TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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131話 帰る場所がない状態で囲まれた

「なるほど……そちらの世界では、後天的に肉体が突然変異してある日突然に性別も姿も完全に変わるという奇跡が日常的に起きるのですね。それも、DNAごと完全な別人に……なるほど」

 

「うーん……一般的にはないはずだけど、お医者さんが申請すれば戸籍とか住むとことか当座のお世話はしてくれる程度には確認されてる?らしいです。公にはなってませんけど、ならない程度にはTSした人たちが困らないってことらしいですね。詳しくは如月先生と優花――あっちのです――に丸投げなので僕はそれ以上分かりませんけど」

 

とりあえず落ち着いてくれたみんなは――なぜか僕を囲んで円陣になって座ってるけども――「あっち」についてを聞きたがってきた。

 

ちなみにその円陣はふと視線を下に向けたり渡されたスマホを見たりするたびに、微妙に狭まっている気がする。

 

気のせいだと信じたいな。

 

「どんな世界なんだろう……えへへ、現代SF……それとも現代ファンタジー……妄想が捗るぅ……」

 

「本当に何も変わらないと思いますよ、みなみさん。……ネットとか見せてもらった限りには優花と僕の産まれた順番、こっちの僕の病気、そして僕自身のTSくらいしか目立った違いはなさそうですし。あとの違いはぜんぶそれらから来てる程度みたいですし」

 

みなみさんがくねくねとしているけども、気持ちは分かる。

別の世界から来た人が居たら、そりゃあわくわくするよね。

 

「……数年齢の引きこもりでニートな成人男性の僕が『こっちの僕』にTSしたことなんかより、壮絶な数年間の闘病生活の末に1度医学的に死亡判定が出て、みんなのためにもって運び込んだはずの霊安室からぴんぴんして自分から起きるどころか走りだして、こともあろうに配信中に自分から全力疾走で病室に駆け込んできたこっちの世界の方が、僕的にはファンタジーですね」

 

ファンタジーっていうか、優花とか女子が好きなタイプの泣ける映画みたいなラストだ。

炎上系配信者たちから全力疾走した、あっちでのとはずいぶん違うラストだし。

 

「……そうですね。あれは、本当に驚きました。私も、新薬を受け取りに離れていたので現実感がなくて……」

「あのときのこはねちゃん……まだ元気だった小学生のときみたいな泣き方してて、わたし、神様が居るって思っちゃったくらいです」

 

ぐすぐすと涙ぐんでいるひより先生。

 

その配信も見せてもらったけども――うん。

 

その前のお通夜――文字通りでそうなる場面からの落差で、僕もつられて泣いてから笑っちゃったほどには奇跡的だったもんね。

 

「こっちの僕ってどんな感じなんですか?」

 

「うーん……そこまで変わんないかなぁ、こはねちゃんは」

「うん、変わらない。ちょっと余所余所しい気がするけど」

 

「ごめんなさい、僕からするとおふたりは本当につい最近に知り合った人たちでもありますし……」

 

なによりも女子――しかもVTuberっていう配信者ですごく有名なアイドルさんたちだから、いまだに畏れ多いんだ。

 

それにこっちの世界では、もう何年も前から全員が知り合い。

しかも正真正銘の女の子同士だ、そりゃあ距離感は違うだろう。

 

「……こちらのこはねさんは、中学に入ったころに自分の心の性別を男性だと私たち家族へ、そして友人のみなさん――さらには視聴者の方々へ教えてくれました。ですが、女性として生きることへも抵抗はないと言っていました」

「だから『女の子なのに男のリスナーさんたちの気持ちも分かってくれる小さな天使』って呼ばれてたんです! こはねちゃん!」

 

「なるほど。自意識は男でも、肉体をホルモン治療とか整形治療で治さないといけないほどの辛さはない感じだったんですね」

 

聞けば「性同一性障害」――とは最近は言わずに「トランスジェンダー」だとか――と一口に言っても、その中身は人それぞれらしい。

その中でもこっちの僕は、比較的穏当な感じのだったとか。

 

「もっとも、その時点ですでに病気の方の治療をしていましたので、その時点で死期を――――――ごめんなさい、こはねさんが生き返って嬉しいのに、そのこはねさんとある意味では同一人物である、あなたに……」

「良いんです先生。先生は、こはねさんの『最期』まで――その後の『最初』からも、ずっと向き合ってくださっているではありませんか」

 

落ち込む如月先生を、優花が静かに抱き寄せる。

 

……うん、やっぱりこっちのみんなは距離が近い。

ずっと知り合いだったのと、なによりもこっちの僕の「死」と向き合ってた人たちだから。

 

そう思うと……僕自身のことじゃなくても、なんだか気恥ずかしい。

 

「ではこはねさん! お風呂へ入りましょう!」

 

「えっ」

 

振り返った優花が、なぜか僕の手をたぐり寄せている。

がっちりホールドされている。

 

「………………………………」

 

「えっ」

 

え?

 

「すでに最寄りの温泉で貸し切り風呂を予約済みです!」

 

なんで?

 

……あっ……あっちの世界で、僕がTSしてからなぜかみんなで行くことになった、あの温泉……当然ながらこっちにもあったりする……?

 

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