TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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135話 外で震えてみた

「ひぇぇぇ……」

「ひぇぇぇ……」

 

「みゃあああ……」

「み゛ぃぃぃ……」

 

「直射日光が目を、肌を……焼くぅ……!」

「ああ! 人の目! 人の目がぁぁ……!」

 

「……うっぷ」

「! こはねちゃんのげろげろは、先生に高く売れ――うっぷ」

 

僕たちは、胃袋さんがきゅってなるのを必死で我慢する。

 

「……いつもこうなのですか? こはねさんだけでなく、みなみさんも」

「いつもこうなんだよねぇ、みなみちゃんも。だいたいこはねちゃんと同じよ? 外に出られないの」

 

僕たち日陰者は、今、強制的に日向へと突き出されている。

そのせいで久しぶりに盛大な不調に悩まされているんだ。

 

「頭痛、悪寒、吐き気、冷や汗、手足の震え、ぽんぽんぺいん、急なおトイレ欲が襲ってくるぅ……」

 

「フラッシュバックも来ません? 嫌なときのが悪夢みたいに……」

 

「来る来る……引きこもったトドメのトラウマがぁぁぁ」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

僕たちはえずいた。

けども、外だからがんばって漏れ出ないようにふんばったんだ。

 

「みなみさんも、こはねさんと……ということでしたよね。対人関係で引きこもりをしていた経緯が」

「ええ。だからこそ、ある意味、私よりもこはねちゃんに依存しているの。……まぁ私も、こはね様が望めば私が可能なことはすべて――」

 

「え? 『様』……?」

 

「……最推しだからね! あ、優花ちゃんもセットで最推しよん?」

「え、ええ……」

 

僕たちの少し後ろを、優花とはるなさんが付き添いで来てくれてはいる。

 

けども……やっぱり真っ昼間の直射日光+そこそこの歩行者からの視線は辛いんだ。

 

今日の僕は、いつぞやに視聴者たち同時視聴で10着以上着せ替えされて、視聴者たちの投げ銭で購入された服装のひとつ。

 

その直後にいろいろあったから全然着てなかったのを、今日着せられたんだ。

 

急な外出訓練でのお着替え。

なんでなんだろうね。

 

それでも優花と視聴者たちへ『人目に慣れる訓練なのはわかってるけども、せめて最初は怖くないように優しくして……?』って懇願した結果、なぜか急におとなしくなって、その中でもあまり目立たない服装を僕自身に選ばせてくれたんだ。

 

……ふりっふりなのとかきらっきらしたのとかじゃなくなって感謝すべきなのか、それともそんな服ばっか選んだことへ糾弾すべきなのか。

 

とはいえ、資本は視聴者たちに経営者は実質的に妹。

 

その妹である従業員な僕には、文句など言えやしないんだ。

いや、もはや扱いはペット――いやいやって言うしかないんだ。

 

そんなわけで今の僕の服装はというと、上は首元がふわふわしてるシャツにカーディガン、下は途中から切り目――スリットって言うらしい――が入った長いスカートが足下までを隠してくれて、いざというときのためにスニーカーで、その上はふわふわとした薄い紫の髪の毛を歩きやすいように後ろでまとめたポニーテールへ、つばの長い帽子をかぶせた仕様。

 

はるなさんがお揃いだって喜んでたけども、髪の毛が後ろに引っ張られる感じでなんとももどかしい。

 

それでも『なんとか着たから満足してほしい』って言ったらじゃらじゃらと小さなアクセサリーを見せつけられたけども、そこをどうにか拒否し切ったのはえらいと思う。

 

そんな僕の真横で僕と手をつなぎ、僕と同じくぷるぷるとなっているみなみさん――月見みなみさんは、僕より背が高いはずなのに思いっきりの猫背なフードに深い青の、お尻を隠すほど長い髪の毛をしまい込んでのジャージ姿。

 

……僕はともかく、みなみさんはこんな往来でジャージってだけで目立つんじゃ……?

 

しかも、相当に着込んでいる……や、みなみさんの匂いは嫌いじゃないけども、ほら、毛玉とか何かのシミとかついてるし、髪の毛のせいで後ろがもこもこしてるし……?

 

「服が……服が、ないの……! ひ、引きこもりには、外に出る服というアイテムは……存在しない……! したがって、ダッサい普段着こそが唯一の希望……うぅ、これが真冬ならまだコートで隠せるのにぃ……」

 

「分かります。外へ出るための服がないのが僕たちみじんこです」

 

僕は、深くうなずく。

 

僕だって男だった懐かしい時代にどうしても出歩かないといけなくなったら、近所しか歩けないだっさい服装になってたから。

 

だからこそ余計に恥ずかしくなって、余計に外に出るのが嫌になるんだ。

引きこもりへ最初に用意すべきは、まともな服なんだ。

 

「わ、分かってくれる……さすがはこはねちゃん……去年くらいの配信で言ってたとおり……!」

「あ。たぶん今、その話したときコメントくれた人の中に居たみなみさんのこと、なんとなく……」

 

こくこくこくこく。

 

ぷるぷるぷるぷる。

 

「なにこのかわいいいきものたち」

「わ、分かります……!」

 

僕たちはわかり合った。

死地で紡がれる友情だね。

 

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