TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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112話 先生のお家はゴミ屋敷(良)

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

「うぅ……お恥ずかしい……」

「こ、これはまた……見事な……」

 

翌日。

 

優花に連れられた僕が訪れた家は、どう見ても高級そうな――先生と優花の会話から、ひとり暮らしの女性はセキュリティー面でどうしても安心できるところでないといけないってことらしい――マンションの一室。

 

オートロックの玄関には警備員さんまで居たし、すれ違った住民たちも雰囲気からして僕たちとは違う階層の人々で、ほとんどが若い女性。

 

そうしてたどり着いた、エレベーターで昇った先の先生のお宅の第一印象は――

 

「これが汚部屋か……」

 

「汚部屋、ですね……いえ、覚悟していたよりははるかにマシ――比較的新しい物件なこともあるので当然かもしれませんけど」

 

「こ、これでも普段は、1ヶ月に1回は家事代行の方に来てもらっていまして……ですが、頼まれたりして別の病院などでの夜勤も多く、この2ヶ月ほどは……単純に家に居ませんので、セッティングがうまく行かず……」

 

「それで、このゴミ袋の山ですか」

「うぅ、お恥ずかしい……」

 

ドアを開けた直後にぼんぼんぼんと置かれている、ゴミ袋。

 

そこから透けて見える中身は――うん、外食とかテイクアウトが多いって聞いたとおりに容器だらけ。

ゴミ袋の山があるくせに臭くないのはきっと、容器とかを洗う程度はしていても自炊をしないから生ゴミがないから。

 

……最低限、悪臭が漂ってたり虫さんたちの巣穴になっていなかったことに安堵するも、それはあくまで見た目……本当のところは開けてみないと分からない。

 

さりげなく聞いた感じ、ひとまずで虫さんたちは繁茂していないらしいからまだ大丈夫……きっと。

 

「だ、出そうとは思っているのですけど……ほら、曜日が決まっていますし、そういう日に限って朝は忙しくて……」

 

「こういうところなら基本的にいつでも出しておけるんじゃ? 管理人さんとかが出してくれるとか」

「入り口にありましたよね? 共同ゴミ置き場が。そのためのお高いマンションを選んだのでは?」

 

「ぐぅ」

 

優花と僕の追撃に、彼女の「できる女医さん」っていう憧れが、がらがらと崩れていく。

 

「お、お仕事が忙しいから仕方ありませんよ! ええ、私だって兄さんに下着まで洗わせていますし!!」

「優花はせめて、慎みは持ってね……」

 

なぜかいつも洗濯カゴに放り込んである優花の下着……何回言ってもネットにも入れてくれないもんだから、妹の下着を上下ともに毎回手に取らざるを得ない兄の身にもなってほしいんだ。

 

洗濯機に放り込み、取り出し、ネットからも取り出して干して――取り込んで畳んで。

異性の兄に――いくら男として価値のない存在だからといって、年頃の娘さんが下着を毎日何回も触らせるのは、ちょっと……ねぇ?

 

「……とにかく」

「うん」

 

優花と僕は、ささっと取り出した掃除のための服装を身にまとう。

 

「では、私はお掃除のお手伝いを。兄さんは」

「台所、お風呂だね」

 

そんなことよりも、今は目の前の大惨事だ。

 

よく見てみればゴミ袋の隙間にたくさんの紙くずやプラスチック容器、ジュースのペットボトルも無差別に床へ転がっている。

 

「……あの、先生?」

「はいぃっ!」

 

ふと思いついてしまった発想へ、僕は、信じられない気持ちで先生を見上げる。

 

「これ、もしかして……今日僕たちが来るからって、急いでまとめただけで……普段は……」

 

「えっ……」

 

ほら、ゴミの山の奥側には何十枚か積んである、使っていないゴミ袋が見えてるし。

 

……昨日の夜から今朝までの時間で、「これでも」綺麗にしてあるってこと……?

 

「………………………………」

 

先生は――無言で肯定した。

 

「……優花はゴミの片付けをお願い」

「分かりました……兄さん、ご武運を」

 

僕たちは、事前に決めておいたとおりの役割分担へと移行する。

 

ほら、こういう家の人って、無造作に下着とか男には見せたくないようなものが散乱してる可能性もあるし……なによりも僕は力仕事とかできないから。

 

 

 

 

じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ。

 

カビだらけ、ぬめりだらけのシンクを――家から持参してきた踏み台につま先立ちで一心不乱に掃除中。

 

うん、これは何ヶ月もマトモに料理していないお宅のキッチンだ。

 

ちらりと見ても料理器具は異様に少なく、戸棚や冷蔵庫を見ても調味料が極めて限定されている。

 

「お医者さんなのになぁ……」

 

こんな、僕でもできることが――できる人なはずの先生には、できない。

 

たぶん単純にお仕事が忙しくって、だから料理も掃除もするヒマがないだけなんだろうけども……うーん。

 

「……やっぱり働くのって大変なんだなぁ」

 

お医者さんは、激務だという。

 

そもそもとしてお医者さんになるための勉強は極めてハードで睡眠時間すら取れず、見事合格して医学部に入ってからもやっぱり忙しくって眠るヒマも帰るヒマもなく。

 

研修医さんかとかになったらなったで徹夜の割合が増えるなどという地獄を経験し、それからようやくに晴れて一人前になって――からもお仕事で忙しいとかいう超人にしかできない仕事だ、そりゃあどこを切り取っても激務だろう。

 

そんな生活をしていたら、家のことなんてできなくても不思議じゃない。

いや、できなくて良いんだ、家事代行を頼めば良いんだから。

 

時間がないからお金で頼む――それは資本主義社会では当たり前のこと。

 

問題は不規則な生活なもんだから、ひとり暮らしだとそれすらも時期によっては今回みたいに――特にTSしたメンタル不安定でときどきレッサーパンダとかになる僕とかの面倒を見ていたら――なるのも当然。

 

しかも、期間的にはどんぴしゃだからね……ほら、僕がTSして迷惑を掛け始めてからの期間的にさ……。

 

「僕みたいに時間が余ってて、完璧じゃなくても家事とかをして家で待ってる誰かさえ居れば、如月先生も――」

 

「――では、主夫として来てくれますか? こはねさんが」

「うひゃあっ!?」

 

振り向いた先には、心なしか元気になっている如月先生。

 

今までは白衣姿しか見てこなかったけども今は私服姿で、さらにはおさげも解いて後ろに下ろしていて。

 

だからまるで別人のような雰囲気――町を歩いていれば、男なら振り返るような美人さんがそこに居た。

 

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