ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。 作:ねえ、おなまえは?
朝です。
鳥の囀りと、眩しい太陽の光と、花のいい香りの中で目が覚めました。
ここ数十年で、いや、前世も含めてこんなにいい目覚めは初めてでした。
この村から、逃げ出さなくちゃいけないな、と思いました。
あの優しい2人は絶対に誰にも言わないと言ってくれましたが、どこでねこが、ねこになって、小屋の外に出ている事がばれてしまうか分かりません。
それに、小屋にねこが居ないと分かったら、昔に"私"を小屋に閉じ込めた大人の人たちは探し出して、そして殺されてしまうでしょう。
傷はすっかりかさぶたになって、剥がれかけていました。
これなら、あとは残らないだろうな、と思いました。
体の痛みもだいぶましになりました。"私"には感謝してもしきれません。
さて、どうしようかなぁ、ねこは殆ど喋られません。
どこまで異常性が変容してしまっているのか分からないので、もしかしたらねこと話続けたり、ねこの目を見続けたりしたら"ねこが居る"という認識災害が起きる可能性だってあります。
昨日は、喋りすぎてしまいました、反省するねこです、あの優しい2人が平和に生きていければいいなと思いました、よろしくお願いします。
きっとみーむ汚染を解除すれば、小屋の中を見た人の、瞳の中に、頭の中に、友達付き合いの中に、ねこのことを好きな人の頭の中に、ねこのことを嫌いな人の頭の中に、ねこは居て、ねこの思考が伝播することでしょう。それは、気が触れてしまうという事でもあるでしょう。先も考えた通り、もしかしたら小屋だけで無くねこを見た人にも異常性が現れてしまうかも知れません。
でも、そうする必要は無いでしょう。
省えね、です。
自己紹介と、お礼はきちんと伝えられる事さえ出来ればよかったのです。
だから、名前とか、はい、とか、いいえ、とか、それくらいしか喋られなくてもいい様な職があればいいなぁ、と思いました。
そろそろ動くかぁ、と風に舞う花びらを目で追っている時、昨日聴いた声がしました。
「あ、ほら、レグルス、ねこちゃん居たよ!無事みたいだよ、安心したぁ」
ねこは思わずそちらを見つめます。
ねこをあの2人が見つめています。
ねこの事など、忘れて暮らして欲しかったのに、どうして来てしまったのでしょう。
2人は包帯や、消毒用の液体を持って来てくれたのです。
優しさに、無表情のままぽろりと泣きました。
かさぶたになっている所に薬を塗ってくれて、包帯を巻いてくれました。
改めてお礼を言いました。
この2人には、ねこにしてあげられる事はなんでもしてあげたいな、と思いました。
男の子は、れぐるすというそうです、隣の女の子は彼の幼馴染なんだと教えてくれました。
この花畑は2人の秘密の場所なのだそうです。
確かに、かなり深い森の中にあるので、知らなければ辿り着く事は難しいでしょう。
ねこは、ねこの事など忘れて、と言いました、と呟きます。
「僕と彼女は、血まみれの怪我人を放っておく様な非道な人間じゃ無いんだ。だから、忘れて、なんて言われて、はいそうですか、ってそのままにできる神経なんて持っていない。これは僕たちがやりたくてやっている事なのだから、君はそれを甘んじて受け入れる義務があるし、僕たちには君の様子を見に来る権利がある。それを拒否するなんて、それすらも否定するなら、それは僕たちの心配から、善意からくる行動を、思考を制限して、これから生活していく上で君が生きているか死んでしまっていないかと無駄に心を砕く機会があるかもしれないし、思い遣る気持ちを踏み躙る非情な事だ。ありえない、権利の侵害だ。そもそも、ここは僕たちの秘密の場所なんだ。だから、そこに勝手に居座っている君は、僕たちの言い分を少しはのむっていう、歩み寄るっていう、譲歩する姿勢をみせる義務があるんじゃないかなぁ?」
なるほど、確かに2人の場所を勝手にお借りして、忘れてだの、来ちゃいけないだの、言うのは失礼な行為ですね。
ねこは反省しました。
はい、分かりました、ごめんなさい、とねこが頭を下げると、分かればいいんだよ、分かれば。とぶっきらぼうに言う彼と、彼、少し強い言い方だけれど、あなたのこと、とっても気にしていたのよ、幼馴染の子が笑いました。
れぐるすから、何でやり返さなかったのか、と聞かれました。
「勿論、ねこにだって、やり返せる力はありますよ。のが、ねこはやりません」
このねこの、ねこたちの力は無闇矢鱈に使うと痛い目に遭います。
理不尽なものもありますから、調整が必要です。
だけれど、ねこは決めました。ねこの、ねこたちの力は、ねこを助けてくれた、化け物ではなく、ねこのままで居させてくれた、2人の為に使おうと。
「ねこは助けてもらった恩を忘れないのです、この力は2人の為に使います」
ねこは、秘密の場所に居ます。秘密の場所を貸してもらう代わりに、色々なねこの仲間を紹介しました。
もちろん安全な物ばかりです。
ねこは殆ど喋りません。が、2人はねこが見せる様々な異常性を不思議がって、喜んでくれました。
お皿とふぉーくを持ってきてもらっておやつにしましょう、と言い、ろごまーくが回ります。
