俺のヒーローアカデミア 作:タタリ
吾輩は猫である。名前はタタリ。
しがない一匹の野良猫だ。家族もない、仲間もない。生来つるむのが苦手な性分だ。
だが、『友達』がいないわけじゃない。
「あ、出久! タタリきたよ!」
「毎日同じ時間に来るねぇ、タタリ。今日は魚だよ〜」
そして男は出久、女の方は母の引子だ。毎晩この部屋で飯にありつくのが俺の日課。
「タタリ〜、おいで〜」
ワキワキと近付いてくる引子から逃れるように俺は出久の膝へと逃げた。
「あらら〜、タタリは本当に出久が好きねぇ」
「まあ、僕とタタリの付き合いはもう5年になるし………」
5年。もうそんなに経つのか。時が立つと時間の流れが速く感じる。だがあの人のことは、出久にあった時のことは今でも鮮明に覚えている。
野良犬に喧嘩で負けた日だった。
既にボロボロだった小さい出久は犬に追われ噛まれ、引っかかれながら俺を抱えて必死に逃げた。信じられない量の涙を流しながら、怖いくせに俺を見捨てず。
ああ、因みに言っとくが、本来の俺なら野良犬の十匹や百匹一瞬で殺せたんだ。ただあの日は調子が悪かった。早い話、腹が減ってたんだ。
飢えに苛まれた俺はそのまま出久に噛みついたが、そんな俺に出久は飯を分けてくれた。
他人(猫)に施しを与えるほどだ、よほど裕福なやつかと思えばそのくせボロボロで、ついて行ってみりゃ他のガキにいじめられるほど弱っちくて、なのに何時も誰かの為に自分より強い相手の前に立つ。
借りを作ったままは嫌なので彼奴をいじめるクソガキ共を引っ掻いてやった。そしたら飯をくれるから、返した恩をまた返す羽目になる。そういう付き合いだ。
この世界は超人社会なんて言われて、人間誰しも『個性』と呼ばれる力を持つ。同年代の誰もが持つそれを出久は持ってなかった。
『個性』………超人社会と呼ばれる所以、人を超人に至らせる力。それを悪用する者は
オールマイトを筆頭に多くのヒーローの話を俺に聞かせてくれる。くれているんだ、嫌になってなんかない。うん、ためになるためになる。本当だぞ? 俺が出久の話を嫌がるわけがないだろ。
兎に角出久はヒーローに憧れている。強さにじゃない、沢山の人間を救える事にだ。弱いのに誰を守ろうとして結局守れない出久はそういう姿に憧れたのだろう。
程なくして、出久が殺された。
帰りが遅いと見に来たら、山林近くの資材置き場で血の海を作っていた。巨大な何かに貫かれたように体中穴だらけ。明らかに他殺だった。
何故?
誰からも恨まれるような奴じゃなかったろう。少なくともこんな風に殺される奴じゃ………。
途方もない喪失感で痺れた脳に、出久との思い出が蘇る。
『僕はヒーローになりたいんだ。無個性でも、泣いてる誰かを救えるヒーローに。タタリが僕の側に居てくれることがさ、それを肯定してくれているような気がして………』
死んだらどうやってヒーローになる。泣いてる誰かに手を差し伸べたいんじゃなかったのか。なあ、出久………未練だったろう。
ピチャピチャ………ペチャ……………ゴクン
俺は出久に化けた。
人間に化けたのなんて何十年ぶりか。これでも超常黎明期、最強の
封印から抜け出した頃にゃ時代は変わっていた。俺自身相当弱って、野良犬一匹に勝てない程だった。
出久…………誰がお前殺した。
「ははぁ………逃げるなよぉ!」
個性『棘』。全身から棘を生やす。棘を伸ばして移動や、突き刺し引き寄せる移動など使い道は多様。人体を容易く貫けるその力で人を突き刺すのが好き。そんな
「ごへぇ!?」
鋼鉄に迫る硬度の棘の鎧が切り裂かれた。意識が飛びかけ棘が消えた首を掴まれ追い掛けられていた女が気付く間もなく連れ去られる。
「う、ぐ………何が…………っ! 嘘、だろ?」
何が起きたのか分からず混乱していた
浮かぶ感情の色は
「生きてたのか!? あの傷で!? そういう個性か!」
「……………」
「ああ、まて。まてまてまて。頼む待ってくれ………今度は逃げないでくれよ? そもそも君から僕の前に立ったんだもんな。な? なんだっけ、手を出させない? そのくせヒィヒィ泣いて、すぐ逃げて。ああ、ああ………良かったよ。君、良かったなぁ………もう一度魅せてくれよ、肉を貫かれた、君の穴──ぁ?」
ブシュと喉から血が噴き出す。呼吸をする度に血が肺の中に吸い込まれ、吐けば赤い泡が泡立つ。
「ご、ぼ!? がぁ………」
ヒューヒューと荒い呼吸を繰り返し、命が溢れるかの如く血とともに体温が失われていく。
「汚い………お前の血なんざ一滴だって啜ってやるか。誰に看取られることもなく、一人寂しく死んでゆけ」
「えー、お前等も3年と言うことで!! 本格的に将来について考える時期だ! 今から進路希望のプリントを配るが皆! だいたいヒーロー科志望だよね!」
朝からうるせぇなあの教師。だがその言葉を肯定するかのように、生徒達が一斉に己の個性を見せびらかす。
「ウンウン皆いい個性だ! だが校内での個性使用は原則禁止な!」
「せんせぇ! 皆とか一緒くたにすんなよ! 俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんかに行かねーよ」
「そりゃねーだろカツキ!!」
隣でムカつくクソガキが周りを煽れば当然反感を買う。教室内で響くブーイング。敵意が1人に集まるもその1人は特に気にしていない。
「モブがモブらしくうっせー!」
「あー、確か爆豪は『雄英』志望だったな」
教師の言葉に視線が再び教師に向く。国立のヒーロー育成校。偏差値79、倍率だって他の高校と比較にもならない超難関。憧れこそすれど挑む者は憧れた数の半分以下であろうそこに挑む気はこのクラスの中にはいないのがその反応から解る。
「そのざわざわがモブたる所以! 模試じゃあA判定! 俺は
最後のは何で?
「あ、そういや緑谷も雄英志望だったな」
爆豪が固まり複数の視線が今度は俺に集まる。そしてゲラゲラ笑いに包まれた。だろうよ、無個性だもん。馬鹿にするよな。
「こらデク!」
と、机が爆破された。学校の備品……。
「没個性どころか無個性のてめぇがあ〜、なんで俺と同じ土俵に立てるんだぁ!?」
「………………
安心しろよ出久。お前の夢は俺が変わりに叶えてやる。誰もがお前の名を称え、緑谷出久の名前を最高のヒーローとして世界に刻んでやる。
「おいコラ聞いてんのかデクこらぁ!?」
だってお前は、俺を助けてくれた最高のヒーローなんだ。
タタリ
個性黎明期、人間以外で個性を発現した黒猫。
昔はブイブイ言わせてたが半世紀前にヒーローの集団と相打ち。ヒーローの中のひとりの個性『平面』(チームアップミッションに出てきた2次元の祖先)により封印されて妖怪と恐れられ祠に封じられていた。
個性『化ける』。生命力を別の物に化けさせたり、巨大化したり血を啜った相手に化けたり出来る個性を持った猫だ! 個性を持ったネズミとあったらどうなるんだろうね?