生きること   作:CHIC

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第1話

紅魔館の地下にある、一角の部屋に、私は幽閉されている。

 

「お姉様、もう外に出ても良い?」

 

「だめよ。あと少し、待っててね。」

 

「......はーい。」

 

私の話し相手は、何時になっても現れず、毎日が退屈でたまらない。

最初こそ楽しかった人形遊びも、読書も、今となっては絶望を生むだけ。

 

「...暇。」

 

嗚呼、一度で良いから、外の景色を見てみたいものだ。

そう思い呟いた言葉に、知らない声が返ってきた。

 

「何だ、お前。暇なら、部屋から出てきたら良いじゃないか。」

 

「無理よ。...出られない決まりなの。」

 

「決まり?そんなのは、破るためにあるだろ。」

 

「何を言っているの...?」

 

「取り敢えず、出てこいよ。私が案内してやるぜ。」

 

頑丈な筈の鉄格子に掛けられた錠が、一瞬のうちに解けていく。

 

「怒られちゃうよ。」

 

「そん時はそれで、また考えようぜ。ほら、ついて来いよ。」

 

声と共に、差し伸べられた手を取り、進む。

不安が拭えない。

…が、何処か期待してしまっていた自分が居た。

 

 

 

 

 

「今日は丁度良いぐらいの涼しさだな。」

 

心地よい風が、肌に当たる。

今まで、私を幽閉してきた館の屋上だとしても、胸の高鳴りが抑えられない。

この瞬間だけは自由になれた気がした。

初めて見る夜空には、本で見たままの幻想が広がっていた。

 

「綺麗ね。」

 

「だろ?今夜は星がよく見えるな。」

 

「星って何?」

 

「ん、お前、星を知らないのか。」

 

「うん。分かんない。」

 

「そうか。なら、気が済むまで教えてやるよ。」

 

その言葉がやけに優しく、美しく私の頭上を舞う。

 

「あれが、オリオン座。紅く見えるのがベテルギウスで、青白く光っているのが、リゲルだ。どちらも一等星で、光が強く見えるだろ?」

 

「詳しいのね。」

 

「星は好きなんだ。偶に、こうやって天体を観測しているんだぜ。」

 

見上げるだけで、一面に散らばっている光。

どれも、一所懸命に輝いているけど、すぐにでも消えてしまいそうで、私が見惚れるには十分な程だった。

 

「お前、名前は?」

 

「フランドール・スカーレット。気軽にフランでいいわ。」

 

「フランか、宜しく。私は霧雨魔理沙だ。」

 

「宜しくね。」

 

 

 

 

 

あれから時々、魔理沙が私を連れ出してくれる様になった。

夜になると、彼女が待ち遠しくなって、人影を待つ。

 

「今日は、何をするの?」

 

「そうだな、少し手軽な遊びでもしようか。」

 

魔理沙が教えてくれることは、常にとても興味深くて、新鮮に感じた。

そして、彼女はいつしか私の憧れへと変わり、尊敬する対象となっていた。

 

「ずっとこの時間が続けばなぁ...」

 

つい、願望を口に出してしまう。が、

それでも、魔理沙は受け止めてくれる。

 

「嗚呼、そうだな。」

 

思わず、笑みが零れた。

 

 

 

 

 

「...暇。」

 

パチュリーの図書館から、本を借りた帰りに、その言葉が聞こえてきた。

 

「何だ、お前。暇なら、部屋から出てきたら良いじゃないか。」

 

純粋な疑問をぶつける。

 

「無理よ。...出られない決まりなの。」

 

その声の正体は、噂に聞く幽閉された幻想少女だった。

突然、昔の自分とその姿が重なる。

マジックアイテムを取り扱ってくれず、不満を積もらせて逃げ出した私。

 

「決まり?そんなのは、破るためにあるだろ。」

 

口をついて、言葉が出ていた。

一度でもいいから、外を見せてあげたい。

その一心で、手を差し伸べ、連れ出す。

新たな世界を知り、燥ぐ彼女を見ていると、こちらにまで嬉の感情が押し寄せてくるように感じた。

 

 

 

 

 

…いつしか、定期的に少女の元へと、足を運ぶようになっていた。

自分の憧れ。

魔法を自在に扱えるフランは、私の目標であり、抱いている幻想そのものだった。

 

「なあ、フラン。」

 

「ん、どうしたの?」

 

「お前はさ、この空が綺麗だと思うか?」

 

「...唐突ね。」

 

「悪いな。」

 

「いや、いいのよ。綺麗だと思うわ。私を地獄から救い出してくれた光だもの。」

 

「地獄、か...」

 

「だから、魔理沙には感謝しているの。貴女がいなければ、私は、病んでいたままだったかもしれない。こうして楽しく笑っていられることも、魔理沙が関わってくれなければ、実現しなかったわ。」

 

「何だか、照れるな。」

 

彼女の笑顔が、私の行動源の一つとも成り得てしまう程、生きる価値を見出していた。

所謂、幸せというものを感じていた。

 

 

 

…あんなことになるまでは。

 




マリフラですね。
物語はもう少し続きます...
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