ここだけレグルスがねこと一緒にいて幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線です。よろしくおねがいします。   作:ねえ、おなまえは?

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よろしくおねがいします。


9話 回し蹴りと救いとみーむ汚染と

 

ねこです。

みなさん、お元気ですか?

 

ねこはあの後、大きな国の、それはそれは大きなお屋敷に売られました。

 

ご主人様は、ねこを見て、一目で気に入った様子で行商人の人にお金を沢山払っていました。

ねこは、その後、使用人として雇うと言われ、他の使用人の人たちにあっという間に見ぐるみを剥がされてお風呂に入れられて、ぴかぴかになりました。

前世ぶりのお風呂は、とても気持ちが良かったです。

 

めいど服に着替えさせられて、先輩の使用人の人に1から教えるので、よく聴く様に。と言われました。

 

ねこは、ほとんど喋りませんが、返事はちゃんとします。

はい、よろしくお願いしますというと満足そうに仕事の内容を、とてつもない量の仕事の内容を次から次へとねこに伝えました。

 

ねこは混乱しながらも、持ち前の記憶力で頭に叩き込みました。

 

仕事の事だけではありません、作法や、仕草まで気を配らなくてはいけない、客人をもてなす料理も出来なくてはいけない、ご主人様の仕事のお手伝いや、ご機嫌とりも使用人の仕事だそうです、ねこは前世で料理を作るのが好きだったので、また料理ができるのは嬉しいなぁと思いました。

 

前世の社会人だった頃の記憶も相まって、ねこは教えていただいた次の日には殆ど全ての仕事をそつなくこなす事が出来ました。

効率化を図って、仕事をする順序を考えて、ちょこちょこと動き回って働きました。

 

はい、ご主人様だとか、かしこまりました、だとか、短い言葉だけで過ごせるのも快適でよかったです。

 

ご主人様はねこの働きぶりをみて、さらにねこを気に入ってくれていた様です。

様です、というのも、ねこは直接言われた訳ではないので実際は分かりません。

ただ、来客時などに、相手にこれくしょんを見せつける様にねこを側に控えさせる事が多かったのは事実でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ある日から突然先輩の人たちから酷い事をされる様になりました。

所謂、いじめ、いびりというやつです。

 

屋敷に来た時にはとてもみすぼらしくて、村から来た何の教養も無さそうな亜人が、教えた次の日には仕事をそつなくこなして、ご主人様に気に入られているとなると、彼女たちの心は荒れたのでしょう。

 

人間とはいつの時代も難儀なものです。

 

 

ねこの制服がずたずたにされている事がありました。

綺麗に整えたはずのべっどがめちゃくちゃにあらされている事がありました。

干していた洗濯物を全部地面に落とされている事がありました。

すれ違う時にわざと足をかけられる事がありました。

陰口をわざと聞こえる様に言われる事がありました。

ねこの作った料理にごみを混ぜられる事がありました。

あつあつのお湯を手を滑らせたと言ってかけられる事がありました。

床の掃除中に生ごみを頭の上からかけられる事がありました。

ご主人様の仕事に使う大切な書類にわざと紅茶をこぼされる事がありました。

 

 

まぁ、大変、がんばってねぇ、くすくす、と嗤います。

 

皆んなはねこを"嗤い"ました。

 

 

 

 

 

 

はー、ねこは呆れました。幼稚です。

社会人舐めるんじゃねぇぞ、と思いました。

 

 

やられたらそれ以上に働けば挽回できます。

足を引っ掛けられて転ぼうと、火傷をしようと"私"が居る限り次の日には治っています。

大切な書類は必ず不慮の事態に備えて予備を用意しておく物です。

 

ねこは、いじめられても気にせず働き続けました。

 

 

 

随分長く働いたと思います。

 

季節が何度も変わりました。

ある日、ご主人様からの伝言です、夜部屋に来る様に、と使用人の人に伝えられました。伝えた使用人の人の顔は、ざまぁみろと言わんばかりに酷く歪んだ笑顔をしていました。

いや、何事でしょう、またいじわるでしょうか。

 

