TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~   作:あずももも

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4章 女の子声での配信生活
15話 日常になった「地声/女の子の声」配信


「……思うけど、本当に君たちって欲望に正直だよね。普通の男ボイスからかわいいのになっただけで、男って、ボイチェンってはっきり断言してるのにこれだけ残るって……うっぷ」

 

【草】

【ぺろぺろ】

【言いながら数字見て吐き気催してて草】

【くそ雑魚で草】

 

【くそ雑魚メスガキ……】

【よわよわメスガキか……】

 

【おっと、今どきのコンプラ的にくそ雑魚ナメクジメスガキ「ちゃん」だ】

 

【草】

【たいした意味のないフォローで草】

【コンプラとは一体……】

 

【でも、メスガキいいよね……】

 

【いい……】

【どうあがいても敵わない相手にきゃんきゃん吠えるチワワのごとき愛らしさ】

【ぐへへ、おじさんに力では敵わないんだよこはねちゃん】

 

【個人的にはメスガキだけど一途でラブラブ純愛が好み】

【分かる】

【それはそれとしてなめ腐ったメスガキが……ってのもまた良き】

【分かる】

【おすすめを共有しようか……】

 

【きもいよー】

【さすがにURLはやめとこうな?】

【この配信にも、すっかり変なのが居着いちゃって……】

【むしろすでに多数派に……】

 

――あれからもう何日。

 

僕は、すっかり「バ美声――バーチャル美少女声のボイチェン/この体の地声」での配信をしている。

 

そして1回ごっそりと減ってほっとしてたはずの登録者と同接が、再び結構なスピードで上昇している……あ、胃液が。

 

「こくこく……セーフっ。なんとか胃液を押し戻した」

 

喉がひりひりするから、ここ毎日のために用意するようになった牛乳を飲んでっと。

ほら、牛乳はお酒のおともだからさ……本当かどうかはともかく、胃が荒れにくいらしいし。

 

【草】

【かなりの重症じゃねぇか……】

【胃と食道ががばがばになっとる】

 

【逆流性食道炎はお医者さんに……ああ、コミュ障で無理か……】

 

【絶望した】

【草】

【無理しないでね】

 

【これは配信者のプロ根性】

 

【↑ニートです】

【プロのニートだよ?】

【それはそう】

【本人が主張してるから信じざるを得ないけどニートだな!】

【収益化していなくても、これはプロの配信者じゃ……いや、本人の主張を優先すべきなのか……?】

【草】

 

【でもニートしてる配信者とか、視聴者にたかる配信者とか、今どきは普通じゃね? 昔ならともかくさ  こはねちゃんはまだ収益化とかできてないけど】

 

【昔(数年前】

【まぁ今なら普通だな】

【視聴者を楽しませる代わりのお代って考えたら違和感はないよな】

 

【そんな視聴者に対して「気持ち悪い」とか言うのはちょっと普通じゃないけど、まぁだいたい同じだな】

 

【草】

【草】

【ま、まあ、エンターテイナーってそういうもんだし……】

【そうそう、ストリート芸にお金投げ入れるようなもんだし……】

【コメントの中にも罵られて興奮してた紳士も居たから……】

【メスガキ芸……いいぞ、もっとやれ】

 

「うっぷ」

 

またこみ上げてきた――牛乳でマイルドになったそれを、飲み込む。

 

ふと横を向いた先の全身鏡には、体を丸めて口を覆っている――涙目の女の子が、それはそれはかわいそうな姿をしている。

 

――コメント欄の規制。

 

特に新しい人たちからのそれをオフにすることも、できはする。

 

けども――このままじゃダメだってのは、ずっと前から感じていたんだ。

 

だからこそ、こんなどうしようもない状況になった今だからこそ、がんばれる範囲でがんばりたい。

 

とりあえず軽く吐く程度なら大丈夫で、前の体基準でアルコールをがーっと飲み過ぎて急性っぽくなったときレベル、あるいは幼い肉体年齢の仕様で泣きじゃくるレベルになるまでは耐えられる。

 

そう、思うから。

 

ふぅ、と息を吐き――優花が「心が落ち着くサプリだから」とくれていたのにずっと放置していたものをぐいっと飲み。

 

「……僕は良いけど、他の配信者のこと、悪く言わないでね? 僕は最底辺の方って自覚あるんだから。あと、大人だからある程度はね。ほら、大学投げ捨てて引きこもって家族に迷惑かけて妹にゴミ見る目で見られる兄未満の存在とかそうそう居ないだろうし、いわゆるコメディアン――路上パフォーマーとか芸人とか、笑われるのが仕事ではあるけども、彼らだって人間なんだ、僕とは違ってまだマシな存在なんだ。彼ら自身に笑わせられた以上の嘲笑はNGだよ」

