ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。 作:ねえ、おなまえは?
花嫁さんたちの食事を作るのに必要な買い物の為に街を歩いていましたら、正面のべんちに、項垂れて座り、はぁ、ため息をついている身なりの整ったおじさまが居ました。
ので、何となく気になって、お隣よろしいでしょうか、と聴いて、あ、あぁ、勿論だよ、とお返事をいただいたので失礼します、と座ります。
おじさま、何かお困りの様ですね、もしよろしければ、ねこが何かお手伝いを出来るかもしれませんと言って、話をよくよく伺うと、飼っている動物が言う事を聞かないのだと言います。
それは困りましたね、どの様な愛玩動物なのですか?
うん、大きさはちょうど私の半分位でね、長い毛並みなんだ、それが珍しい色をしていてね。
私が丁寧にとかしてやってもお礼の一つも言わないで何なら、手を払い除けようとしてくる。
散歩に連れて行くにしても、一苦労だよ、とても嫌がるし、噛みつこうとしてくるし、きちんと四つ足で歩く様に言っても、すぐに立とうとする。
だから仕方なく躾をしなくてはならない。
この前も、床に置いたご飯を食べるのを拒否して、あまつさえ机で食べさせて欲しい、食器を使わせて欲しいだとか言ってくるものだから、この間、遂に我儘が過ぎるもので、思わず腕を棒で叩いて折ってしまったんだ。
でも、仕方のない事だったんだ、私が買ったんだから、私の好きにして良い。
もっとしっかりとした調教の必要があるのかな、と思っていた所なのだよ。
まったく、本当に、困ったものだ。
ほら、ご挨拶しなさい、おい、私が、しろ、と言っている、早くしろ、私に恥をかかせる気か?とおじさまが短い調教用の鞭を取り出して、そこで初めて、べんちの後ろに隠れて縮こまる様にして地面にまるで犬の様にしゃがみ込んでいる、首輪を付けられた女の子が居る事に気付きました。
じゃら、とべんちの手すりに繋がれた鎖が音を立てます。
途中からおじさまが何かおかしい事を言っていると思ったら、そうですか、そういう事ですか。
みるくてぃーの様な素敵な髪の毛の色ですね、おじさまの言う通り、それは丁寧に管理されているのでしょう。
彼女は助けを求めて縋る様な目でねこを見つめて、それでも、どうにもならないのだと諦めた様な、そんな虚な目でねこと、地面を交互にゆらゆらと見つめています。
彼女は腰から下げていた鞭で2、3回体を打たれて、う、うぁ、ごめんなさい、ごめんなさいと痛みに呻きながら、ソ…ソルマーです、どうぞよろしくお願いいたします、と頭を地面に擦り付けて言いました。
両方の腕は赤く腫れ、酷いあざになっていて、あぁ、それがさっき言っていたおじさまが制裁の為に折った所なのでしょう。
まともに手当もしてもらえなくて、添木も無しで、手をつくたびに彼女は痛みで顔を顰めています。
その状態で、4足歩行を強いるのは、そもそも人に4足歩行をさせる事がおかしい話なのですが、思考回路がねこたちとはもうどうしようもない位、ずれているのでしょう。
ぼろの服、裸足に痩せ細った手足、まともにご飯も食べさせてもらっていないのでしょう。
この冷える時期に、靴も、暖かい服も貰えないなんて。
奴隷と同じ、いえ、それより人権や尊厳の無い、畜生扱いですか。
そうですか。
ねこも自己紹介をしなければなりませんね。
ねこです、よろしくお願いします。と、挨拶の動作であるかーてしーをしながら伝えます。
はっはっは、可愛らしい名前ですな、ねこさん。
ところで、ねこさん、貴女も如何ですかな?
…いえ、ねこにはそういった趣味はありませんので、お気持ちだけで。
いえいえ、誤解をさせてしまってすみませんね、貴女も私に飼われませんか?と、ニコニコしながら言われます。
はぁ、もう、どこまでいっても、くずはくずなのでしょうね。
ふわりと笑いかけて、すかーとをよいしょ、と畳んで地面につかない様にしてしゃがみ込んで、ソルマーさんと目線を合わせます。
ソルマーさん。この生活、楽しいですか?
ソルマーさん。この生活、満足していますか?
ソルマーさん。この生活、ずっと続けたいですか?
勿論そんな事はあり得ないでしょうから、返ってくる答えなんて分かりきっています。
ただ、彼女から、彼女の口から直接聴きたかったのです。
彼女は目をゆらゆらとさせた後、…な…です、と小さく、呟きます。
おい、何勝手に話をしているんだ?私が許可していない。と、躾ける様に鎖をぐっと引いて、うっ、と苦しそうにしながらも、ねこの事を今度はしっかりと見つめて、楽しくなんて、無いです、満足なんてしていません、終わらせたいです、と助けを求めてねこの方へ手を伸ばしました。
そうですよね。
当たり前の反応です。
ので。
しんぼる。ぎゅるん、とろごまーくが回り、看板が追加されます。
にこりとおじさまに微笑んで、言います。
彼女は怖いのですよ、おじさま。
恐ろしいのです、貴方の身勝手な、独りよがりの行動に管理されて、そして、人間とは到底思えないこの仕打ちに。
逆らう事が出来ない、この状況に。
貴方はなんで言う事を聞かないのか、と怒ります。
のが、貴方の思考がどれ程ずれているのか、おんなじ様な思いをすれば分かるのではないのでしょうか?