 

ねこはきちんと身支度を整えて、旦那様のお部屋をのっくして、入りました。

お話しがあるのでしょうか。

そんなことを呑気に考えるねこは、馬鹿でした。

 

 

大馬鹿者でした。

 

 

こっちにおいで、とご主人様は言います。

 

ねこは、はっきり申しますと、ご主人様が苦手です。

香水は臭いですし、不養生で丸々と肥えた体も、甘ったるい声も苦手です。

仕方がなく、近くに寄り、用件を伺いますと言いました。

 

 

一刻も早く部屋に帰って寝たかったです。

 

ねこは寝る子です。寝る子はねこですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐいっと腕を引かれて、ご主人様の方へと、べっどに倒れ込みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……は?

 

お前は本当にかわいいなぁ、精巧に作られた人形のようだ、と頭を撫でて言います。

 

触るな。

止めろ。

撫でるな。

 

れぐるすたちとの大切な思い出が穢されるだろうが。

 

他の奴らはまあまあだったが、お前はどうだろうね、と言いながらねこの制服に手をかけてきて、力ずくで肩口から胸の辺りまで引き裂きました。

 

 

ねこはようやく理解しました。

 

 

この下衆がこれからやる事、これまで他の人たちにやってきた事、伝言を伝えた使用人の人の、あの顔の意味を。

 

瞬間的な、防衛反応でした。

 

覆い被さろうとする下衆に、ねこらしく体を捻り両足を斜めに折って腹を思い切り蹴り飛ばします。

べっどからよろよろとさがって、痛みに呻きながらうつむいたその顎に綺麗に回し蹴りを繰り出します。

 

 

ねこはお前によろしくお願いしません。くそが。

 

わあわあ喚いている声を後ろに、ねこはどあから飛び出して、廊下を全力疾走します。

使用人の服は走りづらい。片手で、すかーとをたくし上げて、もう片手で胸の所の制服を押さえて、走り続けます。

 

 

駆け抜けるねこを見た使用人の人たちが目を丸くしてねこを見ます。

ねこはお前たちなんて見ません。

 

背後からおい!そいつを捕まえろとか何とか聞こえます。

箒で足をかけようとしたり、掴みかかろうとする使用人の人たちをひらりひらりと避けて、ぜぇぜぇ言いながら階段を何段も飛ばして降りて、玄関から外に出ます。

 

外の空気は少し冷たくて、ひゅう、ひゅうと沢山呼吸をしているので、肺が痛いです。

 

 

お屋敷の前の広場まで出て、転んで、そこで、ねこの、体力は、ついに尽きてしまいました。

 

ねこは、捕まったら、きっともっともっともっと酷い目に遭うなと思っても、もう、1歩も動けないです。

お屋敷から使用人の人たちと、くずが出てきて、ねこをお屋敷に戻そうと掴み掛かろうとした、その時でした。

 

 

ずどん!!!!と、とてつもない振動とともに衝撃波がぶわりと押し寄せてきます。

 

きゃあ、と使用人の人たちが叫んでいます。

衝撃は一度だけでなく、次から次に続きます。

 

見ると、城壁まですっぱり切れ目が入っています。

建物は次々に倒壊していって、火の手があがっている所もあります。

沢山の人の悲鳴が聞こえます。

 

ねこは、戦争が始まったのだと思いました。

 

国が攻撃されている、攻め込まれているという事は、きっとそういう事です。

音と衝撃はどんどん国の中枢、つまりこちら側へ向かって来ています。

 

空が煙に包まれてけむいです。

 

お屋敷のすぐ近くのお店やお家がまるで紙切れを切る様に切断されて、崩れた家の大きな破片が、こちらへ走って逃げてきた家族を潰して、道に赤が、花咲く様にどぱっと散りました。

ごうごうと燃えている人が、ぎゃあああぁああとしゃがれた声をあげてめちゃくちゃに暴れる地獄の様な様子も見えます。

 

