TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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146話 僕と僕のゲーム

 

「こ、言葉……?」

 

「そうね。私もそう。――たまたま偶然に……本当はタイミングがずれていたら家族とか友達から聞かされたかもしれないけど、それでも大変な時期に落ち込んでいた心を引き上げてくれたのは、こはねちゃんの配信の声。……優花ちゃんも分かるでしょう? 男の子の、あの配信のあの落ち着いた語りと声で、そのときにいちばん聞きたかった言葉を聞かされたらって。たまたまでも偶然でも、私を救ってくれたのは、こはねちゃん」

 

「この対人恐怖症引きこもりっぷりを見れば分かるはず。みじんこの」

 

「……え、ええ……それは、そうですけど……」

 

「そして義姉様も……あわよくば『女』という価値で釣って奉仕したいと思ってるはず」

 

「ぶふっ!?」

 

「きゅう……」

 

「し・た・ぎ♥ ……こはねちゃんの配信で言ってたアレ、わざとでしょ? お兄さんに、妹だとしても女だって認識させたいって」

 

「そ、それは……!」

 

「きゅう」

 

会議室の湿度は90%に達していた。

 

10%は――大人向け恋愛作品を少し見ただけでも顔を赤くして、翌日に熱を出して寝込む少女のものだった。

 

 

 

 

「ねぇ、結構危険だと思うよ?」

 

「? なにが?」

 

「そっちの僕の恋愛関係」

「恋愛……? 誰と誰が……?」

 

「………………………………」

 

かたかたかた。

 

僕はモニターを見ながら手元を動かしながら、僕の知る人たち同士の恋愛――父さんを除けばことごとくが女の子だけども――を妄想してみた。

 

「……はるなさんとみなみさん? 元から友達同士らしいし、配信でもよくコラボしてるらしいし。あるいは……優花とひより先生? それとも優花と如月先生? みんな美人さんで魅力的な人たちな上に、性別への偏見とかないタイプだもんね」

 

「………………………………」

 

かたかたかた。

 

なぜか僕たちは――まったく同じ姿の僕たちは薄暗い空間に居て、これまたなぜか並べて置いてあった僕たちのパソコンに向かってゲームをしている。

 

机とイスまでセットで同じだけども、その上の小物の中にちょっとかわいいものが3つ4つあるのは、心は男でもやっぱり女の子として生まれたからかなって思う。

 

「……完全に男として生まれると、こうも鈍感になれるのかな……いいなって思う気持ちと同時に危なっかしいって思う気持ちが……」

 

「?」

 

「……とりあえずでいちばん危険そうなのが、よりにもよって優花かなぁ……そっちの」

「優花? 優花が誰かと付き合おうとしてるってこと?」

 

「……君、人見知りがなかったら普通に誰かと……そして何度も修羅場迎える人生送ってて、今ごろは生きてなかったかもね……そう思えば、すごく苦労しただろうけど人見知りで発狂して引きこもったのは防衛本能としての正解だったのかもしれないね」

 

「??」

 

あ、勝った。

 

……プレイヤーは僕たち2人だから、勝っては負けてを繰り返しているだけだけども。

 

「優花のこと。どう思う?」

 

「優花? そっちの僕と同じだけど?」

 

「……つい最近までは兄と妹として生きてきた君と、物心ついてから妹と姉として生きてきた僕とでは違うんだよ」

「なるほど」

 

かたかたかた。

 

隣で操作をしている僕を、ちらりと眺める。

いつものオーバーサイズのパーカーの下にスカートで、色素の薄い髪を背中まで下ろし、自慢の三つ編みを胸元へ片方だけ垂らしている少女を。

 

「優花は美人さんだし、何回か読者モデルとかSNS広告に誘われたほどのナイスバディさんで、勉強もスポーツも完璧でありながら控えめで、さらにはウィスパーボイスでトドメを刺して男をメロメロにすることは間違いなしの超高倍率物件だけど、そんな彼女に兄とはいえ男の君が一瞬たりとも劣――――――」

 

「だから彼氏さんが耐えることはないんだよね」

 

「えっ?」

「え?」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「………………………………?」

「………………………………?」

 

目の前の僕は手元を動かすのも忘れ、しばらく見つめてきた。

 

「……それ、優花が言ったの……? え、本当に? 彼氏が? 嘘?」

 

「ううん。けども、普段は僕に投げて平気なはずの下着、シーツと一緒に自分で洗ってることがあるし……帰りが遅いのかどうかは覚えてなくても、なんとなく……放課後とかに彼氏さんとそういうことしてきたのかなって」

 

優花の服が勝手に洗われているのを見るたび、兄としては憂鬱な気持ちになったっけ。

……身内、家族のそういう側面って、絶対に知りたくないよね。

 

「……とりあえず、そっちの優花は彼氏、作ったことないと思うよ」

「えー、嘘だー」

 

「…………そんな調子で捕食されないことを願うよ。防御力皆無どころかマイナスの僕」

 

「?」

 

なぜか残念そうな目を向けてくる少女。

失礼な、僕たちはたいして変わらない存在なのに。

 

「じゃあひよりちゃんは?」

 

「ひより先生? うーん……クラスの男子とすら話せないっていうか、そんなひより先生を守ろうと女子で固めてるっぽいし、彼氏さんとかは居ないんじゃないかなぁ」

「ひとまずは確定していない彼氏の存在は忘れて考えようか」

 

「じゃあ彼女さん?」

「それも忘れておこうか」

 

「?」

 

「……はぁ……」

 

ふむ。

 

心は男でも女の子の中で育ってきた僕は、恋愛関係については普通の女の子並みに思うところがあるのかもしれない。

 

男として育ってきた僕みたいに、特に興味も意識もないのとは全然違うもん。

 

あ、3連勝。

 

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