TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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121話 コラボは無理  だなんて誰が決めたんだろうね

「そもそもとしてですけど。――僕、初対面の相手が居ると吐きますよ? コラボ配信なんて無理です。たとえ相手がはるなさん1人だったとしても」

 

「あー」

「あー」

 

浮かれていたひより先生とはるなさんが、ぴたりと止まる。

 

「あと、露骨にしゃべれなくなります。動悸息切れ過呼吸も射程圏内です」

 

「そこまで……? いや、そこまでだったよねぇ……最近は忘れがちだったけど、そういやこはねちゃんってそうだったなぁ……うん、昔のみなみちゃんみたいな子だし」

 

「こはねちゃんさんが苦しがってるの、もう見たくも聞きたくもないですぅ……」

 

はるなさんとのコラボ配信。

 

……正直はるなさんには何回も助けてもらってるし、優花の面倒も見てもらってるし、なにかできることがあればって気持ちはちゃんとある。

 

けども……ねぇ?

 

「仮にコラボしたとしましょう。――その場にはるなさんの配信の視聴者たちが居たら、その時点で僕はただの置物になります。それならばと僕がしゃべるよう、コメント全部オフとかにしたら配信そのものが盛り上がりません。配信とか成立しませんよね? コメントがないと」

 

「だよねー……」

 

VTuberに限らず、配信――生配信というのはコメントありきのもの。

それがないのなら、それはもうただの収録でしかないんだ。

 

「こはねちゃん、今でもときどき増えた介護班の人と触れ合うみたいなのも、コメントしてこなかった人たち相手には……ですし」

「あんなにはっきりと分かれるんだもんねぇ……コメントでちゃんと話したことある人とそうでない人と」

 

はるなさんと先生が唸っている。

 

「なんでか分からないんですけど、こう……人見知りの本能的に分かるというか?」

 

あれからも「人見知り改善のためにも」って理由で、月に2回くらい介護班の人たちを新しく紹介してもらってのファンサービスってのをさせられている僕。

 

そこでもやっぱり、コメント欄で話しかけてくれた人はそこまで怖くはないけども、そうでない人は目を合わせられないっていうか冷や汗と吐き気が出てくるっていうかで――だから毎回、多くて10人が最大なんだ。

 

「……このペースで少しずつ初対面がクリアできるようになっても、早くて数年後とかですかね、コラボ配信」

 

そのときまでに男に戻ってると良いけどなぁ……。

 

 

 

 

【ごめん……君の男性の肉体は、もう分解されちゃった……素で忘れててごめんね】

 

 

 

 

「………………………………」

 

なんだか今、猛烈に嫌な予感がしたけども……気のせいだよね?

 

「数年後……そんなになったら私が引退――するつもりはないけど、ほら。現時点で私、新卒から働き始めて数年の会社員ってみんなに伝えてるから、数年後っていう『私は三十路過ぎたおばさんです!』って知られてる状態で続けてるかどうか分かんないんだよねー。まぁ個人の、昔のアカウントでは続けるつもりだけど、それも知ってるのはごく一部だし」

 

「はるなさんはいくつになっても綺麗なお姉さんだと思うのに……」

 

「あー、ひよりちゃん先生はかわいいなーうりうりー」

「もう、また子供扱いして……」

 

ふたたびにひより先生がはるなさんに捕食されている。

 

それは大変に目の保養になる姿だけども……そうか。

 

現在時点で20代って知られてるってことは、たとえ今現在が20歳と0日とかぴっちぴちの存在だったとしても、10年以内には絶対30歳に到達するってことで――社会一般的に「ぎりぎりお兄さんお姉さん」の枠で居られなくなるのか。

 

………………………………。

 

……僕も、あと5年で「おじさん」か。

こんな見た目の、どう見ても子供なおじさん……嫌だなぁ……。

 

「はぁ……じゃなこはねちゃんがイヤイヤ期に入ってるって理由だけじゃなくって無理かなぁ、コラボ」

 

「イヤイヤ期……」

「ってなんですか?」

 

僕は数歳の子供じゃないよ?

さすがにそれは知ってますよね、はるなさん?

 

「私さ、お酒は好きだけど日本酒はそこまで呑まないんだけどさぁ」

 

ひより先生を抱きしめながらはるなさんが言う。

 

「リスナーさんたちから結構もらうのよねぇ、お酒……好きって公言してるから。んで、結構開けてない日本酒が溜まってるから、こはねちゃんさえよければあげよっかなって思ってたんだけど――」

 

「行きます」

 

「まぁ無理ならしょうがないよね。そのうちに送ってあげよっかな、とは――」

 

「家に届けられると嬉しいですけど優花に管理されて飲めないので行きます」

 

「そうだよねぇ……ん?」

 

「コラボ、いつにしますか? 早い方が良いですよね?」

 

「……え? ウソ、マジで?」

 

「日本酒がたんまりとあるのは嘘じゃないんですよね?」

「え? そ、そりゃあそうだけど……絵、まさか本当に」

 

「行きます。マネージャーさんと連絡取ってください。優花が帰ってくる前に日程を決めて規定事項にして優花に邪魔されないようにしましょう」

 

「こはねちゃんさん……」

 

はるなさんがきょとんとして、ひより先生が何か残念なものを眺める目で僕を見てくるけども、僕は真剣だ。

 

「大人の男はですね、週末くらいは好きなだけお酒を飲まないとやってられないんです」

 

「でも、こはねちゃん、今は女の子」

 

「電話」

「アッハイ」

 

僕は、思考する。

 

初対面で盛大にげろげろしちゃう僕が、どうやって彼女の配信とコラボできるのかという方法を。

 

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