ねこは、ひゅー、ひゅー、とまだ整わない荒い呼吸を繰り返して、揺れる地面に倒れ込んだまま、こんな事になるなら、体力をもっとつけておくべきだったな、と後悔しました。

 

 

 

もうだめだなぁ、何とかしなくては、と思ったねこの頭上で、聴き馴染みのある、大好きな、大切な人の声がしました。

 

 

 

「ねこちゃん居た!!レグルス、ねこちゃん居たよ!!!」

 

 

 

ふるり、と耳が揺れます。

 

あぁ、ねこは、ついに度重なるすとれすで、幻聴が聴こえる様になったのかと思いました。

幼馴染のあの子の声がこんな所で、こんな状況で、聴こえるはずがありません。

 

ありえませんから。

 

 

 

でも、幻聴であったとしても、あのかわいい声を久しぶりに聴く事ができて幸せだな、と目を瞑りました。

 

ねこは、あなたたちを、あなたたちと過ごした日々を忘れた事など1日たりともありませんでしたよ。

 

 

 

「あのさぁ。君って、いつもそうやって倒れているよね、まぁ?今回は死にかけている訳じゃ無さそうだし少し安心したよ。君が売られてしまった場所が国の1番大きい屋敷って情報があって良かったよ、でなきゃ探すのにもっと無駄な時間が掛かっていただろうし。僕は平和主義者だから、争いなんて起こさずに国に入りたかっただけなのに関所で働いている奴らだとか、治安維持の奴らだとか、そういう奴らは人をすぐ国に背く謀反者だの何だのと決めつけて手を出してくるのかなぁ?だから仕方なく、本当に仕方なく僕らの命を守る為の正当防衛っていう権利を行使しなくちゃいけなくなったじゃないか。まぁ、僕らの村の事なんて何にも考えないで私利私欲を尽くす町の、国の、馬鹿どもに、自分たちが行ってきた事の、見ないふりをしてきた事の制裁を加えるつもりで、ここも落としに来たからあながち間違いって訳じゃないけれどね。

あぁ、それで?その後ろの奴が"ご主人様"って訳か。私服を肥やして過ごしている事が一目見ただけで分かる、欲に塗れている不快な人間だね。とても不愉快だ。無欲で、満たされていて、完璧で、完全な僕には分からないよ。

理解すらしたくないね。

……って、はぁ!?おい、なんで彼女の服がそんな風になっているんだ、お前が彼女にこんな事をしたのか!?

何て、何て、酷い!どうしてそんな酷い事が出来るんだ、お前は最低だ、下賤で、卑しい、唾棄すべき、生きる必要も価値もない人間だ。人間と呼ぶ事すら憚られる!

彼女の気持ちをこれっぽっちも考えていない、尊厳を、心と体の純潔を踏み躙る下劣で、不徳義で不道徳極まりないクソみたいな人間だ!

この状況、おおかた、お前が無理矢理彼女に暴力を加えようとして逃げ出した彼女を取り押さえに来たって所かなぁ!赦されない行為だ。万死に値するよ!」

 

 

 

れぐるす……?

とても怒ったれぐるすの声もします。

 

そこでようやくねこは、声のする方、つまり自分の斜め前の頭上を見つめました。

 

そこには、れぐるすと幼馴染のあの子が空中に立って、こちらを見下ろしていました。

 

 

 

2人とも居る、本物だ、と口から溢れでます。

 

れぐるすたちは、国を落としに来た?ねこを探してくれていた、それはとても嬉しいことです、でも、何で2人は浮いているのでしょう、浮いているというか、空を踏み締めている、という方が正しそうですが、とにかく、ねこは混乱しました。

 

 

 

 

背後に居たくずが焦った様に口を開きます。

 

 

「ち、違う、これは、こいつが勝手にやった事だ!俺は何もしていない、していないぞ!!そ、それより俺を見逃してはくれないか?金か?宝石か?土地だってある、何でも差し出すから、命だけは、助けてくれ!!!」

 

 

 

 

