TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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104話 先生の様子がおかしい

「……なので、一般的に小学生女子の方が先に『そういうもの』に興味を持って知識を深めたとしても、中学高校となると男子の方がすさまじい勢いでこれでもかと執拗にとめどなく知識を吸収していくんです。なので、そんな男だった僕もまた――少なくとも先生なんか及びもつかないような破廉恥な知識もあるんです。正直、さっきのイラストなんて子供だましです。小学生女子の領域を全然出ていません。中学生のそれですらありません」

 

「こ、子供……」

 

「そうです。もっとエグいのとかまで知り尽くした僕からしたら、なんてことないんです。安心してください、本当に、なんとも思っていませんから」

 

顔は真っ赤なまま――なんならさらに赤くはなったけども、目を見開いて僕を見てくる先生は、驚きと……たぶん軽蔑で、もう恥ずかしさはなくなっている様子。

 

「子供になんと思われようと、大人は気にしません。いえ、家族とか親しい人ならともかく、ただの子供に言われたって、大人は気になんてなりません。だって大人ですから。子供とは経験も全然違いますし」

 

ひたすらに「子供」と「大人」、「女」と「男」を強調して説得する。

 

……これで嫌われたとしてもしょうがない。

 

今回ので先生が困り果てた挙げ句に筆を折ることだけが怖いんだ、だから僕が追い出されても――

 

「――なんとも、思っていないんですか。私、こはねちゃんさんがえっちなのを描いて、すごくどきどきしてたのに」

 

……うん?

 

なんか今、部屋のあっちこっちで「ぴしっ」とか「ぱきっ」とか「逃げろ」って聞こえた気がするぞ?

 

……あー、外では風が強くなってきたらしい。

 

木造の家だと風できしむから物理現象な怪奇現象が起きるよね。

 

「……こはねちゃんさんは、ほんとうに気にしてないんですね。子供の私がこはねちゃんさんのはだかを妄想して描いても、我慢できなくっておもらししてるのを描いても、それを知っても」

 

「はい、これっぽっちも」

 

「………………………………」

 

おや、収まってきたらしい。

よかったよかった、僕が半分悪者になる形でもやっぱり大人として説得した甲斐があったね。

 

「――じゃあ」

 

どんっ。

 

「ふぇ?」

 

――とさっ。

 

目の前まで来ていた先生が、急に下の方に沈んでいき――いや違う、これは僕が後ろにひっくり返ってるんだ。

 

ぽふりと、僕の後頭部と背中をクッションと人形たちが支えてくれる。

 

ごめんね、さっきは怖いだなんて思って。

急にひっくり返った新参者の僕のことを守ってくれたんだね。

 

けども……ん?

 

体が重い?

 

「?」

 

「……こはねちゃんさんが、悪いんです」

 

――ずしっ。

 

何か重いものが足元から上がってきたと思ったら――

 

「ひより先生?」

「こはねちゃんさんが、私のこと、子供としか見てないから」

 

のしのし。

 

ひより先生の顔が天井からの光の影になって良く見えない。

けども、普段はくりくりとしているはずのおめめが、らんらんと輝いている気がする。

 

「ごめんなさい、僕、転んじゃったみたいで」

「優しいのは分かってます……だけど逆に、それが余計に意識してないって……」

 

なぜか何回も言葉がかぶっちゃうことってあるよね。

僕たちは今、のしかかられてのしかかっている奇妙な状態なのに、それが起きているんだ。

 

「あの、先生。申し訳ないんですけどそろそろどいて」

「でも、私……こんなにも子供扱いされたら、私だって……」

 

先生の顔が、近づいてくる。

 

「?」

 

なんで?

 

「あの、先生? そのままだと起き上がれ――」

 

「こはねちゃんさんは……き、きしゅ……」

「機種?」

 

「きしゅ……しゅ……き、しゅ……」

 

……ぷるぷるぷるぷる。

 

先生が急に震え出す。

 

「先生? どう――――」

 

「……しゅう……」

 

――とさっ。

 

先生の頭が僕の真横に降ってきて――まるで抱き合うような、いや、まるで押し倒されたあと抱きしめられたような態勢になっている。

 

なぜだかは分からないけども、たぶん先生がバランスを崩したんだろう。

そういや外は風が強かったんだ、大きな音でもしてびっくりしたのかもしれない。

 

「先生? ひより先生?」

「しゅう」

 

………………………………。

 

え?

 

「……あ、ちょ、先生!? あの、僕、力がよわよわなので、先生の体重でも押しのけられなくって……!」

 

先生、寝ちゃった?

嘘でしょ?

 

このタイミング――いや、さっきの恥ずかしさのあまりに体力を使い果たした可能性は、肉体的には僕と大差ないひより先生だからこそあり得る……!

 

全身を――ひより先生の軽くても数十キロという重さのある体重は、呼吸のたびに先生のおなかとか胸が吸着させてくる。

 

僕の耳元で聞こえ出す規則的な寝息、上から包まれる子供の体温に汗と体の匂い――それは、今になって初めてどきっとするものだけども。

 

え?

 

「……先生が起きてくれないと、僕、動けない……?」

 

あっ。

 

ジュース……さっき、全部飲んじゃったんだけど……?

 

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