 

自虐芸。

 

そう言われることはあるけども、僕は別になんとも思っていない。

だって事実でしかないんだし。

 

……むしろ、そう自分を卑下することで、こうして今生きている全てにかかっているお金とか気配りとかへの罪悪感が楽になる気がするんだ。

 

ほら、実際、吐き気とか一時的にでも収まってる。

 

僕の作戦は完璧だ。

 

僕は僕自身がだめだめだって理解してるからこそ、僕自身の性質もまたよく理解しているんだ。

 

【草】

【草】

【この開き直りっぷりはさすがプロのニート】

【ニートはともかく引きこもりの人たちの大半が苦しいメンタルの中、この強靱メンタルは見習いたい】

 

「え? 話してる途中におもむろに吐くメンタルがなんだって?」

 

【草】

【おもしれー女】

【↑ちがうゾ、バ美声だゾ】

【あーそうだったーざんねんざんねん】

【もうちょっと自然にやれよお前】

【草】

 

新しい人たちは、前から居てくれた人たちとは少し違う雰囲気。

 

話す言葉――いわゆるネットスラングも使う言葉のニュアンスも結構違うし、僕の知らないネタとかで盛り上がることも多々ある。

分からないものは基本的にスルーすれば良いし、特に問題はない。

 

……最近、僕は新しいスキルを身につけたらしい。

 

「この僕」を「別の僕」として俯瞰するスキルだ。

 

つまり、今の僕はこの幼女――じゃない、少女に事情があって乗り移ってて、しかも前と同じ生活を強いられている――そう思い込むことに成功し、実際、吐き気とかもこれでも相当に抑えられている。

 

まぁ数字見るたび胃袋がぎゅって硬くなって横隔膜が痙攣し出すし、悪寒がし出すし冷や汗が出てくるけども。

 

………………………………。

 

ぎゅっ。

 

汗でびっしょりになっている手のひらを、パーカーの手を突っ込むとこで握りしめる。

 

……やっぱサプリ程度じゃ、体重が半分になってもそこまでは効かない……か。

 

でも、年に何回か通わされてるとこのお医者さんにもらってる、心が安心するお薬。

そろそろ在庫がなくなりそうだけど……こんな見た目じゃ、行けないよなぁ……。

 

けども、悪くなってるときほど、病院に行くのが大変になる。

それをお医者さんも誰も分かっていやしない。

 

だから在庫が切れて困ってからようやくしぶしぶ行くわけで、そのせいで今回はまさかのTSで健康保険が使えなくなってるわけで。

 

【俺たちのこはねちゃんさんが、もう遠くへ……】

【完全にリスナーとコミュニケーションを……】

【喜んで良いのか、悲しいんで良いのか……】

【うぅ……】

【つらい】

 

【草】

【わかる】

【個人で細々とがんばってたのを応援してたらいきなりバズったときのあの悲しさ】

【わかる】

【わかる】

 

【でもごめんね、それを見ながら新参者の俺たちが人気になった子をちやほやしてご機嫌にさせたいっていう、よく分からない優越感に浸りたいの】

 

【分かる】

【草】

 

【これが寝取られか……】

【これが寝取りか……】

 

【草】

【ひでー会話】

【でも古参の気持ちは分かる】

【お前ら誰も見向きもしなかったクセに、人気になったとたん手のひら返すなよって気持ちはよくよく分かる(3敗】

【あー】

 

「そうだよ? だから、もし君たちが……今はちょっと下手でも、がんばってる人とか見かけて応援したくなったら、応援してあげてね。僕だって、同接数人ではあっても応援してくれてる人たちが居たおかげで楽しく配信できてたんだから。……それに、こうして見てもらえててもやってることは前と変わってないんだ。数字なんて、その人自身の魅力とかとはまた別なんだ。こんな僕だって、応援したい人には、月に数百円程度なら出してるんだから。……ひより先生はファンボとかしてくれないけど、きっと将来のためと思って貯めてるからさ」

 

【感動した】

【こはねちゃん……しゅき……】

【俺たちの心をこの上なく理解してくれるTSっ子か……】

 

【底辺配信者の心も救ってくれてる……】

【女神かな?】

【まーだそのネタ引きずってる……】

 

生きる、意味。

 

