、やめてと泣いて叫ぶ女の子を殴って、髪を引っ掴んで、引き摺ろうとして、それでも地面に縋り付く様にして動こうとしない彼女の頬を思い切り平手打ちしています。

 

パンッと乾いた音が周囲によく響きます。

 

 

みんなはそれをニコニコしながら楽しそうに、今日も平和だなぁ、とでも言いたげな雰囲気で見つめています。

 

意味が分かりません、止めに入る、とか、目を逸らす、とかでしたら分かります。

 

のが、のが…これは一体どういう事なのでしょう…?

 

 

近くに居た女性に声をかけます。

あの、ご婦人、質問よろしいでしょうか?

 

まぁ、可愛らしい、旅の方かしら?

もちろん良いわよ。

 

 

なぜ、彼女はあんな事をされているのですか?

 

あぁ、それはね、あの子はあの人に買われたからよ。

自分の持ち物に何をしたって良いし、そんなの勝手でしょう?

まぁ、痛そうだけれど、しょうがないわよ。

そうそう、彼女の事、母親が売ったんですって、ふふふっ、お金ができて良かったわねぇ。

 

 

なんて事はない、当たり前の事だという風に言います。

 

 

ではなぜ、皆さまは、あれを止めようとしないのですか?

 

 

ふふ、あははっ、貴女って面白い事を言うのね、そんなの簡単よ。

自分が楽しもうとしている時に邪魔される事ほど、腹が立つ事ってないじゃない。

 

例えば、そうね、自分が作った料理をさあ食べよう!ってしている時に、第三者がいやその料理にはこの味付けが合う、とか言って完成した料理に調味料をぶちまけられて、それを黙って食べる、なんてあり得ないでしょう?

だから良いのよ。

他の場所から来た人は皆、貴女の様に不思議そうにするけれど、私たちからしたらそっちの方がずうっと不思議なのよねぇ。

 

 

なるほど、くそみたいな村でした。

ねこは気分が悪くなりました、よろしくお願いしません。

ぎゅるり、財団のろごまーくが現れて、下に[SCP-…]と看板が追加されます。

 

さて、何の、でしょうか?それは、後でのお楽しみという事で。

 

 

 

へぇ…。

 

それはとても素晴らしい考え方ですね。

教えてくださってありがとうございます、丁寧で、親切で、貴女はえらいですねぇ。

 

あら、あらあら、そう?

うふふっ、この歳になると他の人に褒められる機会なんてそうそうないし、それがこんなにも話を分かってくれて、他の馬鹿みたいな正義感を振り翳してくる奴らとは違うかわいい子に言われると、なんだかとっても嬉しくて、気分が良いわ。

 

 

お褒めにあずかり光栄です、人の事をそんな風に言ってくださるなんて、とってもえらいですねぇ。

 

 

やだもう、恥ずかしいわぁ、ありがとう!

 

ね、ね、貴女もきっとあの人の好みに合うと思うの、いくらで買ってもらえるか、聞いてみたらどう?

 

 

…ええ。

そうですね、それも良いかと思います。

ねこは誰かのお役に立ちたいですから。

 

仲介してくださいますか?

 

 

 

勿論良いわよ!彼、私の家の隣に住んでいるから顔馴染みなの。

ほら、早く行きましょう!

 

 

優しいのですね、貴女は本当に、えらいですねぇ。

 

 

 

このやりとりを聴いていた人たちは、これからどうなるのだろうと興味津々にそれぞれやっていた事の手を止めてじっとこちらを見つめています。

 

これがこの村の日常なのでしょう。

 

暴力が、暴言が、お金で正当化されるこの状態が。

 

 

 

皆さまも、静かに見ていてくださって、えらいですねぇ、と穏やかに笑いかけると、なんだ、照れるな、そんな当たり前の事で褒めてもらえるなんて、子供に戻ったみたいだよ、と口々に言います。

 

素直に気持ちを口に出せて、えらいですねぇ。

 

 

ねこ、おい!何やってるんだ!?

おばさまに手を引かれている姿を見たすばるくんたちが駆け寄って来ました。

 

 

あら、知り合いの方?この子、とっても良い子ね。

 

今からあの人に値段交渉しに行くのよ、ほら、あの人、と指差す先の女の子とおじさまのやり取りを見て、そして今おばさまが言った言葉の内容を把握するまで暫く呆れた様な顔で3人は固まっています。

 

 

わざわざ説明してくださり、ありがとうございます、えらいですねぇ。

 

 

ふふ。そんなに褒めても何にも出ないわよ?

あぁ、何て良い子なのかしら、この子を売れば私にもお金が入るし、この子も役に立ちたいって言っていたし、良い事づくめよ。

 

良い事をした日って、とっても気分が良いわよねぇ。

 

 

はい、そうですね、沢山良い事をして、えらいですねぇ。

 

 

 

ねえ、ちょっと、アンタ、この子はどう?

そんな薄汚いガキよりよっぽど良いと思わない?