「…はぁ。あのさぁ。彼女が自分で自分の服をわざわざ裂いて逃げ出す理由なんて、まったく無いよねぇ?もしそうだったとしたら、何でお前は、お前らの周りに居る使用人たちは彼女を取り押さえようとしていたのかなぁ?頭の出来が違いすぎて話にならないよ。それに、僕の話、聴いていなかったの?お前には僕の話を聴く義務があるはずなのに。命乞いなんてして、見苦しいなぁ、吐き気を催すよ。見逃す?そんな事する訳無いだろう、ちょっと考えたら分かる事だよ、それって思考を放棄して助けてくださいって僕たちに縋り付くことで、僕たちがまるで加害者かのように責任を擦りつけて心理的な不快感を味合わせている、重篤な権利の侵害だって分からないのかなぁ!?」

 

 

怯えた声が、沢山背後からあがります。

 

れぐるすたちは、嫌な思いをしています。

くずのせいで。

 

くずたちのせいで。

 

 

 

 

「あれは、お前の知り合いなんだろ!?お前が説得しろ!俺を助けろ!ここまでしてやった恩を忘れたとは言わせないぞ!!!」

 

 

くずがねこの肩を後ろから掴んで、盾のように身を隠しながら、がくがくと大きく揺らしてきます。

使用人の人たちも、ねこの側に居れば殺されないと思ったのか、我先にとねこの近くに寄ってぎゅうぎゅうと押してきます。

 

 

 

 

うるさい、なぁ。

 

 

 

ねこが、れぐるすたちの、邪魔になっている事は明らかでした。

 

きっとねこがくずたちの前に居るから、攻撃しないでいてくれているのでしょう。優しい所も、変わっていないのですね。

 

 

  

 

 

 

ねこは、ねこたちの力は、2人の為に使うと決めたのです。

 

 

ので、ねこはみーむ災害を起こしますから。

とくと味わうがいいです。

 

 

 

変容を遂げた"それ"は対象を選んで異常性を発現できます。

小屋を覗かずとも、ねこが見れば、ねこを見れば、ねこが居れば、ねこが居る事を認知すれば、ねこの事を少しでも知っていれば。

 

お前たちは。

 

 

 

 

 

 

 

 

"ねこですよろしくおねがいします"

 

 

ねこがそう小さく鳴くと、ほら、阿鼻叫喚です。

 

いやぁあぁああああねこが!ねこが見ている!居る、ねこが居る、わたしがねこが居る、居るねこがわたし、俺がねこをみている、みるなみるな、ねこねこねこねこねこねこねこがみてるいるいるみてるみてるみてるそこにいるいるいるいるいるいる!!!!!

頭を抱えて悶えています。

ねこの側を離れて、蹲ったり、頭を抱えたり、地面に頭を打ちつけたりしている人たちからそっと距離をとって、れぐるすたちの方へよろよろと歩きます。

 

 

れぐるすが、すっと腕を横に薙ぐとみんなの頭と体はおさらばしました。

 

光を無くした目でこちらを見つめる沢山の目を、ねこも見つめ返します。

何にも思いません。

 

なぁんだ。ねこも、ずいぶんSCPらしくなってきたじゃないですか。

 

 

2人が空中から階段を降りる様に降りてきて、彼女が服がずたぼろになったねこを泣きながら抱きしめてくれて、レグルスは頭をわしゃわしゃと撫でてくれました。

 

ねこは、もう2人とは会えないのだと思っていました、2人には随分心配をかけてしまいましたから、申し訳なくなりました。

ので、ごめんなさい、と言うと、そこはごめんなさいじゃなくて、ありがとう、で良いのよ、と言われ、ぽろぽろと泣きながら、鳴きながら、ありがとうと言いました。

 

 

 




ねこねこねこねこ!

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス

本小説、およびイラストはCC BY-SA 3.0ライセンスの内容に従い公開させていただいております。

SCP財団
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SCP-650-JP『人でなし、でく人形』
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SCP-040-JP 『ねこですよろしくおねがいします』
by Ikr_4185
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SCP-040-JP-J 『ねこですよろしくおねがいしません』
by snoj
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