TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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145話 女たちの会議

「ああは言ったけど、やっぱ今すぐほしい。義姉様、キャッシュでこはね様を譲って。今現金化できるのがこれくらい。買う」

 

「い、いえ、以前こはねさんについて話し合いました通りに――――――えっ」

 

「いち、じゅう、ひゃく……。………………………………??」

 

「……みなみちゃん、それ、この前のコラボのとき、こはねちゃんに見せてないでしょ。ていうか私も初めて見たわ……みなみちゃんの投資用口座」

 

「うん。引かれるかと思って。あと金銭での友情崩壊エンドは悲しいから……でももうほしいから見せる。こはね様に加えて、ここに居る全員を養ってもいい覚悟が決まった」

 

こはねが定期検診で如月に付き添われて病院――こはねを人に慣らす一環として大病院だ――で疲労困憊になりながら隅々まで調べられている中、一室を借りて女の会議が開かれている。

 

「配信で話す相手が兄さんのときにこの金額を見せていたら、確かに思わずの反応で大金過ぎるなのが視聴者に漏れてみなみさんが危険だったかもしれません。……これ、どのようにして……?」

 

「電子機器とか技術に興味あったから、そのときそのときで伸びそうな分野の株を少しずつ売り買いして育てたら化けた。いわゆるハイテク分野、AI分野。やはり専門知識は金になる。もっとも博打の要素が大きいから素人にはお勧めしない……私は細かく知っていたから、伸びること自体は確信していただけ。あとは暴騰と暴落した瞬間の胆力」

 

「きゅう」

 

「おっとと……みなみちゃん、こんな金額、私たち以外の他の人に見せちゃダメよ……?」

 

「こはねさ――ちゃんしゅきしゅきで集まってる仲間同士、隠しごとはしない方がいいかなって。こはねちゃんの選択次第では、みんなで仲良く家族になるんだし。家族共有の資産は知っておいた方がおすすめ。マイホームの計画は共有すべき。そうすればみんなしあわせ。みんなズッ友。――――――もう友達ゼロはイヤ」

 

みなみの手にしているハイエンドスマホ――その画面には、まだ高校生の年齢にして、すでに今後の人生を遊んで暮らせる金額が表示されていた。

 

――将来はこはねのために――成人男性である「兄」のために、なんとでもしてやる気概を元から持っており、両親へもさりげなくアピールしていた優花。

 

――まだ、大金を前にしてどうすればいいか理解できない精神年齢のひより。

 

――VTuberとしてすでに名前も売れているし社会人としても充実しており、なによりもみなみと元からの友人であるはるな。

 

彼女たち――加えて如月女医もだ――以外の人間に知られたら確実に人間関係の崩壊する金額。

 

金という魔力が、手のひらの板に凝縮されていた。

 

こはねという存在の結束がなければ血みどろの戦いが繰り広げられてもおかしくはない、魔力が。

 

「ぶい」

 

「……これがFIREってやつなのねぇ。いいなぁ……」

「要る? 小さいのなら今すぐ崩してあげられるけど。みなみちゃんなら」

 

「ううん。私も、そこまでじゃないけど……配信者兼社会人として、こはねちゃんと一緒に余裕のある生活できる程度は稼げてるし。まぁ肝心のこはねちゃんの好感度は稼げてないんだけどね?」

「誰うま」

 

「……そうですね。たとえここの全員が――ついでに如月先生もですか――こはねさんを籠絡して見事ゴールインできたとしても、可能な限りこはねさんを甘やかす以外には使わない方がいいかと。ここに居る全員、こはねさんのためと思えばこはねさんと自分の生活費は稼げる女ですし」

「さすがは義姉様、精神まで高潔」

 

「きゅう」

 

「さすがはこはねちゃんの同類、げに愛おしき」

「ひよりちゃんは?」

 

「こはねさんのために描き続けているイラストで有名になっていますし……このままなら大丈夫ですよ、きっと」

 

「ひよりちゃんはこはねちゃんと一緒に愛でるために養ってもいいけどねー」

「家に小動物が要る……それはとても癒やされること」

 

大金を認識しようとして目を回してテーブルにぺったりとしている小動物は、温かい視線で愛でられる。

 

「こはねちゃんは、このお金を絶対に受け取らない。……だからどうにかして私たち全員でこはねちゃんを墜として『複数人相手でもいいや』って思わせてからの『ヒモになってもいいや』って思わせるのがゴールなの」

 

「ひとりじめはしないの? みなみちゃん」

 

「こはね様は天使だから……もったいない。私ごときが占有していい存在じゃない」

「分かるわぁ。私たちの人生を捧げるのはいいけど、こはね様――ちゃんを独占するのは悪いものねぇ」

 

「……あの、2人とも? 以前から気になっていたのですが、どうしてそこまでこはねさんのことを……?」

 

こはねと親密になってからというもの、彼女――彼に対する好意どころかその先の何かを隠すことがなくなってきた、みなみとはるな。

 

普段の通りにぼさぼさの髪で前髪まで隠したジャージ姿の少女と対称的に、女性社員として目立ちすぎることのない化粧をし、けれどもこれだけは譲れないとばかりに長いポニーテールを揺らめかせている、白いシャツと黒いパンツ姿の女性。

 

配信者という共通点以外には、こはねへの尋常ならざる何かがあった。

 

「こはね様の言葉を、聞いたの」

「あれはまさに、天使の声」

 

「当時は男性の天使だったわよねー」

「今はちいさきかよわい天使。どちらも美味」

 

「え、ええと……?」

 

深淵とは、のぞき込みたくなるもの。

 

けれども、何かを見るということは、その何かからも同時に見られるということで――。

 

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