虐げられる者の気持ちを。
それでは、よろしくお願いします。
SCP-070-JP『わんわんらんどと犬ではないなにか』
おじさまの足元にはっちが現れて、驚いたおじさまの手から不意をついて鎖を離してもらいます。
後は勝手に下向きに、がこん、と開いた暗闇のそこに悲鳴をあげながら情けなく落ちていきます。
残されたソルマーさんを見て、大丈夫、少し待っていてくださいね、と優しく笑いかけます。
そしてねこもぴょん、とはっちに入ります。
かうんたーの裏の小さな扉から、のんびりと暗い、埃の舞う建物の中に足を踏み入れます。
周りには動物の匂いが染み付いた空の檻が大量にあり、窓から見える外は快晴、わんわんらんどと書かれた看板が目に入ります。
ここは2階建ですが、元の報告書と同じ様に1階に降り立ちました。
そして、おじさまも落ちた時に腰を打ったのか、さすりながら、ねこに、ここはどこだ、何をした!?と詰め寄ってきます。
ねこは質問に答えません。
無表情で、おじさまを見つめながら静かに口を開きます。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 寒さになんか 負けないぞ
おい、何を言っている!?いぬ?何だそれは!?
くそ、気味が悪い、今すぐその変な歌みたいなやつを止めろ!
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ お腹が減っても 負けないぞ
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 靭帯切れても 頑張るぞ
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
っこの!止めろと言っている!!パンっと平手打ちをされ、口の端から血が垂れますのが、気にせずにそのままおじさまをじっと見つめて、調子はずれに歌い続けます。
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 水の中でも 元気だぞ
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 両手はいらない いぬだもの
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 一日縄張り 監視中
ねこの声に重なる様に段々とあちこちから歪な調子で声が響き始めます。
それはどんどんと大きくなっていきます。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 寂しくないぞ みんないる
それは段々と歪んだ合唱の様になって部屋全体を包んでいきます。
もっともっと、もっと大きくなっていって、今は見えない仲間の数も増えて、男性の声も女性の声も、ねこと一緒に口ずさみます。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ お腹が減っても 負けないぞ
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 悪人男は どこにいる?
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ わんわんらんどは 僕の家
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ いぬじゃないぞ 僕たちは
止めろ、あ、頭がおかしくなる!
クソッ、窓も開かない!
あっ!に、2階!2階があるじゃないか!
逃げる様に階段を駆け上がって行く背中を見つめながら、そのまま続けます。
あぁ。無駄ですのにね。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ ご飯はいらない いぬだもの
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 元気じゃなくても 元気だぞ
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 僕たち一緒だ ここにいる
とん、とん。と、ゆっくりねこも上へ上がります。
部屋中に響く声に耳を塞ぎながら苦悶の表情を浮かべるおじさまをじいっと見つめます。
はた、とおじさまの動きが止まり、じっと一点を見つめています。
暗がりで、遂におじさまは『犬ではない何か』に遭遇したのでしょうね。
何だ!?大きい…魔獣…か…?
いや、家畜…?じっとしている…
あ…違う、ちがう、ちがうちがう!ひぃっ!
何だあれは何だあれは何だあれは!!!!!
おい、待て、やめろ、やめろ!!!
来るな、来るな来るな!!
随分と慌てて転げ落ちる様に階段を降りて、そこでようやく目に入ったのでしょう、一目散に玄関に向かいます。
がちゃがちゃと滅多矢鱈にのぶを引いて、押して、忙しそうにしています。
随分と酷く焦っていますね。
のが。
どあは開きませんよ。
頼む、ドアを開けてくれ!!
どあは、開きませんよ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!!!
どあは、開きません、よ。
ねこはそれを、2階からいつの間にか降りてきた犬ではない何かと相対し、襲われるご主人を見つめながら静かに歌う様に彼らと続けます。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ どれだけ吠えても飽きないぞ
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ 君は元気か? 不健康
おじさまは沈黙しています。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
時間にして、20秒あたりでしょうか。
ねこと、犬ではない彼ら彼女らと、新しく仲間に加わったおじさまの声が、沢山の声が混ざります。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
さて、みーむ汚染もこれ位にしましょう。
おじさまが人を辞めて、本当に、犬ではない彼らの仲間になってしまったら困りますからね。
これで、でも分かってくれたでしょう?
虐げられる側の、好き勝手に暴力を振るわれて、まともにご飯も食べられなくて、治療もしてもらえなくて、人間扱いされない者の気持ちが。
流れ込んできたでしょう?