大学中退――かといって就職もせず、数ヶ月に数日ちょっとハイテンションになったと思ったらバイトなんかしてみて、またメンタルが落ちたら全てを放り投げて引きこもる。

 

その、繰り返し。

 

無駄飯ぐらい。

 

寄生虫。

 

家族の負債。

 

人生の浪費。

 

女の子ならまだしも、家から出ないで家事程度しかしない男とかいう不良債権。

 

僕の――平均年齢的に、あと50年くらいの人生、その最も若い期間をただただ無為に捨てているだけの時間。

 

それが分かっていても――いや、分かっているからこそ、僕は依存した。

 

ネットという、そして配信という――どれだけしょぼくってもある程度好きなことを続けていれば、なんとなくでも話しかけてみてくれる誰かがいるという――良くも悪くも寛容な世界に。

 

みんなは「人をダメにする、ぬるま湯」って言うけれど、そんなぬるま湯が必要な人だって居るし、時期だってあるんだよ。

 

実際、僕が本当に辛い時期とかは、誰かひとりが反応してくれただけですごく嬉しくなったんだしさ。

 

【泣いた】

【ほんとこの子、よく分かってくれる……】

【こはねちゃん……】

【天使か】

【女神では?】

 

【ひより「こはねちゃんさんは素敵です!」】

 

む、先生。

 

「先生? 呟いてましたよね? 数学かなにか赤点ぎりぎりだったって」

 

僕は、先生だけは見逃さない。

 

絶対にだ。

さすがに尊敬する年下絵師さんもといイラストレーターさには厳しくしなければ。

 

【ひより「はい……」】

 

よし。

 

なぜか僕に懐いてくれちゃってる先生だからね、ここは心を鬼にしてでも突き放す勢いじゃないとね。

 

「良いですか、僕みたいになっちゃダメですよ」

 

【ひより「え、でも」】

 

「いいですね?」

 

僕みたいにダメダメになっちゃ人類の損失でしょ?

 

【ひより「はい……」】

 

よし。

 

【草】

【草】

【一瞬で追い出そうとしてて草】

【体を作ってもらった側のVTuberのくせに、ママを積極的に追い出そうとするのが居るらしい】

 

【これは百合……なのか……?】

【ツンデレだと思えば】

【興奮した】

【草】

 

 

 

 

「まだ居ますね? 話を聞いていますね先生?」

 

【ひより「はい……数学の問題集やってます……」】

 

「良いですか、丸つけして正解の式を理解しながら書き写すまでがセットですからね。手を動かすだけじゃ時間と労力とページとインクの浪費ですよ先生」

 

【ひより「はい……」】

 

「数学は公式っていう暗記を基礎問題で漢字の書き取りみたいに解いて覚えて、演習と応用問題で他の公式とかと組み合わせる練習をするものなんだって、この前聞かれたとき言いましたよね?」

 

【ひより「はい……本当に数学の成績上がりました……」】

 

「なら、分かりますね? 基礎問題までなら、ながらでも良いです。手で覚える暗記作業ですから。けど……分かっていますね?」

 

【ひより「はい……」】

 

よし。

 

こんな僕でも勉強はしていたし、勉強しかできなかったともいうし。

年長者として自慢できて役に立てるのはこれしかないんだ。

 

大切な先生に赤点とか取らせてイラストに影響が出たら困るし、追試とか補習とか講習とかで時間が取られるのももったいなさ過ぎるもんね。

 

「良いですね? 成績が悪いせいで学校の先生監視の下もう1回勉強させられるよりは、めんどくさくても効率的にさっさとやるんですよ? 絵を描く時間、必要でしょう?」

 

【ひより「はい……」】

 

先生には嫌われても良い。

いや、むしろ嫌われた方が良い。

 

こんな配信に入り浸っている――しかも相手は冴えない年上の男のに――な、危なっかしい女子生徒(予想)の、ひより先生。

 

このままだと、僕に飽きた次は僕に似た男の配信を求めるようになり……そして僕みたいに精神的物理的な制約で外出できない男なんかより、女の子のためなら飛行機にすら乗るのが大半の男から誘われて――ってなったら一大事だ。

 

そんなのは現実に普通にある話としてごろごろと転がっている。

女性は――少女というものは、行動力在る男に口説かれるのに弱いんだ。

 

そんなのが彼女のムイッターとかイラストに現れてみろ、主に僕の脳みそが破壊されて本当に人生が終わる。

 

それだけは回避しないといけないんだ。

 

もっとも、女性は男とのラブストーリーの数だけ幸せになるって言う。

だから、それをするなってわけじゃないんだけども……うん、ダメだ。

 

