TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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137話 人見知りとしてのランクを上げよう

「人目はね、サングラスとかすると良いよ。ぼ――私の友達も、それで結構楽になってるって。ほら、私もこうして前髪で目隠ししてるから擬似的に視界遮ってなんとかなってるし」

 

「「「おぉぉぉぉ……!」」」

 

人見知りにも、結構グレード――段階、深刻度ってのがある。

 

僕の1番メンタルがやられてた、大学中退したつもり直後の期間のように家族ですら誰とも10メートル以内に近づけないレベルのから、最近の僕みたいに1回慣れたら真横に居ても平気になるレベルのまで。

 

それだって時期とか体調とか嬉しいこととか嫌なこととかで1年中変わるんだ。

僕たちはそのときどきのメンタルの状況とフィジカルの調子で他人との距離を測るんだ。

 

それでも、根本的に人の視線が苦手でできるだけ近づきたくないのは変わらない。

 

僕たちはそういう本能を持って産まれてきた前世がハムスターみたいな被捕食者で、なにかにぱくりと食べられて転生してきたトラウマを持つんだから。

 

「メガネは伊達でも、フレームとレンズってだけで精神的に楽になるからね。今どきは伊達の調光レンズって手段もあるよ」

 

「「「おぉぉぉぉぉぉ……!」」」

 

「……盛り上がっていますね」

「サングラスで盛り上がってる……なにあのかわいい子たち……」

 

「みんなで着け合ったりしていますね……メインは制服を着ている方ですが」

「うぅ……みなみちゃんにも、お外にお友達が……つぶやいたげよう……」

 

新しく出会った、僕たちの仲間。

 

そのうちの、自分と同じ存在を見つけたなら初対面でも打ち解けられるタイプだって言ってる、長い前髪で両目隠れの子――アキノさんは、僕たちの手を引いて最寄りのワンコインショップへ連れ込んでくれた。

 

この子の得意分野はファッションらしい。

 

僕たちは得意分野になると、とたんに元気になるんだ。

その気持ちは、よく分かる。

 

だから僕たちはふんふんと熱心に話を聞くんだ。

 

「今どきは人の格好についていちいち言ったり思ったり人なんてそうそう居ないし、目の周りだけで顔も半分は隠れるからコンプレックスとか気にならない。ならこういうアイテムがちょうど良いよね」

 

「分かる……! 店員さんが怖くない……!」

「暗い店内だと、特に安心できる……!」

「こ、これなら町中でコス――こほん、こんな服を着て歩かされても……!」

 

みんなでお安いサングラスをかけてきょろきょろ。

 

おかげでみなみさんの猫背が半分くらい回復し、さっきまでは僕と同じくらいのところにあった目線が高いところへ。

 

……この子、普段は背がすごく高いはるなさんとセットだし彼女に張りつくようにしてるからわかりにくいけど、女子の平均身長を超えてる優花と同じくらいの背丈で、すらっとしてるんだよね。

 

「あとは帽子とかパーカー、マスク――まで行くとさすがに不審者になっちゃうかなぁ、女の子でも。まぁ家から出られないよりはずっと良いけどね。花粉症とか風邪引きやすいのかなって思われるだけだろうし」

 

本人曰く『すごい内弁慶だから』って目隠れアキノさんは、いくつかのサングラスをひとつひとつ手に取って僕たちへ着けては鏡で見せてくれて、これも良いけどこっちも良いって感じで、いつの間にかに服屋の店員さんみたいなことをしてくれている。

 

……みなみさんと僕よりはずいぶん人に慣れるのが早い人見知りさんだね。

 

まるで人見知りなんて実は無いような――いやだめだ、人を疑うだなんて。

 

そうだ、みなみさんも僕も、慣れている人の前じゃ普通に話せるんだ。

みなみさんも僕も、初対面であっても小学生――低学年まで相手なら、普通に話せるんだ。

 

そうだ、僕たち小動物は同格以下の存在相手ならへっちゃらなんだ。

 

こんな僕だって、1番こじらせてたころの僕だって、それでも10歳くらいの小学生相手ならおどおどして吐き気も出さずに対応できるんだから……たぶん。

 

………………………………。

 

今の僕は小学生、みなみさんも中学生に見えるからしょうがないんだ。

 

なにもかも、心と体が小さいのがいけないんだから。

 

「………………………………」

 

「?」

 

僕の目元からサングラスを取り外したアキノさんが、そのまま僕の目を見てくる。

 

「………………………………」

 

……なんだろう。

 

もしかして、僕が逃げ回ってるときの配信とかを見てたりした人。

あるいは介護班さん。

 

それで僕の顔は知ってるけどもじっくり見たことはないから見たい――そんな感じ?

 

「……もしかして君」

「はい?」

 

「さっきの子と同じく、おと――――――――」

 

「――――こ、こはねちゃんは……会ったばかりの人には、わ、渡さないから……!」

「わぷ」

 

急に視線が遮られ、みなみさんのジャージの匂いが僕を包んでくる。

 

「?」

 

「ふーっ……!」

 

どうしたんだろう、みなみさん。

もしかして肉食獣に見つけられた?

 

いや、でもそんな気配は感じないけどなぁ……。

 

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