彼ら、彼女らの受けてきた仕打ちが。
本当にその身に起こったかの様に。
正気を失い、わんわん、と言いながら、ぱたりと倒れて気絶したおじさまを支えて、はっちを目指します。
SCP-070-JP『わんわんらんどと犬ではない何か』は、ぺっとしょっぷ経営をしていた、今はもう亡くなった人が住んでいたまんしょんの一室にある床下へのはっちから侵入できる異空間です。
中は、犬の様な匂いがする空の檻が沢山、ぺっとふーどを置いていたであろう壊れた棚、かうんたー、開かない玄関、外が見える錆びて動かない窓、2階へ続く階段があります。
きっと多頭飼育で崩壊したのでしょう。
それか、犬ではなく、例えば、子供なんかを、犬の様に扱って、酷い目に遭わせていたのかもしれません。
ねこは後者かなぁ、と思います。
それか、それらが混ざり合ったのか。
いぬじゃないぞ、僕たちは。と本人たちが言っていますから。
さて、Dくらす職員を送り込んで探索をしていくうちに、彼らは何かに出逢います。
それは、犬の様で、でも犬ではない、大きい、何かです。
対象と遭遇すると、Dくらす職員は焦ってはっちや玄関、窓から逃げようとします。
のが、出来ません。
そして、襲撃されます。
その後は通信用のばってりーが切れる約4時間もの間、永遠に、わんわんわん、と鳴き続けます。
ちなみに、実の所、Dくらす職員が犬の様な何かが対象と遭遇する前から、この、わんわんらんどに足を踏み入れた時点から、ねこと彼ら、彼女らが口ずさんでいた、わんわんわん、僕らはいぬだぞ、元気だぞ、からなる文言を永遠と話し続けています、対象者が気が付かないだけで。
そして、襲われたDくらす職員の声が、次の探索の際に、先ほど言った様に永遠とわんわんわん、と、話し続ける中に一緒に入っています。
犬ではない、何かの仲間になってしまった、という事ですね。
本来ならこの『わんわんらんど』に踏み入れれば、脱出出来ない、もしくはさせて貰えないのですが、ねこのこれは変容していますから、出る事が出来ます。
それに、本家にはない、ここに居た犬ではない何か、もしくは犬ではない何かにになる前の誰かが受けてきた仕打ちを追体験をしてもらうというみーむ汚染も追加で入っています。
犬ではない彼らに、手を振る彼らに、ご協力ありがとうございました、と伝えます。
わんわんわん わんわんわん わんわんわわわん
わんわんわん
僕らはいぬだぞ 元気だぞ お役に立てたの 嬉しいな
と返ってきて、はい、とても助かりました、また今度、よろしくお願いします、と応えて、気絶したおじさまをよいしょと抱えてはっちを出ます。
地面にぽい、とおじさまを投げだして、その後ねこものんびりと元の世界へと出ていきます。
はっ、と目を覚ましたおじさまは、ソルマーさんにすまなかった、ソルマーさん、私が悪かった、赦してください、ごめんなさい、と必死に謝っています。
そして、こんな事は間違えている、と首輪を外して、懐からお札の束を取り出してソルマーさんに渡して、これで、身なりを整えて、骨折を治して、働くと良い、働き口は私が用意するから安心して欲しい、本当に、申し訳なかった、と呆気に取られているソルマーさんに口早に伝えます。
そして、足早に去っていってしまいました。
ねこと、遠のくおじさまを交互に見て、ねこに向かって、何か分からないですが、貴女が何かをしてくれた、それは分かります。
本当に、本当にありがとうございました、人として生きる事が出来る、なんて売られた時からずっともう二度と叶わないと思っていた事が、貴女のおかげで叶いました、深く感謝いたします。と綺麗な瞳から涙を流して言います。
お礼を、と先ほど貰ったお金のうちのいくらかを渡そうとしてくれた手をそっと包み込んで、ねこは、ねこのやりたい様に、自由気ままにやっただけですよ、ので、気にしないでくださいね、そうやって明るい顔を見る事が出来て、ねこはそれだけで嬉しいのですよ、と告げて、小さな魔女の力で痛みを消し去り、完璧に戻せはしないですがおよそ元の綺麗な腕に治して、しっかりと治療してくださいね、と伝えて、ぽんぽん、と手を叩いて彼女の服を暖かいものに変えから、ばいばいです、と立ち上がってかつん、かつん、と石畳の上を歩いて行きます。
あの、あ、ありがとうございました!と大きな声が聴こえるので、振り返って、ぺこりと頭を下げます。
そんなある日の出来事のお話です。
わんわんわん にゃんにゃんにゃん わんにゃんわわわんにゃんにゃんにゃん。
ねこはねこです 元気です 悪い人は どうしましょう、ね?
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス
本小説、およびイラストはCC BY-SA 3.0ライセンスの内容に従い公開させていただいております。
SCP財団
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SCP-040-JP - 『ねこですよろしくおねがいします』
by Ikr_4185
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SCP-910-JP - 『シンボル』
by tsucchii0301
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SCP-239-The Witch Child『ちいさな魔女』
by Dantensen
http://scp-jp.wikidot.com/scp-239
SCP-070-JP 『わんわんらんどと犬ではないなにか』
by broken_bone
http://ja.scp-wiki.net/scp-070-jp