TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~ 作:あずももも
ひより先生の恋愛事情。
あんなに庇護欲をかき立てられるんだ、周囲の女子の中に恋愛的な意味で好きって人は居るかもね。
だからこそ、僕の知り合い同士が――って考えると優花や如月先生、はるなさんにみなみさん……あ、全員だ――とくっついていても不思議はないんだけど。
「とにかく! ひよりちゃんはかわいいし、今の君と見た目の年齢はすごく近くって、静かな空間なのが好きってのも同じだし好きな絵柄の趣味も同じ。恋愛的に好きにならないかな?」
「僕が先生を? いやいや、畏れ多いっていうか」
「いうか?」
僕は、あの栗色の髪の小動物を思い出す。
「むしろ先生が無事に彼氏さん……彼女さんでもいいけどね、に見初めてもらって初々しい恋をしてくれたらなぁって願ってるよ」
優花と同じく、素敵な人と出会って幸せになってほしいと願う年下の女の子――それがひより先生だ。
「……ああ……そこで君が20代なところが……困ったなぁ、僕の最推しはひよりちゃんだからプッシュしてあげたいんだけど……」
「?」
どうやら肉体的には女として生まれた方の僕は、男として生まれた方の僕よりも少しだけ考え込む性格らしい。
女社会で育てばそうなるのかもしれないね……あ、4連勝。
「なら、はるなちゃん! 最近の知り合いだし君と同世代!」
「あ、うん。あんなにグラマラスな美人さんなら学生時代もそうだろうし、社内恋愛で――」
「外の彼氏は居ない方向性で」
「? ……えっと、魅力的な人だとは思うよ? けどなぁ」
「けど!? あのね、はるなちゃんはあのさばさばとした性格と胸と尻でリアルでもとんでもなくモテるし、Vとしてはもう箱の超有名アイドルやってるんだから、それはもう倍率数十万倍とかの高嶺の花だよ!? しかもいいお年頃だから、たぶん今いちばんモテてる女子と言っても過言ではない相手だよ!?」
確かに、言われてみればそうだね。
「けど……」
「けど!?」
ゲームをほっぽり出して、イスだけをスライドさせて迫ってくる僕。
……ゲーム、始まっちゃってるけどいいの……?
「その……」
「だからなに!?」
「……いや、僕、本来は苦手なのに無理してキャラ作って明るいタイプの人たちと一緒に居たからさ……そのときの胃痛とセットで、そういうグループに居たモテる女子たちみたいな子には、抵抗感が……」
「ここで同世代のモテる女子ってところが!? ……贅沢だけど、経緯が経緯……!」
俗に言う「ギャル」――なぜかギャル自体は僕が物心つく前の時代に絶滅したはずなのに現代でも普通に居るという矛盾について、配信で語った記憶がある――そうでなくても、クラスの中で常に目立つタイプの女子は、あのときの苦い学生時代とセットで苦しいんだ。
「な、ならみなみちゃん! 引きこもり! 基本的にしゃべらない! 見た目に気を使わない! 香水なんか使わないし、なんなら徹夜続きだと臭うことすらある! 臭い! 服もジャージ以外はコスプレしかしない! ジャージにはシミがついてる! ダサい! そして現役高校生! 芋JK! 性的魅力は皆無! 胸も含めて! これならどう!?」
「……ひどくない?」
「ここには君と僕しか居ないんだからどうでもいいでしょ!」
僕の手をキーボードとマウスから引っぺがし、ゲーム自体が停止しているのを横目で見ている僕の顔をぐいっと回転させてくる僕。
「ほら、言って! せめて1人くらいはストライクゾーンに入ってると言って! 突破口見つけたげないと、あの子たちが不憫すぎるから!」
「顔が近いよ」
ふんふんと鼻息の荒い僕。
……改めて見ると小学生でしかない幼い美少女だね、僕。
「うーん……みなみさん……」
「どう!?」
「……あの子は、なんていうか……友達。うん、友達。いい意味で、肩肘張らないで静かにできてたときに居た、男友達って感じで安心できるね」
「 」
がくっとうなだれる僕。
首、大丈夫?
「……如月先生は」
「? 毎週作り置きとお掃除してるけど?」
「……年上の女医だよ?」
「すごく頭も良くって面倒見もあっていい人だよね」
「ああ……」
ずるずるずると、僕の肩を掴んでいた手が落ちていき、最後には僕のふとももへ、頭とともに着地していく。
「……その格好、辛くない?」
「うん、辛い……けど、朴念仁過ぎるせいで完全にすれ違っちゃってるあの子たちが、とてつもなく辛い……」
「よく分からないけど、元気出して?」
「…………………………ありがと……」
なにかがあったらしいせいでおかしなことになっている、もう1人の僕。
そういえばこの子、僕と同じだけど年齢自体は高校生――ひより先生と同じなんだよね。
うんうん、年頃だもん、いろいろ思うところはあるよね。
ぽんぽん、なでなで。
僕は、幼いころの優花へするように、そのふわふわとした髪の毛を優しく労った。
◇
「……ってわけだから……うん……えっと、うん……どうやればこっちの僕が引いたりしない範囲で意識させられるかは分からないけど……うん、がんばって……僕には無理だった……」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
「夢の中だって思ってたみたいだから、そのあとに君たちが本気で好きだと言ってみた……けど、自己肯定感が低すぎるのと恋愛経験が皆無なせいもあって……うん……もう色仕掛けして襲うくらいしかないかも……事後に本気で嫌われるリスクを承知の上で……ほら、幼い童って、女の子に襲われるのがご褒美って、必ずしも認識できないっていうか……うん……ごめん……」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
女たちの会議は――振り出す前に破綻していたことを知った。