TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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1章 男でも女でも人見知りは変わらない
1話 TSしてもVTuberとして配信している僕の日常


「おはよー。さ、今日も配し――ふぐぅ……! ま、またコメントの速度上がってるぅ……! ひぃ……同接増えてる……新規……うぇ……気持ち悪い……吐きそう」

 

【えっ】

【は!?】

【草】

【草】

 

【配信開幕ゲロと聞いて】

【かわいい声から唐突に告げられる「気持ち悪い」】

 

「うっぷ……初見……気持ち悪いぃ……え、エチケット袋ぉ……」

 

【初見さんを積極的にdisって行くスタイル】

【開口1番だぞ】

【草】

 

【フルスロットルで草】

【知らないと困惑するよな】

【言うほど知らない人来るか?】

【それはそう】

 

【え!? ここって初見ダメなルールとかあったの!? 切り抜き見て来たんだけどまずかった!? なんかごめんなさい!】

 

【来たわ】

【草】

【即オチで草】

【いい人で草】

【初見さん初見さん、そんなルールないから安心して】

 

【じゃあなんで!? かわいい子に会ったとたん「気持ち悪い」とか「吐きそう」とか言われたらマジで凹むんだけど  凹んでるんだけど】

 

【かわいそう】

【それが普通だよな】

【ああ……】

【でも、この子は……】

 

【こはねちゃんはな……コミュ障こじらせすぎてるもんだから、慣れた人相手じゃないとこうなるんだ  毎回だから気にするな、通過儀礼だ  俺たちもかつては気持ちがられて吐かれたんだ、いつものことだ】

 

【草】

【草】

 

【えぇ……なにそのメンタルくそ雑魚ナメクジっぷり……こんなにゆるふわなアバターなのに……】

 

【草】

【的確な表現で草】

【このキャラ付けと立ち絵の雰囲気が違いすぎて度肝抜かれるよね】

 

「ふ、ぐ……うぇぇ……」

 

【んで、吐かなかったとしても気持ち悪くなってこんな風に泣きじゃくる】

 

【えぇ……】

【世界一VTuberに向いてない女】

【自称男だぞ】

【ふぁっ!?】

 

「……だもん……男だもん……今は女の子だけどぉ……」

 

【あ、これあかん、今日はメンタルよわよわだわ  古参ネットワークな介護班経由で優花お姉ちゃん召喚するわ】

 

【お姉ちゃんが面倒見てる配信なのこれ!? 姉妹のお世話配信!? 介護って何!?】

 

【草】

【妹に介護される系自称男(女)コミュ障メンタルくそ雑魚ナメクジVTuber……斬新すぎる】

【声はクッソかわいいロリヴォイスなのにどうしてこんなことに】

【こはねちゃんだからな】

 

【だから最初は男のフリして男のボイチェンで配信→声バレで女の子疑惑するも「ロリヴォイスはボイチェンだ、バ美肉だ」と完全否定→顔バレで女の子確定で泣きじゃくる→いろいろ重い空気になって泣きじゃくって駆けつけてきた妹ちゃんの声バレも顔バレもするっていう段階を踏んでバズったんですね】

 

【草】

【なるほど】

【わかりやすい導入で草】

【お姉ちゃんがかわいそう】

【妹ちゃんだぞ】

 

【段階踏んでえらいね】

【えらいか……?】

 

【※まだ配信開始3分です】

【※ほとんど画面の向こう側で吐きそうになるか泣くかしかしてません】

 

【もうだめだ……】

【いつもの】

【草】

 

――がちゃっ。

 

「ごめんなさいみなさん……こはねさん」

 

「ゆうかぁ……」

 

【お】

【泣きじゃくるロリっ子の横から】

【お姉さん?】

【ハスキーっぽい感じ?】

【ロリロリと優しいハスキー姉妹か】

 

「妹です。――『兄である、こはねさん』がこの通りになったので、ここからはいつも通りに兄が慣れてる時期から登録してくれてる人を入れたメンバーさんだけがコメントできるモードにします。新しく来てくださった方にはいつも通りに謝罪を……今日は大丈夫だと思ったのですが、申し訳ありません」

