ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。   作:ねえ、おなまえは?

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スクラントン現実錨の[反転]使用なんてきっと無いけれど、反転させたかったのです。レッド・リアリティーはお気に入りのお話の1つです。


6話 異常性の使用を確認しました

 

もう駄目だ、と思ったその時、この異常な状況の花畑に、突然、呆れた様な、怒った様な声が響きました。

 

「あのさぁ。君たちさっきからぎゃーぎゃー騒いでいて煩いんだけれど。僕と彼女が過ごす大切な時間をそんな雑音で邪魔しようなんて、まったく、人様のことも考えられない非常識な人間なんだね、君たちは。それって僕らの、僕らに与えられた自由に過ごすという最低限の権利すら奪う行為だってこと分からないかなぁ?あぁ、分かるはずもないか、そんな事をやっている位の知能しかないんだからね。で?君たちが囲んでいる彼女が何をしたって言うんだ?僕らには、君たちから彼女が必死で逃げてきて、一方的に暴力を振るわれている様にしか見えないんだけれど。反撃すらしないで、されるがままになっているじゃないか。彼女は何か悪い事をしたのかい?盗みや、暴力や、誰かを殺したりでもしたのかなぁ。……はぁ?分からない?分からないでそんな事を平然とやってのけるなんて頭がどうにかしているとしか思えないよ。何?化け物だから退治する必要がある?耳や尻尾があるから化け物で、人間以下の生き物だって?くだらない。亜人差別までして、馬鹿らしい、英雄気取りかなぁ、勘違いも甚だしいね。彼女が化け物だって言うなら、無抵抗の彼女に暴行を加えるお前らは人間未満でしかないよ。そうやって常に誰かを見下して、相対的に自分を高く持ち上げないと生きていけない哀れな存在って訳だ、かわいそうにね」

 

かわいらしくて、その中にも芯のある凛とした声も続きます。

 

「レグルスの言う通りよ、その人が何をしたって言うの?寄ってたかって、自分たちがしていることがどれだけ酷い事なんだと思わないの?血が沢山出ていて、とても…とても酷い怪我よ。あなたたちは自分のした事の重さを分かっていないのよ、何もしていない人を殺してしまう所だったのよ、そんなこと、絶対に赦されないわ」

 

 

流れた血が目に入って、赤く滲んだ視界でねこは声のした方向を見つめました。

ねこを殺そうとしていた子供たちと同じくらいの年齢の、男の子と女の子が居ました。

 

はぁ?とか、うるさいな、とか、関係ないだろ、と低俗な反応が返ってきます。

 

 

 

隙が生まれました。

考えられる時間が生まれました。

 

誰も怪我をしない、平和な方法を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、よろしくお願いします。

 

 

"記憶処理Aくらす、一般型健忘"

 

"すくらんとん現実錨の[反転]使用"

 

 

小さく呟きました。

 

ねこの近くに財団のろごまーくが現れてくるりと回ります。

 

ねこと子供たちを囲う様に地面に小さな錨がとす、とす、とす、とす、っと現れます。

 

そしてこんな所に彼らが居るはずがない、村に居るはずだ、と強く強く思います。

突然ねこを囲んでいた子供たちが、今まで何をしていたのか分からない様子で棒切れや、石を手からどさ、どさ、と落として立ち尽くしました。そして、1人ずつ、すっと、瞬きをする間に消えていきました。多分、村へ帰れているはずです。

 

 

ねこが何をしたかと言いますと、子供たちに隙が生まれた為、ここまでの記憶をなくす"処理"をかけました。

 

記憶処理はかける"らんく"にもよりますが、Aくらすの記憶処理にはまとまった時間が必要だったので、2人が喋っていてくれて、本当に助かりました。

 

そして、すくらんとん現実錨という、本来現実性を高く保てる錨、つまり現実にはありえない事が"起こらない状況"を作り出す錨の作用を[反転]させ、ひゅーむ値という、まぁ、ざっくり言うと"現実性の強度"を下げて、"ありえない事が起こりやすくなる"状況をわざと作り出しました。

 

このひゅーむ値が下がっている状態だと、強く念じた統一意識によって現実が改変されます。

ねこが強く強くこの子供たちはここには居ない、村に居ると思い込んだので、子供たちはここから消えて、村に居るという"ありえない状態"を作り出したのです、とても頭を使って考えました、ねこはやればできる子です。

 

これで、あの子たちは、自分たちが今日何をやっていたのかなんて気にも留めなくなります。

 

 

でも、きっとねこの記憶処理は完璧ではないでしょう、ねこの事を、化け物の事を人生からすっかり消し去る事は出来ません。

 

また次の日に集まって"初めて"化け物退治に小屋に来る可能性は大いにありえます。

 

