TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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129話 女の子な僕の世界に来たっぽい

ごうんごうん。

 

「いやー、ごめんねぇこはねちゃん。いつも怒られてるのに抱きついたままホールドしちゃってて」

「いえ……」

 

どうやら僕は寝落ちしたらしい。

いや、正確には落とされたらしい。

 

そりゃあ、あんなでかくって吸い付いてくる軟体に顔を塞がれたら誰だって呼吸困難からの低酸素で意識は落ちるって。

 

「前にもおんなじことしてこはねちゃんに怒られたのにねー。……あ、待ってごめんなさい、謝るからこの前みたいなのは勘弁して」

 

「……僕に何をされたか言ってみてください」

「あ、敬語……やば、ガチで怒ってる」

 

この状況――はるなさんに抱きつかれて気絶したまま寝ちゃって、はるなさんもそれを良いことに僕を抱き枕にして寝てて――優花みたいに離してくれなくって、だから早朝の尿意に負けた僕ははるなさんの下半身も巻き込んで盛大にやらかした状況。

 

本来なら、はるなさんの誘いに乗って配信でお酒がぶ飲みしてたのを知った優花が怒り狂って突撃してくるはずだとか、あのあと配信はどうしたのかとか、つっこみどころは山ほどあるけども――とりあえず、決定的に違うところがある。

 

――なんではるなさんが、僕と寝てるとき全裸だったのかって。

 

そして僕が起きてもそれを気にすることなく、平気な顔してすっぱだかで僕をぬぎぬぎさせてお風呂に入れてきたのかって。

 

あの態度は、完全に僕のことを。

 

「えっと、正座3時間コースのかたわらにお酒の危険性のレクチャーを配信で公開お説教でしょ? あと、お酒を全部みなみちゃんとこにお引っ越しさせられての禁酒が1ヶ月でしょ? あとあと……」

 

なんとなく。

 

なんとなく勘づいてたから、ちゃんと言っておいた。

 

『服を着てください』って。

『恥ずかしいですから』って。

 

何回も言ったし、できる限り見ないようにがんばったから紳士的な態度にはなったはず。

 

だから、言っても大丈夫なはず。

 

……大丈夫だよね?

 

「だから許して? なんでもするから」

 

「じゃあ今から言うことに絶対怒らないでくださいね」

「え?」

 

「言質は取りましたからね?」

 

「え、待って怖い……こはねちゃん、なにを要求してくるの……?」

 

 

 

 

「こはねさんが……」

「『あっち』の、こはねちゃん……」

 

「あはは、恥ずかしー! あっちのこはねちゃんって、確か中身は私と同い年くらいの男の子なんでしょー? ……あ、やば、待って、マジで恥ずかしくなってきた」

 

「だから言ってるのに……はるなちゃんは酔うと自制心が完全になくなるんだから気をつけてって……」

 

優花、ひより先生――はるなさんにみなみさん。

 

「……『こちらの世界』では海外も巻き込んでの大騒動になりました『医学的に死亡が確定してからの黄泉返り、しかも死に至る病が完治していて当日から走り回れる健康体へ』――そして『少しだけ違う世界のこはねさんや周囲』の体験談。そこで聞かされた『成人男性なのにこちらのこはねさんそっくりにTSしたこはねさん』の顛末。信じていなかったわけではありませんでしたが、実際に会ってみますと……」

 

そして、如月先生。

 

見慣れたはずの彼女たちを見回した僕は、感想を口にする。

 

「僕からすると、全然違和感はない……気がしますね。あっちのみんなと変わらなくて。見た目も話し方も」

 

はるなさんの、空き瓶が部屋の隅に何十本かまとめられているお家に集まったのは、僕が見知ってるはずの姿と声。

 

でも――この人たちは、僕の知る人たちじゃないんだ。

 

だって、

 

「どうしましょう……私の妹のこはねさんと変わらないはずなのに、なぜかどきどきしてきます……」

「わ、私もです……はぅ」

 

「中身が男の子……同世代の子に全裸をくまなく……私、もうお嫁に行けない……?」

 

「ここはこはねちゃんに責任を取ってもらうべき。ついでに私たちも。大丈夫、こはねちゃんは1回死亡届が出されてから超法規的措置で復活した特別な存在だし、重婚も行ける行ける」

 

――僕が男ってことで、ここまで動揺しているんだから。

 

「でも、こっちの僕も、心は男……なんですよね?」

 

「ええ、こちらのこはねさんは生まれついての女性の肉体ですが心は男性という、性同一性障害――トランスジェンダーですね」

 

まぁ一人称が「僕」だったはずだし、あの子が僕の中に入って動いてくれてたときも意識とか記憶がぼんやり流れ込んできてたし。

 

「で、でも、その……やっぱり、えっと……私と同じ学校に通ってた女の子の心が男の子っていうことと、少し前までは男の人だった心の女の子だと、どうしても……はぅ」

 

「だよねぇ……なんかこう、なんにも変わんないけど変わるんだよねぇ」

 

ひより先生とはるなさんが、くねくねと真っ赤になっている。

 

「こはねさん」

「優花……」

 

そんな中、真剣な顔をした優花が話しかけてくる。

 

「――貴方なら、私たちに性的興奮を催せますか? 戻る前にできますか? 体力の続く限り、何十連戦」

 

「優花???」

 

こっちの優花がおかしい。

 

「いえ、こちらのこはねさんは、心は男性でも私たちには『そういう気持ちは難しい』と言っていましたが、もしかしたら『あちら』から来ているこはねさんなら、あるいは既成事実を――と」

 

「あっちの優花よりずいぶん過激な気がするけど、落ち着こうか優花」

 

「こはねさんが――そうでした、あちらでは私たちの産まれた順番が逆……つまりは『兄』として諭そうとしてきて……! は、初めてはそういうプレイだと余計に興奮……!」

 

「………………………………」

 

……こっちの優花は、僕の知る彼女よりも結構ダメな子なのかもしれない。

 

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