 

【りょ】

【さす妹】

【は?】

【草】

 

【兄……ロリっ子が兄で、落ち着いたお姉ちゃんが妹……頭がおかしなる】

 

【まぁしゃあない】

【設定……じゃないんだよな】

 

【こんな複雑怪奇な設定とか、普通するか?】

 

【しないな……】

【視聴者に困惑するためだけの無意味な設定だからな……】

【草】

【いつものことだから初見は諦めて♥】

 

【俺、もう1ヶ月も通ってるのにまだ新規扱い……投げ銭もしてるのに……】

 

【こはねちゃんのコミュ障っぷり、なめるなよ】

【金じゃないんだ、顔見知りになったかどうかが判定なんだぞ】

【具体的には数ヶ月  だから毎日通ってコメントしようね♥】

【マジで顔見知りになったどうかが吐き気の基準だからな】

 

【あ、これガチのコミュ障だわ】

【草】

【クラスで他の女子に隠れながら新学期過ごすタイプの子か  女子に守護られる系統の】

【あー】

【居たなぁ、そういう子】

 

「……この流れも最近のいつものですね。メンバーへの加入通知が来てない人や新規の人は、今から張るミラーの方でコメントしてくださいね。そちらもこはねさんのアカウントですので……あ、でもこの窓も開いておいてもらえると同接数などで助かります」

 

「同接こわい……」

 

「大丈夫ですよ、こはねさん。……こんな兄の人見知り克服に繋がるのでお願いします」

 

「ただのコミュ障だもん……がんばってるもん……」

「そこはこだわるポイントですか、こはねさん……?」

 

【草】

【りょ】

【自称兄が妹でしかなくて草】

【あの、妹さんじゃなくてお姉さんなんじゃ】

【ていうか、兄とは……?】

 

【こはねちゃんはな、自称大学中退引きこもりコミュ障ニート25歳成人男性なんだぞ  自称はな】

 

【でも実際は今の通りで】

 

【妹ちゃんを名乗るお姉ちゃんより背が低くて、妹ちゃんによるとロリフェイスで】

 

【胸も小さくて】

 

【完全なるロリっ子で】

 

【んでコミュ力も低くて、いざとなったら泣きつくと】

 

【????】

 

【んにゃぴ……】

 

【もしかして:妹ちゃんの妹】

【性同一性障害って性別どころか年齢も変わるのか……】

 

【そのへんは複雑な家庭環境らしい  とりあえずで立ち絵通りの見た目だぞ】

【あんまり追求してあげるな、吐くぞ】

 

【顔バレのときの映像見かけたら通報してくれ、2人の身の安全のために】

【OK】

【まぁ妹ちゃんも「自分は兄の妹です」って断言してるしな】

 

【複雑すぎる】

【コメント欄も説明も何もかもカオスで草】

【家庭環境がスパゲッティーみたいになっとる】

 

【連れ子とか義理のきょうだいならなんとか……?】

【なぁにこれぇ……】

【あまり指摘すると慣れた相手でも人見知り発動でBANだからな、気をつけろよ】

【えぇ……】

 

【うっかりの顔バレのとき以外は、ずっとこのVTuberなアバターでやってるからな】

【古参もわりと違和感はないな】

【古参だけになると普段通りになるから――】

 

「ふぅ、落ち着いた。優花、もう帰って良いよ」

 

「はいはい。私、勉強してますからね」

 

「うん、じゃあ出てって。妹に面倒見られるとか恥ずかしいから」

「はいはい」

 

――ばたん。

 

【草】

【草】

【えぇ……】

【うわぁ急に落ち着くな!?】

【落ち着いたとたん妹ちゃんへの扱いが雑すぎて草】

 

【ほら、これが通常時のこはねちゃんだぞ】

【そんな……配信のコメント数が激減しただけで!?】

【そうだぞ、初対面からしばらくが壊滅的なタイプの人見知りだからな】

 

