俺のヒーローアカデミア 作:タタリ
出久はヒーローが好きで新しいヒーローが出る度にノートに纏め、個性の扱い方を考えていた。
出久がいなくなってもヒーローは生まれる。ならそれを書き記して置くのも自分の役目、とノートをカバンにしまおうとするタタリ。そのノートに飛ばされた手からヒョイと奪う。
「ちっ!」
「何のようだよかっちゃん」
「………一線級のトップヒーローは大抵、学生時から逸話を残してる。俺はこの平凡な市立中学から! 初めて! 唯一の! 『雄英進学者』っつー箔をつけたいのさ。完璧主義者って奴」
みみっちい男だ。
「つー理由で一応さ、雄英受けるなクソナード君」
ポンと爆破する手をタタリの肩に置く。
「嫌に決まってんだろ、馬鹿かお前?
「ああ!?」
「お、おいカツキ! 流石にまずいって!」
一見粗野で凶暴で理性の欠片もない男に見える爆豪だが、その実直接暴力に訴えることは小学生の頃までだ。ヒーローを目指す男は内心を気にしている。
出久は今まで、それでも逆らえなかった。だが……
「はっ、小さぇな」
「!!」
タタリは別だ。心底見下した顔にカツキの友人達は狼狽えカツキは目を見開く。
「文句あんならよぉ、場所変えようぜ。教師に邪魔されたくねえだろ?」
橋の下。
「野生の獣は、不用意に他の獣の縄張りに近づかない。なんでか解るか? こうなるからだよ」
傷だらけで倒れる爆豪とその友人達。爪を使うまでもなく、ただただ純粋な身体能力で圧倒した。
「…………て、めぇ………誰だよ」
「あん?」
「クソナードが………デクが………んな目で、人を殴るわけねぇだろ! 何処のドイツだ、クソデクの真似しやがって!!」
「……………………あ〜、面倒くせえなお前」
コキリと首を鳴らすタタリ。まさかバレるとは。存外出久を良く見ているらしい。が、今回は邪魔なだけ。死体は食っちまえばいいか。と、その時………。
「Мサイズの隠れ蓑」
マンホールからドロリと現れたヘドロが倒れている爆豪へと覆いかぶさる。そのまま口内へと侵入し、爆豪の体が不自然に起き上がる。
「んぐ、おおおお!?」
「大丈夫。体を乗っ取るだけだから、暴れるなよぉ」
爆豪の抵抗をニタニタ笑いながら受け流すヘドロ。振るったヘドロで構成された腕が光り、爆発。
「ごおおお!?」
「はは! すげぇ個性、このままこのまま!!」
と、飛び出していくヘドロ爆豪。
「…………僥倖!」
あのまま抵抗を続けて殺されてくれれば幸い。そうでなくともあの個性で暴れに暴れて被害者でありながら世間に加害者扱いされるほどの誹りを受ければあの男の言葉などもう誰にも届くまい。
何より出久を虐めていた男が堕ちていく。これ程愉快な事はあるまい。助けてやる義理なんてありゃしねえ。
と、帰ろうとするタタリの前に現れる、出久の影。足が止まる。
「ぬぅん! これは、すでに学生が被害に!? そこの少年、ヘドロのような
目の前で苦しんでいる誰かを助けないのは、
虐げられていようが、逢って間もなかろうが、目の前で苦しんでいる誰かを見たら体が勝手に動いちまう。
『出久』はそういう男だ。
「ぐおお!? 駄目だ、近づけねえぞ!」
「このままじゃ人質になってる中学生が!」
流動的で掴めぬ体で強力は破壊力を持つ『爆破』の個性の少年を人質に暴れる
この状況を打破できる個性、或いは実力を持つヒーローが居ない。被害が広がらぬよう抑えるだけで精一杯だ。
「おいおい、ヒーロー大丈夫かよ………」
「これ保険だけで何とかなるかな〜」
そう呟く民衆の頭上を飛び越える影。そのまま瓦礫だらけの商店街を駆け抜ける。
「馬鹿野郎! 止まれ、止まれー!!」
ヒーローの静止する声を振り切る。尋常ならざる速度は速さだけでなく身軽さが大きく関係しているだろう。
(偽デク!?)