先生を知っちゃってる僕だからこそ、そういうのは嫌なんだ。

 

男は馬鹿だから、女の子が意味もなく男に――

 

「ろろろろろ……ふぅ」

 

さっと後ろを向いてげぼっとしてふきふき。

 

「……僕は先生のイラストが大好きなんです。そのイラストが1枚でも減ったら困るんです」

 

【ひより「はい……基礎問題解いたら残りはアーカイブで聞きます……」】

 

「よろしい」

 

【草】

【草】

【めっちゃ押しまくるこはねちゃん】

【コミュ障はどうした】

 

【先生相手は無敵だぞ】

【え、ママ相手に?】

【ママ相手に】

【えぇ……】

【草】

 

【やさしい】

【言ってること自体はマジでその通りなんだよなぁ】

【それを、以前数学が苦手って言ってた先生にアドバイスするのはマジで優しい】

【考え方ひとつで変わるからねぇ、勉強って】

【俺も、もっと早く知っていれば……】

 

【個別の問題教えられないからって勉強そのものを教えるとかすごくない?】

 

【実際すごい】

【これで……コミュ障……?】

【もはや家族の分類なんだろうよ】

【あー】

 

【百合……いいね】

【純愛か】

【てことはこはねちゃんの方が1歳2歳上……それとも早熟タイプ】

【なるほど】

【辻褄は合うな】

 

【尻尾振ってくる後輩にツンツンしながらも優しく教える先輩】

【そして2人はやがて百合の花を……】

 

【※自称25歳成人男性です】

 

【※ただの自称です】

 

【なんだ、ただの自称か】

 

【ぜんっぜん信じてないコメントで草】

【草】

 

【これだけ気心の知れたやりとり……やっぱリアルJK疑惑のひより先生とこはねちゃんは……】

 

【しーっ】

【そういうのは外でな】

【りょ】

【こはね×ひなたはどこに投稿すれば良いですか?】

 

【けど、今一瞬……いや、気のせいか……】

 

先生へ、がつんとクギを刺した安心感でひと息。

 

胃袋も痙攣が収まったからゼリー飲料でなだめ、そしておもむろにアルコールをオープン。

 

「まだ夕方だし、とりあえずで焼酎かなぁ……炭酸炭酸っと」

 

【草】

【草】

【え? 今の発言、一貫性あった?】

【ないね……】

 

【なんかちょっと黙ってたと思ったら……】

【隙あらばアルコールの影】

【草】

 

【ロリヴォイスで飲酒発言するなよ草】

 

【合法ロリ……いいよね……】

【いい……】

【酒豪合法ロリだとしたら最高だね】

【分かる】

【最近はコンプラのせいで供給が少なくなってなぁ……】

 

「うんうん分かる分かる。どう見ても他のヒロインたちより年下で、なのに先生とか偉い立場で、なのに飲んだくれてて。ザルでも良し、弱くてすぐに潰れたりへべれけになったりからみ酒でもそれはそれで良し。そういうキャラって良いよね。ロリでも良し、大人のお姉さんでも良し。……そっか、ロリは今どき厳しいのかぁ……自主規制で。悲しいね」

 

【かなしい】

【かなしい】

【こはねちゃんはなんでもわかってくれる……】

【きゅんっ】

【わかる】

 

こくり。

 

水割りでちょっと薄まっているけども、おかげで吐かない程度には胃が受け入れる刺激が喉を通過する。

 

うん、分かるよ。

僕も正直、そういうキャラは好みだ。

 

そして鏡を見ると、そんな子が常に視界に入り続ける今も、正直……。

 

【わかる】

【いい……】

【全てを理解してくれるロリ】

【しかもその属性を自ら体現しているロリ】

 

【TSロリ】

 

【ショタ……?】

 

【TSっ子って手はないかな】

【ショタじゃなくて?】

 

【しっしっ】

【草】

【何争ってんだよ草】

【なぁにこれぇ……】

 

【うん……ここに残ってるのは純粋なファン1に、変なの9だからね……】

 

【草】

【「変なの」はやめて!!】

【それってほぼ変なのじゃない?】

【違うとでも?】

【さすがにひとくくりにされると凹む】

【草】

 

「……んじゃ、今日も、とりあえずでいつものやりますね」

 

コメント欄も、今やお酒に頼ればなんとか耐えられるレベルにはなってきた。

 

……もっとも、この前、炎上っぽくされた恨みを最大限に思い出しながらではあるけども。

実はそんな恨みは思い出さなければ忘れるくらいなんだけども、とにかくあらゆる怒りを込めるんだ。

 