【なんでVTuberやってるの、そんな子が……】

 

【それな】

【分からん……】

【草】

 

【ひ、暇なニート生活のついでの配信  っていう設定だから……】

【実際のところは古参でも分からん】

【古参(介護班に入れない組】

【人生を投げ打ってまでこはねちゃんの介護をする人しか入れないエリートたちだからね、介護班は】

【俺たちはただこはねちゃんの主張を信じるだけだ】

 

【お、少ないながらも新規は残したか】

【さすが妹ちゃん】

 

「えっと、それじゃ気を取り直して……んくっ、ぷは。今日もランクマやってこっか」

 

【!?】

【ちょっと待って!? 今何か飲まなかった!?】

【あの、どう聞いてもプルタブをカシュッと】

 

「僕は成人してるからお酒OKなの。じゃ、マッチング画面行こっか。大丈夫、度数低いやつだから」

 

【は?】

【草】

【自分から飲酒宣言しやがったこのロリ!?】

【だから自称成人だって】

 

【成人……?】

【この声で……?】

【さっきのやりとりで……?】

【泣きじゃくってたくせに……?】

 

【度数以前に、その、ロリっ子が飲酒……】

【ま、まあ、さすがに嘘じゃ……いや、お酒って設定のジュースだろうけど……】

【それだ】

【じゃないとさすがに倫理的になぁ】

 

【年齢も性別も家庭環境も、新規の誰にも信じられてなくって草】

 

【だって……】

【もしかして:疑心暗鬼】

【なぁにこれぇ……】

【信じてるぞ? こはねちゃん相手にはそう言ってる】

【じゃないとBANされるかギャン泣きされるからね】

【草】

 

 

 

 

「ふぃー。あー、今日は負けた負けたー」

 

【つよい】

【え、確かに負けたけど、この幼女強くない……?】

【相手が悪かったな】

【まぁ味方の動きも……だったし】

 

【しかし動き方が渋すぎる】

【渋いっていうか地味っていうか】

【堅実な動きなんだがやらかしが少なくて見栄え悪い……悪くない?】

 

【※こはねちゃんはこのゲームの7年?8年?選手です】

 

【似た動きとか戦略多いゲームだと飲み込みは早いよな】

【やっぱ若いとすぐ馴染むしな】

【単純に若さ=反射神経で強いしな】

 

【えっ】

【???】

【もしかして:ガチ幼女時代からプレイしてた】

【今がJK……いや、JCだとすると……】

【年齢のことを考えるとそうなるんだよなぁ……】

【なんならこの反射速度とかもね……】

 

「だから僕は25なんだって。新卒カードどころか大卒カード無くした男が、中学からやってたゲームだからこんなもんだよ」

 

【?????】

【?????】

【いつもの主張】

【なお誰も信じない模様】

【悲しい主張だね】

【ゲ、ゲームはマジで数年前からやってるのだけは確かだから……】

【草】

 

【あ、メンバーに新しく古い順で1ヶ月分の人たちが追加されたのね】

 

【やったぁ!!】

【草】

【※相当前に登録した人たちです】

【※声バレ以降の人たちです】

【貢がないとコメントさせないとか強権過ぎる】

【だってそうでもしないと泣きじゃくるから……】

 

【みんな分かって貢いで待ってるんだ、問題はない】

【むしろ興奮する】

【分かる】

 

【口説き落とすのが大変な子ほど燃えるよね】

【貢ぐだけっていいよね】

【えぇ……】

【草】

 

【でもやっぱ脳が理解を拒む】

【この声で男……?】

【最近のボイチェンってすごいなー(棒】

 

【脳が……幼女になる……】

【脳だけTSロリになるとか斬新すぎるな】

【それ、生きていけるの……? 生活能力とか……】

【草】

 

【ひより「こはねちゃんさん、今日もかわいいですー」】

 

「ひより先生のイラストの方がかわいいです。あ、今日のイラストもそうでしたけど、やっぱ最近画力の上がり方えぐいですね先生」

 

