TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~ 作:あずももも
『……だから! 俺は男だって言ってるだろ!! なんで誰も信じねぇんだよ!?』
【――ちゃんぺろぺろ】
【急に顔出ししたかと思ったらダサい男みたいな服装で草】
【すっぴんで草】
【勇気あるな――ちゃん】
【すっぴんでこれなら行けるか……行けるな……】
【化粧で誘惑された翌朝の……うわぁぁぁぁ】
【かわいそうに……】
【女はね、化けるからね……】
【画像どころかライブ動画すら加工されてる時代だしなぁ】
【――さんが唐突に顔出し急に俺っ子になって戸惑う視聴者】
【そろそろ暴露系から路線変更か?】
【まあいい歳だしな】
【ヘイトも集めすぎたし開示食らってるし、潮時と判断したか】
【なるほど】
【見た目で稼ぐなら1日でも早い方が良いからな】
【でもいきなりすっぴん&シャツ姿で出てくるのはすげぇ】
◇
『ねぇ、信じて! 私、昨日までちゃんと女だったの! 有名配信者の――くんとも内緒で付き合ってたし! 来年くらいにサプライズ結婚しようって!』
【!?】
【は?】
【え?】
【片っ端から女性をストーカーして口説いて回るお巡りさん常連の迷惑系配信者が、突如として同性配信者とのお付き合いを暴露だと!? 興奮してきたな】
【えぇ……】
【てかなんか腰がくねくねしてて草】
【なよなよしてて草】
【男女差別……昨日まで女に見境のないオラオラ系がいきなりこれはしゃあない】
【草】
【仕草と話し方の演技はなかなかだな!】
【でも、うん……モテすぎると女じゃ満足できないよね……】
【あー】
【行き着くところは同性へ……うん……かつてのギリシャローマも武士たちも同じ末路をたどったから……】
【男の娘は良いぞ!】
【女装子ですー】
【もしかして:素敵なお兄さんに素敵なナイトを】
【確かに結婚を約束してるとか暴露された――さんはイケメンだわなぁ】
【ここに薔薇の花が咲いたと聞きましたわ!】
【薔薇専門のお嬢様!】
【わたくしは百合も薔薇も嗜みますわ!】
【両刀使いのお嬢様!?】
【つまりどっちでも良いんじゃねぇか、このエセお嬢様ども】
【草】
◇
『なぁ! 俺のことは分かるよな!? アーカイブにも俺の顔が……ぜ、全部、女に……!? う、嘘だろ……なんで……』
【なかないで】
【ぺろぺろ】
【――さんも変なこと言ってるなぁ】
【なんで揃いも揃ってみんな俺っ子になってるんだこいつら】
【そういうイベントか?】
【エイプリルフールはもう終わったぞ】
【エイプリルフール16日目――――――――】
【草】
【草】
【その論理で行くと4月は全部延長戦できるな!】
【ギャグは……まずい……】
【ちょうちょだって?】
【おいばかやめろ】
【暴露系・炎上系がいっせいにやり出してるし、大規模な企画だろ】
【あー】
【普段やらない時間に一斉配信してるし、これもうそういうやつだわな】
【普段顔出ししないのがそろって出してるし、この前のこはねちゃん襲撃も許してやるか 存分に楽しんだあとでな!】
【もうさんざん金も名誉もむしり取られてる定期】
【保護者は許していません】
【こはねちゃんの保護者が来たぞ! 囲め!】
◇
「……ずいぶんと暴れているようだが」
【うん】
「怒っているのか?」
【うん】
たったの2文字。
それに込められた感情へ……内心、畏れを抱く教授。
「……そうか。神のお気に入りへ茶々を入れて怒らせたのなら天罰だろうな。古今東西、そうした話は山ほどある」
【そうだね 理不尽だろうけど、お気にをいじめられたら……ね?】
「――――ならば、私へも下すかね? こうして見せているということは……と、そういうことかね? 地獄の案内ということかね?」
淡々と肯定される、日常への超常。
それをしばらく眺めていた教授が、問う。
【ううん? こはねちゃんが、これっぽっちも怒ってなかったからしないよ? そうじゃなかったら……そうだったかもね】
「……そうか。であれば、彼からのコンタクトがあったこれからは、彼へ最大限の支援を約束しよう」
【こはねちゃんの社会復帰と、その先を助けてあげてね それ以外は、あの子たちがなんとかしてくれるから】
「うむ。私の命にかけて約束しよう」
空中に投影される、数百の画面――そこには無数の悲鳴という名の喜劇。
そんな光景を見せられた教授は、静かに息を吐く。
「……ときに、私へ天罰を下すとしたらどのような方法になるのだろうか」
【うん? そうだなぁ……君の場合は『両方』没収かなぁ】
「済まない神よ、それは私にとっての褒美になってしまう」
【あー……じゃあ取らない そのまま苦しみながらこはねちゃんを推してくれたら、そのうち気まぐれで望む方に固定してあげるよ 観測されないのは大変だろうからね】
「……そうか」
【うん】
「………………………………そう、か」
1人と1柱は、静かに阿鼻叫喚を眺めていた。
「……ところで、この天罰はいつまで続くのだろうか」
【え?】
「む?」
その反応に――教授を名乗った彼または彼女は、今度こそ冷や汗をにじませる。
【何言ってるのさ】
【こはねちゃんと同じく、「ずっと」だよ?】
「……神の罰、か」
【大丈夫大丈夫 あの子たちのは2000ターンくらいで解いたげるよ 反省してたらね】
「……? およそ6年ほどこのままで、それから解く……なるほど、それは大変に恐ろしい罰だな……」
――「神をも恐れぬ所業」。
知らず、それに手を出してしまった哀れな者たちへ――ささやかな祈りが、捧げられた。