 

平手打ちを続けていたおじさまは、その言葉と、ねこの姿を見てほぉ、こりゃあ…と満足そうに笑っています。

で、いくらで買うかのお話になりました。

 

なんならすばるくんたちも含めて誰が誰を買うか何て話にもなりました。

 

ねこは、すばるくんたちに、大丈夫ですから、じっとしていてくださいね、と小声で伝えます。

 

 

そして値段交渉の末、喧嘩に発展して、周りの人たちも、やじを飛ばして楽しんでいます。

 

 

ねこは褒めて褒めて、褒め続けました。

 

汚い言葉で罵り合えてえらいですねぇ。

啀み合えてえらいですねぇ。

睨み合えてえらいですねぇ。

人をお金でしか判断出来ないなんてえらいですねぇ。

皆さんもその様子を見て楽しんでいてえらいですねぇ。

人の事を指さして、誰かと誰かを容姿や金額で比較する事が出来るなんてえらいですねぇ。

呼吸が出来てえらいですねぇ。

瞬きが出来てえらいですねぇ。

目が見えてえらいですねぇ。

体を動かせてえらいですねぇ。

言葉を話せてえらいですねぇ。

良い子ですねぇ、えらいですねぇ。

 

 

えらい事に大きい事も、小さい事も無くて、良い事も悪い事もありません、褒められて皆さんは嬉しいでしょう。

ほら、現に皆さんは喜んでくれています。

 

 

 

きっと、多分、貴方たちがこうやって、毎日誰かを貶めて、殴って、叩いて、髪の毛を引っ張って、ごみの様に扱って、唾を吐き捨てて、ぼろぼろにして、自分たちだけが好き勝手にして良いと、そう思う事は、1番えらいのでしょう。

 

のが、それは決して正義ではありません。正しい事ではありません。

 

貴方がたの普通は、時に善行とはかけ離れた行いに繋がるのです、貴方たち以外は皆、知っていますよ、当たり前のお話です。

 

 

お金を払って買ったのだから好きにして良い、お金をもらえるのなら子供を売って良い、そうやって自分たちの思考を正当化して、きっとこれまで多くの犠牲が出たのでしょう。可哀想な目に合っている子が居る事も事実です。

 

ので、その行いが、貴方たちがずっとえらい事だという事をねこは理解しています。

 

 

 

 

とってもえらいですねぇ。

 

 

貴方たちの信念に則って、ねこや、ねこたち、その子に何かしようとしている事は分かっています。

 

そしてそれは、とてもえらい事、なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねこたちは貴方たちを認めましょう。

 

 

 

そしてその上で。

 

 

 

 

忘れてはいけませんよ、ねこたちの方がずっと"偉い"という事を。

 

 

ねこたちよりも偉いものは存在しません。

 

ねこたちが1番偉くて偉くて偉くて偉くて偉くて偉くて、偉いんです。

 

 

ここまで喋ると、ずっと黙っていたれぐるすに、あのさぁ、ねこ、お前、やってるだろ、と静かに言われます。

 

え〜…っと、ねこには何の事だかさっぱり分かりません。

やっているって、何をでしょう?

 

 

ねこは偉いので良い子たちを褒めて、えらいねぇ、と言っているだけですよ?

 

 

あーもう…前に言っていた、なんだっけ、みー……そうだ、ミーム災害とかいうやつだろこれ、お前の仲間の誰かは知らないけれど、ねこ、君の言っている事はめちゃくちゃだし、正も邪もごちゃ混ぜだ、それなのにあいつら酷く嬉しそうにしていておかしい状況なのはどう見ても明らかだ。認識災害とやらが起きている、そうだろう?

 

そうですねぇ、とのんびりねこは答えます。

 

 

もはや、村の人たちは正気ではありません。

 

ねこがあらゆる事に、あらゆる行動に、一人一人幻影の様についてまわってえらいねぇ、えらいねぇ、と言っているのでしょう。

 

 

 

 

ご紹介が遅れましたね、今回のSCPはSCP-818-JP『えらいねぇ〜』です。

 

そう、散々ねこが言っていた"えらいねぇ"です。

 

 

このSCPは佐賀県の山にあるお社に入って、例えばごみを拾う、とか、お参りする、とかそういういわゆる"良い事"つまり"えらい"と褒められる行為をすると現れる2体の人物で、まぁ、おじいちゃんとおばあちゃんみたいな見た目をしている、神さまです。

 

良い事をすると、突然現れて、何々出来て、えらいねぇ〜と優しく話しかけて来て、褒めてくれます。

ここまででしたら、安全なせーふくらすですね?