【ひより「だって、こはねちゃんさんが褒めるから……」】

 

【かわいい】

【かわいい】

【え? ひよりって……この前バズってたイラストレーターの?】

【そうだぞ  この立ち絵見れば分かるだろ】

【え、での立ち絵、ひよりって人のイラストよりだいぶ下手だけど】

 

「は? 下手ぁ? ……優花ー、こいつBANして」

 

【待って待って!? 違うの、別人じゃないかって言いたかっただけなのぉ!? 雰囲気は似てるからBANしないでぇぇぇ!! 言い方悪かったからぁぁぁぁ!!!】

 

【草】

【草】

【こはねちゃん! 落ち着こう!】

 

【ひより「そうですよ、私の絵が下手だったのは本当ですから」】

 

「違います、ひより先生。良いですか――クリエイターの人にはその時期その時期にしか出せない味があるんです。下手? 違いますよ、その崩れてる感じが良いんじゃないですか。上手すぎるのも違うんですよ。色とかエフェクトが少ない? ラフみたいで良いじゃないですか。マンガの隅っことかにある感じで魅力じゃないですか。勢い任せが良いんじゃないですか怒りますよ先生」

 

【ふぁっ!?】

【急に早口になるじゃん】

【こはねちゃん、ひよりママに関してはガチだから……】

【あー、ママと子供の関係ならそうなるわな】

 

「この立ち絵だって、先生が1年半も前に描いてた頃の、僕が『この癒やされる絵、好きだなぁ。コミッションしてくれないかなぁ』って思って何回もアプローチして、ようやくVTuber用のを描いてくれるようになったくらい好きなんです。本来なら依頼受けてない先生が怪しいDMに応えてくれた稀少な絵なんです。……今の僕の見た目そっくりなのはともかく、この時期の色使いと顔つきが好きなんです」

 

【ひより「//////////」】

 

【てぇてぇ】

【てぇてぇ】

【ママと子供が……百合……?】

【世界の中心で愛を叫ぶVTuber】

【ガチで告ってて草】

 

【ひよりママのガチファンってのはよく分かった】

【ごめんね、変なこと言って】

【ひより先生のイラスト見てくる】

 

「いいよ。優花ー、やっぱいいやー」

 

【やさしい】

【イイハナシダナー】

【けどBAN作業すら妹ちゃん任せな自称男ロリ】

【こらTSっ子って説の方がまだ信じられるわ】

【それな】

【このダメダメっぷりだけは確かだからな!】

【草】

 

 

 

 

 

 

【あの  顔バレの時の切り抜き見て来たんだけど……その、どう見ても顔とか髪の毛とか……】

 

【そうだぞ、こはねちゃんが自分の見た目伝えてそのまま描いてもらった似顔絵だぞ】

【薄紫の髪の毛でおめめが桜色とか……え? マジ?】

【マジで顔バレしたときのだからマジもマジだぞ】

 

【そらこんな見た目なら人見知りにもなるわ】

【くっそかわいすぎるくっそ小さい女の子とか】

【それな】

【小動物系で保護されててもやっかみはあるだろうしなぁ】

 

【上のやつ、顔バレの切り抜きの情報】

【<URL>】

【↑に通報してくれ】

【ガチの個人情報だから頼む】

 

【アッハイ】

【えらい】

【こういうのはいつまでも持ってるやつが拡散するからな……】

 

【みんなも、見かけたら黙って介護班に通報するんだぞ】

【そして全員でそのアカウントを凍結させるんだ】

【草】

 

……いろいろ誤解されてはいるけども、問題はない。

 

誰だって本当に――リアルで「この見た目通りの女の子が存在している」だなんて、心の底では信じてるはずがないんだからさ。

 

うん、いろいろと現実感のない姿だし?

