TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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109話 如月先生の闇が見えた

「……先月の血液検査の結果も異常はなし。メンタルも安定しているようですし、順調ですね」

 

「男に戻る気配がない以外はそうですね」

 

「こはねさんのような事例で、戻ったという報告は今のところ……少なくとも私が閲覧できる範囲では……」

「いつか戻るって信じていたいんです。男に」

 

診察室。

 

如月先生は真面目な人だから、いつも僕の診察も時間を取ってくれて丁寧に話を聞いて体を診てくれる。

ちゃんと毎回聴診器を当ててくれたり、おなかをもみもみしたり耳を当ててくれたりするのって、今まで経験したことがないくらいの丁寧さだよね。

 

「目の充血や疲れも……昼夜逆転生活はちゃんと戻ったようですね」

「毎晩優花の抱き枕になっているので、眠くなくても寝ています」

 

前だったら眠れないときは――うとうとしてると嫌な記憶ばかりが浮かんでくるからお酒を飲み直して適当な動画とか本で眠くなるまでの時間を潰していたけども、優花に抱きしめられているからか、そういうのがないんだ。

 

これが――人肌の力、家族愛の力。

 

優花は家族だもんね。

しかも今は僕よりも大きくて安心できるし。

 

最近は明け方にもぞもぞされなくなったから、よく分からない気まずさも匂いもなくって、さらに安心できるようになったんだ。

 

「睡眠は……どうしてもという日は仕方ありませんが、そうでなければなるべく決まった時間に横になって暗くして目を閉じると30分以内に訪れます。全員ではありませんが、多くの人にとっては健康的になる本能的なサイクルです。こはねさんのように不規則な生活を年単位で続けていたら厳しいことですが……肉体が『新しく』なったおかげで治すのはそこまで大変ではなかったようですね」

 

あ、なるほど。

 

確かに、年単位の不規則な生活からたまに夜更かしするけども基本的には優花に抱っこされると自然と眠くなってくる生活になってるもんね。

 

それを思うと体が変わって良かった……いやいや。

 

「………………………………」

 

妹に抱っこされて安心する、かぁ……しょうがないけどさ。

 

それにしても、この体。

 

僕自身としては高校生と言い張りたい――けども客観的には今の僕とほとんど変わらないひより先生が小学生に見えるんだから、小学生でもレッサーパンダでもしょうがない――この体。

 

ある日突然に乗り移ったかのような――ううん、「あっちの僕」になっている体。

 

わきわきとしてみる手のひらは、ぷにぷにと小さいもの。

 

「新しい体……そう考えると、なんだか不気味ですね」

 

恐らくは手相すら変わっているそれを、じっと見ていると漏れる感想。

けれども、先生からすると違うらしい。

 

「あら、良いじゃないですか。実質的に若返りですよ? それも10年くらいの。さらにはとびきりの美少女に」

 

「そうですか?」

「ええ、少なくとも女性としての私は切望しますよ?」

 

「性別が変わった件については?」

 

「私も……ふっ……男として生まれていたら、もっと楽だったのでしょうけどね……ええ、見た目などどうでも良いので、生来の性別だけでも……」

 

「なんかごめんなさい」

 

「選択できない生まれついての宿命として背も低くなりがちで、筋力はどれだけ鍛えようともトレーニングしていない男性にも追いつかれる。人生のピークは早く、それゆえに意味もなく敵対してくる男性も……いえ、同じ女性も顔やファッションから、なんでもとにかく同調圧力が」

 

「ごめんなさい」

 

「胸が大きいのもプラスにもマイナスにも……いえ、医師として仕事を始めるまではむしろ邪魔だったくらいで……顔と胸のせいで邪魔な男性たちはしつこく、それを見た女子たちが……」

 

「せんせい」

 

「『女子なんだからそんなに目立たない方が良いよ』とか『頭が良くっても女だからなぁ』とか『女なのに医者になるの?』とか『婚期逃すよ』とか『頭が良いから性格がきつそう』とか、いろいろね……」

 

「ほんとうにごめんなさい」

 

「こはねさんも……脅すわけではありませんけれども、社会は人間関係が過酷なので……がんばりましょうね……」

 

「はい」

 

如月先生――若くしてお医者さんになった彼女は、卓越した頭脳と肉体と精神を兼ね備えた人。

 

それでも精神面は――僕なんかより何十何百倍の努力をできて自分を律することのできるすごいものだろうけども、それでも彼女は僕と同じ、人……20代という、僕よりも数歳上なだけの女性なんだ。

 

なんならできる人な分、やっかみも酷いはず。

 

実際、中身はまったく変わってないのにTSしたせいでなぜか無駄に有名になった僕は――優花経由で聞くだけだけど、常に一定数のアンチってのが居るらしい。

 

まぁ僕が吐かない程度には完全に排除――どんな手段かは聞かないでおく――されているらしいし、そういう人たちは手当たり次第だからすぐに別の目立ってる存在をターゲットにするだけらしいけども。

 

「みんながみんな、こはねさんのように……男性のときからのこはねさんのように、偏見が少ないと良いのですけどねぇ……」

 

「あー……うちはほら、優花ができる子でしたし」

 

単純に僕の好みもあるけどね……いや、僕より優れている女性が好きってのはひょっとして優花の影響か……?

 

 

 

 

「兄さん……♥♥♥♥」

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