ねこは、この数十年間、色々な覚えている限りのSCPを使用して、その仕様を学びました。ねこが、本当のねこではない、きちんとよろしくお願いできないねこだからなのか、は分かりませんが、ねこが生前覚えていた内容と違っている事が多かったです。

同じ様に振る舞うものもありましたが、基本的には効果の減衰がみられました。

効果がまるっきり逆になっている物もありました。仕方がありません。

 

 

何年も、何十年も経ったのに、まだ話は語り紡がれてしまっていたのですね。

 

あのぼろぼろの小屋、あの古い井戸、ねこのお家にはもう戻れないです、悲しいですが命の為です。

 

 

 

とにかくあの2人にお礼を言わなければなりません。

きっと彼らは、ねこが叩かれたり蹴られたりするのを見て、怖かったと思います、でも、ねこを助ける為に、その身を危険に晒してまで出て来てくれたのです。

 

ねこは助けていただいた恩を忘れないのです。

 

 

 

はっ、はっ、と短い息をしながら痛みに耐えて、体を花畑からようやく起こします。

けほりと血の泡を吐き出して、駆け寄って来た2人に向かって、ねこは、ねこですよろしくお願いします。と言いました。

 

2人はぼろぼろのねこを見て、酷く悲しい顔をしました、実際ねこは酷い有様でした。

白い髪や服には石で殴りつけられた時にできた裂傷から飛び散った血が、白い手足には棒で殴られたり、蹴られたりした時にできたあざが沢山できていました。

顔も踏みつけられて、口の中を切って、口の端から血がたらたらと、下に咲く美しい花に垂れています。

 

 

ねこは言いました。

ねこを助けてくれてありがとうございます、ねこに彼らを傷付けさせないでくれてありがとうございますとふらふらと揺れる頭を下げてお礼を伝えました。

 

 

何か手当するものを、と駆け出そうとする彼女を、ねこは、大丈夫です、と制しました。

 

"私"だった頃の"現実改変"の力を借ります、よろしくお願いします。

ろごまーくがぎゅるんとまわって、下に看板が追加されます。

"SCP-650-JP"

人でなし、でく人形。

 

血の味がする口で小さく言います。

 

ねこの体は、"私"の現実改変能力によって、みるみるうちにあざが引き、切れて血が流れていた部分の血が止まりました。

 

ねこはねこになりましたから、もう"私"ではありません。昔の様に、腕がちぎれても元に戻るでしょうが、時間がかかると思います。

借り物なので、上手く扱えず、完全には使わせてもらえません。

仕方がない事です、それでも本当にありがたいものです。

とりあえず傷は残っていますが血は止まりました。

 

2人は急に状態が良くなったねこを見て驚いていました。それは、そうでしょう。

 

 

 

「あなた、回復魔法が使えるの?」

彼女が聞きます。

 

 

 

 

回復魔法、まほ…え……魔法?

 

この世界には魔法があるのでしょうか?ねこは初耳でした。

そのまま、聞き返します。

 

「すみません、ねこは、この世界の事をよく分かっていない様です、魔法が、あるのですか?」

2人はさらに驚いた顔になりました。

小さな子供でも知っている、ごく当たり前の事を知らない、という顔でした。

 

「魔法を知らないのか?」

 

はい、化け物と言われていたので、ずっとずっと、何十年か分かりませんが、ねこは小屋に居ました。ので、今初めて知りました、と言うと悲しみとも憐憫ともとれる表情をされました。

 

2人がそんな表情をする必要はありませんよ、ねこは、ねこの知らない事が沢山あると分かって嬉しいです。

 

さぁ、夕暮れです、良い子はお家に帰る時間です。

ねこの事など忘れて、お家に帰ってください、必要なら、嫌な思いをさせた記憶を消す事も出来ます、と伝えると、お前、帰る場所はあるのか?とぶっきらぼうに、でも優しさを含んだ様な声で、聞かれました。

 

お家は、その、言っていた小屋には戻れないのでしょう?と心配までしてくれました。

ねこは、ここまで優しくされた事は初めてで、こそばゆい気持ちになりました。

 

 

ねこは言います。

大丈夫です。ねこはここに居ます。

お花が綺麗で、星がきっと美しく見える所なんて素敵ですから、だから、ねこはここに居ます。

 

最後まで心配してくれた2人を見送って、花に囲まれて、久しぶりに体を伸ばして眠りにつきました。

 

 

 




クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス

本小説、およびイラストはCC BY-SA 3.0ライセンスの内容に従い公開させていただいております。

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SCP-650-JP『人でなし、でく人形』
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SCP-3000 - Anantashesha『アナンタシェーシャ』
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