 

ほら、僕、正直に年齢性別経歴すべてをさらけ出しているんだ。

これで本気で女の子だって信じる人は……居ないって信じたいなぁ……うん……。

 

「……違うんだけどなぁ……んくっ」

 

ストレスは飲み干そう。

今の僕にはそれしかできないんだ。

 

【かわいい】

【かわいい】

【さりげなく酒吞む幼女】

【草】

 

【でもなるほどな  話し方とか距離感は完全に男だけど声とか見た目は女の子、だから性自認も男で性同一性障害か  年齢のことはよく分かんないけど、本人としては男として接してほしいのね】

 

【性同一性障害って明言はしてないけど】

【好きなのは女の子だって公言してるぞ、男として】

 

【ガタタッ】

【!?】

【キマシ……?】

 

「それも違うんだけど……男はダメだな。僕がノーマルの男だから、たとえ女の子の肉体だとしても受け付けないわ」

 

【しかもドのつくロリっ子だからな】

【仮に本当に25でその見た目なら合法ロリすぎてやべー男しか寄ってこない】

【逆に見た目通りに中学生くらいでもやっぱロリすぎて年下の男子くらいしか釣り合わない】

 

【んで本人は男に興味なくて女の子の方が好きと】

【そら堂々と引きこもりとか言うよなぁ】

【絶対苦労したもんなぁ、見た目だけで】

 

「いろいろ言いたいけど、どうせ言っても信じないし……引きこもりと昼夜逆転は良くないからね。この配信見てる大学生までのみんな。僕みたいにならないようにね。1度なると基本的に戻れなくなるからね。1回でも引きこもったり本格的な昼夜逆転生活を経験しちゃうと、もう真人間として社会の歯車に噛み合わなくなるんだ。自律神経は修復が難しいんだぞ」

 

【草】

【草】

【草】

【このロリ、自虐がうまい】

【言い回しも切れてて草】

 

【※古参なら誰でも知ってますが、本当にアーカイブの時間帯は1ヶ月おきに24時間ずつズレています  1年で昼夜を12回逆転させてます  ある意味規則正しい生活です】

 

【知ってる】

【知ってた】

 

【人間ってマジで25時間リズムで生きてるんだなって】

【それを毎朝眠くても強制しないとこうなると】

【そのせいでリアルタイム厳しいんだよなぁ】

【しゃあない】

 

【分かる、ニートしてるとそうなるよな】

 

【分かる】

【分かる】

【この上なく同意】

【こはねちゃんはな……俺たちニートの希望なんだ……】

【ニートの集う配信】

 

「分かる分かる。逆転してない時期だと、家族が家に帰ってくる夕方から寝入る深夜までが……廊下の足音とか話し声とかでつらいんだ。部屋の前とか通り過ぎるときは息を潜めるんだ。んで逆転してる時期だと深夜から朝までは物音がしなくて快適で、そのあと家族が起きてくるくらいに眠くなるから気まずくなる前に寝られて快適なんだよ。ある意味夜行性の方がニートは楽。家族が起こしてこなければ」

 

【分かる】

【昼夜逆転への解像度が半端ない】

【この幼女……マジで昼夜逆転引きこもりニートか!?】

【だからそう言ってるだろ草】

【せめて再生数が跳ね上がり始めた時期からのアーカイブ見てこい】

 

【いや、ここは上がる直前から見ると良い  男声のボイチェン使ってたときからのこはねちゃんの変わらなさと視聴者たちの手のひらスクリューとバレで過呼吸とかゲロゲロとか……ふぅ……必死で弁明してる声が楽しめるぞ】

 

【ああ、顔バレのときのも結局その場面の2人が分からなくして再アップしてくれたからな】

 

【神か】

【妹ちゃん(お姉ちゃん)がな】

【それはそう】

 

【こはねちゃんは?】

 

【要介護の幼女だぞ】

【TSっ子だよ?】

【んにゃぴ……】

【草】

【お前……】

【男って馬鹿ばっか】

 

「あー、うん。僕も男だから、声がかわいくなって中身が女の子疑惑出てきたら思わずで見ちゃうし、なんならコメントでも優しくなる気がするのは否定しないけども――」

 

 

 

 