 

のが、違います。

彼らは、けてるくらす、つまり完全な収容が困難または不可能なもの、収容違反で大損害が発生する、その分類に分けられます。

 

なぜかといえば、悲しい事にこの老夫婦の様な神さまは、認知症の様な状態になってしまっていて、かつ、おそらく老人介護施設の様な所へ入れられて、それでもお役目の為に帰って来たばかりである、という所に起因します。

 

毎日毎日意味のない歌を歌わされて、他の人と無理やり仲良くする様に強要されて、貴方たちの"役目"はもう終わったのだと言われ、何度も何度も同じ場所を歩かされ、不味いものを食べさせられ、熱いお湯をかけられ、そしていつも見下され、褒めて、褒めて、褒められ続けたのです。褒める、それは上のものの存在が、本物の存在が、神さまが、つまり自分たちが、信仰してきた人たちの善行に、えらいねぇ、と優しく言うのとはまるで逆の、見下して、馬鹿にして、嘲笑うものでした。

 

 

それですから、お役目の為に戻って来た彼らは、偉い、つまり神さまである自分たちが褒めると、皆が喜ぶ、幸せになると、そう思って行動しています。

その、皆が、もはや誰かすら、忘れてしまっていたとしても。

  

 

 

それが、人に悪影響を与えるものであったとしても。

 

 

影響初期では他者から褒められたという行為に強い達成感を示して、積極的に良い事を行う様になり、その度に2人は現れてえらいねぇ〜と褒めます。

行動を肯定される事による自信の向上ですね、ここまではとても良い事です。

 

 

影響中期では、出現条件が簡易なものへ変化し始めます。

そして同時期に2人以外からの賞賛の言葉は"皮肉"や"嫌味"に感じられる様になり他者との衝突によって暴行、器物破損、殺人等に繋がります。

 

 

影響後期には、もはや何でも褒める状態に入ります。

元気に生まれた、話せる、上手に歩ける、等、出現を阻止出来ないれべるで褒められ、対象者の周囲に常に2人が居る状態になります。

対象自身も、深く2人に依存し、2人の言動にのみ反応し、食事も、睡眠も必要のない状態に変化します。

 

そして、影響後期の段階にある人の効果範囲内で"良い事"をすると、佐賀県のお社に居なくとも、効果対象になります。

つまり、影響が連鎖的に広まっていってしまう、という事です。

 

人を殺してもえらい、なんて最早破綻している事が罷り通るのです。

 

SCPですから。

 

ので、影響が進行する前に"終了処分"する事が望まれます。

のが、影響は着実に、見えないうちに広がっていっている…かもしれない、というものです。

 

 

話を戻しましょうか。

 

人々は虚空に向かって、そんな風に言われると恥ずかしいなぁ、とか、嬉しい、とか、褒め上手ね、とか、永遠に喋り続けています。

 

 

 

ねこはねこのやりたい様にやりますよ、とすばるくんたちに告げて、ゆるりと尻尾を動かして、先ほどまで地べたに這いつくばっていた女の子の所へ歩みを進めます。

 

ひっ、と短く悲鳴をあげた彼女を、大丈夫ですよ、と優しく抱きしめて、頭を撫でて、偉い、偉い、よく我慢しました、さぁ、こんな所から居なくなりましょう、あんな人たちと一緒に居たら、教育上よろしくありませんから、と小さな魔女の[現実改変]で身体と服を綺麗にしてあげて、手を引いてすばるくんたちの方へ歩き出します。

 

この先の街でねこの顔見知りの料理屋さんがありますから、そこで働かせてもらえるか聴いてみます、ので、安心してくださいね、と声をかけます。

 

 

こくり、と頷いて、ありがとうございます、ありがとうございますと涙を流すので、ねこはねこのやりたい様に、自由気ままにやっただけですから、何も気にしなくて平気ですよと答えます。

 

 

あの人たちはきっと、ずっと褒められて、食事や睡眠なんかも忘れて、過ごすのでしょう。

 

あ、でもねこの、このSCP-818-JP『えらいねぇ〜』のみーむ災害は変容していますから、本家では食事も睡眠も一切取らずに褒められ続ける事が出来ます、のが、ねこの場合は普通に食事も睡眠も必要になります。

 

ので、あのまま放っておけば、ねこからの賞賛に依存して、いずれ餓死か何かで死ぬでしょう。

 

 

この子を安全な所まで送るまで、2、3日程度でしょうか、そうしたら解除しましょう。

 

 

死にはしませんよ。

ですが、賞賛の嵐から現実に戻れば精神的にも肉体的にもとても辛いものでしょう。

 

痛い目をみれば、少しは考え方を変えてくれるはずです。

 

 

 

そうしたら、本当に、偉いねぇ、です。

 

 

そんなある日の出来事のお話です。




クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス

本小説、およびイラストはCC BY-SA 3.0ライセンスの内容に従い公開させていただいております。

SCP財団
http://scp-jp.wikidot.com/

SCP-040-JP - 『ねこですよろしくおねがいします』
by Ikr_4185
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SCP-910-JP - 『シンボル』
by tsucchii0301
http://ja.scp-wiki.net/scp-910-jp

SCP-239-The Witch Child『ちいさな魔女』
by Dantensen
http://scp-jp.wikidot.com/scp-239

SCP-818-JP-『えらいねぇ〜』
by HURUMOTO65
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