ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。   作:ねえ、おなまえは?

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5話 うん十年の化け物だとか

 

レグルスは聞き飽きた事を何度も何度も馬鹿みたいに繰り返す年の近い奴らにうんざりしていた。

 

曰く、村の端の端にあるボロボロの小屋には化け物が居るんだと、親がずっと近づいてはいけないと言っていると怖がっていると、爺ちゃんたちも本当に化け物は居るからふざけてでも小屋に入ろうだなんて思うな、と言っていると。

 

馬鹿らしい。

爺さんたちの代から化け物が居るんだとしたら化け物も死ぬか老いて衰弱するだろう、それに、化け物だ化け物だと騒ぐ割にその見た目の話1つすら聞かない。

 

というか、そんなに恐ろしい化け物なのだったら、どうしてボロボロの小屋を破壊して出てこない?

レグルスも遠目から小屋を見た事があるが、殆ど錆び付いたり、劣化して意味をなしていない錠や鎖が扉に付いているだけで、大層な結界やら封印がされている訳でも何でも無い、ただのボロ小屋だった。

 

だから、今までずっとその"化け物"とやらを怖がり続けている爺さんたちも、それを信じる親も、子供も全部まとめて見下していた。

 

レグルスももっと小さい頃に親から聞かされた事がある。

生まれた時には死んでいたのに生き返って、腕がちぎれても何事も無かった様に回復して、魔獣をけしかけて親を食べるのを目の前で見殺しにした恐ろしい化け物が居るから、絶対に近づいてはいけないよ、と。

 

頭が足りないと思っていた親への期待はさらに下がったのを覚えている。

 

 

 

 

 

 

ねこは、ずいぶん経ったな、と思いました。

 

石の破片で壁や床に5日毎に印をつけて行って、それが大体小屋全体を埋め尽くしたから、そろそろ外に出ても良いだろう、と思いました。

 

ねこの忍耐力には、はなまるをくれたっていいんじゃないかな、と思います。

ねこは小さかった頃から成長しました。えっへん。

 

身長は伸びて、まあ、あとはあんまり変わらないのですが、でも成長したんです。髪の毛とか、爪とかそういうのは元の長さから変わりませんでした。

楽でよかったです。

 

さて、外に出るにあたって色々考えなければなりません。

どうせ誰もこんな場所に来ないだろうけれど、小屋の扉を開けて、もし万が一、ねこの事を見られたら騒ぎになるなぁ、それは嫌だなぁと考えて、そして、入り口とは逆側の小屋の壁に、ねこ1人通れる穴を、よいしょ、と、ぼろぼろの板を外して開けて、外にこっそり出ます。

 

 

 

 

久しぶりの外の空気。

 

すぅっと肺いっぱいに吸い込むと、やっぱり小屋の中の埃とかびの匂いとは全然違います。お日様が射していて、森の木々にあたって木漏れ日がゆらゆらしていて綺麗だなぁ。

 

小屋も好きですが、ねこは外の世界も好きです、よろしくお願いします。と、世界によろしくお願いしていたら、ざっざっと複数人が歩く音と話す声が聞こえてきた。

え、え、まずくないですかこれ、咄嗟にしゅるりと小屋の中に戻って、外した板を元通りに、戻してしまいました。

 

あ、失敗しました。

何かあったら家に帰るという本能が、考えるより先に行動に移してしまったのです。帰巣本能というやつでしょうか。

 

仕方がありません、ねこはここには居ませんと、息を殺して動向を伺います。

 

子供たちの声がします。

 

 

沢山の子供たちの声がします。

 

 

「爺ちゃんや母さんたちはなんでこんなぼろ小屋を怖がってるんだろうな!」

「ちがうよ、小屋を怖がっているんじゃなくて、中にいる化け物を怖がっているんだよ」

「馬鹿、それくらい分かってるよ、見てみろよ、鍵も鎖ももう意味ねーよ、錆びてぼろぼろじゃん!」

「なあ、化け物が本当に居るか見てみようぜ」

「えー、ぜってー居ねーよ!」

「どーする?すげーバケモンが居たら!」

「やめてよ、こわくなってきちゃった」

「そんなの、走って逃げるしかないじゃん」

「だからさあ、確かめてみるんだって、それで村の大人の奴らが何にも居ないのにびびってたって面白い話じゃん?」

「たしかに、それ最高に笑えるって」

「はははは!!!」

「じゃあ」

「どーーんっ!」

え、と思う間もなく小屋のどあがばんっと蹴り破られます。

 

慌ててねこのみーむ汚染を解除します。

お互いに静かに見つめ合って、子供たちが先に口を開きました。

 

 

 

「居た!本当に居た!!!でも弱っちそうだぞ?なぁんだ、全然怖くないじゃん。耳と尻尾が生えてるだけの女が化け物だなんて笑っちゃうよ!なぁ、俺らで倒して村に連れて行ってみんなに褒めてもらおうぜ、化け物を倒した英雄になれるんだ、やっちゃおう!」

 

 

 

言うが早いか、子供たちは小屋の中へずかずかと入って来ました。

子供たちが何人いるかなんて分からない、ねこは、さっき元に戻した板に体当たりして転げる様に外に飛び出ました。

 

おい!外に逃げたぞ!!!裏だ、追え追え!!

 

物騒な声がします。

ねこは、森の中をでたらめに走って走って走りました。

 

足が縺れて転んでも、木の根に躓いても、裸足に尖った石が食い込んでも、はぁ、はぁと息を切らして走り続けました。

ねこの体力は、ずっとずっと小屋にいたから落ちてしまっていました。

 

森の開けた所に出て、綺麗な花畑の中、ねこは、ねこは、ついに膝を折って、手をついて、その場に倒れ込んでしまいました。

ひゅう、ひゅう、と早い呼吸を繰り返します。

 

ねこの体力は、無尽蔵ではなかったのですね、確かに、体力が無限にあれば、暑いが苦手なのは克服できたのでしょうから。

 

子供たちが追いついて、花畑の中で蹲っているねこを見つけました。

それぞれ、太い木の棒や大きな石なんかを手にして、倒れているねこを囲みます。

 

化け物退治だ!と誰かが言って、それから、それから、棒で殴られ、石を叩きつけられ、お腹や背中、足、顔、所かまわず殴ったり蹴られたりしました。

ねこは、頭を手で覆って、体をなるべくぎゅっと丸めて耐えていました。

 

 

 

 

 

誰が言ったか分かりません。

 

そうだ、耳と尻尾をちぎろうぜ、化け物を倒した勲章としてみんなに見せようと聞こえ、震え上がりました。

 

誰かないふを持っていたよな、と。

 

考えを回す時間も与えてもらえません。

 

彼らにとってねこは、倒すべき化け物なのでしょう、もう止まりません。

耳を引っ張られて、ないふを押し当てられたことで白い髪の毛がぱらぱらと少し切れました。

 

ねこはここに居ます、のが、あぁ、ねこは、もう居ることができないのかなぁ。

どうしよう。どうしてしまうのが、彼らをどうするのが正解なのでしょう。

血まみれのねこを囲って、みんなは笑っています。

みんなは"嗤って"います。

 

 

 




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本小説、およびイラストはCC BY-SA 3.0ライセンスの内容に従い公開させていただいております。

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SCP-040-JP - 『ねこですよろしくおねがいします』
by Ikr_4185
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