【配信終了】という画面、立ち絵ソフト、マイク。

 

「……配信オフ良し、マイクオフ良し、ウェブカメラも切って真上を向けた……良し」

 

それぞれが確実に終わっていると――すでに2度やらかしているから、以後毎回やってる指さし確認を済ませてからほっとひと息。

 

「配信終わり……と。ふぅ……」

 

――こんこん。

 

控えめなノック音。

 

僕が助けを求めるか僕に異常が起きる以外では、絶対に外から開けられることはないドアの向こうに、妹の優花が来ている。

 

「良いよ、優花。さっきはありがと」

 

「……ごめんなさい、兄さん。最近は少し良くなったからって、今日はメンバー以外の人も……」

「あー、だから初見の……ぐ……」

 

僕は慌ててテーブルの上のストゼロを煽る。

 

「くぴくぴくぴ……ふぅ。居たんだ」

 

「ごめんなさ――」

「だから良いって」

 

僕は手を突き出し、悪くもないのに謝る妹を制する。

 

「25にもなって、しかもコメントっていう文字だけなのに初対面ってだけでこうなる僕が悪いんだから。本当に、肉体年齢通りの人見知りの低学年かってさ」

 

今日は、なんとなくそんな気がしたんだ。

 

だから、普段の日本酒とかビールとかワインとかじゃなく、即効性のあるストゼロとウィスキーを手元に置いていたんだ。

 

僕のメンタルは――一時期よりは落ち着いてきたけども、上下が激しいから。

 

――今の僕には高くなりすぎた机のヘリをとんっと弾き、これまた高くなりすぎてヘッドレストが頭のはるか上になっちゃった、メッシュのイスを半回転。

 

そこで立って見下ろしてきている――ちょっと前までは僕より小さかったのに、今じゃ僕の方が小さくなったし、みんなからは姉としか見てもらえない――妹の優花と、向き合う。

 

少し前までは、何年も――家族すら部屋に入れることのなかった空間に居る、妹。

 

今の僕とは完全にDNAも繋がっていない――けれども、心の中ではまだ「兄妹」で居てくれている、妹。

 

彼女は、僕をしばらく心配そうな目で見てきて。

 

「……とりあえず、今の兄さんは女の子なんですから、パーカー1枚の状態であぐらかいて座らないでください」

 

「? 下にぱんつは穿いてるよ? ほら」

 

ぴらっ。

 

もはや見ても――変な気分になるとき以外はなんともない、相棒が消し飛んだ女の子な股を包み込んでいる、子供用のぱんつを――オーバーサイズなパーカーをめくって見せつける。

 

ピンクのかわいいやつだ。

 

僕は白でもキャラ入りでも安ければ良いんだけど、優花によると「女の子がそれではいけません」だそうで。

 

「………………………………」

 

「?」

 

「……兄さん」

「? 何?」

 

そういえば、最近の優花はちょっと変だ。

 

具体的に言えば、目つきが何だか変。

 

たとえるなら、男のときにもたまにあったみたいに脱衣所でうっかり僕の裸見られたときの優花の――たぶん心底ドン引きしてる目。

 

「……襲って良いですか」

 

うん、きっと女になった兄がだらしないけど、僕を傷つけまいとしての冗談。

優花は冗談がヘタだからなぁ。

 

「あはは、優花、最近よく言うようになったよなぁ、そういうの。……もしかして彼氏とかできて、その影響で――」

 

僕は、「家族」として愛している妹が――何年も引きこもりニートした僕を見捨てずに面倒を見てくれる、学校でも有名な美人として鼻の高い妹を口説き落とした存在の可能性を思い浮かべると、また気分が悪くなってくる。

 

「うっぷ……気持ち悪くなってきた……」

 

「……何を想像してるのか知りませんけど、違いますよ。『外』で『彼氏』『は』作るつもりありませんから」

 

あ、優花の目が戻ってる。

なら安心だ。

 

「こくこく……ふぅ。なんだ、じゃあいいや」

 

そうだな、優花はマジメな子だ。

 

