TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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115話 【速報・こはねちゃん、覚醒】

「………………………………」

 

ばきゅーん、ばきゅーん。

 

いつものゲーム。

 

僕はそれを――最近はちょっと忙しくってなかなかできてなかったせいで、ランクが最底辺へ落っこちてたそれをプレイしている。

 

……途中からは完全に無心で。

 

無言で。

 

それを、はや数十分。

 

無言配信。

配信事故。

 

だからみんな、飽きてどっか行ってくれたらいいんだけどなぁ。

 

ちらり。

 

勝利画面に水分補給をしながら、コメント欄を見ようとして――諦めた。

 

だって――――「分かっちゃう」んだもん。

 

【あの……こはねちゃん、そろそろぶっ続けでランクマ5時間……】

 

【集中力はすごいけどさ……】

【えっと……うん……】

【なぁにこれぇ……】

 

【※同接もレッサーパンダのとき以来、久しぶりにバグってます】

 

【そらそうよ……】

【だって……】

【なぁ……?】

 

「くぴくぴくぴ……」

 

僕はお酒を飲む。

飲みちぎる。

 

――――なのに、思考能力も指先の動きも、全然衰えない。

 

【※今日のこはねちゃん、全勝です  夕方に始めてからずっとです】

 

【※なぁにこれぇ……】

 

【※最下位から始めたのに、すでにトップリーグです】

 

【※回線がラグいときでも完全に未来予測してました】

 

【※みんながラグの中、ひとりだけ先行入力しまくって試合時間短縮してました】

 

【※1個前の試合の敵に前シーズンの最強クランが揃ってたのも粉砕しました  いくら上手とはいえ、もちろん誰かとパーティー組んだりできない野良プレイヤーのこはねちゃんが】

 

【草】

【それは言わないだげてよぉ!】

【まぁ今日の動きとか見る限り、ソロの方が強いことは確実だから……】

【なるほど……人見知りぼっちだからこそ、ソロで完結させられるようにって……】

 

【※この異常さに、このゲームの界隈がざわついてます】

 

【※ゲームの掲示板の流れ  「なんだこいつチーターか?」→「おい、手元画面配信してるぞ」→「えっ……何この動き……(ドン引き」→「え、動き、全部予測されてるんだけど」→「この避け方おかしくね?」→「ようじょこわい」です】

 

【草】

【時差の大きい海外勢もざわついてるレベルだし】

【素人目にもやべー動きしてたからなぁ】

 

【※ガチ勢たちがこはねちゃんさんに興味を持ちました】

 

【※全世界のうち何人かのプレイヤーが配信中にこはねちゃんに負けてから検索し、何かを悟ってから同時配信解説へ移行しました】

 

「………………………………」

 

僕は、天井を仰ぐ。

 

――やばい。

 

どうしよう。

 

……僕の、コメント欄の人を認識できる程度の能力が――オンラインゲームの対戦相手の思考まで読めるようになっちゃったんだけど……これ、どうしよう?

 

「……あー、えーっと」

 

僕は、途中からしゃべっていなかったのを今さらながらに思い出して声を発する。

 

【幼女がしゃべった!】

【シャベッタァァァァ】

【耳がかわいさでないなった】

【草】

 

【唐突にかわいい声が脳髄を蕩かす】

【脳が……幼女ヴォイスで溶けていく……】

【修羅の声じゃなくて良かった……】

【それはそれで聞きたかったけども、無事でなにより】

【良かった……無事だった……】

 

【心配だったけど、超集中とかしてるから連勝できてるんなら邪魔したくなかったしなぁ】

【それな】

 

【介護班も一応空中待機していたけど大丈夫そうなので解散します】

 

【草】

【いつでも即応体制なのはすげぇわ】

【深夜までお疲れ様です】

 

「えっと……うん。確かに今日はゲームの勘が働いてるし、手先も動いてはいるんだけどさ」

 

わきわき。

 

マッチング中の画面を見ながら、指を動かしてみる。

 

「なんか、こう……対戦相手全員、プラスでチームの味方全員の思考と動かしてる操作が読めちゃうっていうか……」

 

【!?】

【もしかして:覚醒】

【覚醒で済むのか、これ……】

【おろろろろろ】

【こはねちゃんが進化してるぅ……】

【人間業じゃなくない? さっきの動きとか】

 

【ゾーンに入ってるのか】

【あー、スポーツ選手とかのあれか】

【ゲーマーの配信でもたまにあるよな】

【調子悪いのと真逆の、なにやっても神がかったプレイになるやつか】

 

【これは切り抜きもバズる】

【またこはねちゃんが一段階羽ばたいていく……】

 

【レッサーパンダが羽ばたくだって!?】

 

【羽ばたこうとしてそのままひっくり返りそう】

【それにびびってお空を見上げながら威嚇してそう】

【ただのかわいいいきものになってそう】

 

【草】

【草】

【おなかいたい】

【このギャップはこはねちゃんさんにしか出せないな!】

【ああ】

【なにしろ演技じゃなくて素だからな!】

 

次のマッチングが完了し、準備画面に入る。

 

――と同時に、一気に手に取るように分かる「今この瞬間にゲームのサーバー内で交差している僕とマッチングした人たち」の意識。

 

この時間にお仕事から帰ってきて夕食を食べてからようやくINしたばかりの人、もう何戦かやって今日の調子を考えてる人、お酒飲んでる人、配信しながらマッチングの解説をしてる人。

 

彼らの脳内、あるいは口から発せられる声、彼らの姿――なんで素っ裸の男がいるのかは分からないけども、僕はちょっと気持ち悪くなった。

 

……なにこれこわい。

 

ほんと、なんだこれ……あ、意識を外したら見えもしなくって聞こえなくなった。

 

「………………………………」

 

……なぁにこれぇ……?

 

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