"SCP-871"景気のいいけーきです。
甘いけーきを食べました。
異常性が変質したそれはそれぞれの好みに合いそうな味が反映されます。
れぐるすは、ほわいとちょこれーとにこーてぃんぐされた、なっつと金箔が飾られていて内側がちょこれーとすぽんじのけーき、彼女は、外側がべりーのむーすと、内側がばにらびーんず入りの2層のくりーむのけーきでした。
ねこは、しょーとけーきを食べました。
見たことがない様な材料が使われているお菓子を、分け合って、おいしいね、とにこにこと食べる2人を見て、ねこは幸せな気持ちになりました。
ねこは食事を取らなくても生きていけます。でも、2人に一緒に食べたいと言われたので、食べました。
分けっこするのは、心がぽかぽかしました。この世界に無い物でも、2人が知らない様な物でもSCPは勝手に作ります。だってSCPですから。
けーきは、きちんと食べ切ったので、増えません。安心です。
それから、別の日には好きな飲み物を出してあげました。
"SCP-294"こーひー自動販売機です。液体ならなんでも出せます。
流石に自動販売機自体は出現しません、お金を入れる必要がなくなった代わりに、日に5度までしか使えない制限がかけられています。
2人は、空のこっぷの底から湧いてくる果物のじゅーすを不思議そうに見つめて飲んで、ねこは、蜂蜜入りのほっとみるくを飲みました。
酷く懐かしい味がしました。
ある時は、幼馴染の子の大切な小物入れが壊れてしまったのだと悲しい顔をしていたので、ねこはそれを持って来てもらいました。
そうして、"SCP-914"ぜんまい仕掛けで、壊れてしまったという彼女の、かわいい細工がされた木でできた小物入れを直してあげたりもしました。
本当は、分解したり、とても良くしたりできますが、ねこにできるのは1:1、つまり等価交換だけです。
それでも、彼女は直った小物入れを大切そうに抱えて、ねこちゃん、ありがとうねぇとねこの頭を撫でてくれました。
いつからか分かりませんが、2人はねこの事を、体は大人だけれど、精神は子供のままだと錯覚しているんじゃないかな、と思います。
たしかに、ぼんやりしていますが、ねこは大人のねこです。ので、頭や耳を撫でられたりしても、全然、ちっとも、これっぽっちも、ちょっぴりも、何とも思いません。
……嘘です、ねこは嘘をつきました、ごめんなさい。
れぐるすは、わしゃわしゃと荒い手つきで撫でます。もっと優しく撫でて欲しいです。彼女みたいに。彼女はいい子、いい子、と言いながらねこを撫でます。
ねこは撫でられると、嬉しいと、寂しいと、ごちゃ混ぜになった気分になります。父と母を思い出すからかもしれません。
悪い気はしないので、大人のねこは、2人に撫でさせてあげるのです。
また別の日には、夕方になって暗くなってきたので、木と灯りを組み合わせてできている惑星たちを、銀河系を、見せてあげたりもしました。
"SCP-100"屋根裏部屋の宇宙です。頭上に広がるその光景に、2人は呆気にとられていました。土星や太陽なんかは分かりやすくていいですね、あちらの世界とは隔絶されているので壊れてしまっても影響はないでしょう。
特に2人が気に入ってくれたのは、花と雨でした。この2つはねこも大好きです。
"SCP-3000-JP-EX"60000年後、に出てくる、"ゔぃとらんしあ"という魔法の言葉を唱えると、ねもふぃらに似ている花を沢山咲かせる事が出来るのです。
ねこ以外の人は、この花に触れると幻想的な夢を見る事が出来るので、3人で川の字になって、2人に腕枕をしてあげながら幸せで幻想的な夢を見せてあげる事が、ねこにとっても幸せでした。
夢の内容を嬉々として教えてくれる姿は、子供らしくてかわいらしかったです。
急な夕立が降った時に、そうだ、と思い立って"SCP-548"歌う雨音を使用してみた事があります。
これは本来びにーる傘のおぶじぇくとなのですが、びにーる傘ではなく、包み込む様な透明なおーろらの様な"べーる"として現れた事にはねこも驚きました。
でも、3人で傘に入るには狭すぎるので、ちょうどよかったなぁとねこは思います。べーるに当たった雨音がぴあのの演奏音に変わる特性は変わらず、しょぱんの、別れの曲がゆったりと聴こえる神秘的な空間でした。
3人でぱちぱちと拍手しました。
どれ位かは分かりませんが、2人との交流は暫く続きました。
ねこの時間の感覚は普通とは違うので、何年も経ったのかもしれません。
2人は毎日ではありませんが、よくねこの所へ来てくれました。
段々ねこの身長に近づいてきて、大人になったのだなぁ、と思いました。
れぐるすはねこよりちょっぴり小さくて、不貞腐れて縮め!と強く撫でられるねこをみて幼馴染のあの子はくすくすと小さく笑っていました。
ここから居なくなるまでの間の、もうほんの少し、もう少しだけ、と言い聞かせながら過ごす、幸せな時間でした。
ねこには、もったいないくらいの、幸せな時間でした。
ねこが村人に見つかるまでは。
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