それも、学校の先生とかが言ったことを無条件に信じるタイプじゃなく、自分で考えてある程度柔軟に考えられるタイプの優等生。

 

きっと大学に入っても新歓サークルとかで簡単には――

 

「ふぐっ……こくこくくぴくぴ……!」

「……呑みすぎはよくありませんよ」

 

あ……やけストゼロ決めてたら取り上げられた。

 

「まだ半分以上――」

「アルコールに関してはもったいないは厳禁です」

 

「この体、幼いくせに前の体並みにアルコール耐性が――」

 

んっ、と、ストゼロを求めて両手を思いっ切り差し出した僕へ、なぜか一瞬顔を赤くした彼女は――深く息を吸うと、

 

「体が戻らなかった場合、その肉体で今後を生きるわけですけど幼少期からのアルコールで機能が落ちた脳と体で生きたいですか? またアルコール中毒治療用の映像見せましょうか? 30代くらいから肝機能とにらめっこしたいですか? 私たち家族と血液型すら代わってるので、私の肝臓とかあげられませんけど? 私はあくまで、突然にその肉体になった兄さんがある日突然に戻るという可能性を信じて、お医者様とも相談の上で一定量までは許可しているのですが、仮に戻らなかった場合の未来も考えたこと――」

 

やめて、具体的すぎることを早口で押しつけてくるのやめて。

あれ、超グロいから……僕みたいに心当たりあると、本当に。

 

「……ほどほどにします」

「よろしい」

 

むふん、と自慢気に――僕の周りのお酒をさささっと両腕に抱えて部屋から出て行く妹。

 

「……けど、変わっちゃったよなぁ。や、体がTS――性転換したのも、物理的に変わったんだけど」

 

僕は、くるりとイスを戻し――モニターの後ろに隠しておいた酒瓶をよいしょと持ち上げ、とくとくとコップに注いでぐいっと煽る。

 

ストゼロとかウィスキーとかウォッカとかは取り上げられるけど、それ以外のは飲みすぎる前に小さい膀胱で飲みすぎることができないからって許されてるんだ。

 

配信終了画面。

 

――そこの最高同接数も、そこから飛んだプロフィール画面の登録者数も。

 

ちょっと前、男だったころ――滑舌と声帯のために配信をしていたときとまったく同じことしかしていないのに、そのころとはケタが違う。

 

――数年続けていた義理での登録者が200人、ちょっと変わった視聴者たちが平均で数人。

 

それが、かつての――落ち着く数字。

 

ただの男が、格段の努力もしないで時間も決めず、好きなときに好きなだけ好きなゲームを配信していたのと、今も変わらないのに。

 

「やっぱ、世の中見た目と声だよなぁ……あと、若い女の子っていうチートな身分……まぁしょうがないんだけどさぁ」

 

僕は、もういちどくるりとイスを回し、部屋の隅からドアの前まで出世してきた全身鏡を見る。

 

――そこには前の僕とは似ても似つかない、染めてもいないのに体毛と同じく薄い紫の髪が背中まで伸びていて、顔つきは幼く、みんなに言わせると「妹属性」な、くりくりとしたピンクの目をしていて。

 

あの日TSして漏らした愛着のある、前の僕の体格用だからオーバーサイズなパーカーをふとももまでだるだるとかぶり、細すぎるふとももと足先を折りたたんで――片手でコップを持っている、世間一般的には「幼女」だという姿を見る。

 

「……一応、中1女子って言い張れるサイズなんだけどなぁ……いや、それでもやっぱ小さいよな。成人男性の平均から縮んだんだから……あと、パーツがことごとくに幼すぎるし……顔とか胸とか……」

 

ぐい、とコップを傾け、幼くなったのになぜかお酒を飲んでも抵抗のない小さい口からアルコールを流し込みながら、僕は回想する。

 

――あの日、いや、あの日の前。

 

まだ僕が、こんなことになるだなんて想像もしていなかった――退屈だけど安心できた、ごく普通の男としての毎日を。

 

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