TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~ 作:あずももも
【家事は完璧、料理も完璧、家の中なら普通にかわいいしとにかくかわいい それでいて性自認は男なのにやっぱりかわいい 男心を完璧に理解し、かつ女心も分かるし、人見知り期間を乗り越えたら話も上手 おう生粋の女子2人、もうちょっとこはねちゃんを見習え こはねちゃんは現時点でも相当なハイスペックだぞ マジでレッサーパンダなところすら強力な武器なこはねちゃんに勝てる要素は胸と年齢くらいしかないぞ】
【草】
【ひでぇ】
【正論パンチはやめたげて】
【でも本当なんだよな……】
【こはねちゃんの自尊心が高ければ軽々と越えるもんね】
【やはり時代はTS幼女だよ】
【今日も来たよ……】
【もはや名物】
【こはねちゃんTS説って……いいよね】
【いい……】
【ふぅ……】
【お前のせいでTSに目覚めた視聴者が増えてるだろ!! やめろ!!】
「てぃーえす……」
「?」
コメント欄と格闘していたみなみさんが、なにかとてつもなく恐ろしい呪文を唱えながら僕を見る。
なぜかは分からないけど、その単語だけは身震いがするんだ。
「こはねちゃんって……実質的にTSっ子だよね」
「実質的ってなんですか」
本当にTSしたんだけど?
「ずっと男子としての自覚はあるのに女の子として生きてきて……でも最近はバーチャルアイドルとして目覚めて私たちを虜にしていくほどにあざとかわいくなってきて」
「なっていないと思うんですけど」
あ、いや、そっか……今は配信中だから、そっちのことは隠してくれてるのか。
いやまあ、僕が成人男性から幼――少女になりましたってはっきり言っても冗談だって思われるだけなんだろうけども。
【うむ】
【なるほど】
【然り】
【おお】
【わかる】
「まるで女顔の男子が、あえていつもガキもとい男子小学生らしく振る舞って強がってきて周囲からも男子として思われるようになって違和感がなくなっていた――そんなところへ突然ある日、女の子としての自覚が芽生え……うん、それはきっと恋……好きになった相手が女子か男子かで薄い本のパターンが二手に分かれるような……一粒で二度おいしい、適性のある私たちにとってはどちらのルートも味変で堪能できる極上の味……」
「みなみさん?」
この子は何を言っているんだろう。
【草】
【高速詠唱だ!】
【ミナミちゃんは俺たちの希望の星だからな……】
【オタクってね、好きなことはよどみなく何時間でも語れるんだ】
【※ミナミちゃんの配信が延びるときはだいたいそうです】
【この引きこもり、推しコンテンツの薄い本の比較レビューとかするやべー女だからね……自分のも込みで】
【うわぁ……】
「それは女装男子の百合と薔薇――こはねちゃんの場合は体が女の子だから、男装女子がやはり百合と薔薇を咲かせるのでも大変によろしい……解釈違いと宗教のことは大丈夫、私のリスナーなら『どっちもいい、すごくいい』で徹底的に調教してるから燃えることはない。性別はリバーシブルで可変で表裏一体――大切なのは受けと攻めの性格とシチュ、そしてプレイなの。健全からどろどろのものまで」
「……?」
まずい、だんだん話に着いていけなくなってきた。
「絵柄、文体、話の構成で吟味すればノーマルしか受け付けない男女ともに百合も薔薇も女装も男装も、そしてTSも堪能できる……私は、そのためだけに存在している……気分ですべてを網羅し探求し……あああああ……!」
「………………………………?」
みなみさんが……ちょっと、怖い。
【悲報・こはねちゃん、脱落】
【無言になってて草】
【立ち絵が真顔になってる】
【そらそうよ……】
【こはねちゃんはあれでも女子としては破格に男子の心も理解してるし、今話してたようなコンテンツも語れたはずなんだけどなぁ……】
【ミナミちゃんが濃すぎてね……】
【しかもこの詠唱を、こともあろうかトランスジェンダーとかいう微妙な立場のこはねちゃんに叩きつける、すべてを恐れない所業よ】
【草】
【草】
【うん……関係性なかったらアウトよね、これ】
【友達でも結構アウトな気がする】
【家族でもかなりアウトな気がする】
【アウトだよ!!】
【でもミナミちゃん大丈夫? ヤンもとい心酔もとい大好きなこはねちゃんに嫌われたりしたらやばない??】
【あっ】
【え? どういうこと?】
【ああ、こはねちゃんリスナーは知らないか……】
【知らないほうが幸せだよね……】
「……こはね様」
ん?
こはね「様」?
「――どうか見捨てないで嫌いにならないで嫌悪しないで拒絶しないでごめんなさい私が悪かったからどうか許してくださいもう二度と変なこと言いませんあなたに捨てられたら私はもう生きている理由も価値もあはははそうだ私やっちゃったんだこれだけはしないようにってハルナねぇにも何回も言われてたのに私はなんて愚かなのそうなの私はだって一度は死んじゃえばいいんだって認識してたんだからでもそれをこはね様の光があの日に私の元に」
【ひぇっ】
【ひぇっ】
【え、なにこの子……ヤンヤンしてるの?】
【うん……】
【そうだね……】
【ヤンヤンで済めばいいくらいのね……】
【なにそれこわい】
【こわいよー】
【声もトーンも人格も完全に別人……こはねちゃん、生きてる……?】
みなみさんが、優花がたまにするようなどす黒い瞳で僕を見上げてくる。
……女の子って、怖いね。