「なんだあ、あのガキ。ヒーロー気取りが、爆死だ!!」
腕が振るわれる。回避する。爆破が地面を破壊した。爪を振るうが流動的な体は当然斬撃を受け付けない。
「て、めぇ……なんで…………!」
「
相手は流動。物理的な攻撃は無意味。超パワーによる風圧で引き剥がすならできるかもしれないが、生憎出久の肉体を模倣しているタタリが出せる力には限度がある。ならば………
「黒猫奥技……」
ゴウ! と燃え上がる炎。精密に操作された炎はヘドロだけ焼き水分を蒸発させ乾かしていく。
「ひっ、
体積を減らしたヘドロから爆豪を奪い取ると乾き固まったヘドロを踏みつける。バラバラに散らばるヘドロ。
「は、はひ、ひぃ…………!」
流動の身体は乾いて形を変えることができずうぞうぞ動くだけ。後はヒーローが何とかするだろう。
「無個性………かなり遅い発現の、個性事故ねえ………」
いかなる理由があろうと個性の使用は違法だ。事実上黙認されているとは言え、
とは言え『緑谷出久』は無個性登録。これまで個性を使ったことが無いのは少し調べればすぐに分かること。
個性発現時の事故は意外と多い。
「………今回は問題ないけど、後日ちゃんと個性登録。それから今後は個性を暴発させないように注意してね」
「は〜い」
個性申告書と厳重注意も終わり警察署から外に出ると爆豪が居た。
「…………まだ何か?」
「デクは何処だ。てめぇは何で、デクの格好をしてやがる!!」
「………………」
誤魔化すのは、無理か。殺すのも出久みに反する。
「つーかなんで気付くかなぁ。散々嫌っといて………出久の事そんだけ知れんなら何で嫌うんだよありえねえだろ」
「おい!」
「…………………死んだよ」
「っ! てめぇ!!」
「俺じゃねえよ。俺が出久を殺すわけねぇだろ!!」
タタリの言葉に怒りを顕につかみかかろうとした爆豪は、しかしその言葉に足を止めた。
「…………彼奴は、何で死んだ」
「クソ
「…………馬鹿らしい」
此奴今出久を馬鹿にしたなぁ? やっぱ殺すか、と爪を伸ばしかけるタタリ。
「昔っから、自分を勘定に入れねえんだ彼奴は………ずっとそれが理解できなかった。気味が悪かった」
よし、殺す。殺すのはマズイからボコす。
「だけど、だから……俺より前に歩いてるんじゃねえかと思った。実際いいようにされてた俺と違って、一人は救えたわけだ」
「…………………」
「お前はなんでで………出久に化けた」
「……………彼奴の夢を叶えるため。出久の名前を誰もが知ってるヒーローにする為だ」
「……………………そうかよ。なら精々頑張るんだな。もう邪魔をしねぇ、見くださねえ…………それでも、俺はお前に勝つ。勝ち続ける」
カムイはチラリと出久の影を見る。その言葉に怒るどころから笑っているように見えた。
「んで、てめぇの名前はなんだ」
「タタリ………」
「デクの飼ってたクソ猫と同じ名前…………いや、まさかクソ猫?」
「そっちの名前で呼ぶなよ。面倒だからな」
「わーってるよ…………出久の墓は」
「山ん中。引子………母さんにはバラすなよ」
「ショックで死にかねねえからな、オバサン…………てめぇこそ、あの人利用すんなよ」
「しねえよ。出久みに反する」
「んだ出久みって………」
タタリと爆豪は別れて帰路につく。と、その時。
「やあ少年!」
「……………オールマイト?」
筋肉ムキムキマッチョマンが飛び出してきた。No.1ヒーローのオールマイトだ。
「さっきの、見せてもらったよ。かっこよかったぜヒーロー!」
「…………どうも」
「体が勝手に動いてた………多くの名を残すヒーローがそういうぜ」
「……………それで?」
「そんな君に、私は力を受け継いでほしい」
と、オールマイトの言葉に首を傾げるタタリ。力を受け継ぐ?
「緑谷出久こそ、私に次ぐ最高のヒーローになるべきだと私は思った」
「……………そう! そうなんだよ、自分より他人をまず優先するっていうか困ってるやつを見くてられないんだよ出久は! そこに人間も動物も関係ないだよ。人によっては偽善に映るかもしれねぇがそうじゃねえ! 一緒に住んでればわかるがあいつは他人の幸せを心から喜べる奴でヒーロー性ってのが誰よりもあって最高のヒーローになるべきで出久出久出久出久出久出久出久出久出久出久出久出久出久出久出久」
「み、緑谷少年は君だろう?」
「! ごめん、忘れてくれ………」
「ああ、うん。自分に自信があることはいいことさ!」