「ばーか」

 

あっ。

 

【!?】

【唐突な罵倒!!!!】

【あっ……(尊死】

【なんだこのロリ……需要を弁えている】

 

【ひより「    」】

 

【あっ】

【草】

【ひより先生のことじゃない……はずだから……】

 

【キャラブレブレじゃない?】

【そこはまぁ、実質デビュー数日だし……】

【個人勢でってこと考えたら、1ヶ月くらいでやることころころ変わるのも普通だから……】

【方向性が定まってないからこその特権でもあるしな】

【ほんそれ】

 

【唐突な罵倒……良いぞ、もっとやれ】

【メスガキ路線も良いぞ!】

 

……思わずでつぶやいちゃったけども、どうやらご褒美と受け取ってもらえたらしい。

 

良かった……けども、この体、なんだか口も軽いんだよなぁ……やっぱ女の子だから?

いやいや、女の子でも静かな子とか人は普通に居るし……あくまで平均値とか傾向が……ってことなのかな。

 

「……僕は反射神経とかダメなので。ほら、体育とか毎回なぜかお腹痛くなって保健室送りだったし、そうじゃなくても球技とか団体競技は壊滅的で……なんにも考えなくて良い小学校前半までは、ケガばっかだけど普通にできてた気はするんだけどなぁ……才能とかなくって。悲しいね」

 

ゲームは良い。

あくまで目と指先しか動かさなくて良いから。

 

限定的な動きなら、こんな僕でもなんとかなるんだ。

何よりも、疲れないし……目は悪くなりそうだけどさ。

 

あと、接近してくる物体と人が怖くない。

 

たぶんこれが、1番大きいんだ。

 

「運動神経、反射神経、体力、球技への耐性、集団行動への適性。ああいうのってさ、たぶん産まれた瞬間にある程度決まってるから。僕みたいなのにはそれがなかったから」

 

【わかる】

【わかる】

【運動ってな、生まれつきが大半だから……】

【それな】

 

【どんくさいって言われても、しょうがないんだよなぁ】

【それ治そうとして「どんくさい」なんだもんな】

【治そうと私なりに努力して、それなんだよ……】

 

【うぅ……】

【つらい】

【かなしい】

 

【こはねちゃん……辛い思いを共有する俺たちに、何かご褒美を……】

 

【草】

【話が繋がってないぞ草】

【でも悲しい気持ちに、なにか……なにかご褒美ほしいよぉ……】

 

「うんうん、気持ちはよく分かるぞ。僕も学生時代は地獄だったから……ふむ」

 

ちょうど試合の待ち時間とあって、ちょっと思考。

 

「……あくまで妹。妹から聞いた話なんだけどさ」

 

【お】

【うんうん、妹ちゃんの話ね】

【分かった分かった、妹ちゃんのね】

【分かる分かる(棒】

【お兄さん、妹さんをください!】

 

「あげないよ……じゃなくって」

 

そもそも優花ってば、あんまりに美人さんでなんでも出来すぎたせいで、毎年最初に何人か出るらしい嫉妬で突っかかってくる女子すらすぐに諦めるレベルに飛び抜けてるせいで、中学からは高嶺の花だそうで。

 

告白とか絶対されてるって思ったら、「そういうのはありませんし、あったとしても兄さん以上の男性は居ませんから」、だって。

 

本当かどうかはさておき、実際男の影は……いや、今どきは珍しいプラトニックな感じならあるのかな?

僕としては、優花が見初めた相手なら存分に恋愛とかしてほしいんだけども……まぁいいや。

 

「女子だって、男子への好みってさ。全員が全員、スポーツが出来たり気が利いたりイケメンとか筋肉ある男が好きなわけじゃないんだってさ。ほら、僕たちもマンガとかのヒロインたちって、結構好みが分かれるでしょ? あんな感じで、僕たちみたいなドジでマヌケで男相手にすら満足に話せずに挙動不審で気持ち悪くって……あ、ごめん、吐いてくるのでマイク切ります」

 

ぽちっ。

 

指さし確認、良し。

 

がさり。

 

エチケット袋、スタンバイ。

 

「おろろろろろろ」

 

焼酎とゼリー飲料の匂いと味のするリバース。

 

……あ、食べものじゃなきゃ意外と楽だな、嘔吐って。

 

今後、配信は食後3時間は経ってからだな。

あと牛乳の匂いで結構……いや、ちょっと時間を置いたヨーグルト臭が。

 

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